〇話 Overture
今回からオリジナル小説を投稿していきます。
よろしくお願いします。
これは、『言葉』によるテロリズム。
『言葉』が引き起こすパンデミック。
そこら中にヘモグロビンの色をした花が咲いては散ってゆく。
濃藍の空にその色はとても映え、星が見えなくなるほど鮮やかに光っては消えてゆく。
ギリシャ悲劇の大詰めに相応しい惨憺たる情景。
デウス・エクス・マキナなんてものは初めから居なかった。
病原体に触れることがないよう全てがお膳立てされた環境で育った哲学的ゾンビの群れは、不治の病を患った人間よりも遥かに脆いようだった。
しかし、彼らも本当の自分を取り戻しつつあるようだ。
その証拠に、
耳を澄まさなくとも聞こえてくる悲鳴、眼下にはいくつもの絶望によって歪められた顔。
彼らは今日、生まれて初めて本物の感情を手にいれた。押し付けられることによって。
後悔はしない。そう決めたのだから。
たとえ彼らの信じる幸福の全てを破壊したとしても。
私は『言葉』を送り続ける。
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