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青い記憶  作者: 宮森マヤ
3/9

メグ 紅葉

 週初めに降った雪で街の様子はすっかり変わってしまった。一緒に歩いた道は黒いアスファルトから白い絨毯へ。赤色や橙色に囲まれていた木々も白に染まっている。

 もうあの日に歩いた景色は無いんだなぁ、なんてしみじみ思ってしまう。

 時間が経てばゆっくりと色んなものが変わっていく。楽しい思い出も嫌な記憶も、みんなみんな遠い過去の出来事になってしまう。受験も恋も友だちも。

 なのにふとした時に考えてしまう。

 もしも、もしもう一度、わたしがトシキに同じ質問をしたらどうなっただろう。

 そう考えたとき、わたしの頭の中は色んなトシキでいっぱいになる。

 怒って勝手に歩き出すトシキ。

 左目だけキュッと細くなってつまらなそうな顔で無視するトシキ。

 もしかしたら、唇を噛みながら泣いてしまうかもしれない。

 だけど、どのトシキも違う。直感に近いなにかがいつもそれらをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てる。

 きっと、いつものあきれ顔でわたしを見ながら言うんだ。

「あのね、そもそも白髪というのはメラニン色素が……」

 あの日すぐじゃなくてもよかった。競歩大会ですれ違ったときでも、秋の祝日を利用して遠出した日でも。赤く染まった葉っぱが散る前ならいつでもよかったのに。

 別にいまさらどうにかしたいわけじゃない。

 ただ、きっとトシキはこう返すんだろうなと想像するだけ。

 わたしは首のマフラーをいっそう強く巻いて歩いた。

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