体温
高橋さんは職員棟に行ってから教室棟に行くらしく、校門のところで高橋さんとは別行動となった。可愛い転校生とあまり話せなくて残念だったなぁ。連絡先は聞きそびれちゃったけどまぁ同じ一年生だし、どこかでまた会えるでしょう。
私たちは今、教室の前にいる。一年二組のプレートを確認。うちのクラスで間違いない。
中の様子を確認。よかった、まだ授業は始まってないようだ。先生遅れてるのかな?
先生が来ていないことに安堵して教室の扉を開ける。
騒がしかった教室が静まり返り私に注目が集まる。少し面食らってしまったが、皆が注目した理由を察して
「先生じゃなくてごめんねっ。」
笑顔で謝辞する。
「梗おそかったじゃんー。いつもだけど。」
いきなり抱きつかれて少しむせる。
「おはよう、加奈。先生遅れてるの?」
半ば強引に加奈を体から引き剥がす。
「うん。なんか転校生がまだ来てないみたいでその関係なんじゃない?そ、れ、よ、り、今日も彼氏と仲良く登校ですか??」
ニヤニヤしながら話題を変える加奈。
「もぅ。そんなんじゃないってば。」
半分呆れた風に答える。
「付き合っちゃえばいいのにー。好きなんでしょー?」
「好かれてる。の間違いでしょ。」
「桐生くんって意外と人気あるんだよ?付き合っちゃえばいいのに。」
「桃には何回か告白されてるから、私のこと好きって分かるけど。私は好きとか付き合うとかってまだよくわかんないんだよねー。」
「なんかもったいないなぁ。こんなに可愛いのに。それに女子高生である時間は今しかないんだから大切にしなきゃじゃん。」
ごもっともです……。
「私の大切な時間は加奈にあげちゃうー。」
今度は私の方から加奈を抱きしめる。
「ありがとうー。でもうちの時間は彼氏にあげたいなー。」
楽しそうな声で裏切りの一言……。
「加奈彼氏いない……。」
扉から女子の声。
私以上の遅刻者がいたのか……。
この心地よいアルトボイスはなんか聞き覚えあるな。
声の方に振り向く。
「やっぱり結衣だー。おはよー。結衣が遅刻なんて珍しいねどうしたの??」
私は今度は結衣に抱きつく。
「ちょっと寝過ごした……。」
少し息苦しそうに答える結衣。
「ほらお前ら、そんなとこで遊んでないで早く席に着きなさい。」
「あ、先生、おはようございます。」
私たちは挨拶をしてそそくさと自分の席に着く。
もうちょっと二人の温度感じたかったなぁ。