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とても幸せに暮らしています~私とモフモフと過保護の日常~  作者: シーグリーン
暇を持て余した神の使いの就職活動編
2/22

2 流れに身を任せる

 




「そうねえ……あれこれ手を広げ過ぎるのも大変だから、まずはお店の商品を増やすのが良いと思うわ」


「でも献上品を取り扱うお店ですから、新しい商品もそれに見合ったものを用意しないといけませんね」


「さすがお義母様!」



 お店の事を相談すると、予想通りアレクシスさん達は親身になって聞いてくれた。

 頼りになる。



 この状態になるまでに少しどきどきさせられることがあったが……。



 まさかのジーノ君が私の足を使って初つかまり立ちをしそうになったのだ。

 思わず悲鳴が出そうになったが、それはまだ早かったようだ。

 危うくジーノ君の初つかまり立ちの瞬間に立ち会ってしまうところだった。


 よりによって私の足を選ぶあたり子供の穢れの無い心は恐ろしい。

 しかし、いくら神の御使いだとはいえ赤の他人の足で初つかまり立ちはパパママが複雑な気持ちになるからね。





「新しく売り出すならこれって考えてるものはある?」



 アレクシスさんに質問をされた。



「女性が好みそうなもの、とは考えているんですが……」



 そもそもこれまでも自分で何かを作り出したというよりは、他力本願方式でここまできたのだ。

 キウイメロンしかりブレンドティーしかり。



 というか、ギルバートおじいちゃんが面倒を見ているジーノ君のペダル漕ぎのような足の動きが気になって仕方がない。

 なにあの力強さ。動画撮りたい。



「今クダヤの街で女性に求められている物といえば……」


「やはり御使い様の装飾品関係かしらねえ」


「そうですね」



 うわ。



「ご帰還された際のあの華やかなお召し物……素晴らしいわ」

「それにあんな繊細な輝きを放つ布は見た事が無いわよね」



 あっという間に帰還してきた事実より衣装に注目してくれる方が私にとってはありがたいけど……。

 なんかもぞもぞする。



「あれ程のものは無理でしょうけど……ヤマチカさんは何か装飾品を作れたり、仕入れる伝手はあるのかしら?」


「……いいえ」



 ボスの毛と虹色鉱石でなんちゃってアクセサリーは作った事があるけどなあ。

 ミュリナさんにもまだ作り方を聞いてないし。

 というかミュリナさん達もお店を経営してるのに気軽に作り方とか聞きにくいよね。商品だし。



「ならこれまで通り食に関するものが良いかもしれませんね」



 やっぱりそうなるか。

 前に種を贈ってもらって島で育てている(マッチャとナナが)、ブロッコリーとカリフラワーの混ぜ合わせ野菜の『ロマ』と白ナスのような『スールジ』をいよいよ投入するべきなのか……。




 その後の話し合いで、キウイメロンの他にも色んな作物を植えてみる方向で話はまとまった。

 ブロッコリーとナスを拠点の畑で育てる予定だ。


 ヤマチカの隠された設定で、作物を美味しく上手に育てられる『緑の手』というのがあるのでどんどん活用していこうと思う。



 夕食を一緒にと提案されたが、末っ子で未だ思春期の拝謁許可者の彼が挙動不審になりそうなので、種や苗を下見に行くと言って丁重にお断りしてきた。

 御使い様降臨話もお腹いっぱいだったし、ジーノ君の可愛さはまたじっくりと改めて観賞したい。











「お久しぶりです」



 次にライハさんちのまどろみ亭に到着し、店に入るとスヴィちゃんが笑顔で声を掛けてくれた。



「こんにちは、お久しぶりです。ライハさんは仕事?」



 もう騎士達の護衛はついていないのだが、知らない女の子が1人接客をしていた。



「そうなんです。姉に用事ですか?」


「用事というか、商品を持って来たついでにお2人に女性目線で今何が求められているのか教えてもらいたくて」



 説明しながら案内された席に着く。



「私で良ければ……。茶葉も助かります。いつ入荷するんだって問い合わせがたくさんあって」


「……ごめんねえ」



 ヤマチカとして、クダヤに戻ってきた際ここにも挨拶には来たが、それ以降はいい年して『恥ずかしい』という理由で島に引きこもっていた自分の情けなさが際立つな。

 でもそんなに守役ブレンドティーを求めてくれているのは嬉しい。



 今は少し手の空く時間帯らしく、新しい店員さんの女の子も加わり少し相談に乗ってもらえる事になった。



「ひとまず新しい商品ですか……」


「そう。ずっと同じ商品でも良いんだけど何か他に出来るかなって」



 暇だし。ローンが残ってるし。



「それなら領主様の商品を増やすというのは? 茶葉とカリプスは値段にしても毎日買える物ではないけどお菓子なら……」

「私のお小遣いでも買えますから! 交換し合いっこして食べるんです!」


「そっかあ……」



 まさに他力本願な案が顔を出してきた。

 いやでも実際良く売れてたらしいんだよね。その売り上げはまるまる献上されたけど。



「いちおう新しい野菜を考えてはいるんだ」


「それもいいですね。美味しいのが出来たらうちでも定期的に買い取らせてください」



 急に商売人の顔になったスヴィちゃん。

 おっとりした優しい口調だけどさすがやり手の次代の経営者は違う。


 もしかしたら店頭販売だけじゃなく、飲食店に食材を卸す商売人でもやっていけるかもしれない。それなら大量に注文が入る可能性がある。



 ……あれこれ、本格的な農家いけるんじゃない? 



 でも農作物が大量となると農地を持っていないと怪しまれるな。今更だけど。

 キウイメロンは拠点の存在を知らない人には今でもユラーハンから収穫して持ってきている雰囲気を出せてるからいいけど。いや……出せてるのか……?



 すべてにおいてふわりとした感じでファンタジー生活を送ってたからなあ。いざ永住するとなると色々と考えなきゃいけない事が出てくる。

 ……やっぱりここはお偉いさんとの話し合いも必要か。




 今度はサンリエルさんのお菓子を差入れしようと考えながら、まどろみ亭を後にした。







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