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とても幸せに暮らしています~私とモフモフと過保護の日常~  作者: シーグリーン
暇を持て余した神の使いの就職活動編
16/22

15 他力本願接客

 



 ヤマチカ屋の外が騒がしいから嫌な予感はしていたが、この時間の担当者のサンリエルさんを残しお偉いさんが店を出て行く際に外の人垣が目に入ってしまった。

 いるわ人が。たんまり。



「どうやら商人が多いようね」



 そうなんだ。ローザ・アイは間違いが無さそう。



「ミュリナ達は今日来るのは無理ね」


「伝えに行きますか?」


「えっ……!?」



 カセルさんの申し出にアルバートさんがアレクシスさんより反応してる。


 確かにこのメンバーの中にカセルさん抜きで残されるのは緊張するよね。

 でもカセルさんもお偉いさんから色々命令を受けて店にいない時間帯が出てくるだろうから慣れて欲しい。

 専属経理として指名してごめんとは思ってる。でも助けて欲しい。

 助けてくれる店員さんが多めだけど。



「2階でゆっくりしてもらって構わないので明日以降いつでもどうぞと伝えてもらっていいですか?」


「いいですよ~」



 ごめんアルバートさん、君の精神安定剤を追いやってしまった。でもすぐに戻ってくるから。



 そして、私を視線で追っているサンリエルさんがローザさんに「女性をじろじろ見ないように」と注意され、それが飛び火してアルバートさんが女性への接し方をアビゲイルさんとアレクシスさんに指導されるというちょっとした出来事はあったが、こうしてヤマチカ屋は無事オープンした。














「大変素晴らしい商品です! ぜひ我々にも取引を――」

「守役様のお姿のものは許可できない。他の装飾品もお前達では命の危険を伴う」



 何やら物騒な事を言っているサンリエルさん。

 カウンターの内側にひっそりと気配を消して佇んでいる私に取引を持ち掛けてくる商人さん達を相手にしてくれている。


 というかこの人混みの中ようやく店内に入れた人もサンリエルさんの姿を目に止めると一瞬動きが止まるんだよね。レベルアップしたら営業妨害になりそうな程この人には存在感がある。

 領主だし今日は気配を消していないから余計に。



「身分証を。検討し追って知らせる」



 愛と光のお仕事中だった時の取引先はライハさんとジョゼフさんのお店だけだったが、今後クダヤには長い間お世話になるつもりなので他のお店との連携も考えているのだ。完全にその場の思い付き。

 守役ブレンドティーと野菜なら取引できそうだし。野菜への反応はいまいちだけど。


 対応するのはサンリエルさんとか族長さん達の予定。完全に人任せ。私は決定するだけのお仕事。

 でも出来る人が出来る事をってサンリエルさんも言ってるし、経営者の仕事ってそんなもんだと思う。

 知らんけど。





 次の担当のサムさんが店にやって来たのにも関わらずなんやかんやと交代の時間を引き延ばしたサンリエルさんがようやく帰った後もお店の忙しさは続いた。

 サムさんて前から思ってたけど超気が利く。頼りがいしかない。


 実際に商品を購入する人は人数の割に多くは無いが、女性達がアレクシスさん達の所に集まってきゃあきゃあ楽しそうにしていたのでこちらも嬉しかった。

 大貴族のサロンみたいになってたけど。これがカリスマ性というものか。



 はじめは商人の男性客が大部分を占めていたが、その内女性客が多くなり店内にいる男性は女性に連れられてきた男性数人になっていった。

 その時の担当ティランさんは女性ばかりの中でも美しさに引けをとっていなかった。

 ついついカセルさんに並んで接客してもらってこっそり観賞した。エルフだわ~。



 昼の時間が過ぎると店内は小さな子供を連れたお母さんが多くなった。



「これか? いくついるんだ?」


「えへへ、2つ」



 なーにがエヘへだ! この可愛さの塊め! そんなんされたらイチコロだわ。

 でもガルさんをベタベタ触るんじゃない。



 子供は何故かガルさんに懐く。

 サンリエルさん以外のお偉いさんが嫌われてるとかじゃないんだけどね、偉い人に対する親の態度を見てるっていうか。

 でもガルさんには引っ込み思案らしき子供も話しかける。


 チラチラ上目使いで見ながらたどたどしく話しかけるとかなんて高等テクニック。あと20年(エスクベル年齢)若ければ真似するのに。

 そしてサンリエル印のお菓子が売れる売れる。しっかり食べて大きくなるんだぞ。





 ガルさんと交代でバルトザッカーさんがやって来た後くらいから一族のご老人達の割合が増えてきた。



「この首飾りを下さいな」



 薄着で手のつくりが水の一族っぽいおばあちゃんが上品そうに指さしたのは、ロイヤルの形をしたネックレス。

 ロイヤルに似た色の真珠で900万円するのにさらりと言われた。すげえ。


 するとバルトザッカーさんと話していた一族――たぶん地と水の――のご老人達がこちらに。



「注文はしないの?」


「気に入ったからこれも買うわ」



 どうやらこの人達はオーダーメイドの依頼をしに来たらしい。これはいよいよ納期3ヶ月設定をどうにかしないといけない。



 老後の心配という余計なお世話を内心でしながら、購入してくれたネックレスを高級感に溢れている箱に入れる。これはダニエルおじいちゃんが作ってくれた。

 その間かなり早めに来たリレマシフさんとローザさんが上手く一族のおじいちゃんおばあちゃんの注文を受けてくれ、心の底から憧れる仕事っぷりを披露。


 バルトザッカーさんは再び訪れた商人達からあれこれと店の外で相談を受けており、街の人に頼りにされているのがわかった。







 休憩しながらお店に立っていたが、そろそろ疲れてきたなというところでチカチカさんから更に疲れそうな事を教えてもらった。



「あの鼻の良いのと王族が来る」



 きたか。

 王族に関しては構わないんだけどな……。あの首長は初対面の人のにおいを嗅いでくるんだもんな……。



 店内を見回すと笑顔で接客中のカセルさんと一生懸命お釣りを渡しているアルバートさん。

 そして交代で店にやって来たイシュリエさんとローザさんの女性陣。


 心の中で頷きローザさんにじりじりと近付く。



 別にカセ&アルが頼りないわけじゃない。頼りになる。でも更に上を行く頼れる存在がこっちに固まってるからさ。

 キッチンにはジーノ君の世話をしているアレクシスさんとアビゲイルさんがいるし、2階にはギルバートおじいちゃんとジーリさんもいるから安心。

 こじんまり達がいらん事してないかは心配だけど。



 さり気なく女性陣の後ろに陣取ったところで騎士の1人がイシュリエさんに何かを報告しに来た。

 報告を受けたイシュリエさんはこちらに視線を向けたので言いたい事はわかった。



「使者達が来ているそうよ」



 やっぱりな。



「領主様にも報告されるからその内姿を現すわね」



 揉め事の予感ひしひし。



「ララウルク首長は大きな剣を身につけているらしいんだけど」



 ……それはとても見たい。







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