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ローエンハイム騎士爵領へ

 設定データやプロット、下書きなどを消失してしまいました。

一応、書き続けていく予定ですが、若干流れが変わるかもしれません。

またとんでもない展開になるかもしれません。

初めてのファンタジーものということで、ご容赦ください。

外伝の方も同様です。


 ニュルンからローエンハイム騎士爵領へは南へ馬車で二日、東へ馬車で三日という、馬車で片道五日の旅となる。とはいえ、ソーマが知るのは何度か行っているヨツン村までの道のりだけであり、それ以南はまったくの初めてのこととなる。が、<サムライ>のソーマ以外のメンバーはローエンハイム騎士爵領出身のため、幾度か通っている慨知の旅程となる。とはいうものの、ヒルダとブライトンは彼の地、特に中心都市のローエンベルグでの長期滞在は望んでいないようであった。


 ソーマは何らかの理由があるのだろうとは察知しているが、あまり深く追求はしていない。その気持ちはわかるからである。彼とて、フォレスター伯爵領での長期滞在となると、今は避けたいところであるからだ。そういうこともあり、ローエンベルグでの滞在は短期間で済ませ、北のノイエベルグに滞在することになっている。


「なるほど。ローエンハイム騎士爵領の北、つまり、魔境側に幾つかの隠れ里があるということかな?」

 馬車の御者席に座り、馬車を操りながらソーマはセーラに問うた。

「ええ、ノイエベルグの街から馬車で二日ほど北に塩湖があるといわれています。その塩を採取するために、開拓村が設置されたという伝承があるのですが、いつしか支援が打ち切られ、すでに五十年ほど過ぎているようです」

「それで、開拓民が引き上げているというのですか?」

「そのようです。今となっては真偽は定かではありませんが、ノイエベルグではそう伝承があります」

 セーラがいう。


 今回、<サムライ>が護衛するサザンクロス商会の荷馬車には、リント村からの岩塩とトーガシ、これから寄るヨツン村でのニーニクを中心に商う予定なのである。後は鉄製品など少量を用意している。ローエンハイム騎士爵領はこれといった産業はなく、農業が盛んな地域で、それ以外には魔物狩りで滞在する冒険者の滞在で落ちる金で成り立っているという。そのため、王国各地から農業移住を受け入れているのだという。


 領地自体は海岸線から馬車で二日のところに、東西に走る山地というよりも、丘陵があり、北側は魔物が多いが、南側は比較的安全でこれらの地域で、農業が盛んだという。東の大森林との境目に流れる大河、ロレル川から分岐した川が領地の中央部を流れ、これが南北の境目だということだ。


 ヨツン村に立ち寄り、同地で一泊、さらに南へ向かうこと一日、西からローエンハイム騎士爵領へ向かう街道に合流する。ヨツン村から南は街道というよりも獣道に近く、幅もニm程度しかないが、西からの街道は幅四mと広く、馬車が多く通るため、それなりに整備されているようである。街道のすぐ傍が森ということではなく、ある程度は伐採されているというだけであるが。


 ヨツン村を出てからは野営が続くが、ソーマは土メイジとして土壁を設置、馬と人の安全を優先していた。季節は二月で、もっとも寒い時期ではあるが、風を避けることも出来、それなりに過ごしやすいといえた。帰路にも利用できるため、翌日以降も残しておく。むろん、他人が利用しようともかまわないが、一応、サザンクロス商会のエンブレムは土壁に刻んでいる。


 やはり、気温が低いせいか魔物はそれほど多くはない。魔物の中で気温が低くても活動しているのはゴブリンと飛ばない蟲系だろうか。オークはほとんど見ないので、皆北に移動しているのかもしれない。ただ、ソーマが知らないだけで、気温の低い南部に特化した魔物もいるという。とにかく、食用肉となるジャンピングラビットや雷鳥に似た鳥のライバードは狩ることにしていく。


 東へ向かう街道を二日ほど東進すると、川を渡ることになる。セーラによれば、川を渡れば、そこからはローエンハイム騎士爵領だという。川を渡るときには衛兵がいたが、それ以降はのどかな田園地帯といえた。このあたりはそれほど魔物が現れないのだろう。小麦畑や幾種類かの野菜畑が広がっていた。いわば、丘陵に守られた地域で、水際で魔物を討伐しているからか、あるいは川が魔物を寄せ付けないのか、理由はわからないが、この辺りはのんびりとしたものであった。


 ソーマとしては、リント村の規模を拡大し、東西に馬車で二日、南北に馬車で一日といった感じを受けた。ただ、北へ向かう街道と東へ向かう街道の分岐点から、馬車で二日の間に街がないのが不思議に思われた。そのあたりに街を興せば、より安全性が増すだろうと思えるからである。


「領主様は街を興す考えのようなのだけれど、開拓民が集まらないのです。多くの人は安全な地域に住みたがるようで・・・」

「そうなんだ。領地内から出ないのなら、他の領地から集めれば、と思うのだけれど」

「それが難しいらしいです。他所から人を入れると、治安悪化の原因になるとかで」

「ああ、それは考えられますね」

 ソーマはセーラと話してそう思った。ちなみにローズとヒルダは馬車の後部からヨッヘンの荷馬車の左右の森を監視しているし、ブライトンは彼らのすぐ後ろから馬車の前方を監視していた。


 ローエンハイム騎士爵領へ入る衛兵の詰所を通るとき、ヒルダとブライトンはフード付きの外套を羽織り、顔を見えないようにしていたので、ソーマは彼らがローエンベルグを避ける理由がかなり深刻な理由だと判断していた。それでも、相手から話があるまでは自分から聞くことはしないと決めていた。ちなみに、セーラとローズは普通にしていて顔を隠すことはないので、不思議に思っていたのは事実だった。


 ニュルンを出て五日目の夕方、彼らはローエンベルグの街に入ることとなった。街壁に囲まれた城下街とその外側に広がる門前街とで構成されており、かなりの人口を抱えている街だと考えられた。宿は予定では城下街に取る予定であったが、ブライトンの希望で門前街の中堅クラスの宿を取ることとなった。むろん、風呂と朝食付きで探したため、一泊八十マリクという値段であった。ニュルンでは上級の部類に入るクラスの値段であった。


 翌日から街の中心部にある商業エリアで所要を済ませるというヨッヘンと別れ、<サムライ>のメンバーは北に馬車で半日の距離にあるノイエベルグへと向かった。出発まで三日間という時間が出来たからである。北に向かったのは、塩湖や開拓村について調べるためでもあった。ソーマとしては塩を多量に簡単に採取できるなら商売として成り立つだろう、とヨッヘンとの会話により、調べることにしたのである。それと、ヒルダとブライトンがあまりローエンベルグに居たくなさそうなので、少しでも離れたところのほうがよかろう、との判断でもある。


 ノイエベルグはニュルンを少し大きくしたような街で、北門から先は魔境だとされており、低ランクの冒険者が多く居るようであった。というのも、冒険者ギルドが賑わっていたからである。薬草採取など結構依頼があるようで、ニュルンとは比べ物にならないほどであった。討伐依頼も、ジャンピングラビットやプレーリーラット、芋虫の魔物である、ジャイアントワームなどの害獣がほとんどで、ゴブリンやオークの討伐依頼は少ない。もちろん、季節柄ということもあるだろう。


 ヒルダによれば、晩春から初秋にかけての暖かい時期にはゴブリンやオーク、蟲系の討伐依頼が増えるようである。そして、魔物討伐依頼の多くは魔境と西へ向かう街道沿いで多いという。丘陵に囲まれているといえる領内ではあまり魔物は居ないのだという。とはいえ、真夏でも二十五度を越えることは稀なこの地域では、ニュルンなどと比べると魔物の数は少ないようで、それこそ、三日かけてオークが一匹ということもよくあるらしい。


 ソーマはセーラやローズに、魔境の隠れ里や塩湖について調べてもらうことにした。といっても、冒険者ギルドやこの街に古くからいるだろう高齢者に聞き取りを頼んだのである。ヒルダとブライトンにはこの街に拠点を置いて活動する冒険者に当たってもらう。むろん、どちらもサザンクロス商会の名前を出してもらっている。そうすれば、ただの冒険者として聞き取りを行うよりも情報が得られると考えたからである。


 結果からいうと、隠れ里は東北部や北部に数箇所あるらしいが、ここ何年間は接触もないということらしい。二十年前にはギルドに対しての依頼もあったようだが、あまり効果がなかったのか、それ以後はないらしいという。その依頼とは集落周辺の魔物討伐と柵の設置だということである。


 なかでも、ソーマが興味を持ったのは、東北部の草原には馬とも山羊とも違う四足動物がいて、人を襲わないというものだった。姿形を聞く限りは牛のようで、名前もバファローというらしい。もうひとつは同じく、四足動物だが、鱗をもつもので、単に地竜といわれるものが多数生息しているというものである。人を襲うことは無いが、肉食だといわれている。最後に、北の丘陵を越えた先にある森を越えると道のようなものがあるということであった。


 それらはソーマの注意を引くものであったようだ。この依頼期間中には無理であろうが、依頼とは別にこの街に長期滞在して調べたいと思ったようである。それが端的に現れているのは、<サムライ>の打ち合わせで、今度は長期間、できれば半年くらい滞在して調べたい、という発言にあっただろう。セーラとローズは賛成したが、ヒルダとブライトンは反対に回ることとなった。もっとも、ローエンベルグには一切向かわないということで、消極的賛成を得ることが出来たのは幸いだったといえる。


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