装備再確認
早く書けたので、投稿します。
ソーマが<フォースター>のメンバーと話しているとセイシェルが査定が終わった旨、伝えてきたため、ヘンリーに断り、セイシェルの待つカウンターへと向かった。
「ソーマさん、お待たせいたしました。まず、依頼達成についてですが、ゴブリンの集落壊滅というのはソロであれば、Bランク相当の依頼になります。また、パーティであればCランク相当の依頼になります。ですが、今回は当初からゴブリンの集落壊滅が目的ではなく、偶然ということで特別に依頼を達成された扱いになります。よろしいでしょうか?」
メモを見ながらいうセイシェルの顔はなんともいえない複雑な表情をしていた。
「はい」
「それでは続けます。まず依頼達成の報酬が一万マリクになります。そして、素材の買取ですが、魔石や宝玉などで五万千二百五十マリクになります。そして、冒険者カード拾得が千五百マリクとなります。なお、装備品については五日ほど時間をいただきます。ということで、合計六万二千七百五十マリクとなります。よろしいでしょうか?」
「はい、結構です。ちなみに、冒険者カードのランクは教えてもらうことは可能ですか?」
ソーマとしては高価な装備であるが故にそのランクが気になっていたのだ。ランクが高ければ、ゴブリン程度に後れを取るはずはないだろう、そう考えていたからだろう。
「それくらいなら可能です。Cランクが一人、Dランクが二人です。どういった状況でゴブリンの集落にあったのかは不明ですが、おそらく、ゴブリンがどこかで拾得したものと考えられます。この五年間、ニュルンで三人が依頼を受けた形跡はありませんので」
「ありがとうございます」
なるほどと納得したソーマである。
依頼を受けた形跡が無ければ、別の場所で依頼を受けたか移動の途中だったのかもしれない。それに、Cランク一人、Dランク二人のパーティなら、ゴブリンごときに遅れを取ることはないはずだからである。仮にソロであったとしても、それは同じであろう。
「それでは、こちらが今回の報酬になります。ご確認ください」
そういって、セイシェルはトレイを押し出してきた。金貨が六枚、銀貨が二枚、赤銀貨七枚、白銅貨五枚が載せられていた。
「確かに」
そういって硬貨を受け取る。
「お疲れ様でした」
セイシェルの言葉を背にソーマはカウンターを離れ、ヘンリーたちの元へと向かった。
その後は<フォースター>のメンバーと共に<金色竜翁亭>へと向かう。彼らは二日ほど街に滞在するとのことで、今夜はゆっくりと過ごすらしいのだ。ローズたちとは冒険者ギルドで別れている。彼女たちは残り二人のメンバーと合流してパーティとして活動を再開するということだった。
<金色竜翁亭>への道すがら、ヘンリーから以前紹介してもらった武器屋の主人が帰っていると聞いた。街の入り口で一緒になったとのことである。ソーマとしても、六日間活動したので、明日は休息に当てる予定であったので、武器屋を尋ねることとした。というのも、<脇差>の状態があまり良くないので、相談するつもりである。この六日間でそれなりに稼いでいるので、特注で刀の製作を依頼するのもありだな、と考えていた。<一期一会>があるとはいえ、長すぎるため、森の中では使えないので、<脇差>と同じか、若干長めの刀がほしいと思っていたのである。
ソーマ自身はオーソドックスな両刃の両手剣で剣を学んでいたが、冒険者になってから刀を使い続けているためか、いまさら、両刃の両手剣での討伐など考えられなくなっていた。特に、ソーマを刀に傾注させたのが、その斬れ味だったようだ。両刃の両手剣は斬るというよりも叩き切るものなので、体力が必要なのだが、刀ではそれほど体力を必要としていなかったのも理由のひとつであったようだ。
その日の夕食は<フォースター>のメンバーと一緒に取ったが、いろいろな情報が入手できた。特に周辺状況を知ることができたのはありがたいことであった。これからの依頼の受け方に一定の方向付けができるからである。この席で、ソーマは自身が魔法剣、とりわけ、氷剣を使えることを話している。
翌日、少し頭痛のする体調で、ソーマは武器屋を訪ねた。結局、昨日は彼にしては多量の酒、ワインだったが、を飲みすぎたのだった。最後はキャロルとマゴットが止めてくれたが、そうでなければ、今日は二日酔いで動けなかったかもしれない。とはいえ、悪い酒ではなく、楽しい酒だった。貴重な経験ができた、そう考えているソーマだった。
武器屋、名を<セオドア武具工房>という、に着いて、店内に入ると、先日対応してくれた奥さんがカウンターにいたので、ご主人と話をしたいのだが、と伝えると取り次いでくれた。しばらく待つと、身長百五十cmぐらい、ガッチリとした体格、髭を生やした、これぞドワーフという男が奥から現れ、じろりとこちらを睨むと言った。
「わしがセオドアだが、お前が剣とナイフを買ったそうだな?」
「はい、ソーマといいます」
「まずは剣とナイフを見せてみろ」
ふん、と鼻を鳴らしていう。結構気難しい性格なのかも知れない、そうソーマは思ったようである。
「これです」
言われたとおり、カウンターに<脇差>とナイフを置く。セオドアはまずナイフを手に取って抜き放つと、一分ほど角度を変え、向きを変えて見つめる。少し、表情が和らいだように思われた。ナイフを鞘に戻した後、今度は刀を抜き放つとチラッと見て鞘に戻した。そして言い放つ。
「よく手入れしているようだ。ナイフには何の問題もない。まるで新品のようだが、剣はかなり痛んでいるな。どうすれば六日ほどでここまで痛むのかわからん!」
「はあ、実は魔法剣を使います。もっぱら氷を纏わせますが、炎や水、風も使います」
それを聞いたセオドアは驚愕の表情を浮かべる。魔法剣の使い手自体が珍しく、さらに四種類も使えることに驚いたのだろう。
「なんじゃと! 属性が四つも使えるというのか!」
叫ぶように大声を上げるセオドア。
「ええ、お見せできますが・・・」
「ここでは駄目だ、裏へ回れ」
そういって自ら店を出て行く。慌ててナイフと<脇差>を持って後に続く。連れて行かれたのはかなり広い庭であった。ソーマが入っていくと、やれ! というように顎をしゃくる。自身の新しい刀を造ってもらうつもりなので、出し惜しみせずに見せることにする。刀を正眼に構え、炎、氷、水、風と纏わせる。そうして、魔法剣を解き、鞘に収める。
「なるほどな、それじゃ確かに剣が痛むのも早いだろう。で、わしにどうしろっていうんだ?」
ソーマが刀を鞘に納めるのを見届けるとセオドアは言った。
「主に使うのは氷と風ですが、普通の刀としても使用できる刀を造っていただければ、と思い、今日は相談に来ました」
「判った。詳しくは中で聞こう」
そういいながら店に戻るセオドアについていく。そうして、カウンターを挟んで向き合い、ソーマは求めるものをいった。
「刀身が六十cm、幅は根元が三cm、厚みが六mm、反りが三cm、柄の長さが二十五cmで、鍔は今と同じものだな?」
ソーマが希望するものをいったものを書き記したメモを見ながら確認を取る。
「そうです。使用頻度は魔法剣として六割、剣としては四割ぐらいになります」
「材質などはこちらで決めさせてもらう。仕上がりまで三日ほどかかるぞ」
「はい、お願いします。それと、前金として一万マリク置いていきます。後は仕上がってからということでお願いします」
そういって金貨一枚をカウンターに置く。
「承知した。もう一度剣を見せろ」
そういって右手を出す。<脇差>を渡すと鍔と柄を時間をかけてみていく。五分ほどしてソーマに刀を返すと、話は済んだとばかりに金貨を持つとさっさと奥へ歩いていった。その背中に一礼してソーマは店を後にしたのだった。
ちなみに、すべてのドワーフ族の鍛冶師が刀を造れるわけではないという。刀は材料を熱しては叩くという繰り返しなのだそうで、短期決戦だというのである。短い時間に幾度も叩いては折り返し、の繰り返しだという。例えば、一日で十回折り返した刀と十日で十回折り返した刀では、前者のほうが強度があり、斬れ味も増すというのである。この世界ではそういわれているようである。そして、幸いなことに、セオドアは過去に三度刀を造ったことがあるという。これは、ソーマがセオドアの信頼を得た後、セオドアから聴いた話である。




