表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

怖くないですか?

作者: 安浦

これは絶対冗談だろうなって思った。


「…松永優乃」


そうじゃないなら何かの罰ゲームとか。


目の前にいて、私の名前をフルネームで呼ぶのはヤンチャグループに属する藤枝斗和だ。


私はただ、怯えて体が震えそうになるのを必死に耐えていた。


「連絡先教えて」


今まで話したことすらない私に、藤枝斗和はストレートに私に用件を伝えてくる。


「え…藤枝くん…な、何で?」


何でなんて、聞くのさえ勇気がいったけれど、聞いてすぐに後悔した。


だって。


「何で?って何で?」


そんなことを言う藤枝斗和が単純に怖かった。



「連絡先教えてほしいんだけど」


「………」


「教えてほしいんだけど」


真っ直ぐに私の目を見て、そう良い続ける藤枝斗和に私は少し揺れ動いてしまった。


「…いい…けど…」

「けど?」


けど…。

疑いの気持ちでいっぱいの私は、連絡先が悪用されるのではないかと、不安で仕方がなかった。


だけど…。


「わ、わかりました」


私はポケットから携帯電話を取り出した。


「…はい」


そう言って藤枝斗和を見上げると、あの強面が優しく笑ったように見えてしまった。


「ありがとう!」

「う、うん」


なんか少しだけイメージが違って見えて。


「あと、俺のこと斗和って呼んでいいから」

「え?!」


意外にも社交的な藤枝斗和にギャップを感じてキュンときたのは事実。


「優乃、今日連絡するから」


そして、急に距離を縮めてきた藤枝斗和を嫌だと思わなかった。



自分のクラスに帰っていく藤枝斗和をじっと見ながら、私はボソッと言った。


「斗和…くん…」


なんだこれ。


何で私のアドレス帳に藤枝斗和の名前があるんだ…。


「変なの」


その直後から私は携帯電話を気にするようになる。





その日の夜、気にしていたものの携帯は鳴ることはなく、眠りについた。


何だ。結局連絡しないんだ。

やっぱり、冗談で聞いてきただけなんだと少しだけ苛々していた。


苛々しているせいか、なかなか寝付けずにいたとき、突然電話が鳴った。


私は驚いて、心臓がドキドキしていた。


「こんな時間に誰よ…」


知らない番号が表示され、私は恐る恐る電話に出た。


「もしもし…」


一瞬の間。


すぐに、電話の主が誰かわかった。


『もしもし…俺、斗和だけど』


私は、受話器越しに聞こえる低い声に少しだけドキドキして、ベッドから起き上がった。


『遅くにごめん。寝てた?』


真っ暗な部屋で藤枝斗和の声が心地よい。


「だ、大丈夫!まだ起きてたから…」


何故だか緊張して、無駄に毛布を力強く握ってみたりする。


『メールしようと思ったんだけど、何か上手く‥』

「え?」


上手く‥。

文章が浮かばなかったと言いたい…とか?


ますます私は毛布をギュッと掴む。


『だから、遅くなって』

「うん…」

『今日連絡するって言ったし』


私がイメージしてた藤枝斗和と違うかもしれない。


『優乃は何してた?』


「漫画読んでた…」


まだお互いに手探りで、言葉を選びながら話しているのに、それが嫌だと感じない。


『…じゃあ、また明日。学校で』

「うん。また明日…」

『じゃあ。おやすみ』

「おやすみ…」

『………』


しばらくの沈黙。なかなか電話を切らないでいる。


「斗和くん?」


『あ、ごめん。おやすみ』


私は、自分から電話を切った。

何故だろう。ドキドキして上手く寝付けない。


「何で?!」


私は一人呟き、頭まで布団を被った。




翌朝、寝不足なまま学校に向かう。



斗和くんとはクラスも違うからか、そんなに会うこともないはず。


なのに、今日に限って偶然廊下に会ってしまった。


昨日電話したせいか、少しだけ恥ずかしくて気まずくて。


緊張しながら、声をかけようとしたときに、斗和くんが私に気付いて、ゆっくりと私の元まで歩いてきた。


「おはよ」


斗和くんは、少しだけ私から視線を外した。


「おはよう」


自然と二人で教室まで向かう。

昨日まで、絶対にそんな状況は有り得ないと思っていたのに。


「じゃあまた」

「また…」


私の教室に着いてしまい、私は斗和くんに軽い会釈をした。


「あ!優乃。今日メールしていい?」


私はその言葉にコクリと頷いた。


胸が高鳴って、苦しくなるのがわかった。


その夜も、斗和くんは約束通りメールをくれた。


それから毎日、多くはないけれど、メールをするようになっていた。


最初の頃の疑いを持った私はどこへ行ったのか。


疑うどころか、好きに…。


「あーー!!」


私は恥ずかしくなって、大声を出して想いを掻き消した。


まさか…。


でも斗和くんは?

斗和くんは別に、私に好きだと言ってくれるわけじゃない。


そんな気持ちのまま、メールのやりとりが1ヶ月半程続いたときだった。




放課後、ごみ捨て当番の私は教室に1人残っていた。


「疲れた」


誰もいないしんとした教室に、私の独り言がやけに響いて感じていた。


なんとなく携帯電話を見てみる。


なんとなく受信メールを見返す。


私の受信ボックスは斗和くんでいっぱい。


「…好きなのかな?」


斗和くんは私をどう思っているのかわからない。


メールはするけれど、ただそれだけ。


斗和くんの本心が読めない。


私はボーッと携帯電話を眺めていると、誰かに呼ばれ、私はドキリとした。


「優乃?1人で何してんの?」

「と、斗和くんこそ」


斗和くんは私の教室に入ってきて、私の隣の席に座った。


ヤバい。まただ。

…胸が痛い。


教室も廊下も静かで、斗和くんが椅子を引いた音がすごく響いていた。


「私はごみ捨て当番で残ってたんだけど‥」


「俺も。偶然」


メールと違う。

すぐに返事が返ってくる。


無言状態が続いて、心臓の音がどんどん早くなっているのがわかる。


帰るに帰れなくて。

話も上手く出来なくて。


緊張しながら、チラリと斗和くんを見たら…。


「優乃」


斗和くんは頬ずえを付きながら私を見ていた。


「は、はい…」


緊張のあまり、何故か敬語になる私。


「…好きなひといる?」


夕陽に反射して、斗和くんのピアスがキラキラして見える。


息が詰まりそうで、思うように言葉が出てこない。


「…えっと…」


私が言いかけようとした時に、斗和くんがそれを消した。


「今のなし。冗談‥」

「冗談…」


動揺する。

私はつい、持っていた携帯電話を落としてしまった。


「あ、落ちた」


携帯電話は斗和くんが拾って渡してくれた。


「優乃?大丈夫?」


何かプツリと糸が切れたような気がして、私はじっと斗和くんを見て言った。


「斗和くんは何で私に連絡先聞いたの?」


ずっと知りたかった。

だけど…。


「あ!今のなし…」


少しだけ怖くなってしまう。


「…なしなの?」


斗和くんの低い声。

初めて電話をした時を思い出す声だった。


「普通、男なんて下心なしで連絡先なんて聞かないでしょ」


心が震える。


「好きでもない人に毎日メールなんてしない」


どうしようもないくらい。


「…優乃は違うの?」


斗和くんの言葉は破壊力半端ない。


静かな教室で私の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかって思うほどに。


「優乃さ、最初めっちゃ俺のことびびってたでしょ?だから…」


少しずつ近付く心地よい声。

斗和くんは私の目の前に立っていた。


「好きって言ったら、また友達にもなれなくなるんじゃないかって思ってた」


嬉しさと恥ずかしさで、私は斗和くんの顔を直視出来ない。


「ねぇ優乃」


斗和くんの声に私はゆっくりと顔を上げた。


「ずっと好きでした。俺と付き合ってください」


深々と頭を下げて想いを伝えてくれた斗和くんに、私の答えはひとつしかない。


斗和くんが大好きです。



最後まで読んで頂きありがとうございます!!

男性の本心はわかりませんが、好きじゃない人と毎日メールなんてしないでしょ!?と思っています(--;)

何故、斗和は優乃を好きになったのか…を次は書いてみたいと思います!

ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ