第3話 その3
鞠真たちの様子を映すモニタの上部には、キリカたちからの着信を示すウインドウが出ているが、天使はどうでもいいような様子でただ、闇の化物と化した美恵を興味深そうに見つめている。
人間界、美恵の部屋の上空。
キリカがコンパクトのような道具で天使に連絡を取ろうとしているが、天使は一向に出ない。
狼狽しているキリカ。
「どうする…どうするよう…星加!?天使様出ないよう…アイツ…とんでもないよ…」
「…私達じゃあ…勝てない」
「グワァァァアアアアア」
大気を振動させる程の咆哮が真下から聴こえた。
美恵の部屋、今は七色の別空間。
咆哮と一緒に美恵の叫びが脳髄に直接響く。
『優馬さあああん!優馬さああん!どうして死んじゃったの!!!』
「美恵さん…」
私には化物が泣いているように見えた。
「?!」
突如大熊が真上に何か見つけたような素振りを見せる。
刹那、飛び上がり七色の天井を突き破った化物は一瞬で星加の真後ろに立ち、背中側から星加の腹を鋭利な爪で抉り、突き破り、血しぶきが正面にいたキリカにふりかかる。
ゆっくりと腕を抜き、もう魔法では浮くことも出来ずに真っ逆さまに落ちていく星加。
対峙する化物とキリカ。
「うわぁぁああああああ!」
絶叫と共に杖で大嵐の剣をつくり、化物に斬り掛かるキリカ。
そのキリカを大きく振りかぶった爪で一撃の元に切断する化物。
切りつけられたキリカはまるでボールのようにそのまま地面に叩きつけられ、弾んで、転がり、塀に当たり、動かなくなった。
キリカの周りに血の池が出来ていく。
「グォオオオオオオオオ!!!」
『優馬さああん!優馬さああああん!!』
七色の天井を壊し、さっきの魔法少女二人を一撃で倒し、その空で咆哮する美恵を、変身する事も忘れて、鞠真はただ見ていた。
「虹の卵でも抑えられないなんて…どうすればいいの…変身したって魔法も使えないんじゃ…」
美恵が手当てをしてくれた、右腕の包帯。
天界。
モニタ前の天使がゆっくりと呟く。
「まずは戦闘力のある、上の魔法少女から削除した…ってことなのかしら、それなりに知性もあるのね…」
化物が上空から鞠真をターゲットに見据える。
変身もせずに生身で杖だけ構える鞠真。
『駄目だ…殺される!』