4話
「別に俺も連れてかなくてもよかったんじゃないっすか…?」
遙斗が不満そうに言う。早く帰りたいのだろうが、幸斗がそんなことを許すわけもなかった。
「えー、それしたら面白味が減るじゃん?だから諦めてね?」
遙斗は笑顔で言う幸斗に恐怖を感じ、一言も出なかった。
「…ノート買うだけなんですけど…あと私1人で帰れるんですけど…」
ブツブツと文句を言っている風琴。遙斗はそんな風琴の頭を撫でるのだった。
「じゃあ僕じゃなくて遙斗に送ってもらうか!」
何言ってるんだこの人、というような目で見る風琴。遙斗は飲もうとしていたコーヒーを吹いた。
「ちょ、誰が送りますか!?第一、俺徒歩通ですよ!?無理に決まってるじゃないっすか!?」
少し頬を赤らめながら言う遙斗。幸斗はそんな遙斗をニヤニヤしながら見るのだった。風琴は気づいてはいないのだが…
「だって僕より遙斗の方が阿藤さんも話しやすいと思うし?まあ、徒歩通だから無理か!」
幸斗は遙斗を挑発するように言う。遙斗はわかってはいるのだが、ついつい反応してしまうのだった。
「…そこまで言うなら…俺が送りますよ!!」
と、こんな調子でのってしまうのだった。
「…いや、1人で帰れるんですけど…」
虚しくも風琴が言っていることは2人にスルーされてしまったのだった。
由奈と伊緒里は電車に乗った。この時間は比較的人が少なかったので、特に気にすることもなく由奈の最寄駅についた。2人は改札口を出て、由奈の家に向かった。
「すみません…送ってくださらなくてもよかったんですよ?」
「いいのいいの、女の子1人で帰るのは危ないじゃん?だから気にしないで〜」
由奈が謝ると、伊緒里はヘラヘラと笑った。由奈は伊緒里の隣にいるとき、少し胸が高鳴るのがわかった。だが、それがなんなのかはまだわかっていない。風琴に相談したところ特に病気ではないと言われたので安心はしているのだが…
他愛もない話をして歩いていると、由奈の家に着いた。
「先輩、私の家ここなのでもう大丈夫ですよ」
由奈は家の門を開ける。そして伊緒里に振り向いた。
「そっか…じゃあまたね〜瀬川さん」
「はい、また次の生徒会の時に」
由奈は伊緒里が見えなくなるまで家の中には入らなかった。
2人とも、もう少し一緒にいたかったと心の何処かで思っていたのだった。
ありがとうございました!