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1話

由奈は気づいてしまった

自分が伊緒里に恋をしているということに

そしてそれに戸惑っている自分がいることに…
















もう9月下旬だというのに暑い日々が続く今日この頃。つい先程まで大きな2大行事の1つ、体育大会が終わり、ここ桐渓(きりたに)学園高等部生徒会でも少し落ち着いた雰囲気になった。

「皆お疲れ様!3人とも初めての生徒会の仕事だったけど大丈夫だったかな?まあ疲れたと思うから今日は早めに帰れるようにしよう!」

今年の生徒会メンバーは5人。内3人が1年、2人が2年だ。本来なら3年もいるのだが、今年の3年は外部受験をするらしく、行事で忙しくなる時期が2学期になってしまうため、既に辞めている。

「早目にというか今すぐ帰りたいよ〜…帰っていい?」

緊張感がない声がする。副会長の戸口伊緒里(とぐち いおり)だ。伊緒里はどちらかといえばサボり魔だ。

「えーw伊緒里、少しくらい我慢してくれw」

早目に帰ろうと言い、そして伊緒里に我慢するよう言ったのは会長である那夜星幸斗(なよせ ゆきと)だ。この2人は初等部からのエスカレーター組で親友らしい。らしいというのは幸斗がそう言っているだけだからだ。伊緒里がどう思っているかは誰もわからない。

「えー…じゃあ後でなんか奢って〜」

超マイペースな伊緒里だが、やる時はやる、と有名らしい。意外と成績もトップクラスだとか…

「幸斗会長、会計の仕事終わりましたー」

少し高音に近い低音が聞こえる。会計の風宮遙斗(かぜみや はると)だ。沈着冷静でこの中で1番の常識人…と思えるかもしれないが、遙斗の頭の中は自分の趣味のことでいっぱいいっぱいだ。ちなみに中等部からこの学園には通っているらしい。

「遙斗お疲れ〜じゃあこっち手伝ってー」

どちらかといえば幸斗もマイペースな部類に入るだろう。本人は否定しているが。

「うぃーっす」

「この集計よろしく!俺はゲームする!」

自分の仕事を遙斗に任せようとする伊緒里。そんな伊緒里の頭を幸斗が持っていた本で叩く。

「こら伊緒里。サボらない!そんなんじゃ瀬川さんに負担かけさせるでしょ」

「えー…まあ瀬川さんの負担増やしちゃダメだよねぇ…じゃあ幸斗やろうぜー」

「阿呆。これから瀬川さん達を手伝いに行かないといけないから無理」

バシッと切り捨てる言い草の幸斗。この2人はいつものことだ。本当に気の知れた友人だということがわかる。

「じゃあ俺が代わりにそっちいくからさ!それならいいだろ?!」

どうしても大人しく座って仕事をしたくないらしい。もう食い下がらないだろうと幸斗は判断し、半分呆れ顔で頷いた。

「いいよ…でも2人の負担を減らしてくること。あ、阿藤(あんどう)さんには戻ってきてもらって。集計関係は彼女の得意分野だから」

「りょーかい!じゃ、ちょっくらいってきまーす」

少し騒がしかった生徒会室が伊緒里が居なくなったことによって静かになった。







伊緒里はグラウンドに向かって走っていた。全速力で。普段はあまり体を動かしたりするのは好きではないのだが、今日はなんだか動きたい気分だった。おそらく今日の体育大会だったからなのだろう。

「瀬川さあああああん!!!!!」

グラウンドの真ん中あたりで片付けの指示を出していた由奈(ゆな)やその周りにいた人々はびっくりして全員が一斉に伊緒里を見た。そしてさっと由奈は全員に指示を出し、伊緒里の元に駆け寄った。

「戸口先輩!?どうされたんですか?」

予想もしてなかったのであろう。由奈は伊緒里ではなく幸斗が来ると聞いていたのだから。

「幸斗の代わりに来た〜。あ、阿藤さんは生徒会室に戻ってきて欲しいらしいよ」

由奈の後から走って来た風琴(ふうき)を見て言った。

「あ、はい、わかりました。由奈ちゃんまた後でねー!」

「うん」

この2人こそ、残りの生徒会メンバーである瀬川由奈(せがわ ゆな)阿藤風琴(あんどう ふうき)だ。由奈は副会長、風琴は書記。2人は高等部からの外部受験者だ。この学園の中等部は男子校となっているため、女子が高等部に上がる時外部受験を行う。もちろん女子の人数は少ないのだが。ここの学園は進学校で偏差値も68を超える名門校の1つ。その学園に入学できるだけでもすごいことらしい。そして首席と次席で入った風琴と由奈に生徒会に入らないかという白羽の矢がたったのだった。


「てっきり幸斗会長が来るのだと思っていました…戸口先輩、また事務作業飽きたんですか?」

由奈はどちらかといえば大人しい方の部類に入るだろう。そして最近では伊緒里の行動がわかるようになってきたように思える。

「あ、バレた?」

伊緒里は最近自分の行動を当てることのできる由奈に対して、あまり嫌な気分にはならなかった。むしろ、嬉しいとたまに思うことがある。それがなんでなのかはまだ伊緒里はわからないが…

「はい、最近戸口先輩の行動がわかるようになりました」

くすっと笑いながら言う由奈。傍から見れば付き合っているのではないかと思えるらしいが、この2人はこれが通常運転だった。

「やることさっさとして、帰ろっか!」

「はい!」

2人は話すのをやめ、グラウンドの片付けに集中することにした。











お読みくださり、ありがとうございました。

よかったら次話もどうぞ。m(_ _)m

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