SecondStage 店長見習い時代編 感覚で見えたもの
発注をはじめ、しばらくすると、なんとなくの感覚が見えてきた。
絶対に無いと困るもの=無ければ客が怒る=基本アイテム
あったら喜ばれるもの=無くてもいいけど=プラスアルファアイテム
目玉になるもの=話題性だけのもの=新商品
といった感じで、基本アイテムだけは、絶対に切れてはいけないから、
そこは多めに注文し、最悪の事態に備えておかなければいけない。
プラスアルファの多くは、本部からの推奨品であったりすることが多い。
目玉品になる新商品が、結局、問屋からの自店仕入れに頼るしかない。
という具合に、商品ごとのポジションがあることが感覚的に見えてきた。
例えば、ラーメンでいけば
どん兵衛・UFO・カップヌードルは、基本アイテム。
そこに何を足していくか。
例えばお菓子でいえば
チップスが、ポテトチップスはかルビーと湖池屋の両方が必須で、
おかきが、ぼんちあげ・ぽたぽた焼・ハッピーターンあたりが必須。
雑貨は、特に基本というよりも、棚ごとに、揃えるだけで、目玉品として
の新商品があっても、さほど動かないので、あればいいね程度の棚にしか
見えない。
お菓子・レトルト・ラーメン・パン・弁当が動きの中心であり、そこで、
どう店の特徴を活かした品揃えができるかが、売上げを引っ張る元になる。
雑誌は、週刊誌の発売日には人が集まってくるのを見れば、確かに客寄せ
であるが、立ち読みも多いのが正直なところで、利幅を考えても、あまり
うまみは無いのだが、無いと困るのも現実で、特に、ジャンプやマガジン
などは、1冊でも多く並べれるように、毎週毎週、仕入れ交渉をするべき
である。交渉しないと、放置プレイにしていると、自動振り分けで、最低
数しかまわってこないから、即品切れになり、信用を失いやすい。
感覚がつかめてくると、実際、自分の仕入れ感覚で売上げが左右する現実が
面白くて仕方なくなっていった。
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そんな感じで日々をすごしていった俺。
ある夜の出来事。
それは、店長が完全に辞めた日から、ちょうど、半年くらいした頃。
深夜勤務していたところに、本部のSVがやってきた。
この店で、働いてかなり経過していたのに、初めて会ったSVだった。
[店長!お疲れ!]
はい?あなた誰っすか?
[本部のSVです。今日は店長に仕入れの件で話があって・・・]
えっ?まだ見習い店長ですが・・・
レジ前で、そういった簡単な挨拶をしたSVさんは、最初から厳しい口調で、
いきなり話をし始めた。
[本部としては、今の自店仕入れを辞めて欲しいんだ!]
えっ!それを俺に言われても・・・
[チェーンとしてルールがあるんだから、守って欲しい!]
けど、オーナーがいいって・・・
[本部注文が基本で、緊急的に自店仕入れは認めるってのが基本]
毎週、大量に仕入れてますね、うちは。
[店長になってから、確かに売上げは上がってるけど、自店仕入れも増えた]
自店仕入れ分が売上げを引っ張ってますもん
[だからといって許されない!]
それはオーナーに言ってくださいませ
[今日は、店長として名札と名刺を渡しにきた]
おおおおおお!!
[いい機会だから警告!自店仕入れをやめなさい!それが本部の意思です]
それはオーナーに言ってくださいませ。
そんなやりとりがあったのだが、店長と書かれた名刺と、名札にしか頭が
いっていなかった俺としては、自店仕入れを辞める気も無ければ、初めて
会ったのに、いきなりゴチャゴチャ言われたので、このSVは苦手な存在の
人として位置づけされてしまっていた。
だから、つい暴言を・・・
「だって、売れてるし、客も喜んでるし、どこよりも早く並んでるって
お客さんが増えた現実があるんだから、結局、本部の商品に魅力が
無いから、そういう事になるんでしょうが!仕入れに関しては、確かに
買いに行ってるのは俺だけど、オーナーにも前の店長にも、それが基本
っていわれてるし、それを代えるのであれば、まず、俺じゃなくて、
オーナーと話し合いが先でしょうが!」
そう言った瞬間、SVさん、かなりブチ切れて
[店長!以前がどうとか関係ない!今は私が担当SVであって、担当の指導が
絶対なのがチェーンであることの基本!チェーンから脱退するって話だったら
仕方ないが、チェーンでありたいのなら、他店に迷惑かけないよう自店仕入れ
をやめ、本部一括仕入れにしろ!それが今日の警告だ!]
ほうほう、それで?
俺に言ってもむだでしょうに・・・
[来週中にはオーナーとも話しするが、自店仕入れは罰則対象だから、これは
キッチリ対応してもらいますから!]
とか、俺に言われても・・・
俺が契約してるわけではないし・・・
延々1時間の説教ののち、SVさんは帰っていった。