SecondStage 店長見習い時代編 自分の意思で
深夜勤務明けの朝、指定された場所に車で出向いた。
そこは、コンビニに並ぶ商品のほとんどが揃う業者用の流通センターで、卸問屋
の集まる場所だった。
数分待った頃、店長が現われた。
[わりぃわりぃ]と笑顔で近づいてきたかと思えば、おもむろに、自分の車から
やたらでかい台車を出してきた。
[さぁ行くぞ!]
ってか、ここで何をするんだよ、台車まで持って・・・
わけがわからないうちに、台車を押す係に任命された俺は、ただただ、黙って
店長の後ろをついていった。
[あのさぁ、うちは、一応、大手チェーンだから、基本は、本部に商品を発注
するじゃん。けど、特別条件があってね、自店で仕入れて並べることができる
んだよ、だから、こうやって、仕入れにきてるんだ、これが俺の仕事]
ああ、それで夜中に荷物を持ってきてたんだ!と初めて知った。
[ここで、自分が気に入った商品を値段交渉して、仕入れて売る。売れたら
ラッキー、売れなかったら最悪。そんな感じ]
そんな感じって・・・
[お前は、すでに、売場の商品をあらかた覚えているのは知ってる。だから、今、売場に無いもので、これ!って思うものがあったら言ってみ!!]
こんな莫大な量の中で探せとおっしゃるんですね、あなたは・・・
そう思いながら、店長の後を着いていくと、まずは、お菓子コーナーに着いた。
問屋の人達は、店長の事をよく知っているらしく、みな、声をかけてきた。
[これから、こいつが、俺の代わりに仕入れにくるから、宜しくね!!]と、
店長は、会う人、会う人に、説明してた。
俺はといえば、店長に出された課題をこなす方に頭が集中していて、ただ、商品
を見てまわるので精一杯だった。
[チェーンで営業してるとさ、基本、本部から仕入れじゃん。ってなると、発売日には、店に並んでなくて、遅れて並ぶこともあるし、本部の担当が馬鹿だったら、
売れるアイテムを見逃すって事もあるんだよ、だから、うちは自店仕入れ!]
なるほど、ある意味、理にかなってる。
けど、グロスメリットが無いので、仕入原価は高くなるのでは??
そんな事を考えながら、ただただ、商品を探していた。
すると、お菓子担当の人が、ニヤニヤしながら、俺を奥に連れて行き、今日だけ
特別に、これを5ケース売ってあげる。その代わり、いくつか買って欲しいのが
あるんだよ、と、俺に、渡したのは、ビックリマンチョコの箱だった。
確かに、毎週2ケースしか入ってこないし、販売制限がかかってて、1人1個し
か買えないから、5ケースもあれば、常連のお客さんは喜ぶよね・・・。
そう思って、その話に乗ろうとしたら、間に店長が割ってきて、
[5ケースなの?いつも10ケースくれるじゃん!新人だと思ってからかってるじゃろ!はははは]
げっ!いつも10ケース仕入れてたんかい!
店で見た記憶無いけど・・・
[ああ、10ケースね、うちじゃなくて、子供が多い、他の店に回してる]
[今度から、お前の采配で、どこに回してもいいよ]
そういうことか。
けど、俺は、自分の店しか知らないから、他にまわさないけど・・・
そんなやりとりをしながら、お菓子、レトルト、ラーメン・雑貨と周り、最後に
惣菜・弁当などのコーナーに行った。
ああ、これ、毎朝、業者が持ってくる惣菜だぁ!見たことあるわ。
そういう惣菜がいくつかあって。
ここだけで、全て揃ってしまうじゃん!って問屋だったから、結局、朝10時に
着いたものが、終わったのは、夕方4時くらいだった。
車に荷物を積んでいる最中
[次から、お前が1人で来てね!俺、マジでこれないし・・オーナーに仕入れに
行くって言えば、お金預けてくれるから、好きな物仕入れてOKだからね!!]
おいおい、もう1人立ちですかい!
いきなりすぎじゃありませんかっ!
[今日、夜勤でしょ、これ、全部、店におろしといてね]
俺の車、パンパンなんですけど・・・
こんな事、毎回するんすか!!
店長は、といえば、俺からすれば、かなり適当で、放置プレイをよくしてくれる
ので、教えて欲しくても、自分で考えろ!自分の好きにしろ!なので、結局、
全て、自分で、悩み、解決せざるを得ない、そんな感じで・・・
[これで、自店仕入れは引き継いだから、後は、本部への発注を来週から教える
から・・・そしたら、引継ぎ完了なんで、見事に君は店長だ!ははは]
いや、ははは、じゃないし。
こんないい加減な状況で・・・
まだ、バイト君に毛が生えた程度なんですけど。
そう思っていても、この人は、これ以上、教える気がないみたいだし、実際、
すでに他のチェーンに就職しているし、引越ししてるから、そう簡単にも
来ないし、当時は、携帯なんてなかったから、連絡をつけるという事が、結構
むずかしかったから、仕方ない、やるか!と思うか、無理!と諦めるかしか
選択肢がなかった。
ポジティブ系の俺は、当然、じゃぁ、なんとかやってみるし!って・・・