FirstStage アルバイト時代編 初めての夜勤
夜10時に出勤。
店内には、馬鹿みたいに客がおり、幹線道路沿いの高速道路入口付近であった
せいか、明け方まで、客足は途絶えず、なかなか休憩すらとれない感じで、
その日は、朝4時頃までバタバタしていた。
客が減った頃、店長が話はじめた。
[どうよ、うちの深夜は?]
って言われても、俺、深夜に働くの初めてだし・・・
[思ってたより客多いでしょ?]
[これから2時間くらい暇になるんだけど、朝方、パンが届くタイミングがあ
って、その時間と一緒に、客がなだれ込んでくるから1時間が戦争だよ]
そこまでして必死に、コンビニにパン買いに来るのでしょうか?
まさか、そんな方々おられるのですか?
そんな事を思ってたら。
[で、実際のとこどうなのよ?]
そう言われましても・・・
ちょうど、そのタイミングぐらいに、ガヤガヤと5人の男性が入ってきた。
いらっしゃいませ~ と声をかけたら、いきなりクスクス笑われた。
[若いねぇ~なんか意気がいいねぇ~]クスクス
はい? そういわれましても・・・
それは、店長の親戚の人と、元バイト、店長の友達が、示し合わせて、俺を
見に来たらしい。
[店長の代わりに、店長になるの、この子でしょ?]
[マジで、辞めておいたほうがいいよ、人生踏み外すよ]クスクス
いきなり、そんな事いいますか・・・・なんですか、あなた方は・・・
[店長は、身内なのに、あのオーナーの性格についていけなくてやめるんだよ]
そうなんですか。
といわれても、昨日、一瞬しか話てませんし、性格知りませんし。
[コンビニが嫌とかじゃないから、他のチェーンに行くんだよ、この人]
へぇ~そうなんですか・・・
こんな話を延々と聞かされ、2時間くらいの間の暇なひと時は、この日、愚痴
を聞く形で、終わった。
朝になり、パンが馬鹿みたいな量届いたかと思った頃。
ガヤガヤと、職人達の集団が、次から次へと、入ってきた。
[店長、おはよう!]
[今日も元気かっ!]
やたらデカイ声の集団が、次から次に入ってきて、店長!店長!と言いながら、
煙草と弁当とパンとジュースのセットを買っていった。
おそらく平均で、一人1500円の買い物だろう。
朝の6時頃から7時30分頃まで、延々、客は続き、そのたった2時間弱の時
間で、30万ほどの売上げを作った。
この店は、50万の売上げの店で、この時間だけで、30万売る。
なんてこった。と思いつつ。
眠くなってくる明け方に、こういう客の相手をすると、完全に目が覚め、仕事
の終わる引継ぎ時間の8時なんて、あっという間だった。
その日の朝。
店長と、友達5人は、そのまま車で朝メシに行く!と出かけていったのだが、
初日という事で、俺は、帰宅した。
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朝、自宅に帰ると母が待っていた。
そりゃそうだろう、気になって仕方なかったのだろう。
いつもより遥かに豪勢な朝ごはんが食卓に用意されており、話を聞くぞ!という
体制で、待ち構えていたから、昨夜の出来事すべてを話しした。
母いわく。
[別にそのオーナーがどうであっても、1年したら、チェーン本部に正式に就職
できるんでしょ?って事は、要するに、そのお店の正式な店長を探す間、代打の
店長になっててって話なんでしょ?]
う~ん・・そのような、そうでもないような・・・
なんとなくだけど、そのお店の人達は、1年後、本部に就職って話を
全くしてなかったし、ずっと頑張れば退職金どうのこうのって言って
たような・・・
[だったら、とりあえず働いて、嫌になったら辞めればいいし、長くても1年し
たら本部に就職だったら、そのオーナーが性格悪くても、1年なんて、あっとい
う間だから、やってみたらいいじゃん]
そんな簡単な話なのでしょうか?そう思いつつ。
[月25万で1年だと、300万とボーナスでしょ。400万くらいは稼げるん
だから、車を買い替えも出来るだろうし、貯金も出来るじゃん!]
確かに、高額ですよ。今の俺にしたら・・・
[ダメなら、嫌なら、いつでも辞めれるんだし、最悪1年我慢って考えたら、
やってみたらいいじゃん!って思うよ・・・]
もともと、母はポジティブな性格だったせいか、俺も、そういうところがあって
二人で、能天気に、嫌なら辞めるか!的に、とりあえず、様子を見ながら、続け
るって事で落ち着いた。
まさか、それから20年近くも、この世界にドップリになるとは、この時点では
全く思ってもみなかったのだが・・・