表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

古いパンの価値

作者: ふみ

 年寄りばかりが百人住む村に、一軒のパン屋があった。店主は毎朝早起きし、一日に百個のパンを焼いていた。

 九十九人の年寄りはなかば習慣のようにパンを買いにきた。残りのひとつは自身も年寄りの店主の分であった。


 ある日、一人目の年寄りが死んだ。その日からパンはひとつ売れ残るようになった。店主は売れ残ったパンを店の裏に捨てた。古いパンには価値がなかったからだ。

 しかし、次の朝に店の裏を見ると、捨てたはずのひとつのパンはなくなっていた。店主はのら猫か何かが持っていったのだろうと検討をつけた。


 ある日、二人目の年寄りが死んだ。その日からパンはふたつ売れ残るようになった。店主は売れ残ったパンを店の裏に捨てた。古いパンには価値がなかったからだ。

 しかし、次の朝に店の裏を見ると、捨てたはずのふたつのパンはなくなっていた。店主はのら犬か何かが持っていったのだろうと検討をつけた。


 ある日、三人目の年寄りが死んだ。その日からパンはみっつ売れ残るようになった。店主は売れ残ったパンを店の裏に捨てた。古いパンには価値がなかったからだ。

 しかし、次の朝に店の裏を見ると、捨てたはずのみっつのパンはなくなっていた。店主はカラスか何かが持っていったのだろうと検討をつけた。


(省略)


 ある日、五十人目の年寄りが死んだ。その日からパンは五十個売れ残るようになった。店主は売れ残ったパンを店の裏に捨てた。古いパンには価値がなかったからだ。

 しかし、次の朝に店の裏を見ると、捨てたはずの五十個のパンはなくなっていた。店主は何かが持っていったのだろうと検討をつけた。それにしても、この村にはいったい何ひきの動物がいるのだろうかと不思議がった。


(省略)


 ある日、九十九人目の年寄りが死んだ。その日からパンは九十九個売れ残るようになった。店主は売れ残ったパンを店の裏に捨てた。古いパンには価値がなかったからだ。

 しかし、次の朝に店の裏を見ると、捨てたはずの九十九個のパンはなくなっていた。店主はパンを持っていくものの正体がわかりかけていたので、村でたった一人になっても寂しがらなかった。


 ある日、百人目に死んだのはパン屋の店主だった。店主はもうパンを焼けなかった。

 九十九人の年寄りはなかば習慣のようにパンを買いにきて、そして買うことができなかった。

 残念だな、きみのパンをもう食べられないなんて。誰かが言った。

 すまんね。店主は笑って答えた。


よかったら感想欄かtwitter @cubitfmに感想をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 感動しました! 私もこんな作品を書いてみたいです(^o^) 短くまとめているのも素晴らしいと思いますよ( ´∀`)
2014/10/04 13:54 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ