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往診に来ました。

※8/13 改変 感想で指摘があったので全体的に改変しました。

文章の書き方を勉強して前よりかは、何とか良くなったかなと思いたいです。

まだまだ荒いですが頑張って書いてくので良かったら見てやってください。


 アリシアの部屋に、ポッカリと空いた異空間の穴。

 その穴の中には、重たそうな扉がある。

 扉の上に、手術中という赤いランプが点灯していた。

 カインは、深妙な面持ちで、神に祈りを捧げていた。

 1時間くらいたっただろうか。

 カインにとって、それは何時間と思うくらい長く感じていた。

 フッと、手術中のランプが消え扉が開く。

 異空間から出てきたのは、アリシアを抱えた薫だった。

 


「アリシアちゃんは無事やで。手術も無事に終わったから、もう心配あらへんよ」

 


 薫は、アリシアを両手で抱える。



「なっ!? ほ、本当にもう大丈夫なんですか??」

 


 涙でグチャグチャのカインは、気の抜けたような声で喋る。



 カインは安心したのか、緊張の糸が切れその場で座り込む。

 そして、動かなくなっていた。

 薫はアリシアをベッドに寝かせ、ついでに薫もベッドに座る。



「時間も短縮できたし、身体に負担はかからへんかったと思う。てか、心臓移植だけで2時間は時間を使うと見とったんやけどな。医療魔法が即効でびびったわ。もうすぐ、麻酔が切れてくる頃合いやから。アリシアちゃんは、目覚ますと思うで。意識が、朦朧としとるやろうから、取り敢えず安静にさせといてくれ。あと、麻酔の副作用で、吐き気がしたりすると思うから、そこも気をつけてや。明日になれば、元気良く飯も食えるやろうしな」

 


 薫は、カインに目を向けそう告げる。



「有難うございます。薫様、なんとお礼を言っていいのやら……」

「まぁ、その話は後でええよ~」



 ちゃんと経過見てからじゃないと、わからない事があると思うからだ。

 悪どい顔になる薫は、いかんいかんとその表情を隠す。

 そんな事をしてる間に、アリシアが目を覚ました。

 トロンと溶けた目で薫を見ていた。

 そっとアリシアの頭を撫で、耳元で「よう頑張ったな」と言ってその場から立ち上がる。

 アリシアはまだ副作用のせいで、喋れそうになかったのでそのまままた意識を手放し眠りにつく。

 規則正しい寝息が聞こえてきた。



「そうそう。今アリシアちゃんの身体に付いとるシールは、絶対に剥いだらあかんで。心電図のデータを俺の方に飛ばしとるからな。何か異変があれば、分かるようになっとるから。じゃあ、俺は一旦帰るからな」

 


 薫は扉の方へと歩く。



「薫様は、何処へ泊まられているんですか? 連絡先はどうしたら……」



 その言葉を聞きリースの事を思い出す。

 本日の宿屋兼食事処である。



「あ~、せやな。医療区域の【リース治療院】におるから、何かあったらそこを訪ねるとええよ。多分、明日までは俺もおると思うしな。それと、明日も診察に来るからそん時もよろしゅうな」



 そう言って手を挙げ、軽く振りながらアルビス家を後にし【リース治療院】に帰るのであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 日も落ちた頃やっと【リース治療院】に着き扉を開ける。



「お~い、帰ったで~って、あれ? また、潰れたんかいな?」

「またって何よ! またって! それに、まだ潰れてないわよ!」

「おお。居った居った、旦那が仕事から帰ってきたのに、返事くらいせえや」

「私が、いつあんたの嫁になったのよ!」



 顔を真っ赤にして言ってくるリース。

 それを、薫はからからと笑うのであった。

 店の中の椅子に薫は腰掛けて、疲れたと言わんばかりに首を回しながら天を仰ぐ。

 そうしているとリースが言う。



「そういえば、仕事に行ってくるとか言ってたけど、もう終わったの?」

「ん? あ~、終わったでぇ。後は、リハビリと3ヶ月の間薬飲んでもらえば、普通に回復して生活できるやろうなぁ。報酬もがっぽり巻き上げんとあかんからな。楽しみやなぁ」

 


 悪どくニヤリと微笑む薫。

 かなりご満悦な薫は、リースに酒はないか? と聞くのだが、あるわけないでしょ! と言われ、カインに前金貰えばよかったと少しごちるのであった。



「で、どんな人を治療したのよ。がっぽりって事は、相当な怪我を治したんでしょ?」

 


 ちょっと、教えなさいよ的な表情で薫を突く。



「ほらあれや、重病患者の話ししたやん? あの子や、アリシアちゃんって言うねん」



 楽しそうに語る薫に、リースはあんぐりとした表情で言う。



「はぁ?」



 リースは、驚き目を丸くする。

 大神官ですら治せない者を治したなんて信じられなかったのだ。

 リースは、薫に聞くのである。

 やはり、同じ職業なだけに気になるんだなと思う。

 今日の事を教えたのだが、リースはポカーンとした表情で、こいつ何言ってんの的な感じで見ているのである。



「しゅじゅつ? いりょうまほう? か、かくちょうがた? なにそれ? わ、私に、わかるように説明しなさいよ!」

「十分、わかるはずなんやけどなぁ。もしかして、リースってダメな子やったんかぁ~。残念やわ」



 この言葉にリースは、悔しそうにして薫を睨むのだ。



「分かった。簡略化して、頭に入るようにして説明したるから。そんな目で見んといて」

「むぅ~、分かったわよ。でも言い方が腹立つ」



 頬を膨らませるリースに薫は言う。



「その女の子は、心臓が悪かってん。やから新しい元気な心臓と、死にかけの悪い心臓を交換したんや以上」

「いや、言ってる意味は分かるのよ。でも、回復魔法でそんな事できないわよ?」

「そりゃそうに決まっとるやん。俺が使ったんは、医学錬成と医療魔法やから、回復魔法とは勝手が違うんや。まあ、言うてもわからんやろうしな。ここで、終いやな」



 腕を上げ、疲れたわ~と言った感じで、ステータス画面に映るアリシアの心電図を確認する薫。

 健康そのもので、心拍も安定している。

 今のところは、このまま様子見だなと思いながらリリスの作った晩飯を食べる。

 食べてる最中に、薫の飯が不味いの一言で、また分厚い本がおでこに直撃し頭を抱えるのだった。

 食事後、薫はあまりの眠さにソファーを借りそこで眠りにつく。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 朝の9時頃になり薫は【リース治療院】を出て、アリシアの診察へ向かう。



「ささっと、すませて。酒でも飲みながら、のほほんとしたいもんやな」



 そう言いながら、報酬をどれだけ釣り上げられるかを考えながら歩く。

 そして、タバコに火をつける。

 ゆっくりと味わう。

 残り少ないストックを気にしながら吸うのであった。

 とぼとぼと、しんどそうに歩く薫。

 医療区域から貴族区域は、意外と遠いのである。

 薫は、「体力ないなぁ、なんでやろ?」とボヤきながらも、何とかアルビス家へと着く。



「どうも~。診察に来たでぇ~」

 


 はよあけて~と言わんばかりに言う。

 玄関からメイドさんが出てくる。

 髪の毛は、黒く肩まで伸びていて、艶のあるストレートヘア。

 頭の上には、ヘッドドレスが付けられている。

 メイド服も、派手ではなく質素なのに品がある。

 満面の笑みで薫を出迎える。

 可愛らしいタイプの子だなぁと思う薫であった。



「お待ちしておりました薫様。どうぞ、中に入って下さい。昨日は自己紹介もできておらずすみませんでした。私は、カリン・エルガルドと申します。旦那様と奥様は、仕事で出てらっしゃいます。夕方には、帰ってこられますので」



 昨日の暗い表情が、嘘のような感じの笑顔で薫を迎えてくれる。

 カリンに、「わかりやすいなぁ」と言いながら笑顔で話す。

 そして、アリシアの部屋へと向かうのであった。

 薫は、アリシアの部屋に入る。

 そこには、笑顔で朝食を食べているアリシアがいた。

 薫に気付きちょっと頬を染めるアリシア。

 アリシアの側まで薫は近づく。

 アリシアの手に持つお皿に、チョコンと乗っているうさちゃんカットのリンゴを、ひょいとつまみ薫は口に運ぶ。

 シャリシャリといい音が鳴り、中心の蜜の濃厚な甘みが口いっぱいに広がる。



「うん美味いなぁ。昨日の晩飯は、地獄やったからな。ちょっと生き返ったわ」



 アリシアは、何の事を言ってるのだろうと言った感じで薫を見る。

 キョトンとするのである。

 薫は、人の味覚を破壊する料理を出されたと言うのであった。

 面白おかしく、アリシアに昨日の晩飯の話をするのだった。

 アリシアは笑いながらその話を聞いていた。



「ほんじゃ。それ、食べたら診察するからな。あと、ゆっくり噛んで食べりや。コレ、消化に悪いからな」

 


 うさちゃんカットのリンゴを指さし言う。



「わかりました」



 笑顔で、返事を返すのだった。

 薫はアリシアが小さな口で、シャリシャリと小動物のように食べる姿を見て、「うさぎやな」と小声でボソッと言うのであった。

 アリシアの朝食が終わり。

 ベッドの上で、アリシアはお願いしますと頭を下げる。

 若いのに、律儀やなぁと思いながら診察の準備を始める。



「じゃあ、上脱いでくれるか? 今回は、移植した心臓のポンプ運動を確認せんとあかんからな。すまんけど、エコーで調べる時にエコーゼリー塗らして貰うで? ちょっと、冷んやりするけどええか?」

「エコーゼリー? ですか?」



 薫は、ついつい日本に居た時の調子で内容を話してしまっていた。

 その事に気付き、この異世界にそんな物無いので説明が必要だなと思う。。



「そうかわからんか~。簡単に言ったら、心臓の様子を見る時に、俺の手でアリシアちゃんの心臓の上ら辺を触るねん。その時に、皮膚と俺の手の間に空気が入り込むと、正しく心臓の動きが見れないんや。その補助剤で、エコーゼリーをつけるんや。肌に影響はないから安心してええよ」



 アリシアは、「大丈夫です」と答え、頬を染めながら上着を脱ぎ下着を外す。

 雪の様に透き通った肌が露わになる。

 そのままベッドに寝かせ横になってもらう。

 背中に、枕を詰めて45度くらいの傾きになる。



「そしたら、塗ってくなちょっと我慢してや。『医療魔法――エコーゼリー・ベクトル1』」



 ポンと、薫の手の平にゼリーが出てくる。

 それを、横たわるアリシアの胸部にそっと落とす。



「んっ……」



 ひんやりとしたゼリーが肌に触れると、ピクンと体が跳ね声が少し漏れる。



「少し我慢してや」



 薫は、ゼリーをアリシアの胸の中心から左にかけて伸ばしていく。

 ほんのりと、膨らむ胸をなぞる。

 エコーゼリーを塗っている間、アリシアは顔を真赤にさせ目を強く瞑っていた。

 時折、漏れる声がなんとも言えない空気になる。

 


「(アカンな……。なんか、めっちゃ変な空気になって、やりづろうなってくるな)」



 薫は心の中で思うのだが、適当にしたらちゃんとした結果が出ないので、どうしようもないのである。

 アリシアの胸部に満遍なく塗ったあと、その手の平で谷間の中心を軽く押す。



「『医療魔法――エコー ベクトル1』」



 薫の右手が青白く光る。

 ゆっくりと、アリシアの心臓を見ていく。



「(あー、心拍数早いなぁ。俺のせいかなこれ)」



 そう思いながら、エコー画像をステータスの画面に表示させる。

 規則正しく脈打ち、ちゃんと血液が流れているのを確認する。

 時折、手の平に突起物が当たるが、薫は気にせず続ける。

 なめらかな肌に手を這わせ、様々な角度から心臓の動きを真剣に見ていく。

 アリシアは、ぷるぷると肩を震わせながら、何かに耐えてるのかのような感じになっていた。



「(こういうのって女性に、任せたほうが楽なんやけどなぁ)」



 薫は、そう心の中で思うのである。

 調べ終わって、手についたゼリーをタオルで拭いていく。

 そして、アリシアの胸部のゼリーもささっと拭いて、「もう着てええよ」と言うのであった。



「ありがとうございます。心臓はどうでしたか?」

「ん? 問題あらへんかったよ。ちゃんと、機能しとるしな。これからは、楽しい人生が待っとるで。やから大いに楽しみやアリシアちゃん」



 薫は頭を撫でながら言うと、アリシアはまた顔を赤く染めて、「はい」と返事するのであった。

 薫は、色々と気を使って疲れていたので、ちょっと仮眠取るわと言ってアリシアの部屋を後にする。

 廊下を歩いているとカリンと出会う。

 薫の表情を見てカリンは言う。



「お疲れのようですが。良ければ、客室があいておりますのでお使いになってください」



 そう言われ、その厚意に甘えるのであった。

 客室に入り白衣を脱ぐ。

 窓を開け、アロハの胸ポケットからタバコを出し、火をつける。

 仕事モードからいつもの感じに戻っていく。



「あ~、めっちゃ疲れた~。このあと、リハビリも教えんといかんのんか。めんどいなぁ、報酬上乗せやなこれ。カインさんは、夕方に帰ってくる言うとったしな。それまでは、適当に時間潰すか」

 


 ゆっくりとタバコを吸う。

 ポケット灰皿に、灰を落としながら街の風景を眺める。

 貴族区域の光景は、また圧巻で一つ一つの家の広さが異常なのである。

 煉瓦造りや、石造りの家が並ぶ。

 その家々には、広い庭がありガーデニングで手入れされた花達が、色とりどり鮮やかに咲いていた。



「あ~、これはほんまに綺麗やなぁ。現代にはないなぁ。高層ビルやらなんやらで、排気ガスのオンパレード。こんな青空なんて、ほんま見たことないで……。異世界なんよなぁ。あの、クソみたいな世界ではないんや。俺を、知るもんもおらんのんやし。もう好き勝手やっても、バチは当たらんよな。でもその前に……。仮眠やな、昨日の疲れも残っとるんかな。さすがに、オペ一人で何人分の仕事しとんねんって感じやしな。まぁ、あとは適当に起こしてくれるやろ」



 そう言いながら薫はベッドに突っ伏して、太陽の香りを感じながら意識を手放していった。


お金巻き上げ回は、次になりそうです。


帰って来て今回の話が完成してログインしたところ…アクセス数が大変なことにマジで一瞬怖かったです…だっていつもと一桁違うんですもん。

読んでくださった方評価までしてくださった方そしてそしてブックマークまでしてくれてありがとうございます。まだ三話しか書いてないのに…なんかほんとすんません。


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