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治療開始!

 ブルグに到着した薫達。

 ワトラの到着を待っていた。

 周りは、薬草やハーブなどが植えられて、花などが色とりどりに開いして綺麗であった。

 アリシアは、至る所に栽培されている、花や薬草に興味津々といった感じで見る。



「薫様、凄いのですよ! お花や薬草が一杯なのです」

「ほんまやな。これは圧巻やな」



 のんびりと眺める二人に、ランドグリフはダニエラを連れてくる。

 ダニエラは、二人の姿を見て少し不安になる。

 二人共、ティナと同い年くらいにしか見えないのだ。

 ダニエラに気付いた薫とアリシアは、立ち上がり向き合う。



「どうも、カオル・ヘルゲンや」

「アリシア・ヘルゲンです」



 二人は、ダニエラにそう挨拶するのであった。

 ダニエラの表情が一瞬変わる。

 すぐにランドグリフが、耳打ちをする。

 薫違いということを言うのである。

 少し残念そうに、頷き改めて薫とアリシアに挨拶をする。



「十賢人のダニエラと申します。今回は、この病について何かしらの情報をお持ちと聞きましたが……」

「ああ、それなんやけど。ちょっと、患者の様態を見せて欲しいんやけどええかな?」

「ええ、構いませんよ。ランドグリフ案内してあげて」

「はっ!」



 そう言うと、ランドグリフは薫を患者の下へと案内する。

 アリシアは、ワトラが来るまで待機となった。

 ダニエラは、アリシアの顔をじっと見る。

 何故、こんなに見られてるのだろうと思う。



「え、えっと、私の顔に何かついてますか?」

「ああ、ごめんなさいね。何処かで、会ったような……そんな感じがしたものだから」

「……!」



 アリシアは、やばいと思う。

 一度、エクリクスに行ったことがあり、その時に顔を見られていたのだ。

 然り、その時とは別人のように回復している為、バレないと思う。

 だが、それでもかなりドキドキものなのだ

 そして、薫のように嘘がつけない。

 下手くそなのだ。

 だから、下手に話をすると、ボロボロと剥がれてしまうのだ。

 慎重に心を落ち着かせて、アリシアは言葉を選ぶ。



「タニンノ、ソラニダトオモイマスヨ!」



 声が裏返ってしまった。

 自分を今すぐしばきたいと思う。

 せっかく薫が、動き回りやすいように、うまく立ちまわっているのに、自身が足を思いっきり引っ張っているのだ。

 嫌な汗を尋常じゃないほど掻きながら、アリシアはバレるなと思うのであった。

 そんな時、アリシアにほんのり薄い青色のオーラがほわんと弾ける。



「……そうよね。こんな所に居るわけないわよね」

「ソウデスヨー」

「あと、そんなに緊張しなくてもいいわ」

「ア、 ハイ」

「可愛い顔が台無しよ」



 そう言って、ダニエラはアリシアの頬をつまみ、横に少し引っ張るのであった。

 顔が近く、ダニエラの顔がよく見える。

 女のアリシアも綺麗と思うほどであった。



「綺麗です……あ! す、すいません」

「うふふふ、ありがとね。でも少しは和らいだかしら」

「は、はい。ちょっとほぐれました」



 そう言って、ピシっと背筋を伸ばすアリシア。

 ダニエラは、そんなアリシアを見て笑うのであった。

 アリシアは、なんとか切り抜けれたと思うのであった。

 はたから見れば、完全に疑われるような行動だったが、バレなくてラッキーと思うのであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ランドグリフから、隔離されている患者の下へと案内され中に入る。

 ランドグリフは外で待つ。

 薫が、念の為にと言い、一人で入るのであった。

 中に入ると、患者は苦しそうにお腹を押さえていた。

 治療師は、外からの配給で貰う薬草と、自信のMP回復剤を服用し、患者に治療を行っている。



「え、えっと、あなたは?」

「ああ、すまん。そのまま続けてくれ。やりながら聞いてくれればええから」

「わ、わかりました」

「俺は、薫っていうねん。一応治療師や」

「は、はい。それで今日は何用ですか?」

「患者の病状を見せて欲しいんや」

「あ、どうぞ」



 そう言うと、薫は患者の横に行き、お腹に手を翳し『診断』を掛ける。

 結果が出た。

 病状は、やはりパイン細菌であった。



「この症状が出たのはいつ頃や?」

「えっと、昨日……一昨日くらいだと思います」

「やっぱり進行が早いな……」

「?」



 薫が何を言ってるか分からないでいる。

 説明はするつもりはないので、薫はさっさと済ませる。

 このくらいの症状なら、まだ薬で問題ない。

 脱水症状に陥っていないところがデカかった。

 コレにより、二次感染や、合併症を引き起こすトリガーになるからだ。



「それじゃあ、処置するから、後ろに少し下がっとってくれへんか?」

「わ、分かりました」



 薫は、患者の亞人に『医療魔法――点滴』で、薫が調べあげて作った薬を投与する。

 大体、全てが終わるまでにかかる時間は、十五分に設定した。

 無詠唱で発動した為、何が何だか分からないでいる。

 何を使ったかもわからないのだ。



「あんた一体何したんだ?」

「ちょっと魔法使っただけや」

「そんなので治るのかよ……」



 治療師は、かなり精神的にまいっている。

 それもそうだろう。

 患者と一緒に隔離されているのだ。

 自身も、患者と同じ病を発病するかもしれないという恐怖が、延々付きまとうのだ。

 まだ、そんなに日が経っていないからいいが、もしもコレが何週間と続いたら、気がどうにかなるだろう。

 薫は、そっちのほうが心配になるのである。

 今回の病気は、人間には感染しない。

 よって、この治療師には、どんなに咳を掛けられようとも、同じスプーンで食事をしても罹らないのだ。

 然し、そう言った知識がなければ、安心できない。



「この病気は、俺は知っとるから大丈夫や」

「ほ、本当か! 嘘じゃないんだな?」

「ああ、それにコレは、人間には罹らへんから。罹るんは亞人だけや。やから、安心してええで」



 薫がそう言うと、腰が抜けたようにその場に座り込む。

 そして、泣き出すのであった。

 精神的にまいっていたのと、安心から来る気の緩みで、涙が止まらないのであった。

 ランドグリフは、何事かと思い中に入ってくる。

 薫は、一応治療はできたと言う報告をする。

 それを聞き、ランドグリフは目を見開き驚く。

 そんな馬鹿な! っと言った感じであったが、患者の様態を見ると、苦しんでいたのが嘘のように、呼吸が安定しているのだ。

 腹痛も、今は治まっている為、苦しんでいる事もない。

 ランドグリフも治療師としての腕前は、ランクBと評価されている。

 なのに、今回の病には全くと言っていいほど無力だった。

 ダニエラもそうだ。

 ビスタ島に居た治療師なんかに、全てをひっくり返された。

 ランドグリフは、薫の肩を掴み。




「どこで、そのような知識を得たのだ! 教えろ!」



 物凄い貪欲な目で薫を見る。

 薫は、無言でランドグリフを見る。

 喋らない薫に苛立つのだが、薫は後ろを指差すだけにした。

 


「みっともない事をしてはなりません。お前は、私の護衛隊副隊長なのですよ」



 柔らかい話し方ではなく、少し刺のある口調であった。

 ランドグリフは、申し訳なさそうに頭を下げ跪く。

 そして、ダニエラの横にはアリシアも居た。

 仲良くなったようだ。

 意外とデキる子? などと思いながら、薫はゆっくりとアリシアの下へ行く。

 よく見ると、アリシアが纏っている魔力に、ピンクラビィの『運超上昇ラッキーストライク』の効果が消えていた。

 ビスタ島を出る前まで、纏っていた青白い光のオーラが、消えていた為、薫は気付いたのだ。

 アリシアは、気付いてないようだから、言わないでおこうと思う。

 言うとその場で、後悔しながらショックを受けそうだからだ。



「ど、どうでしたか?」

「大当たりやったで。準備出来てて、助かったと思うた方がええかもしれん」



 そう言いながら少し笑顔で言う。

 他の病気だった場合、準備が整わない可能性が高かったからだ。

 街の全ての亞人に、薬を処方する事はできるが、市場に回らなければ、他の地域で発症した場合、どうすることも出来ないからだ。



「部下が失礼しました」



 そう言って、ダニエラは頭を下げる。

 薫は気にしてはいないと言った。

 ランドグリフは、 ダニエラに頭を下げさせてしまったことを悔む。

 十賢人の一人、治療師の中で最高の地位を持つ者に、そのような事をさせてしまったからだ。



「まぁ、気になるとは思うけど、こっちも教えれない事もあるからな」

「はい、分かっております。それは、治療師としての一つの武器ですからね。簡単に教われるものとは思ってません」



 そう笑顔で言う。

 新たな治療方法などを開発した者は、それの全権限がある。

 帝国に提出もしくは、その街の領主に提出する事によって、報酬が与えられる。

 爵位などは、その領主が帝国に提出する事によって、貢献度で与えられる。

 そこまで重要ではないと、爵位までは貰えないという事だ。

 リースの時がそうだ。

 迷宮熱の治療薬の開発で、一気に爵位を得る形になった。

 迷宮熱は、全ての街に共通する病。

 それも、毎年必ず発症する病気だからだ。

 そして、流通や卸価格なども設定できる。

 このような特権があるから、簡単には教えられないのだ。

 ダニエラは、その裏には知りたいといった思いもあるのだろうなと思う。

 そうしているとワトラを乗せたワイバーンが到着する。

 薫達は、ワトラを迎えに行くのであった。



「ひ、酷いですよ! 僕が来る前に、治療を終わらせるなんて!」



 うが~! っといった感じで薫の服を掴み、引っ張ってくるワトラ。

 保護者カールがほしいと思う薫なのであった。



「すまんすまん。でも、患者が苦しんどるんやから、仕方ないやん」

「そ、そうですけれど……。見たかったです」



 ちょっとしゅんとするワトラ。

 すると、広場が騒つく。

 治療師ギルドの幹部達や治療院の治療師達だ。

 その時、治療院にいた一人の治療師がワトラを見て、嫌な顔をする。



「なんでお前がいるんだ!」

「……」



 ワトラは、ビクッとその声に反応する。



「何も出来ないお前が、ここに来ても足手まといだろ! 無能の治療師」



 治療師からの一言でワトラは、萎縮してしまう。

 足が震える。

 動悸も激しくなる。

 そして、俯き目尻に涙が溢れてくる。

 何も返せない。

 この街で、自身の失敗を知らない者は居ない。

 なんで、付いて来てしまったのだろうと思ってしまう。

 こうなる事くらい予想は出来たのに。

 だが、薫の治療方法を見てみたいという、欲求だけで動いてしまっていた。

 この街では、ワトラの風当たりは厳しい。



「 ワトラが、無能の治療師?」

「なんだ知らないのか?」



 ニヤニヤした表情で言う治療師。

 治療に失敗して、死なせた事をペラペラと話すのであった。

 全てを言い終え、こんな奴を連れてきた、お前の頭を疑うと言うのであった。

 エクリクスの治療師達にも聞こえるようにであった。

 ポロポロと、涙を流すワトラ。

 事実である以上、何も言い返せない。

 アリシアは、ワトラを支える。

 苛立ちを隠すが、纏うオーラに異常な変化をもたらす薫。



「ほう、それで? お前だったら治せたのか?」

「はぁ、当たり前だろ! 俺は、この街の最高の治療院の治療師だぞ」

「ハァ……」

「なんだてめぇ喧嘩売ってんのか!」

「薫もういいよ……」



 そう言って涙で、くしゃくしゃな表情になっているワトラは、薫を止める。



「一つ聞いておこうか。酒を飲み過ぎて倒れた時の対処法は?」

「あん? んなもん回復魔法を掛けときゃ治るだろうが! そんなの常識だろうが。俺がしてれば、あんな事にはならなかっただろうよ。たまたま、俺の手が空いてなくて、ワトラの治療院に回したのによぉ」

「!!?」



 そう言って治療師は、声を荒げて言う。

 薫は、ワトラを見る。

 ワトラは、気付いたようだ。

 カールが、治療に失敗した患者と全く同じ症状だったからだ。

 そして、そのメカニズムも薫が教えていた。



「もしかしてやけど、ワトラをはめたんやないやろうな?」

「!!! い、言いがかりじゃないのか? 俺になんのメリットがあるんだよ!」

「さぁな、やけど、その常識やったら、お前もその患者死なせとるわ。いや……そうなると分かってたから、ワトラにやらせたんやないか?」

「!!!」



 一段声のトーンが下がる薫。

 その治療師を睨み言う。

 治療師は動揺する。

 治療師ギルドから頼まれ、ワトラをはめたのだ。

 どうしようもない状態の患者を、たらい回しにした挙句、ワトラに押し付けついでに排除するというものだった。



「まぁ、今となっては過ぎた話や。別に、とやかく言うつもりはない。せやけど、ワトラは要らないんやな?」

「そんなのが居れば、また大きな被害が出るからな。さっさと帰らせろ」



 薫は、その言葉を聞いた後、悪い顔になる。



「今回の病気の鍵握っとる人物やけどええんやな?」

「「「「!!!!」」」」

「へ?」



 ダニエラ達もその言葉に驚く。

 ワトラ自身も、間抜けな声が出るのであった。

 薫に、今回の治療薬の作り方や、そんな事言われても無いし、全く聞いてないのである。

 パニック状態になるワトラ。

 今回のキーマンとして、自分がここに居るなどと、思いもしなかった。

 目が点になり、パクパクと口を開きながら、薫を見る。

 言葉が出ない状態だ。



「な、何を根拠に言ってるんだ」

「この病気もそうやけど、殆ど全ての病の薬を作る基礎を、ワトラは持っとるって言ったんや。俺は、今回その応用で、薬を作ることが出来たって言ったらどないする?」

「そんな馬鹿な……あり得ない」



 ワトラが、治療師ギルドに持って行ったあの論文だ。

 馬鹿にして、聞く耳すら持たなかった。

 エクリクスもそれを蹴っている。

 治療師ギルドと、同様に返していた。

 然し、薫はこの薬を作り出す基礎を担う論文を、ここで摘み取りたくなかったのだ。

 出なければ、一生病を野放しにしてしまう。

 何も進歩しないからだ。

 新たな可能性を、何もしないで潰すには惜しいと思った。

 それに、薫が全ての病を一人でどうにかしたとしても、この世界から居なくなった後は、誰が治療し、薬などを開発するのかと言うことだ。

 それなりの基盤がなければ、どうしようもない。

 だから、今回薫はこういった行動に出た。

 リースの時もそうだが、環境がなければ育たない。

 最大勢力のエクリクスのみでは、偏りが生まれる。

 利権のみを翳し、何にもしない者が増える。




「ダニエラさん、興味無いか? 今回の病気を治す為の基盤を」



 薫は、そう言うのであった。

 もう先ほどの治療師は、何も言うことができなかった。

 此処で、ダニエラが否定しない限り、否定できない。

 ブルグの治療師風情が、エクリクスの十賢人に、意見など出来はしないのである。

 もし、そんな事をすれば、自身にどのような災難が降りかかるか分からない。



「興味深いですね。何故、私の耳に入らなかったのでしょうか?」



 そう言って、ブルグの治療師を見る。

 そして、ダニエラの部下である者が、何度もこのブルグに来ているはずだがと言った感じであった。

 その場に居合わせた、治療師ギルドの者は、口を噤み俯くのであった。



「まぁ、簡単に言えば鼻で笑って、聞かなかったんやろ。無能なのはどっちやろうな」



 薫は、そう言って治療師達に睨みをきかす。

 ビスタ島に、治療師として来てくれたワトラに、これ以上このような嫌な思いをして欲しくないのだ。

 何も無ければ、もう少し先でこのような話をしようとしていたが、先程の治療師の言葉に、腹が立った。

 それに、ワトラの回復魔法を中級までは扱える。

 無能などとは程遠いのだ。

 アリシアは、薫のそんな行動に呆れるのであった。

 無茶しないって言ったのに、という思いが滲み出るのであった。

 薫の言葉に、言い返せないブルグの治療師達。

 ワトラは、慌てふためく。

 先ほどまでの状況が、反転しているのである。



「よかったら、詳しく聞かせてくれないかしら? ワトラさんでしたっけ」

「は、はい。よ、宜しくお願い致します」



 ワトラは、ダニエラからそう言われ、ガチガチに緊張して言うのであった。

 エクリクスの十賢人の一人から、直々にこのような事を言われるというのは、一般の治療師として名誉と言われている。

 雲の上の存在、治療魔法は上級魔法をほぼ使える。

 才能と努力が無ければ、到底辿り着けないレベルの人物だ。

 ワトラは、獣耳をぴょこぴょこさせながら、ダニエラに説明する。

 そんな様子を、ブルグの領主のラズが、笑顔で見守るのであった。

 仕事が片付き、広場に向かったところ、治療師達と揉めている状況だった。

 何もする事が出来ず、見守ることしか出来ずにいた。

 治療師との力関係上、強くも出れない。

 自身の不甲斐なさが、嫌になる。

 然し、薫のおかげで、その状況は一気に打開させた。

 もう、治療師達はワトラに、何かイチャモンをつける事が出来なくなったのだ。

 ラズは、薫の下へ行く。



「え、えっと、有難うございます」



 そう言ってぺこりと頭を下げるラズ。

 薫は、このちっこいのは誰だろうと思う。



「あ! 申し遅れました。私は、このブルグの領主のラズと申します」

「え? ダルクさんと同じなんか?」



 つい、その容姿で判断して、言葉に出てしまった。

 


「あははは、よく言われますけど、一応これでも領主なんです」



 えへへといった感じでラズは頭を掻く。



「すまん。けど、礼を言われる事なんてしてへんで」

「ワトラの事です」

「ああ、そういう事か。構わへんよ。あんな陰湿な事が、嫌いでつい頭にきてな」



 そう言って、ラズと話す。

 ワトラや治療師達と、少し離れている場所で話をしていた。

 その姿が目に入ったのか、ワトラはラズの下に走ってやってくる。

 説明は終わったのだろう。

 ラズに飛びつきギュッと抱きつくワトラ。



「ラズ様、私の研究が実るかもしれないんだ」

「良かったですね。ワトラ」



 そう言ってラズは、ワトラの頭を撫でる。

 嬉しそうにするワトラ。

 薫は、この二人は仲が良いのだなと思いながら見る。

 しかし、そんな二人を治療師ギルドの者と治療師は、歯がゆそうに睨むのだ。

 なんとも言えないこの空気になっていた。

 ダニエラは、ワトラから聞いた事を噛み砕き脳で処理していく。

 ワトラの言う理論は、真新しい物だった。

 いや、今までそのような事を唱えた者もいたかもしれない。

 しかし、その都度何らかの形で、潰されていたと考えるのが妥当かもしれない。

 新しい物には、抵抗がある。

 受け入れがたい物だってあるのだ。

 今まで伝統的に調べていた事が全て無意味になりかねない。

 そんな事を考えてしまえば、この理論は異端として闇に葬られる。

 ダニエラ自身もこの研究には、新たな可能性があると思うのであった。

 しかし、それを広げさせるのは、難しい話なのだ。

 今までの利権が邪魔をする。

 現在、既存でわかっている病の特効薬を研究している者達に、色んな街から出資して貰っているのだ。

 それが、全て無くなる可能性が出てくる。

 そんな事になれば、また争いが起きる。

 ましてや、ここ数年大きな成果が出ていない。

 分からずじまいの病が、山のようにある。

 ダニエラは、どうするかと考えるのであった。

 整備するのが、途方もなく難しいのがよくわかるからだ。

 


「今は、この病を解決してからですね。ティナに何かあっていけないし」



 ダニエラは、そう小言を言って一旦考えるのを止める。

 ダニエラも薫達の方へと行き今後の話をする。

 ラズも居た為、場所を領主の屋敷に移す。

 大本の重要人物が集まり話し合う。

 ダニエラのおかげもあり、話はスムーズに進んでいく。

 誰一人、ダニエラの決定に意見するものが居ないのだ。

 間で、薫がこうした方が円滑に動けると思うなどと言ったりした。

 その殆どが採用される。

 ダニエラは、薫の力量が何となくわかっているかに見えた。

 若干、薫は表情が引きつる。

 先程の治療師との口論の前に、一瞬魔力が揺らいだのを、察知されていたみたいだと思う。

 かなりの実力者と思われているようだ。

 これ以上は、さすがに手の内は見せたくないので、適当にダニエラの言葉は流す。



「じゃあ、薫さんとアリシアさんが、まずファルグリッドに向かう。私とワトラさんがファルシスへ向うでいいですね?」

「ああ、それで構わへんよ」

「後から、ブルグの治療師を送ります。多分ですが、エクリクスから応援が来るでしょうから、その者達もファルグリッドとファルシスに分配します」

「そしたら薬は、ワトラに預けるから患者に投与してくれ。数は足りるやろから。まずは、進行を止めないと話にならへん」




 薫は、そう言ってアイテムボックスに手を入れ漁る。

 麻の袋に『薬剤錬成』をし、大量に精製する。

 アリシアの居る角度からそれが見え、アリシアは吹き出しそうになる。

 材料のない所から、一瞬で袋一杯に薬が出来ていくのが見える。

 そんな、全ての理論を無視した錬成を、物を探す感覚で使う。

 そんな、薫の行動を怒らなければと思うのであった。

 他の者が見たら完全にアウトだ。

 それも、今いるメンバーで十賢人のダニエラもいるのだ。

 見つかれば、何を言われるか変わらない。

 薫は、あったあったといった感じで、麻の袋を取り出す。



「凄いですね。こんなに沢山の薬を……まるで、このような事が起こる事を予知でもしたかのようですね」



 アリシアは、嫌な汗をだらだらと掻く。

 薫が、なんと言い訳するのか、ヒヤヒヤものなのであった。

 答えによっては、何を言われるかわからない。



「予知と言うのは、ちょっと違うけどな。少しずつ作り置きしてたらこんな数になっとったんや」

「作り置きですか……他にもあるんですか?」

「そうやな。迷宮熱の薬や、風邪症候群……こっちやと冬呼吸咳(とうこきゅうぜき)の薬とかかな」



 薫の言葉に驚き疑う。

 死に至る病では無い。

 冬呼吸咳は、冬に流行する病。

 まだ、完全に効く薬が出来ていない。

 ほんの少し、効き目のある物が出回っているくらいだ。

 薫は、これから流行するであろう病にも着手していた。

 今居るビスタ島の住人が罹ると、一瞬で崩壊する可能性が高い。

 どれ程、この状況が続くか分からないのだから、いる間は病気に対して、全く心配いらないようにしている。

 ダニエラは、薫にどんどん興味が湧いていくのであった。

 今は、この病をどうにかしなければならない為、聞くのを抑える。

 ダニエラは、薫が出した薬の使い方を聞く。



「これは、原液や。精霊水で割って使う事が出来る。やから、そんなに量がいらんのんや」

「なるほど……ですが、割る事によって効果などは変わらないのですか?」

「元々の濃度を高く作っとるから、100倍まで薄めても大丈夫や。精霊水一つに対して、一滴で使える」



 それを聞いたダニエラは驚く。

 そのような状態を作ることができる者は、今までにいない。

 そのような理論など知らないのだ。

 寧ろ、エクリクス創設者である、初代大神官でもそのような事は、出来なかったと文献で記されている。

 それを、さも当然のように言う薫が、信じられないのであった。



「あなたは、一体何者なのですか……?」

「ただの冒険者や。まぁ目的は、世界の色んな所を見て回りたいんや」

「そのような、知識と技量があれば、エクリクスでも楽に上に行けるでしょうに」

「興味ないし、面倒事が増えるだけや」

「すいません。でも、勿体無く思ってしまいますね。私の部下として働いてくれたら、どれほど私が楽をできるかと思ってしまいましたよ」



 ダニエラは、そう言って笑うのであった。

 全然、冗談には聞こえない。

 目が笑ってないのだ。

 あれは、獲物を見つけた目だなと思うのであった。

 しかし、全てを躱していく薫。

 ランドグリフは、そんな薫に苛つくのであった。

 十賢人である、ダニエラから誘われているという事は、名誉ある事なのに全く興味を示さないからだ。

 ランドグリフであったら、有無も言わずに傘下に加わるだろう。

 いや、他の治療師もそうだ。

 中々、このような事が起こることなどない。

 周りの治療師ギルドの者達は、嫉妬の目で薫を見る。

 アリシアとワトラは、あたふたとするのであった。



「まぁ、話はまとまったんやし。早く行かんと手遅れになる者が出てくる」



 薫は、もう面倒くさくなったので、そのように言い話を切る。

 ダニエラは、残念といった感じであった。

 皆、外の広場に出る。

 割り振りが決まった者は、そのように動く。

 ワトラは、ダニエラと一緒な為、また緊張していく。

 薫から、病に罹っている者に投与した後、体調の優れない者を、一箇所に集めるように指示を受けている。

 その者達は、薫が来るまで水分補給、体力回復魔法で、保たせて欲しいとの事を伝えてある。

 薬での治療の限界もあるのだ。




「ランドグリフ、そちらは任せましたよ」

「はっ! お任せ下さい」



 ダニエラは、ワイバーンを五頭召喚する。

 相変わらずでかい。

 薫とアリシアはランドグリフと一緒に乗る。

 ダニエラとワトラもワイバーンに乗り込む。

 その他、護衛部隊の者をブルグに一人残し、他は全員乗り込む。

 若干狭いが、そんな事を言ってる場合ではない。



「では、皆全力で取り掛かれ!」

「「「「はっ!」」」」



 ワイバーンは、一斉に飛び立ちファルグリッドとファルシスへ向かうのであった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ファルグリッドの街は、地獄絵図になっていた。

 冒険者達が、迷宮に入っていない為、魔物が街に湧いているのだ。

 至る所で、悲鳴が聞こえる。

 魔物に殺られ、その死体を魔物が取り込んでいく。

 病で弱った者達には、魔物を撃退する力は残っていない。



「キディッシュは、どうしてるんだ!」

「クッソ! こんな時に……。領主の仕事を放棄してんじゃねーぞ!」




 皆口々に、屋敷の前に集まり不満を言う。

 今にも、門を破り、中に雪崩れ込みそうな勢いであった。

 キディッシュの屋敷では、皆青ざめていた。

 キディッシュが、息を引き取った。

 もう、この街は崩壊すると思う者が、キディッシュの亡骸の前で、膝を突き項垂れる。



「如何する……今からでも遅くない……逃げるか」

「止めておけ……もう、手遅れだ」

「ブルグに行けば、まだ立て直す事が出来るんじゃないか?」

「お前にも、キディッシュと同じ症状が出てるだろ……それに、外のあの状況では……」

「……」

「まさか、こんな事になるなんて、思いもしなかった。いや、今までのツケが回ってきたんだろな……」

「くっ……」




 もう、死を待つことしかできない。

 街に、魔物がどんどん湧く。

 動けているのは、人間の治療師と薬剤師のみ。

 冒険者は、殆ど亜人で全滅。 

 この前の一件で、人間の冒険者は、ブルグに移ってしまった。

 街は、魔物に壊され、動けない者は喰われていく。

 治療師ギルドの者も動ける者は、迷宮に入ろうと試みるが、魔物に阻まれ入ることが出来ない。

 しかし、入ったとしても、今湧いている魔物を倒せる者がいない。

 全員が、死を覚悟した時、上空に二頭のワイバーンが姿を現わす。



「なんと悲惨な……」



 ランドグリフは、そう言いながらワイバーンを一番広い場所に下ろす。

 薫は、ランドグリフに魔物をどうにかするように指示を出す。



「くっ……仕方ない。お前ら! この街の魔物を我々で退治する! 私に続け!!」

「「はっ!」」



 ランドグリフと護衛部隊二名に魔物の処理を任せ、薫とアリシアは急いで患者の容態を確認する為、治療院を目指す。

 道には、おびただしい血が飛び散っている。

 魔物との戦闘があったのだろう。

 手や、足などが無残に転がっていた。

 アリシアは、口元を押さえ吐き気を飲み込む。

 薫は、アリシアを気遣いながら、治療院へと走るのであった。

 到着すると、治療院の前には魔物の群れがいた。

 シルバーウルフと頭部に角の生えた緑色の巨人がいるのである。



「こっちは急いどるんや。一瞬で終わらすで」



 そう言って、薫は魔力を体に纏わす。

 オーバーキル出来るレベルの魔力で、入り口に溜まっていた魔物を回し蹴りで、薙ぎ払うのであった。

 全ての魔物が、一斉に玉突き事故でも連鎖的に吹っ飛んでいく。

 そして、壁にぶち当たった後、光の粒子へと変換されるのであった。



「さすが薫様です! カッコ良いのです!」



 うっとりした表情で、薫を見るアリシアを脇に抱えて、さっさと治療院の中に入ろうとする。

 然し、ドアが開かない。



「おい! この扉開けてくれへんか?」

「だ、誰だ?」

「ブルグから来た治療師や」

「ほ、本当か!!?」




 そう言って、部屋の中が慌ただしい音とともに開く。

 どうやら、ドアの前にタンスや材木で、魔物が入れないようにしていたようだ。

 薫とアリシアは、急いで患者の居る部屋に案内される。

 すし詰め状態になっていた。

 多分、魔物が湧いた為、中に入れるだけ患者を受け入れたのだろう。

 傷ついた者が何人もいた。

 アリシアに傷の回復を任せる。

 薫は、全員に『診断』を掛けて、どの程度進行しているかを確認する。

 この中にいる者達は、腎臓までには影響が出ていなかった。

 薫は、一安心し魔力を込め、この建物一帯を囲うようにする。

 全員を認識させ、医療魔法の『医療魔法ーー点滴』で治療院にいる患者全員に薬を投与する。

 腹痛などで苦しんでいた者は、魔法を掛けてから少しすると落ち着いていく。

 それを確認すると、アリシアを見る。

 アリシアも、怪我人の治療が終わっていた。



「ここの治療師で人間の奴おるか?」

「は、はい」

「患者全員に水分補給と、体力回復魔法を適度に掛けてくれへんか? それだけで、後は問題なく回復する」

「ほ、本当に助かるのか?」

「ああ、大丈夫や。あと、この病気は、亜人にしか罹らへん病や」

「!!! そ、それは本当ですか!」

「やから、人間で動ける者が居たら手貸してもらえ」

「わ、分かりました」



 薫はそう言うと、次の治療院へと向かう。

 アリシアも横で、走りながらついてくる。



「薫様、だ、大丈夫でしょうか……」

「今のところは、重症になる前に、処置出来とるから大丈夫や。出来るんやったら、もっと早めに出来とけばよかったんやけどな。そこが、ちょっと悔やまれるな」

「し、仕方ないですよ。薫様のせいじゃないです。もしも、薫様に何か言う人がいたら、私が……私が許しません!」



 そう言って、頰を膨らませる。

 薫は、アリシアの頭をポンポンと叩き言う。



「アリシアが。分かっとってくれれば良えわ。さて、此処からは、時間との勝負や」

「はい。付いていきます」



 薫とアリシアは、治療院を周り凄まじいスピードで、治療していく。

 途中、魔物と遭遇するが、一瞬にして消滅させるのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ファルシスに着いたダニエラとワトラと護衛部隊。

 こちらも、散々な状況であった。

 ワトラは、薫から着いたら飲むように言われていた丸薬を飲む。

 口の中で、噛み潰し、味わうと苦さに顔が歪む。



「くぅー」



 ワトラは、そう言いながら涙目で、地面を殴るのであった。

 何処に、この気持ちを吐き出せば良いか分からずの行動であった。

 ダニエラは、そんなワトラに水筒を渡す。

 ワトラは、ペコペコしながら、水筒に入った水をガブガブ飲む。

 落ち着いたワトラは、気持ちを切り替え患者の下に向かう。

 此方も、同じように護衛隊に魔物を任せる形を取る。



「あまり、無理をしないように」

「有り難きお言葉。では行ってまいります!」



 そう言って、魔物の駆除をして回る。

 ダニエラとワトラは、治療院に着き中に入ると、そこは異臭が漂っていた。



「これは……」



 ダニエラは、表情を顰める。

 ワトラも一緒であった。

 治療師も患者もその場に倒れ、虫の息であった。

 嘔吐物は、床に撒き散らし、掃除する者がいない。

 そのままの状態であった。

 ワトラは、表情が歪む。

 然し、ダニエラは、その者達に近付く。

 倒れている者を抱え、空いているベッドへ運ぶ。

 そして、範囲回復魔法『体力大回復サークル・エイルリザレクション』を唱える。

 一瞬にして、患者全員が赤い魔力に包まれる。

 ワトラは、その光景に目を奪われる。

 上級回復魔法の範囲型。

 それを使える者は、限られる。

 Aクラスの治療師と呼ばれるレベルが、これ程のものなのかと思う。

 BクラスとAクラスの間に、努力だけでは越えられない壁があると聞く。

 その壁をワトラは、初めて目にするのであった。

 自身では、到底辿り着けない。

 見る者を圧倒する魔力量。



「さあ、ワトラさん。薬をお願いします」

「は、はい」



 ワトラは、そう言われ急いで、一人一人に薬を飲ませていく。

 こちらは、時間が掛かる。

 ワトラの手作業になるからだ。

 ダニエラも、薬を飲ませるのを手伝っていく。

 人間の動ける者は、迷宮に潜らされていていないのだ。

 現在、護衛隊によって、街に現れている魔物の駆除が終われば、此方に応援が来る。

 それまでは、この作業で乗り切る必要もある。

 ワトラは、薫達が早くこちらに来てくれればと思うのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 魔物の湧きの早さに苛立つランドグリフ。

 倒しても倒しても湧いてくるのだ。

 大剣を片手で振るい、魔物を薙ぎ倒して行く。

 迷宮の入り口まで、目の前というところで、大型の魔物が現れる。

 ツノが生え、緑色の大きな巨人だ。

 入り口を遮るように立つ。



「何故こんなところに、ギガントインプがいるんだ!」

「如何しますか? ランドグリフ様」

「三人がかりで、蹴散らすぞ! 時間が掛かれば、それだけ被害が拡大する」

「分かりました!」



 三人で一斉に飛び掛かる。

 ランドグリフは、大剣で腹を切り裂く。

 護衛隊の二人は、遠距離から中級魔法での攻撃だ。



「クソ……やはり硬いな……内部まで切り込めなかった! 一旦、距離を取れ。迷宮の70下層相当の魔物なだけはある」



 そう言って、三人は態勢を立て直すために、一旦距離を取る。

 その瞬間であった。



「おーい。下がっとけよ」



 そう大きな声で言う。

 薫が、一直線上にいたギガントインプを回し蹴りで蹴り飛ばし、ランドグリフ達が戦っているギガントインプに打ち当てるのであった。

 そのままの迷宮の入り口に、二匹のギガントインプは、吸い込まれていく。

 ズドンと鈍い音がした後、奥の方で光の粒子が見えるのであった。

 あんぐりとした表情で、ランドグリフは迷宮の入り口を見る。

 ギガントインプが、消滅していることを再確認するのであった。

 薫は、アリシアを抱え、そのまま次の患者がいるであろう場所に向かう。



「う、嘘でしょ……副隊長……」

「信じられない……蹴り一撃で、ギガントインプを倒すなんて……」

「……」



 ランドグリフは、絶句して言葉も出ないでいた。

 冒険者ランクの高いランドグリフだが、今までギガントインプを一人で狩るなど出来ない。

 五人編成でやっと勝てるくらいだ。

 あんな簡単に、ボールを蹴るかのように、倒すことなど出来ないのだ。

 ダニエラに気に入られ、そしてこの戦闘能力だ。

 嫉妬心が膨れ上がる。

 然し、今はそんな事を思っている場合ではない。

 スッと切り替え、護衛部隊の一人を迷宮に入らせ、ランドグリフともう一人で魔物を狩る作業に戻るのであった。



 薫は、アリシアに怒られていた。

 脇に抱えられるアリシアに、くどくどと先程の行動について厳しい指摘を受ける。



「薫様、本当に隠す気あるのですか?」

「いや、ほら、あいつら手こずってたやん? 早よせんと、危ない奴らも出てくるやろうからつい……」

「あんなド派手に吹っ飛ばしたら、絶対目つけられちゃいますよ!」

「すまん。言い返せんわ」

「絶対に、次からはしないで下さい」

「もう手遅れかもしれんけどな……」

「それでも、め! なんですよ」

「わかった。次からは、せんから許してくれ……」



 だんだん、アリシアに頭が上がらなくなってきたなと思う。

 寧ろ、正論には勝てない。

 薫は、頭を掻きながら走る。

 ファルグリッドが終われば、次はファルシスが残っている。

 薫は、気を引き締め最速で行動していくのであった。


読んで下さった方、感想まで書いて下さった方、Twitterの方もなんやかんや、ありがとうございます。

誤字脱字指摘ありがとうございます。

直す時間が取れ次第直していきますのでしばしお待ちください。

一日前に、それなりに文章がまとまったので投稿します。

お暇な時に読んで頂けたら嬉しいです。

では、また一週間以内の投稿目指して、楽しく書いて行こうと思います。

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