広がる病
朝を迎え、日が昇っていく。
宿屋の共同スペースで、バッド達は他の探求者達を集め、ローテーションの変更を言うのであった。
「おめえら、すまんが俺とティスト、カールは、これからダルクさんと一緒にブルグに向かう事になった。片道6時間掛かる。だから向こうで一泊してそれから帰る予定だ。その間、俺らの抜けた時間をどうにか回してもらえると助かる」
「おいおい、アレだろ? ダルクさんに嫌がらせしてる奴らをギャフンと言わせるために行くんだろ? だったら任せとけ!」
「大船に乗ったつもりで行ってこいよ!」
「バッド達は帰ってこなくてもいいぞ〜! むしろ帰ってきても仕事が無い状態にしといてやるぜ」
探求者達はダルクの置かれている状況を知っている。
そして、それでも手伝いたいと言ってきた精鋭達だ。
今回の件も、何かしら邪魔をしに来る刺客がいてはいけないと思い、バッド達と皆がカバーしていくのである。
「皆さん本当にありがとうございます」
涙を浮かべながらダルクは、皆に頭を下げる。
皆は、ゲラゲラと笑いながら言うのであった。
「ダルクさんだから手伝うんだぜ! 他の奴から頼まれてもここまでしねーよ」
「そうよ。だから、頭上げて下さいよ。恩返しも兼ねてるんですから」
「そうだぜ!」
探求者達は、そう言いながら笑うのであった。
バッドは、ダルクの肩を叩く。
「これは、あんたが今まで積み上げてきた人徳だぜ。こんな時こそ、甘えるのもいいんじゃねーかと思うんだがよ」
バッドは、いい顔でサムズアップしそう言う。
「は、はい。皆さん少しばかりですが。よろしくお願いします」
「「「「「「任せとけぇええええ」」」」」
朝っぱらから大きな声が響くのであった。
見ていて清々しさを感じる。
「薫、お前も頼むぞ」
「上手く回せるように調整するから心配せんでええよ」
「ほ、程々にな」
「馬車馬のようにはせえへんから大丈夫やて」
「冗談はよしてくれよ。帰ってきたら、皆灰になってたらシャレにならんのだが」
「そんな心配するなや。今まで通りで、無理はさせへんから。寧ろ、病気一つ此処に来てから罹ってないやろ?」
「た、確かにそうだが……」
いまいち不安に思うバッド。
然し、薫の言う通りこのビスタ島に来てから、全くと言っていいほど病気に罹っていないのであった。
バッド達は、身体が丈夫という感覚しかないようだが、薫が診察をしている度に、ちゃんと処置している事が大きい。
たまに、薫が探求者達には体力回復剤などと言って、予防剤や薬などを渡したりしている。
直接言うと後々面倒という事で、敢えてそうしているのであった。
誰も知らない裏の仕事である。
そんな事を知らないバッドは、薫に言いたい放題なのである。
だが、薫はなんとも思っていない。
強いて言うなら、アリシアが少しムスッとするのである。
本当のことを言えばいいのになどと言うのである。
薫は、笑いながらアリシアに「知ってる人が一人いるだけでいい。それだけで、大分救われるから」と言うのであった。
「そう言えば、アリシアはどうしたんだ?」
「本当ね、珍しいわ。薫に、いつも引っ付いて離れないアリシアが居ないなんて」
「朝起きるのが半端なく苦手やからな。今頃、夢の中で楽しく走り回っとるんやないかな」
「とか言っちゃって、昨夜はお楽しみし過ぎたんだろ? ちっきしょ〜言った自分が惨めになるぅ。悔しいいいい。俺も嫁がほしいいいいい」
カールは、そう叫びながら地面を転がり悔しがるのであった。
何やってるんだかと思いながら、皆ため息を吐くのであった。
このような、残念なこと言ってるが、何も言わなければかなりモテるのだ。
然し、喋ると軽いとか、ギャップがあり過ぎてなどと言われる。
ちょっと可哀想なカールなのであった。
そうこうしてるうちに、海が引き潮になり、道ができる時間になったので、ダルクとバッド達は、出発するのであった。
皆は見送った後、ローテーションを組み直す。
チームを少数精鋭にして、三チームに別れる。
それで、乗り切る予定にした。
一応、明日には帰ってくる予定だが、何にがあるかわからない。
二、三日回る余力を残して組んでいくのであった。
薫は、そのローテーションの書かれた紙を貰い、どう対応するかを決めるのであった。
最初に潜る探求者達は、薫にサムズアップし、頼むぜなどと言いながら、迷宮へと向かう。
薫も一旦、治療院に戻り色々考えるかと思うのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
薫が治療院に帰ると朝の9時になっていた。
居住スペースのベッドの上で、体育座りをしながら、不貞腐れる者が一人と二匹いた。
「ふ、フーンだ」
「「きゅ、きゅー」」
頬を膨らませ、いじけているのである。
起こさず行ったことを怒っているようだが、自分が起きられなかったせいだと思っているから、強く出られない。
なので、小さな抗議活動として、このような行動を取っているのだ。
何故か、ピンクラビィまで味方に付けているのが、ちょっと笑えた。
何処で、意気投合したのやらといった感じで、息がぴったりなのである。
ピンクラビィも、随分体調が良くなったみたいだなと思いながら、薫は見るのであった。
「どうしたんや? そんな不貞腐れて」
「な、何でもないですよ〜」
「「きゅ〜きゅきゅ〜」」
薫は、分かっていながら聞くのであった。
相変わらず、同じような態度であった。
このままの状態が続くのは、宜しくないので、外壁を崩しにかかる。
「そう言えば、昨日作っておいた新しいデザートがあるんやけど……食べるか?」
「そ、そんな、餌で釣られるような私では……って、ピンクラビィちゃん!」
「「きゅ、きゅー♪」」
ピンクラビィ二匹は、簡単に釣られるのであった。
二匹は、ぴょんぴょん跳ねて、薫の肩によじ登っていく。
よじ登った二匹は、薫の頬に両側から頬擦りをする。
肌触りが良く、気持ちが良かった。
薫は、ニヤリとしてアリシアを見ると、アリシアは降参と言った感じで、体育座りを止めてベッドから降りるのであった。
「ご、ごめんなさいです」
「別に構わへんよ」
「で、でも、次から起こして欲しいです。薫様と一緒に行きたいのです」
「うん、わかった」
そう言いながらアリシアの頭を撫でる。
嬉しそうに喉を鳴らすアリシア。
然し、薫の肩に乗ってる二匹は、ぐりぐりと頬擦りを激しくしながら、デザートを要求するのである。
非常に鬱陶しい。
耳の近くできゅーきゅーと鳴くのである。
仕方ないと思い、薫は肩に乗っている二匹をアリシアの頭に移動させ、準備をする。
冷やしていたカスタードクリームに、乾燥させたドライフルーツを混ぜ、パイ生地のようなパンの上に乗っける。
最後にハーブ添え完成。
「こ、これは、なんともです。ごくり」
「「きゅ、きゅー」」
目を輝かせながら見つめる。
お皿に切り分けアリシアとピンクラビィに出す。
「薫様は、魔法使いのようです! こんな、美味しそうな物を作り上げるなんてすごいのです。むふー」
ちょっとアリシアの鼻息が荒い。
かなり興奮しているようだ。
「甘い物食べんと、脳が回らんからな。これから、まだ調べないけん事が山積みやしなぁ……」
少し、溜息混じりに言う。
ここ数日、【解析】で得たかなりの資料に目を通し、それを全て処理したりしていた為、少し参っているのであった。
それに加え、アリシアの魔導書作成に練習を見たりなどで、殆どハードスケジュールなのである。
元いた世界でも、このような感じの私生活をしていたが、終わりの見えない調べるこちらの作業の方が、体にこたえるのである。
薫は、デザートを口に運び甘さを堪能する。
アリシアとピンクラビィもぱくぱくと食べていく。
幸せそうな顔で、何よりといった感じだった。
食べ終わり、お茶をのんびりと飲んでいたら、アリシアが唐突に口を開く。
「薫様! 私に体術を教えて下さい」
「へ?」
余りの唐突な言葉に、素っ頓狂な返事で返してしまう。
いきなりどうしたのだと言った感じであった。
「いや、何で体術なん? 別にそれに拘らなくてもええんやないか?」
「そ、それは、こ、効率がいいからです!」
目が泳いでいる。
同じが良いのか?
多分それだけの理由ではないかと思ってしまう。
然し、次の言葉で薫は、仕方ないかと思うのである。
「そ、その……始めは、後方支援で、弓をと思ってました。ですが、魔力の保有量が多いので、接近戦でも大丈夫と思いました。それに、武器に纏わすのが難しいというのもあります」
「あー、うん。確かにそうやけど危ないで? 俺は、元々合気道って言う武術と古武術習うてたし、そのスキルがあるからなぁ」
「お願いします」
薫は、真剣なアリシアに負け、使えるかどうか分からないが、一通りの基礎を教えてみた。
「それじゃあ、魔力強化も使いつつ俺に攻撃してみ」
「は、はい」
腰を落としアリシアは、拳に魔力を込め薫のお腹に正拳突きを放つ。
薫は、合気道のスキルを使わずに、アリシアの纏った魔力量を見ながら自身の強化をする。
スキル発動してしまうと、カウンターをアリシアが受けてしまうからだ。
要するに、相殺してみようよ思ったのだが、目を瞑りながら放つアリシアの拳は、魔力のブレ幅がありすぎた。
薫のお腹に到達した時、若干だが薫の魔力が上回った。
アリシアの手首がクキッと曲がる。
「ふにゃー!」
「あ……」
アリシアは、手首を押さえながらほろほろと涙を流す。
「痛いのです。薫様、痛いのです」
「わ、悪い。怪我してないか?」
「ちょっと、クキッとなっただけです。大丈夫です」
「うーん。やっぱり危なさそうやから、他のにせえへんか?」
「も、もう少し考えてみるのです」
そう言いながら手を摩る。
薫は、アリシアに回復魔法を施し、体術ではなく遠距離からの支援に、考え直してくれないかなと思うのであった。
薫は、頭を掻きながら色々考える。
今のところは、いい案が浮かばないので、ゆっくり考えていこうと思うのであった。
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ファルグリッドの冒険者ギルドの個室で、インリケはキディッシュとヴォルドに報告していた。
「問題ないんだな?」
「はい、大丈夫でございます。すべて、順調に事は進んでおります」
「いい報告を受けた。あーマジで楽しみだぜ。がはははは」
「先日、血相変えて走り回ってたと耳にしてなぁ。別に、お前を疑ってるわけじゃねぇんだけどよぉ」
「はい、気になる事を言っていたので、その確認を兼ねてちょっとですね」
涼しい顔でそう言うとインリケ。
キディッシュとヴォルドの揺さぶりに、全く動じる気配はない。
その態度で、二人は納得する。
全くもって問題無いと。
やましい事があれば、言葉に変化が出る。
今のインリケには、全くそのような感じはしないからだ。
「なら良いんだ。仕事中にすまんな」
「いえいえ、此方もそのような事を耳に入れさせてしまい、誠に申し訳ありません。彼奴らが完全に落ちるのは、二回目の徴収を掛ければいけるかと。払うことが出来ないと思いますので……それだけはご理解下さい」
「二回目の徴収は、すぐにでも掛けるか? 出来るだけ早くしろよキディッシュ。俺は待てそうにないぜ」
「たく、てめぇって奴は本当に……できるだけ早くやってやるから待っとけ」
「がはははは、すまんなぁ」
薄気味悪い顔で笑うヴォルド。
表情一つ変えず、インリケはニコニコとしているのであった。
「それでは、私はこr……ゴホゴホ」
「おいおい、迷宮熱か?」
「す、すみません。ゴホゴホ……」
「手で押さえろよ……たくよぉ」
インリケは、頭を下げながら謝る。
「良いじゃねーか、特効薬も出回ってるんだ。ブルグから薬がもう出回ってるんだから問題ねぇよ」
「そうだけどよぉ。俺はあれが嫌いなんだよ。疲労感がハンパねーんだよ」
「お前くらい元気なら何もしなくても大丈夫だろ」
「他人事だと思って言ってんだろがよぉ。キディッシュお前も罹ってみろ。マジで何もする気起きねーんだからよ」
冗談めかしく言う二人。
インリケも二人から言われ、迷宮熱にでも罹ったかと思うのであった。
二人は、そのまま冒険者ギルドを後にする。
インリケは、その場に残り二度目の徴収の為の書類を作成するのであった。
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広大な森が広がる。
街道をのんびりと走る。
パカパカとリズム良く馬の走る音が聞こえる。
日差しも気持ちよく眠気を誘う。
ダルク達は、無理の無い移動速度でブルクを目指していた。
ゆっくりと馬車を走らせていた為ブルグに着いたのは15時になっていた。
森を抜けると山をくり抜いて作られた街が見えた。
城壁は、石垣で4メートルはあるだろうか。
街に入る為、門をくぐる。
そこには、水路が至る所にあり、自然豊かな街が広がっていた。
珍しい薬草や花などが植えられていた。
甘い香りが、ダルク達の鼻を擽る。
疲れが取れるような感覚に陥る。
「いやぁ、かなり綺麗な街だな」
「そうですね。見ていて心が安らぎます」
「流石、エクリクスに繋がりのある街は違うわね」
「そこら中に、薬剤に使う薬草が植えられてるしな。それに……綺麗なおにゃのこが多いぜ!」
「はぁ、カール少し黙ってなさいよ」
「な、なんでだよ! 良いじゃねーか。此処なら玉の輿も夢じゃないだろ。薫に良いだろって、自慢できるような美女をだなぁ……」
「カール……遊びに来たわけじゃねーんだぞ?」
「あ、すまん。俺とした事が、余りにも島に女っ気の無さに、オオカミさんになるところだったぜ」
「カールさんは相変わらずですね……」
ダルクがそう言いながら笑うのであった。
バッドとティストは、溜息を吐きながら呆れるのである。
頭を掻きながら苦笑いになるカール。
バツの悪そうな顔になっていた。
「よ、よーし、そんじゃあ聞き込みをしていこうぜ」
「そうだな」
「私は、ここの領主さんに挨拶をしてきます」
「わかった。じゃあ、俺らは聞き込みをしてくるから、ダルクさんそっちが終わったら、冒険者ギルドに居てくれ」
「わかりました。では、後ほど」
そう言うと、ダルクはブルグの最奥にある、大きな屋敷に足を運ぶのであった。
バッド達は、手分けしてこの街の離れに住む、治療師の情報を聞き込みに別れた。
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この街で一番大きい屋敷に到着したダルク。
門番に、自身の冒険者の証を出し身分を伝える。
門番は、直ぐに領主にその事を伝えに行って貰った。
ダルクは、門番に何度も頭を下げながら、事前に連絡をしないで来て申し訳ないと言うのであった。
余りにも、貴族としては腰が低いダルクに、門番も焦るのであった。
少しして、中から戻ってきた門番が、ダルクに中へどうぞと言い笑顔で通すのであった。
何やら、領主はダルクのファンだとか。
冒険者として、未知の大陸を見つけたりなどの活躍は、意外と有名のようだ。
そして、領主はダルクの話が聞きたいと言ってきたらしい。
ダルクは、話が長くなりそうだなと思いながら、バッド達にどう伝えようかと思うのであった。
屋敷に入ると、中は落ち着いた空間になっていた。
金持ちという象徴をした物がほとんど無い。
数人のメイドに出迎えられる。
皆、綺麗で若い。
亜人も混ざっていた。
部屋の飾りなどは、小物が多いといった感じであった。
奥に通され、ドアが開くとそこには、小さな女の子が、大きな椅子に座っていた。
髪の毛はセミロングで、一つに束ねて三つ編みにしていた。
綺麗な淡い緑色の髪の毛は、綺麗で透き通っていた。
身体は、小さいが出るところは出ている。
薄手の生地の法衣を着ている。
書類に目を通しながら印判を持ち、ポンっと印判に魔力を流しながら判を押していく。
ダルクに気付くと、その少女は椅子から飛び降り、ダルクの方へ走ってくるのであった。
嬉しいのか満面の笑みである。
ダルクの前まで来て立ち止まる。
ダルクの顔を見た瞬間、その少女はカッチンコッチンに緊張して、口をパクパクしながら喋るのである。
「だ、ダルク様! よ、ようこそ我がブルグへ」
「はい、お忙しい中、私の為に時間を作って頂き、有難うございます。ビスタ島の村長として活動しております。ダルク・レイデットと申します」
ダルクは、深々と頭を下げながらそう言った。
少女は、そんなダルクの姿を見て、あたふたするのであった。
自身の最も尊敬するダルクが、年端の行かない少女に頭を深々と下げているのだ。
パニック状態になりながらも少女も自己紹介をする。
「ぶ、ブルグの領主のラズ・クリュウゲルです。じゅ、十才です」
そう言うと、ラズもペコペコと頭を下げるのであった。
二人は、顔を見合わせクスリと笑うのであった。
メイド達も、ラズのそのような取り乱した姿など、見たことがなかった。
その為、皆驚くのである。
「ダルク様は、今日はどうして此処に?」
「お恥ずかしいのですが。現在訳ありで、治療師を探しているんです」
それを聞いた瞬間、ラズの表情が曇る。
そう、この街はラズが領主として、此処まで大きくしたが、治療師の勢力に押され現在、力関係で負けているのだ。
その為、治療師ギルドにビスタ島へ誰かを派遣してほしいといった事が言えないのだ。
それが分かっているから、ダルクはその事はラズには頼まないのだ。
その代わり、この街の離れに治療師が住んでいるという情報を、教えて欲しいと聞くのである。
それを聞いた瞬間、ラズはスッと大人びた感じの雰囲気を放つ。
顎に手を当て、記憶の中を探していく。
すると、「あ!」っと言うと何か思い当たる節があるようだ。
「一人いらっしゃいます。腕は確かです」
「ほ、本当ですか!!? 良かった。1年前の情報でしたので、もういないかと思ってました」
「はい。しかし、ちょっと難があるんです……」
「うーん。何となくわかります。揉めたんですね治療師ギルドと」
「はい。なので、それも含めて了承するか、しないかになると思います。出来れば、契約して頂ける私も嬉しいのですが……」
ラズの口調から、それ以外にも何かあるのだろうと思ったが、ダルクはそれ以上は聞かなかった。
本人に会い直接聞くのがいいと思うのである。
私事は、このくらいにしてといった感じで、ダルクはラズに冒険の話を切り出す。
すると、花が咲くかのように、嬉しそうに聞きたい事を聞いてくるのであった。
ダルクも聞かれた事に答えたり、未知の大陸の話でラズは大いに盛り上がるのであった。
年相応の顔になり、目を輝かせながら、うっとりとダルクの話を聞く。
いつか自身の足で、そのような未知の大陸に行ってみたいと興奮しながら言うのであった。
「やはり素晴らしいです。ダルク様は、とんでもない偉業を成した方です」
「そんな、まだまだですよ。この世界は、まだ四分の一しか開拓できてません。私が見つけたのは、それのほんの一欠片ですから」
「それでも、新大陸ですよ! 未だに見つかっていない新大陸! そこに住む人々は、どのような方なのでしょうか?……迷宮はあるのでしょうか? あー、私も行きたいです」
ダルクは、クスクス笑いながらラズを見るのであった。
自分の娘も大きくなったら、こんな事を言うのかなと思いながら、ラズと話をする。
そんな事をしていると、日は落ちて、辺りは暗くなってしまっていた。
「はぁ、楽しい時間は経つのが早いですね。お母様がいらっしゃれば、もっと話が弾んだと思うのですが」
「ラズさんのお母さんですか? あ! クリュウゲルの姓って事は」
「あははは、ダルク様、今頃気づかれたのですか?」
クスクス笑いながらラズは言う。
「これは失礼しました。まさか盟友の娘さんとは……ベルニスはお元気ですか?」
「未だに未知の大陸を探してますよ。娘にこの街を任せて」
「相変わらずですね……」
「仕方ありませんよ。ダルク様が、先に見つけてしまわれたのですから」
「いえいえ、ベルニスの方が早かったですよ。だから、貴族になってこの土地を任されたんですから。いや〜、なんとも言えない衝撃でした。妊娠してたのに、普通に冒険をなさるんですから、ヒヤヒヤしましたよ」
「はい、お母様がその時、物凄く怒られたよ〜とか言ってました。産んで、すぐ復帰してドタバタだったらしいです」
「相変わらずパワフルですね……」
「三年前までは、ブルグも小さな村だったんですよ。何とか経営できてるといった感じでした」
「ベルニスには、荷が重いかもしれませんね。ジッとしていられない性分ですから。それに比べてラズさんは、このような仕事に向いてるのでしょうね」
「いえいえ、全然です。街が大きくなったら、今度は色々と厄介ごとが増えましたから」
溜息交じりに言う。
ダルクも溜息を吐く。
同じように街の経営は難しいのである。
しかし、こんな小さい頃から、よくこのような経営ができたなと感心するのだが、ベルニスのように、していてはならないという事はわかったのであろう。
悪い反面教師がいると、よく育つのかなと思うのであった。
ちょっと、ベルニスには失礼かなと思いながらそんな事を思う。
「おっと、いけません。仲間を待たせているんでした」
「そ、それはすいません。私とした事が……」
そんな事をを言っていたら、メイドが一人ドアをノックする。
返事を返し、中に入ってくると何やら、バッド達もこの屋敷にいるようだ。
冒険者ギルドで待っていたが、幾ら経っても帰ってこないので、ここにやってきたのだ。
ダルクは苦笑いをしながら、メイドにバッド達の所まで送ってもらう。
ラズに別れを告げ、部屋を出るのであった。
客間に案内され、バッド達と会うと三人は良い顔をしながら、入手した情報をこれでもかと報告するのであった。
明日、その治療師の下に行くことを決める。
情報を整理すると、その治療師の名前は、ワトラ・シュリーク。
治療師ギルドと揉めて、現在ほとんど無収入ではないかという事。
原因は、新たな病は目に見えないくらい、小さな生物がもたらしているのではないか? と言う仮定の話でも揉めに揉めたからだ。
治療師ギルドは、それを確認する事など出来ない。
あるなら見せてみろといった感じで、煽ったらしい。
勿論、ワトラはそんな事が出来るわけもなく。
証明できず、挙句にエクリクスの者にも、そのような事を言ったら頭がおかしいのか? とまで言われ、思わず手が出てしまったとの事。
現在は、貯蓄を崩しながら生活をしている。
「け、喧嘩っ早い方なのでしょうか?」
「いや、わからん。だが会えばわかるだろ」
「そうね。会ってみないとわからないわ。明日に備えてさっさと宿屋に行きましょう」
「そうだな。てか、今日は頑張ったから酒飲んでもいいかなぁ?」
「カールあんたねぇ……」
「まぁまぁ、良いじゃないですかティストさん。皆さん、今日1日頑張ってらっしゃったんで、飲んでください」
「さっすが、ダルクさん!」
「カールあんまり飲むんじゃねーぞ」
「わかってるよ。任しとけ」
いい笑顔でサムズアップする。
これほど、信用できない顔はないと思う、バッドとティストなのであった。
屋敷を出る時メイドのみんなが、また来て下さいと丁寧に言ってきた。
ダルクは、深々と頭を下げその場から去るのであった。
四人は、宿屋に入り晩ご飯を食べながら、ゆっくりと過ごすのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜も更け、辺りは真っ暗になっていた。
咳き込みながら、インリケは家路に着く。
ピンクラビィを世話するメイドが、インリケを気遣い肩を貸す。
「クッソ、迷宮熱に罹っちまった。ゴッホゴッホ」
「し、しっかりして下さい。今、治療師を呼びますので」
「ああ、頼む」
メイドは、急いで治療院に向かう。
ファルグリッドで、一番の治療師の下へ。
治療師を連れて帰ってみると、少し弱った感じで、壁に体を預ける状態でいた。
治療師は、夜遅くだった為、インリケの症状をあまり見ず、体力回復魔法と迷宮熱の薬を投与する。
メイドから迷宮熱と言われ、先入観もあった。
見逃してはならない迷宮熱との違いが、出ていたがそれには気が付かなかった。
インリケは、そのままベッドまで運ばれる。
同じ亜人の治療師は、インリケを軽々持ち上げ運ぶのであった。
メイドは、薬を受け取りお金を渡す。
来て貰ったので、料金は倍かかる。
メイドは、四万リラを払い治療師を見送る。
メイドは自室に帰ると、ピンクラビィの世話をする。
ブラシを掛けてあげ、餌を与える。
メイドをジッと見つめるピンクラビィ。
邪な考えもなく接すると懐くと言われる。
まだ様子見といった感じのようだ。
トボトボと歩き、クッションの上に丸々、眼だけをメイドに向けてである。
メイドは、ピンクラビィを見つめながら言う。
「本当は、逃がしてあげたいのですが……ごめんなさいね。主人様には逆らえません。隙あらば、逃げていただけたら幸いです。私は、……落ちるところまで落ちるでしょうね。昔は、罪悪感などもあったのに……今では何も感じません。慣れというのは怖いです……」
独り言のようにピンクラビィにそう呟くメイド。
少し、悲しそうな目になる。
そんなメイドにピンクラビィは、体を起こし擦り寄り、メイドの指に顎を乗せるのである。
「あらあら、私なんかになついたらダメですよ。不幸せになっちゃいますよ?」
「きゅ〜?」
そのまま目を瞑り眠りにつくピンクラビィ。
メイドは優しく撫でながら、そんなピンクラビィを見つめるのであった。
「これは……私動けないですね」
そう言いながら優しい顔になりながら、苦笑いを浮かべるのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜の十二時を過ぎた頃。
机に突っ伏しお疲れモードでグッタリするダニエラが居た。
書類の山に、頭を抱えやり切れない顔でいるのであった。
「もう無理、どれだけ私に雑用をさせる気ですか。あの老害どもは」
そう言いながらも、ちゃんと目を通すあたり、十賢人の一人といったところだろう。
赤髪をかき上げ、溜息は吐く。
そうしていると、一つ気になる書類を見つける。
「ファルグリッドとファルシスの治療師ギルドで問題あり……ですか。ブルグの奴ら、このくらいどうにかしてくださいよ……はぁ。丁度いい、五日後に視察もあります。その時に一旦締めますか……。息抜きに観光でもしますか」
そう言いながら残ってる書類を片付けるのであった。
そうしていると、トントンとドアをノックする音が聞こえる。
返事を返すとドアが開き、中に入ってくる者がいた。
透き通るほど綺麗な容姿、まだ幼いその子は、このエクリクスの象徴とも言える大神官ティナであった。
「ダニエラ? 遅くにごめんにゃ」
「どうしました?」
笑顔でそう返すダニエラ。
ティナは、とぼとぼとダニエラに近づき、ダニエラにギュっと抱きつくのである。
「うふふ、甘えに来たのですか?」
「い、いや……疲れているかと思ってにゃぁ。少し元気のお裾分けをですにゃ」
「本当にそれだけですか?」
「嘘ついたにゃ。ダニエラ最近根詰め過ぎにゃ。心配にゃ」
「優しいですね。ティナは本当に」
そう言いながらダニエラは、ティナの頭を撫でる。
ゴロゴロ〜と、喉を鳴らしながら嬉しそうにするティナ。
「必ず、約束は守ります……ですから、もう少し待っていてください」
「ダニエラ……無理だけは絶対にしないでにゃ。私は、それだけが心配にゃ」
「はい、約束します。どんな事があろうとも私は、あなたの味方です。全てが敵になったとしても……」
「うん……わかってるにゃ。ダニエラありがとにゃ」
ティナは、優しくダニエラの背中を擦るのであった。
ダニエラは少し悲しそうな顔をするのであった。
はいすいません。
予約投稿ミスってました。
起きて速攻投稿しております。
読んでくださった方、感想まで描いてくださった方、Twitterの方でも絡んでくださる方有難うございます。
感想等全て見させてもらっております。
返信できなくてすいません。
はい、やらかしてますね。
お疲れモードで、作業するものではないです。
完全にミスってしまってました。
次回はこんなことないと思いたい……。




