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貴族墜落作戦!7

 15時を回った頃。

 薫は、頭をハンマーで殴られたような頭痛に嫌な汗を掻き魘されていた。

 顔色も悪く呼吸も荒い。

 薫のそんな表情を見て、アリシアは心配そうな顔をしていた。

 魔力欠乏症を軽く見ていたのもある。

 朝のあの浅はかな自分の行動に怒りを覚えた。

 それに何も出来ない無力な自分にも少し、嫌気が差す。



「これで、少しでも楽になるでしょうか」

「……」



 アリシアは、そう言いながら薫の額にひんやりとしたタオルを載せる。

 少しでも楽になればいいという思いからくる行動だった。

 今日、薫を無理に起こしたのも関係がある。

 魔力欠乏症の人の強制回復を阻害すると身体に尋常ではない負担がかかる事は、アリシアは知っていた。

 だが、ここまで酷いとはアリシアも知らなかったのだ。

 薫の使ったMPのことを知らないのだから仕方がない。

 


「薫様……」



 薫の手を握り消え入りそうな声で、アリシアは言葉を紡いだ。

 手の体温は、低く冷たくなっていた。

 このまま薫が、死んでしまうのではないかと思うくらい弱っている。

 こんな時に自分が、体力回復の魔法の一つでも使えればと思う。

 そんなことを考え俯き目尻に丸い涙を溜めて、しょんぼりとしていると優しく頭を撫でられる。

 それにぴくりと反応し、顔をゆっくり上げるといつもと変わらない笑顔で薫は、アリシアの頭を撫でていた。



「薫様大丈夫ですか?!」

「ああ、なんとかなぁ」

「やっぱり無理に起こしたのが悪かったんです。私のせいです」

「頼んだのは、俺やしアリシアちゃんが気にすることちゃうで」

「でも……」

「まぁ、少ししんどいだけやしな」

「薫様は、嘘つきです! そんな訳ありません!」

「うーん。まぁ、耐えれるくらいやから平気や」

「心配なんです……長すぎるんですよ。魔力欠乏症は、一日くらいで治るはずなのに」

「俺は、特殊なんよ。やから心配せ……」

「ダメです! 治るまでは、絶対安静です!」

「嫌でも明日もちょっと出ないと……」

「むぅぅうう」

「わ、わかった。ちゃんと魔力欠乏症が抜けるまでは、じっとしとくから、そんな顔せんでくれんかなぁ」

「絶対ですよ。嘘ついたら私怒りますからね」

「しゃーない」



 アリシアのぷーっと膨れた顔に苦笑いしながらここは、従っておこうと思う薫なのであった。

 それに明日には、魔力欠乏症が抜ける頃合いだし、カインの所で作った薬の効き目に三日は、いるのでそれまでに本調子になればいいと思う。

 そんなことを考えていたらアリシアは、薫の胸に顔を埋めてきて小さく震えていた。

 すすり泣く声でアリシアは、薫に言う。



「嫌ですよ……薫様あんなに苦しんでるのに……あのまま死んじゃうのかと思いました……」



 自分が、眠りに就いている姿が、相当苦しんでいたのだろう。大丈夫と言っても効かなかったのは、多分それが原因なのだろうなと思った。

 心配かけまいとした一言が、無理していると取れてしまった。

 埋めているアリシアの頭を撫でながら薫は、脳が回らない状態で何となくアリシアに聞く。



「アリシアちゃんは、なんでそんなに俺のことを心配してくれるんや? ただ、病気を治したくらいしか俺はしとらんで」

「え、えっとそれは、命の恩人というのはでかいですよ。それにごにょごにょ」



 最後の方は、か細く薫には聞こえなかった。



「俺は、アリシアちゃんを傷つけるかもしれへん……そう遠くない未来に失望するかもな」

「えっ?」

「いや……なんでもないわ。忘れてくれ」

「うふふ、大丈夫ですよ。どんなことがあっても私は、失望も傷ついたりもしません。私は、薫様が悪い人でも薫様の味方ですよ。たとえ誰がどんなことを言おうとそんなの関係ないです。それに薫様が、私を傷つけてしまうからといって、離れようとしても駄目ですよ! 私は、くっついて行くんですからね。だってあの時薫様が、掛けてくれた言葉に私は、安心もしました。悪い人が、あんな人の心を動かす気持ちのこもった言葉は出せませんよ」



 埋めていた顔を離し、ちょっと意地悪じみた表情のアリシアは、どやっと言わんばかりに言うのである。

 その言葉に薫は、目を丸くしてそしてクスっと笑う。

 こんな自分にここまで言ってくれるとはなと思いながらそっとアリシアの身体を優しく抱き寄せ耳元で「ありがとな」と言う。

 するとアリシアは、ポンっとゆでダコのように真っ赤になり、キューっと言いながら目がぐるぐる回っていた。



「だ、大丈夫か? あ、アリシアちゃん??」

「か、薫様からギュ~っと……ギュ~っとされちゃいましたぁ~。はぅあわわ」

「あ、大丈夫そうやな」



 幸せいっぱいな表情のアリシアに薫は、



「もしもやで……俺が【エクリクス】の治療師でもなんでもなかったらどうする?」

「ん? なんとも思いませんよ。薫様は薫様です。もうどうしたんですか? 急に」

「いや……なんでもないわ」



 屈託のない笑顔でそう返してくるアリシアに薫は、難しく考えていた事が馬鹿らしくなってきた。

 それに、ここまで言ってくれているアリシアにこれ以上嘘をつくのが嫌になったのもあった。

 言って失望されてもいいとすら思う。



「アリシアちゃん。俺は、【エクリクス】の治療師やないんよ」



 薫は、真剣な表情で言う。

 アリシアの先ほどまでの緩んだ表情は消えていた。

 そして、アリシアは薫に優しい笑顔で言う。



「 なんとなくですけどそうじゃないかと思ってました」

「ん?なんでや?」

「だって薫様が【エクリクス】の治療師だったら最前線で、統括していてもおかしくないですし、私の病気を治す魔法も今迄10年以上は、手付かずです。それが早い段階で、ここに来てまですることは無いと思いました。何より薫様は、【エクリクス】の人の思考と余りにもかけ離れてますし」

「そんなに違うんか?」

「はい。基本的には地位と権力とお金の亡者といった感じでしょうか。私が、初めて【エクリクス】に行った時に思った感想です。今の大神官様は、そんな風には見えませんでしたけど……」

「大神官様は、まともっちゅうことか」

「本当に知らないんですね」

「さっきも言ったけどそんな場所行ったこともないからな」



 からからと笑う薫にアリシアも笑うのであった。

 薫は、ふと疑問に思ったことを口にする。



「俺が来るまでに他にも色々な人が、来たりとかはあったんか?」

「はい、相当お父様騙されましたね。私の病気が治るならいくらでも出すし、いろんな薬も買ってましたから」

「凄すぎやな……まぁ父親ならそこまでするかな。でも騙されすぎやろ」

「仕方ないですよ。何が効くとかも分からないんですから、来る人の物を片っ端から買い取ってました」

「それもそうか。俺は、分かるからそう言えんのかもな。第一にそう簡単に治るようなものじゃないってことは、分かりそうなんやけど。俺でも定期的に検査して、異常がないか調べないと不安やしな」



 穏やかな表情で、アリシアの目を見ながらそう言うと、



「やっぱり薫は、違います」

「ん? なんか言ったか?」

「別にですよ〜」



 えへへと言いながらアリシアは、ベッドからするりと降りてくるっとターンをする。



「薫様ありがとうございます」

「面と向かってそう言われると恥ずかしいな」



 アリシアの純粋なその言葉に薫は、こそばゆくなるのであった。

 その後、薫はアリシアの監視のもと睡眠をとる。

 カインとサラが帰って来るまで薫は、眠っていた。

 目が醒めるとカリンが、にやにやとした表情で、薫の方を見ていた。



「おはようございます。薫様お嬢様から聞いておりますよ〜。魔力欠乏症だったんですね」

「すまん黙っとって。アリシアにもカインさんにも迷惑かけてもうたわ」

「いいんですよいいんですよ〜。お嬢様が幸せそうなんで」

「ん? あ……」

「そのまま襲っちゃってもOKですよ。薫様」



 アリシアは、いつの間にか眠ってしまっていた。

 薫の手を握ったままその手を頬に当て眠ってる。

 その光景を見てカリンは、薫をちゃかすのであった。



「なんや? お仕置きでもされたいんかなカリン?」

「お嬢様にしてあげたら喜ぶかもしれません」

「カリン!!? な、何言ってるんですか!!」

「あら? お嬢様起きてらっしゃったんですか? 残念です……薫様から鬼畜で卑猥なことをされちゃうチャンスでしたのに」

「おい、カリンお前は俺がどんな奴に見えとるかなぁ」

「ドSな鬼畜治療師です☆」

「よし表出ろ。その体に減らず口叩けんくらいの教育したるわ」

「私の体の自由を利かなくし、無理やり調教をされちゃうんですね……」

「なんかお前の相手してたらだんだん疲れてきたわ。はぁ、まともな奴が居らんとここまで酷いとはなぁ」



 カリンは、冗談で両頬に手を当てて、体をくねくねさせる。

 薫とカリンの話を聞いて、顔を真っ赤にさせたアリシアは、何やらブツブツと言っていた。

 その光景に額に手を当て溜め息を吐く。

 そんな薫にカリンは、



「でも薫様は攻めですし、受けのお嬢様にはご褒b……ふべらぁああ」

「な、な、何言ってるのですかカリン!」



 スパーンスパーンっと高い音が部屋に響く。

 アリシアは、ゆでダコのように体を真っ赤にし、カリンの脳天にスリッパで渾身のツッコミを入れていた。

 物凄いスピードでのツッコミに薫は、きょとんとしながらアリシアを見るのであった。

 カリンは、後頭部を強打され鳴ってはない音と共に倒れた。



「薫様! カリンの言っていた事は気にしないでください。いいですね! ね!」

「あ、はい」

「お嬢様必死過ぎですよ〜」

「復活早いな」

「メイドですから」

「むぅ〜」



 アホな事その後も繰り広げながらその度にカリンは、アリシアからスリッパで殴られ幸せそうな笑顔を浮かべるのであった。

 Mっけなのかアリシアにそうされるのが、好きなのかどっちかなと思う薫なのであった。



「楽しそうね〜。私も混ざりたいわって言いたいのだけれどもカリン……夕飯は、どうなってるのかしら?」



 サラの登場にカリンの表情は見る見る青ざめ脱兎のごとくキッチンへと向かうのであった。

 食事の終わった後こっ酷くカリンは、サラにしぼられる事になる。



 大急ぎでカリンは、食事の準備をした。

 サラの雷は、とても怖いのであろう。見たこともないような速さで料理を作り上げていった。

 何とかいつもの時間に間に合い安堵のせいかカリンは真っ白く燃え尽きていた。



 食事をし終え席を立とうとするのを薫は止める。

 自分が【エクリクス】の治療師でないことを明かすためだ。

 その場に残ってもらい全員に頭を下げ自分の付いた嘘を告白した。

 するとカインは、大きく笑いながら薫の背中を叩いた。



「正直驚きましたけどそこらへんは、気にしなくてもいいですよ。何よりアリシアが、こんなに元気になって、あんなにはしゃいでいるんですよ。私は、今でも夢を見てるようですよ。まぁ、大神官様からの命って、言われなければ追い返すところだったのは事実ですね」

「ん? どういうことや」

「【エクリクス】で、大神官様に見てもらったんです。その時本気で、心配して治せなかったことを謝って来られたんですよ。絶対に治す魔法を作るから待っていて下さいってね」

「ええ奴やな。でもそれ以外がダメってどういう事や?」

「うふふ、その後にアリシアを【エクリクス】に置いていけって、十賢人に言われたのよぉ。ここにいた方が早く対処出来るからってねぇ。ねぇカイン」

「ああ、でも私とサラは、直感的に此処にアリシアを置いて行ったらいけないと言う警鐘っぽいものを感じたんだ。嫌な予感もしたし、何よりあいつらの目は、人を見る目ではなかった。研究材料や物を見るような目でアリシアを見ていたのが、何よりも気に食わなかったからなんだよ」

「なるほどねぇ。それで、俺が来た時に大神官様の命って言ったから安心もしたんやな」

「それもあります。十賢人やその他の名前が出て来たら亡き者にしても良いとすら思ってました」

「後から聞いても冷や汗もんやな。ん? ちょっと気になるんやけど大神官様と十賢人ってどっちが位が上なんや?」

「知ってる者は、数少ないですが表向きは、大神官様が一番位が高いと言われています。表向きは……」

「なるほどなぁ。ええように扱われとるちゅうことか」

「うふふ、私達も独自に色々調べたりしたんですが。分かっているのはこのくらいで、一切情報が出てこないんですよ。それだけに不気味っていうのもあるんです」

「色々きな臭い噂話も流れていたりなどもありますが、噂だけで証拠もないといった感じです」

「まぁ、関わらんほうがええちゅうことやな。【エクリクス】に行くことはないし、素性もばれてへんから俺は平気やな」



 薫の最後の言葉にカインとサラは同時に、



「「あ……」」

「「え?」」



 ちょっと抜けた感じの声で、二人ともハモって声が出た。



「お父様お母様如何されたんですか?」

「おいおい、まさかとは思うけど……なんかしたんか?」



 薫とアリシアは、カインとサラの目をジッと見ると2人は、目を逸らすのであった。



「お父様お母様何したんですか?」

「うふふ、な、何もしてないわよ」

「そ、そうだぞアリシア。強いて言うなら病気が治ったと手紙を送ったくらいだよ」

「それが一番やっちゃいけないことじゃないですか!! 何やってるんですか」

「まぁ、アリシアちゃん落ち着いて、送っちゃったもんは仕方ないやんもう手遅れや」

「薫様は、甘いです! もしもですよ! さっき言ってた十賢人の人逹に目を付けられたら何されるかわからないんですよ!」

「まぁ、自分の身は自分で守るから心配せんでええよ。それより心配なんは、アリシアちゃん達の方や」

「ああ、薫様そこら辺は、心配いらないよ。こう見えても私とサラは、それなりに名を上げた探求者でもあるんでるんです。弱かったら多分【エクリクス】の帰りにアリシアを誘拐でもされたかもしれません」

「そんなに強いんか? カインさんとサラさんって」

「うふふ、賊が私達の商会の馬車を絶対に襲わないくらいの効果があるかしらね」

「何それめっちゃ怖いんやけど」



 お淑やかに笑うサラに薫は苦笑いになるのであった。

 その後は、やれそれと話がまとまらないので、今日はここまでと解散になった。

みな部屋に戻り一息吐くのであった。

 薫も部屋に戻りベッドに突っ伏す。

 ぼんやりと【エクリクス】から、なんらかのアクションがある事は分かっている。

 一旦身を隠して、ほとぼりが冷めるまで待つかと思うのであった。

 そんな事を考えていたら睡魔が襲ってくる。

 それに争わずに薫は意識を手放すのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜~~~~~~~~~



 朝日が、まだ登らない時間に薫は目を覚ました。

 魔力欠乏症の制限が解除されたようだ。

 アリシアの言った回復量の計算で、丁度一週間。

 薫は、体を起こしサッと寝巻きから、運動のしやすい格好へと着替える。

 そのまま薫は、オルビス邸を出てジョギングを始める。

 ここ一週間ろくに運動ができていなかったのもあり、体が鈍っているかなと思っていたが、それほど鈍ってはいないようだった。

 健康体で動くのは、今日が初めてだった。

 此方に飛ばされた1日目は、二日酔いでそれから一週間は、魔力欠乏症で本調子とは程遠い状況で、動き回っていたのだ。

 体に重りが付いてるかのように重く。関節が、炎症を起こしてるかのように酷く疼く。それに頭痛など、体の不調のオンパレードなのだ。まともな神経でいられたのが、不思議なくらいだ。薫は、他の事に神経を回してそれを回避していた。



「(見た目だけが、変わったってわけでもなさそうやな。若かりし頃のアレが、戻ってきたってやつかな?体力の落ち具合も全く感じんしなぁ。むしろ若返ったって言った方が早いかな)」



 そんな事を思いながら軽く10kmを走りきりオルビス邸に戻ってくる。

 庭の手入れをしていたカリンに会い。

 挨拶をすると「え?薫様が早起きしてる!明日は、雨ですね」などと言ってきたから、脳天に軽くチョップをお見舞いし黙らせた。



 そのまま部屋に戻り汗を流し、着替えてからダイニングへ向かう。

 ダイニングの椅子に座るとカリンは紅茶を持ってきてくれた。

 それをゆっくりと飲んで一息ついていた。



「ええ香りやな落ち着くわ」

「そりゃもちろんですよ~。私が、入れたんですから美味しいに決まってます」

「ハーブか?」

「薫様よく分かりましたね。でもそれだと50点ですよ〜。これは、ハーブの一種で、ラックスハーブって言って……」

「緊張などをほぐしてリラックスさせる効果ってところやろうな」



 少し意地悪そうに言う薫。

 その表情を見てふくれっ面になるカリン。



「わ、私の言葉を取らないでくださいよぉ〜。ぐぬぬ、あってるから逆に腹が立ちます。薫様本当は知ってたんじゃないですか?」

「いや、ハーブの名前を聞いてなんとなく見当がついただけや」

「それだけで、普通分からないはずなんですけど……薬草類の本をかじってない人は、絶対に分かんないのに……」

「そうか? ラックスって、多分やけどリラックスから来とるんやないん?」

「あ!?」

「な?」

「言われて気付く駄目メイドです」

「略して駄目イドってところかな」

「むきぃいいい」



 朝からテンションの高いカリン。

 正直鬱陶しい事この上ないのだが、こんな日もいいかなと思う薫なのであった。



 カインとサラも起きてきて、みんなに挨拶をし、椅子に座り朝食を摂る。

 サラは、朝が苦手なようだ。船を漕ぐ様子を見てると少し和んでしまう。

 器用にパンを口に頬張りこくこくとしながらももしゃもしゃと少しずつ食べているのだ。そんな小動物のようなサラの姿を見て、アリシアは母親にかなと思うのであった。

 そんな事を思っていたらアリシアもダイニングへとやって来た。

 みんなに呂律の回ってない挨拶をして、ちょこんと椅子に座り。これまた同じように船を漕ぐアリシア。



「(アレ?デジャブ?まさかなぁ)」



 そんな事を思っていたらアリシアは、お皿の上に置いてあるパンを手に取りパクッと頬張った。



「(おいシンクロしとるぞ! まったく期待を裏切らんなぁホンマに)」



 もしゃもしゃと口だけ動かし、器用に食べる。ピンクラビィのフードを被ったアリシアは、可愛かった。

 よく似た親子やなと思いながら見守っているとカインが、2人に言うのである。



「頼むから外で、そんな食べ方はしないでくれよ……サラもアリシアも頼むぞ」

「「ふぁい」」



 その返事に薫は、クスクスと笑う。

 二人とも器用にパンくず一つ落とさずにたいらげてから、紅茶で一息吐いていた。

 ようやく覚醒し始めたアリシアは、重い瞼を擦りながら周りをキョロキョロと見渡し始める。

 アリシアは、ようやく薫がこの場にいることを認識した。

 薫は、頬杖を突きアリシアの方を見つめていた。

 それに気付き顔を真っ赤にして、椅子の上で蹲ってしまった。

 カインとサラは、二人共「おやおや」と言いながらアリシアをからかった後に仕事へと出て行った。

 薫は、それを見送り目線をアリシアに戻す。



「な、なんで薫様が此処にいるんですか〜」

「ああ、魔力欠乏症から解放されて、最高に目覚めが良くてな。早めに朝食でも食べようと思って、ここでのんびりしとったんよ」

「あ、朝は弱いんです」

「そうみたいやな。朝からええもん見れたわ」

「んっ〜〜〜〜?!」

「ええやん。可愛かったで」



 薫の言葉に小さく蹲っていたのが余計に小さくなっていった。

 これ以上弄ると元の大きさに戻ってこれなさそうなので、そこでようやく宥めることにした。

 そんな2人の様子を見ていたカリンは、暖かい目で見守っていたのであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 その後は、薫も朝食を済ませてから、イルガの宿泊しているブリングルへと向かう。

 昨日は、診察をしに行けなかったので早めに行こうと思っていたのだ。

 足取りも軽く。今まで息切れしていたのが嘘のような感覚だった。

 宿屋に着き迷う事なくカウンターの受付の女性に話しかける。



「あら、いらっしゃいですよ」

「おはようさん。イルガの所に用があるんやけど」

「はい、少々お待ちくださいね〜」



 そう言うとぴゅーっと二階に上がる階段を駆け上がって行く。そしてすぐに帰って来た。両手で、手で丸を作り戻ってくるから分かりやすかった。

 お礼を言ってから薫は、イルガの部屋に向かう。

 部屋の前まで着き扉をノックしてから入る。するとムスっとした様子のリリカが出迎えてくれた。



「何や?なんかあったんか?」

「何でもない」



 そう言って、イルガと目線を合わせようとしないリリカ。

 完全に朴念仁のイルガが、何かしたのだろうと思い薫はイルガの側まで行き話しかけた。



「何があってん? リリカめっちゃ御機嫌斜めやんか」

「俺が聞きたい! 本当によく分からん」

「いつからコレなんよ」

「うーん。今日の朝からだったような」

「御機嫌斜めになる前に何してたんや?」

「朝飯を一緒に食ってたなぁそう言えば」

「それで?」

「昨日、薫が来なかったから治療師に来てもらったんだ。その時に恋人ですかって、間違われてな。そんなんじゃないって言って、誤解を解いた話をしたなそういえば。俺とリリカが、恋人などどんな眼をしてるんだって話だ」

「あー納得」

「だろ? 薫はわかってくれるよなぁ」

「いやちゃうわ。リリカが、御機嫌斜めになった理由がわかったってことでの納得や」

「な! 薫は、なんでリリカがああなったか分かるのか!」

「イルガのおっちゃん顔近いから、暑苦しいからやめーや」



 イルガが、何か言っているのを軽くスルーしてから、リリカに近づき「先は長そうやな。茨の道かもしれんけど頑張れよ」とだけ言って肩をポンと叩くのであった。

 リリカは、その言葉に頬を染めながら小さく頷く。

 イルガの朴念仁ぷりの力が遺憾無く発揮されている。

 此処まで来ると、失って初めて気づくのではないかとすら思えてしまう。

 このままでは、なんか可哀想だなと思いイルガに席を外してもらいリリカと話をすることにした。

 イルガが部屋から出て行った途端にリリカは、泣き出してしまった。



「なんで私の気持ちに気づいてくれないのよ。うわぁあああん」

「ちょ、リリカちょっと落ち着こうか?なぁほら一回深呼吸して」



 いきなりリリカの感情の器が決壊してしまった。

 その後も泣き続けて、直るまで背中をさする薫なのであった。



「落ち着いたか? もう大丈夫か?」

「うん」

「まぁ、朴念仁のイルガのおっちゃんを振り向かせようって、いうんだったらかなり根気がいるんじゃないかなって思うんやけど」

「うん、今まで色々アクションは、起こしているんだけど、全くって言っていいほどなんもないの」

「どんなんしたんや?」

「えーっとちょっとスキンシップ的な感じで抱きついたりとか……一緒の布団に入ったりと……か」

「えーっと直接口でなんか言ったこと無いんか?」

「い、言えるわけないじゃないの!」

「あのなぁ。アレに察しろっていう方が、無理な話やと俺は思うんやけど……」

「そのくらい察しなさいよ!」

「たぶんイルガのおっちゃん死ぬまで分からんやろうな……」

「うぅっっ」



 薫の言葉にリリカは、絶望感のオーラを纏い始める。

 またしても涙ぐみ泣きそうになるリリカに薫は、頭をポンポンとたたき言う。



「あのなぁ。とりあえずちゃんと気持ちを伝えてみることから始めんと、まだリリカは、スタートラインにすら立ってないで?」

「だ、だって恥ずかしいんだもん」

「じゃあもう諦めるしか無いんやないかなぁ」

「そ、それは嫌!」

「じゃあ恥ずかしいとか言ってないでさっさと言え、何のために口がついとんねん? それは飾りかなんかか? 気持ちを察しろっていうんは、長い年月掛けても絶対わかるとかにはならんのんやから。ハッキリ言うで、他人にわかってほしいんならその思いを言葉にしろ、ええか?」

「……」



 薫に言われしょぼんとしてしまうリリカ。

 今までリリカは、間接的に気付いてほしいといった感じのアプローチしかしてなかった。

 気持ちを伝えたいなら口で言葉にして伝えないといけない。

 リリカは、薫の言葉を噛み砕き自身の知識とし、イルガに気持ちを伝えようと決意をした。



「私頑張ってみる」

「おう、その意気や。頑張れよ! 色んな意味で……」

「ん? う、うん。ありがと薫」

「ほんじゃあイルガのおっちゃん呼んでくるから、そこで待機でええなぁ」



 そう言うとリリカは、コクっと頷き深呼吸して待つのであった。

 薫は、部屋を出て一回のラウンジに行き部屋に戻るようにイルガに言った。

 イルガは、そのまま部屋へと戻っていった。

 それを苦笑いで見送る薫。



「(絶対失敗するやろうなぁ……でもコレでスタートラインに立てるからええかなぁ)」



 そんなことを思いながらラウンジで、受付の女性と和気藹々と話をしていると寒気のする威圧が宿屋内を襲う。

 体感的に温度が下がったような気がして、冷や汗が出てくる。

 次の瞬間ドーンっと馬鹿でかい音とともに宿屋が揺れた。

 ラウンジにいた全員が顔を見合わせる。

 薫は、あの二人かな? と思い急いで、二人の部屋へと向う。

 するとそこには、イルガが扉に突き刺さってぐったりしていた。



「え? どうやったらこうなんねん」



 その光景に薫の思考がついていかなかった。

 小さいリリカが、あの巨体のイルガをふっ飛ばした? ということになる。

 しかしそんな力が、あの小さな身体の何処に隠れているんだろうと思うのであった。



「さいてー勇気出して告白したのに何よそれ―!」

「いや……だから最後まで話をだなぁ」

「もうやーだーイルガの朴念仁!」

「あ、薫ちょっとコレ抜けだすの手伝ってくれ! 刺さってて一人じゃ抜けだせない」

「そういうところだけは、冷静なんやなぁイルガのおっちゃん」

「ん? どういうことだ?」

「いや……ええわ。とりあえず後片付けせんと追い出されるぞ。リリカの方は、任せとけそっちは……自分で何とかしてくれ」

「え? ちょ、ちょっと薫? 助けろよ! 一人じゃ抜け出せねぇんだよ。おーい聞いてんのかー?」



 イルガが叫んでいるが、それをスルーでリリカの元へ向う。

 置き去りにされたイルガは、エビのようにビタビタと動いていた。

 それを受付の女性に見つかり、苦笑いで切り抜けようとしたが駄目こっぴどく絞られるのであった。



「リリカ? 宿屋の中でなんちゅうことしてんねん」

「だ、だってイルガが……」

「だってやないやろ」

「……」

「で? 一応伝えたんか?」

「うん。でも、冗談はやめろとか……俺よりいい人がいるとか……そんな風に言ってはぐらかされた」

「てことは、意識し始めたってことやろ?」

「え?」

「今までそう言ってこなかったから前進なんやないの?」

「そ、それは」

「まぁ、あとはリリカの押しの力次第やな。物理は無しな」

「イルガ次第」



 少し膨れながら薫に近づいて「ありがと」と言う。

 照れ隠しかなと思いながら薫も「どういたしまして」と返すのであった。

 その後は、リリカもイルガと一緒にこっぴどく絞られ部屋に帰ってくる。

 薫は、二人が帰ってくるまで部屋で待っていた。



「遅かったな」

「足がしびれた。さすがにキツイな……むしろこの歳で、あんなに怒られるとは少し悲しくなってきた」

「イルガが悪いから仕方ない」

「あ、あのなぁリリカさっきの話だけど……」

「私諦めないよ。イルガのこと私好きだもん」

「うっ……」

「おや? 朴念仁のイルガのおっちゃんでもそんなに顔真っ赤にするんやなぁ」

「か、薫! 大人を誂うな」



 薫は、からからと笑いながらイルガを弄る。

 イルガは、リリカの宣戦布告に面くらい顔を真赤にし、慌てふためくのであった。

 それから少し落ち着いてから、壊れたドアの方を指さし、薫はリリカに聞くのだ。



「リリカってこの部屋で魔法をぶっ放したのか?」

「はぁ? そんなことしたらこの宿屋ごと消し炭にしてるわよ」

「物騒やな。ってことは、生身でイルガのおっちゃんをふっ飛ばしたんか?」

「そんなことしたら私の腕が壊れちゃうわよ」

「それもそうだよなぁ」

「なんだ? 薫は、魔力を身体強化に変換とか……いや、この流れ的には」

「「知らないんだろ!」」

「おい、二人してハモんなや」

「図星か……」

「しかたないわねぇ。今回は、特別に私が教えてあげるわよ」

「おお、助かるわぁ」



 リリカは、溜息を吐きながら薫に説明する。

 魔力強化は、自分自身の魔力を身体に纏って戦うことができる。

 特に魔導師と治療師などの魔力保有量の多い者は、コレを使い前線支援をすることもできる。魔力を纏い防御を固めることもできる。纏う量によって上下する。攻撃も同じである。

 魔力は、威力などが上がる。魔力保有量は、持続させる力のことを示す。



「まぁこんなところよね」

「なるほど……それで、イルガのおっちゃんが吹っ飛んだわけやな」

「リリカは、魔力とコントロールがピカ一だからなぁ。俺でも真剣勝負したら負ける時があるくらいだ」

「バンバン使えるってわけでもないんやろ?」

「あんたねぇ。湯水のごとく魔力が溢れてくるビックリ人間じゃなきゃそんな戦い方できるわけ無いでしょ」

「あはは、そうやろうねぇ……」

「ここぞという時に使うのよ。絶体絶命とかこの攻撃を受けたら死んじゃうとかそういう時に使ったりするの私は、魔法使ったほうが効率良いしね」

「まぁ、それもそうやろうな範囲でふっ飛ばしたほうが楽やもんなぁ」

「そういうこと。でも私の魔力を上回る強化されると無効化されちゃうのよねぇ。まぁ、今まであったこと無いけど」

「あははは」



 薫は、苦笑いするしかなかった。

 確実にリリカよりもはるかに高い魔力と魔力保有量を持つ薫には、ビックリ人間のような芸当ができるのだ。

 それを言うことは、多分無いと思う。



「せっかくだし私が見てあげるわよ。一回纏ってみなさいよ」

「どんな感じなんや?」

「簡単よ。あんた回復魔法を使う時に魔力練るでしょ? それを身体に纏わせる感じのイメージをすればいいのよ」

「まぁ、物は試しっていうしなぁ。ええわ、やってみよう」

「適当に魔法を詠唱する感じで身体から魔力を練出して」

「へいへい」



 薫は、返事をしながら最小限で練る。

 そして手術用の手袋を連想させるかのように薄く全身に広げていく。

 次の瞬間イルガとリリカの表情が、一変する。

 二人共、尋常ではないほどの汗を掻き肩で息をしていた。



「か、薫早く魔力強化を解け」

「は、早く……」

「ん? ああ、すまんすまん」



 そう言うとフッと体に纏っていたオーラが消えた。

 薫の身体には、なんの影響もなく魔力の減りも大したこと無いものだった。



「あんた馬鹿でしょ! 最大出力でぶっ放したわね!」

「危うく意識を持っていかれるところだったぞ」

「うわぁ……宿屋の前で人が大量に倒れてるわよ……コレどうすんのよ!」

「はぁ? いやいや、ただ纏っただけでそんなことが起こるわけって、おいおいマジかよ……」

「ちゃんと意識して、コントロールしなさいよね。纏った力に応じて威圧も使えるのよ」

「そういう大切なことは、早く言わなアカンやろうが! なんで後出しすんねん。親御さんはどんな育て方したんだよ」

「親とか関係ないでしょ! まさかしょっぱなから、こんなアホみたいな魔力ぶっ放すなんて、誰も思わないでしょうが!」

「とりあえず、気絶した人は、全員薫が治療しろよ」

「別にええけど」

「「いいってお前は、どんだけの人が倒れていると思ってるんだよ! 無理に決まってんだろ」」

「おお、ええ感じやん。そのまま結婚しちまえ」

「それは、今は関係ないだろ!」

「そ、そうよ。ま、まだイルガのお父様とかに挨拶すら行ってないのにけ、結婚だなんて」

「おいちょっと待てリリカ! なんか話がズレれてきてるからっておーい聞こえてるか? もしもーし」



 ここに来た時とは、また違ったイルガとリリカの会話に笑ってしまう。

 リリカの変なスイッチが入ってしまったのか楽しいことになっていた。



「とりあえず俺は、気絶した奴らを片っ端から治しながら帰るわ。あそうそう、ちゃんと薬飲ませろよ! でないとまたリリカが、大変なことになっても知らへんぞ―」

「わ、わかった。っておい薫ちょっと待て! 色々なんか可笑しいから! お前の言動もだがおい聞いてんのか!」

「お幸せに~あと数日したらまた来るから、宿屋の弁償代肩代わりしてるから、その分俺のために働いてもらうからな。それじゃあよろしゅう」

「イルガ……挨拶は、その……出来てからでもいいよね」

「ちょっと俺にこの後ナニしろっていうんだよ! 出来てからってナニがだよ! 待てリリカ現実に戻ってこい」

「やっぱり子供は三人くらい欲しいよね。ねぇイルガ」

「……た、助けてくれ~~~~」



 薫は、廊下で倒れている人たちに一人一人に『気絶回復ショックヒール』を掛けながら帰っていく。後ろで、楽しくイルガに語りかけるリリカの会話が聞こえてくるが、薫は聞かなかったことにする。静かにイルガにファイトと言いながら振り返らずに足早に帰るのであった。

 手で体の一部分を触れて一瞬で治していく。普通は、この早さで治すことはできないが、薫の魔力があればお手のものなのだ。そそくさと薫は、宿泊区域をあとにした。

 魔法で治療された者達は、すぐに意識が戻り何故自分が倒れているのかがわかっていないようだ。

 そのせいで、宿泊区域三番街の摩訶不思議な怪談話が、ここから語られることになるのはまた別の話。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 宿泊区域を抜け商業区域へと入った薫は、ベンチに腰掛けて一息ついていた。

 すると後ろから声をかけられた。



「あらやっぱりこの前の治療師さんじゃないの」

「あー露店のおばちゃんやんこんな所でどうしたん?」

「色々と楽しい情報を収集してるところよ」

「へーっでなんかあったん?」



 ちょっと悪い顔をする露店のおばちゃんは、ベンチに腰掛けてから話す。



「何やら【エクリクス】のお偉いさんが近々この都市にくるらしいのよ」

「ふむ……何が目的なんやろうなぁ」

「ここだけの話よ。他には絶対に言っちゃだめだからね」

「大丈夫やで。ほんで内容は?」

「カイン子爵のお嬢さんの病気を治しに来るって話なのよ、でもね。もう先客が治ししちゃったって話よ」

「ほ、ほうそれはすごいな」

「あら? もうその情報は入ってたのかしら?」

「まぁちょっとな」

「あら残念でももう一個あるのよ。この前話したでしょ? アルガス伯爵の病気なんじゃないかってやつよ」

「あったな」

「どうやら手紙を送ってたらしいのよ。それで今回アルガス伯爵のところに行くって言う噂が出てるのよ」

「なるほどな……一つ聞きたいんやけど【エクリクス】って手紙を送るとどのくらいで着くんや?」

「大体一ヶ月掛かるわね。ここから六時間毎日移動してそのくらいが平均かしらね」

「また遠いなぁ。よくこんなところまで来るわ」

「金に汚い奴らだものそのくらいは、するんじゃないの」

「おばちゃん【エクリクス】について詳しそうやな」

「うふふ、単なる噂よ。鵜呑みにし過ぎると痛い目に遭うわよ」

「適当に聞くわ。それで? どうなん」

「そうねぇ、あまりいい噂はないねぇ」



 露店のおばちゃんの表情が少し暗くなる。

 さきほどまでのイキイキしたような印象が消えた。

 その変化に薫は言う。



「また今度聞かせてもらおうかな。そういえば、俺まだ色々とせんにゃいけんことあんねん」

「おや? そうなのかい? 残念だねぇ。また新しい噂が入ったら教えてあげるよ。だからまたおいで」

「そうさせてもらうわ」

「そうそうこれだけは、言っとくよ。【エクリクス】には気をつけてね。血も涙もないような輩もいるから、大切な者は絶対に守るんだよ」

「助言ありがとなおばちゃん。そうや、オレンの実と精製水(微小)をオルビス商会に持って行くと良い値で今なら売れるかもしれへんで」

「ほう、それはいいことを聞いたね」

「コレは絶対に言ったらアカンで」

「うふふ、なるほどね。あんたも色々あるみたいだね」

「お互いにやろ? じゃあまたくるから」



 そういうと薫は、商業区域を後にした。

 準備は、ほとんど整った。

 イレギュラーな情報も入ってきたが概ね作戦に変更はない。

 薫は、そう考えながらオルビス邸に帰るのであった。




更新遅れて申し訳ないです。

やっと落ち着きました。

現実の医者は、救えないことのほうが多いみたいです。

次の話からは、早く投稿できると思います。


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