貴族墜落作戦!6
早朝だが、少し曇った天気。
部屋の中は薄暗い。
そんな中一人の人影が、せっせと薫の部屋へと向かっていく。
一応ドアをノックし、ドアを開け部屋の中に入って行く。
「薫様、朝ですよぉ~! 昨日起こしてくれっていったじゃないですかぁ~」
「すやぁー」
「何ですか! 誘ってるんですか! って違う違う。今日は、お父様と一緒に商会の方へ行くって言ってたじゃないですか。お~き~て~く~だ~さ~い!」
「すぅー」
「ぐぬぬ。しぶといですね」
アリシアは、薫の身体を左右に揺すりながら起こすが駄目。
昨日アリシアに薫は【魔力欠乏症】で、起きれるか分からないから、叩き起きしてくれと頼んだのだ。
その言葉にアリシアは、目を輝かせながら頑張りますと返事をした。
少し、不安もよぎったりもしたが、自分から頼んでおいて遅れるのは駄目と判断した。
「かくなる上は……」
そう言うとアリシアは、薫の鼻と口を手で、ちょんと塞いでみる。
ちょっとワクワクした表情だ。
薫の呼吸器官を塞いで、十秒ほど経つと薫の表情が、みるみる青ざめていく。
「ん? ん、ぐ、ぐぅ、ぐうぅうううう」
「わくわくどきどき」
「ふご、んぅ、ううぅうぐ、ぷはぁあああ、はぁはぁ、し、死ぬ……」
「薫様おはようございます」
「はぁはぁ、おはよアリシアちゃん。もう少しで、おはようじゃなくて逝ってらっしゃいやったけどなぁ」
「ふぇ……!?」
冗談を言いながらアリシアの頭を撫でる。
強制的に身体を覚醒させたせいもあり、頭痛とめまいがある。
頭を軽く押さえながらベッドから立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな。途中休憩いれんとやばいかもしれんけどなぁ」
「そ、それって大丈夫とはいいませんよねぇ」
「前までは、こんなんでも仕事しとったしなぁ。日常茶飯事や」
「どんなに働いてるんですか!!」
「動けなくなるまでかなぁ。病人がひっきりなしに入ってくるから、休んどる暇なんて無いしなぁ」
「そんな職場は、すぐにでも去るべきです! 薫様が死んじゃいます。【エクリクス】ってそんな場所だったんですね……」
「あははは、そうやな(元いた世界の職場とは言えへんなぁ)」
他愛のない話をしているとだんだんと身体が慣れていく。
動きまわるくらいなら大丈夫なほどにはなった。
アリシアに礼を言ってから二人は、ダイニングへと行き朝食をとる。
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食事を軽く食べて、紅茶を飲みつつ一息ついていたらカインがやってきた。
「おお、薫様おはようございます。こちらは、準備が出来ましたよ」
「カインさんおはよう。こっちも大丈夫やからいつでもええでぇ」
そんな二人の会話をチラチラと見るアリシアにカインは、「仕事だから付いて来るとかは無しだぞ」と言われしゅんとする。
それを微笑ましいなと思いながら見る薫。
その目線に気付き少し、頬を膨らませ羨むように見つめてくる。
そんな表情を可愛いと思ってしまう。
これは、意識してるせいなのかなと薫は思うのであった。
「では、行きましょうか。馬車を用意してありますので、そちらで向かいましょう」
「馬車で移動か楽やなぁ」
「普段も薫様は、使ってもいいのですよ? 前も言いましたが何でも言って下さい力になれることは、何でも致します」
「そこまでしてもらわんでもええよ。十分や、住む場所も提供して貰っとるし」
「そうですか? 此方としては、まだまだし足りないですよ。あはははは」
感謝されるのはいいが、やり過ぎると逆に気を使ってしまう。
適度というものがあるのだが金持ちの適度は、ちょっと次元が違うのだ。
それを薫もわかっているから、最低限必要な物しか頼まないのである。
馬車に乗り薫は、ふと気になることを聞いた。
「そういえばサラさんは?」
「ああ、今日は少し頼み事をしていてね。早めに出たんだよ」
「そうなんや。普通やったら一緒やと思っとったからな」
「いつもは一緒なんだけどね。今日は、たまたまだよ」
そんなことを話していると馬車は、動き始めた。
内装は、至って普通に見える。座席のすわり心地は、前に一度乗ったイルガの馬車とは、比べ物にならないほど良かった。
馬車の揺れもほとんど気にならないくらいの代物だ。
「ええ馬車やなぁ」
「あはは、そうでしょ? 実は、これ特注品なんですよ」
「ほう、揺れも少ないしええなと思っとたら特注品か」
「アリシアを【エクリクス】へと連れて行く時に買ったんです」
「ああ、なるほど。納得したわ」
からからと笑いながらカインを見る。
親ばかだなと思いながらも薫は、同じ境遇になったらそういう事をしたかもなと思う。
大切な人だからこそできることを何かしたいというのは、普通のことなのだ。
そんなことを話していると時間がかなり過ぎていた。
カインの商会に到着した。
カインの商会は、貴族区域の西の端にある。
薫は、馬車から降りてカインの商会を見上げる。
重く閉ざされた門があり、10階建ての煉瓦積みでできた建物があった。
「こりゃまた立派な建物のやなぁ」
「そんなことありませんよ」
「ここいらで、一番の面積と高さほこっとるんやけど」
「あはははは、まぁ、立ち話はその辺にして入りましょうか」
「そうやな」
二人は、門へと近づいていく。
門の前には、門番が二人いてカインを見た瞬間頭を下げる。
カインも軽く会釈をし、門を開けてもらい中に入る。
「トップって感じするなぁ」
「からかわないで下さい薫様」
「あははは、すまんすまん」
そのまま中へと入って行く。
建物の扉を開け中に入るとエントランスがあった。
その中心には、何個もカウンターがあり、受付の女性が応対していた。
「なんか商業ギルドに似とるな」
「ええ、これは貿易で何処に何がほしいかをなどを、ここで選別できるようにしてるんですよ。私の商会は、この大陸の殆どの大きな街に支店がありますからね。そこから街の商業ギルドや商店に卸しているんですよ」
「大規模やなぁ。よくこれだけのもんをまとめたなぁ」
「頑張れば何とかなりますよ」
「そんなもんかいな」
いい笑顔で返されちょっと困る薫。
貿易で、貴族の地位を獲得しただけのことはある。
規模のデカさは、それほどではないがこの異世界では、相当なことだ。
元いた世界では、中小企業といったところなのだろうが、この異世界のパイプを大まかにだが、繋いでいるのは確かだ。
「では、私の部屋へと行きますか」
「そうやな、薬剤師さん紹介してもらわんといかんからなぁ」
そう言って、薫とカインは、階段で10階の部屋へと向う。
途中で、薫がへばったのは言うまでもない。
そんな薫の姿を見てカインは、
「大丈夫ですか? 薫様はあまり体力がないのですか」
「いや。始めは、俺も体力落ちたのかと思っとたんやけど魔力欠乏症やったわ」
「なんと! では、回復薬をお持ちしましょうか?」
「いやもう後少しで回復すると思うから大丈夫や。それにどれほど使って回復するかなんて、検証したら大変な事になりそうやからな」
「はい? どれほど消費したんですか?」
「あはは、言えんくらいやなぁ」
薫は、消費したMPをカインに言ったら倒れるか信じないかの二択だと思い言葉を濁すのであった。
大体100万も消費するスキルが、この異世界に存在しているのか自体聞きにくい。
聞くだけでアホの子と思われるのが関の山である。
へばっている身体に鞭打って薫は、階段を登っていく。
やっとのことで10階の部屋へと到着するのであった。
「とりあえず薫様は、ソファにでも座っていて下さい」
「そうさせてもらうわ」
早朝から無理やり身体を起こしたせいもあり、MP回復ができていないのである。
顔色も悪く嫌な汗が出てくる。
早めに薬を作って、オルビス邸に戻って仮眠したいと思う。
いやむしろ今すぐにでも目を瞑ってしまいたいという気持ちが、心を揺さぶるのであった。
薫が、心の葛藤をしている中でカインは、秘書に今日手の空いている薬剤師を一人部屋に連れてきてくれるよう頼んでいた。
その間薫は、葛藤に負けて少し仮眠をとる。
その様子にカインは、笑いながら秘書に今日のスケジュールを聞くのであった。
20分くらいして、扉を叩く音がした。
カインは、それに返事をし中に呼ぶ。
「代表〜すいませ~ん。まだ病み上がりなんですけど」
「ん? おお、もう良くなったのか?」
「は~い、不思議なことに代表から貰った体力回復の新商品が効いたみたいですぅ~」
「そ、そうみたいだな」
カインは、迷宮熱の特効薬とまだ言えないので、体力回復の新商品として部下に持って行かせたのだ。
効果は、ご覧の通りであった。
カインは、ソファで仮眠をとっている薫を起こして紹介する。
「薫様こちらが、薬剤師のユリナです」
「紹介にあずかりましたぁ~。ユリナですぅ~。ぴっちぴちの17才でぇーすん」
「薫やよろしゅう」
「ちょっと抜けてるところもあるが腕は、確かだから……腕は、だから安心してくれ」
「だ、代表! それは酷いですぅ~。頑張ってるんですよぉ~これでもぉ」
「ま、まぁ頑張ってくれ。くれぐれも迷惑だけは掛けないでくれよ」
「しょうちぃ~」
「返事が可笑しいがまあいい。では、この部屋の向かいの部屋をお使い下さい薫様」
「あ、ああ、わかった」
カインとユリナの会話に少し不安になる薫は、カインに耳打ちで「本当にこの子は大丈夫か」と聞くのであった。
返答は、「多分問題ない」とのことあまりにも多分という言葉が、引っかかってならないのである。
「そしたら向こうの部屋でちゃっちゃと終わらせるか」
「はぁ~~い」
薫とユリナは、カインのいる部屋を出て向かいの部屋へといった。
その姿を見送るカインは、若干表情が引き攣っているのである。
それもそのはずユリナという薬剤師は、カインの商会で軽い問題児なのだ。
腕前は、雇われている中で、三本の指に入るくらいの力量なのだが、いかんせんやる気のない子なのだ。自分の興味のあるものには、相当な熱を持つのだが、どうでもいいものに関しては、だらけて廃産物を精製してしまうという少し困ったちゃんなのだ。
なのでカインは、新しい回復アイテムなどの精製を主に担当させている。
今回手の空いている薬剤師が、彼女しかいなかった事もあり、薫に迷惑がかかるのではないかと気が気ではないのである。
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向かいの部屋で薫は、椅子に座りテーブルの上に解毒したオレンの皮と精製水(微小)を取り出した。
それを見てユリナは、溜息を吐き床をゴロゴロと転がり始めた。
「何やっとんのんや?」
「なんか楽しいアイテムを作るのかと思ったら、毒薬でも作るんですかぁ~。楽しくなぁ~い」
頬を膨らませ、抗議するユリナその表情は可愛いのだが、薫からしたら殴りたくなるような憎たらしい顔だった。
緑色の髪を後ろにまとめポニーテールにし、メガネが少し大きいのか鼻先から少し落ちかけていた。
四肢は、細く蹴ったら折れそうな華奢な体つきで、だぼっとしたローブを着ていた。
「うわぁ~蹴りたいわぁ」
「え? えぇっ?」
「いやなんもないよー」
心の声が少し漏れてしまいつい口に出してしまった。
その言葉にプルプルと震えながらテーブルの下に隠れるユリナ。
苦笑いになる薫にジト目で、訴えかけてくる。
「なんもせぇへんからこっちおいでぇ」
「……」
「はぁ、毒薬とかやないからもっと楽しいもんやからこっちおいで」
「毒薬じゃ……ない? 何作るんですかぁ~」
「はいはい、どうどうどう」
毒薬ではないの一言にユリナは、興味を引かれた。
オレンの実は、基本毒を抽出して毒玉や矢の先につけたりといった事が、ほとんどなのでやる気がガタ落ちになったのだ。
薫の言葉に嘘がないか確かめたくなり、薫の服を強く引っ張りながら鼻息を荒くさせている。
そんなユリナを見て、ちょっと引いてしまう薫なのであった。
「まぁ少し落ち着こうか? ええか?」
「あいなぁ~」
元気よく返事をするユリナを見て、何となくカインが言っていた不安要素が見えてきた。
それを看破して薫は、うまいことすれば使えるなぁと思う。
「そういえばユリナなんか目少し赤いけど大丈夫なんか?」
「いやぁ~。実は、一昨日に迷宮熱に罹ってちゃってたんですよぉ~。うへへ」
「あ……なるほどなぁ」
「それでですねぇ~。代表からの体力回復の新商品で、もう元気なんですよぉ~素晴らしい薬でしたぁ」
「それの精製って言ったらもっと興味沸くんやないか?」
「な、な、な、なんですとぉ~!!!!」
大きく目を見開きユリナは、またしても薫の白衣をグイグイと強く引っ張り始めた。
意外と力が強く白衣の首の部分が擦れて痛くなる。
だんだんと苛立ち始めた薫は、
「首が痛いんじゃぁあああ」
「うにゃらばぁあああああ」
ユリナの脳天にチョップを決める。
涙を目尻に溜めながら脳天をさする。今度は、力をあまり込めずに白衣をちょんちょんと引っ張るのである。
薫は、ため息を吐きユリナの頭を軽くぽんぽんと叩きながら椅子に座る。
その横に寄り添うように近づき材料を見るユリナ。
「そ、それでぇ~どうやって作るんですかぁ~わくわく」
「まずは、このオレンの皮を乾燥させて欲しいんやけど」
「乾燥ですか?」
「ああ、そうや」
「毒は?」
「解毒済みや。やから頼むわ」
「お任せ下さぁ~い」
笑顔で、オレンの皮を手に取りユリナは、手を翳して
「『スキル――乾燥』」
淡いオレンジ色の皮は、見る見るカピカピになりくすんだオレンジ色へと変化した。
その光景を見て「おお、スゴイなぁ」と言うと無い胸を張りどやぁといった表情で此方を見るのである。
もう一発チョップを決めたいと思ったのは内緒である。
「それで、コレをどうするんですぅ~」
「コレを粉末状にするんや……そのま」
「粉末状ですかぁじゃあ。『スキル――製粉』」
薫が言葉を最後まで言う前にユリナは、オレンの皮が一瞬で粉状へと変化しまった。
白い粉末へと変わった物は、テーブルの上に小山を作った。
「どうですぅ~。仕事の早いでしょぉ~私の早技ですぅ~」
「で? どないすんねんテーブルの上で、普通は粉末にしたらあかんやろ。器とかに入れてからするもんやないんか?」
「てへぇ」
「てへぇっじゃねぇよ」
手を頭の上に置き、舌を出し片目でウインクする。
それに薫のチョップが炸裂し、舌を噛んだユリナは口元を押さえ床をゴロゴロと転げるのであった。
「まったくちゃんと次の工程を聞いてから、やってくれへんと困るんやけど」
「はひ、きひょちゅけましゅ」
チョップで舌をやらかしたせいもあり、呂律が回らないユリナ。
しかし、それでもめげずに薫の周りに纏わりつく。
そこら辺にあった綺麗な紙を薫は取り。
「『医療魔法――殺菌・ベクトル1』」
「それと『医療魔法――無菌室』」
薫は、部屋全体を無菌にした。
そもそも薬を扱うのに普通の部屋で、作っていいものかと今頃になって思い魔法を執行した。
ユリナの抜けてるところを指摘できないなと思う薫であったが、先ほどの魔法を見て興味津々のユリナが、目を輝かせながら此方をチラチラと見てくる。
それを無視して薫は、テーブルの上の小山になった粉末を先ほどの綺麗な紙に取り、器をユリナに強制的に取ってきてもらう。
器にオレンの皮の粉末を移していく。
「そ、それでぇ~先ほどの魔法なんですけどぉ~」
「企業秘密や」
「ガ~ン! いいじゃないですかぁ~教えて下さいよぉ~」
「駄目や」
「お手伝いしませんよぉ~いいんですかぁ~」
「別の子に頼むって手もあるからええで」
「突き放さないでぇええ。お願いでしゅぅぅうう」
駆け引きに負けたユリナは、薫に泣きつき他の子と替えないでぇ~と悲願するのであった。
だんだんこのキャラクターに慣れてきた薫は、笑いながら躱していく。
「ほら、次の工程に行くで」
「はいなぁ~」
「遊んどるやろ?」
「何のことですかぁ~? 私わからないですよぉ~」
そんなユリナの頭を薫は、ぐりぐりと手で掴み下へと押していく。
「やめてえええ。縮んじゃうぅうう。縮んじゃいますからああああ」
「本当に弄ると楽しいなユリナは」
「でしょぉ~。だから教えて下さいよぉ~」
「カインさーんこの子チェンジでぇ」
「ぎゃあーーー。マジじゃないですかあ。やあだぁああ」
「そろそろええか? すっきりしたか?」
「あい」
楽しそうにユリナは、薫の方を見てきゃっきゃと騒ぐのであった。
「じゃあ、コレに精製水(微小)を入れて混ぜるで」
「ほうほう」
「んで、混ぜてお団子状にしてから」
「からの~」
「乾燥よろしゅう」
「あいなぁ~」
そう言うとユリナは、お団子状にした物に『乾燥』を掛けて乾燥させる。
乾燥させると大きさは、五百円玉くらいの大きさになった。
それに薫は、解析を掛ける。
【リファンミナド(中)】
・成分 【オレガノダイン】
・効果 迷宮熱に効き目あり、三日間の朝昼晩と服用すると病原体を駆逐することができる。
・副作用 眠気等
解析の結果を見て薫は安心した。
成分共に自分の作った薬とほぼ一緒であった。
違うとすれば、効果が少し弱いといったところかなと思う。
しかし、迷宮熱は一週間以上続くので、それを三日で回復できるのならいいかと思うのであった。
「おう、ユリナできたでぇ」
「へぇ? もうですか? もっとこうなんか無いんですか? こうグワっとしたようなこととかぁ。ガシャガシャボーン! っていうのは」
「ねぇよ……あったら怖いわぁ」
「そんなぁ~、こんな簡単にできたら面白く無いですぅ~」
「いやー、助かったわぁ」
「ぐぬぬ」
しれっとした感じで、薫は出来上がった薬を手に取り、分量で分けると一つで何個できるか計算していた。
大体一つの皮で、大体十五個の薬ができることがわかった。
それをカインに報告するため、部屋を出ようとするとユリナがそれを制止する。
ドアの前で手を大きく広げていた。
「駄目ですぅ~。まだですぅ~」
「なんや? 遊び足りんやったんか?」
「そうなんですよ~。えへへって、違いますぅ~」
「仕方ないなぁ」
「え? 教えてくれるんですかぁ!!」
薫は、ちょいちょいと手招きをする。
それに釣られてユリナは、薫にトコトコと近づいてくる。
丁度薫の前まで来ると薫は、手をユリナの頭に載せて優しくくしゃくしゃと撫でる。
「また今度な」
「あ、あい」
今までと違い優しく撫でられたユリナは、呆気に取られてしまい返事をしてしまった。
薫は、優しく微笑み「ほしたらなぁ」と言いその部屋をあとにする。
残されたユリナは、くしゃくしゃと撫でられた頭に手を添えてちょっと嬉しそうに身体をくねらせるのであった。
その後カインに報告をした。
薫は、ひと通りの精製方法をユリナと一緒にしているので、詳しくはユリナに聞いてくれと言う。そして、それを迷宮熱に罹っている会員で、試験的に使ってみてちゃんと効果が出れば作戦決行と告げた。
今日やることが終わったので薫は、帰りの支度をしているとカインから、帰りの馬車を用意しているとのことなので、お言葉に甘えることにした。
馬車に揺られて薫は、オルビス邸へと帰った。
帰ってきたらすぐに薫は、自室に戻りベッドに倒れ込んだ。
このまま大体四、五時間は、眠りにつくだろうと思い意識を手放す。
大体昼過ぎ頃には、目覚めるかなと思うのであった。
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有難うございます!
前の話で、早くできると言ってましたがすいません。
絵を描くのが楽しすぎて遅れました。
次の話は、すいません身内の不幸で、少し遅れそうです。
コメントとメッセージ等たくさん頂き有難うございます。
励みになっております。
自分のしたいことで食べていけたら幸せだろうなと思う今日このごろでした(`・ω・´)ゞ
10/11 改変
会社→商会
社長→代表