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わかばの月 十日

寝れなかったので書いてみました。

怪談嫌いな方は読まないで下さい。

と言っても、どこかで聞いたことのあるような話ですけど。





ひとつ、怪談をしよう。

どうも今日は寝付けない。

寝付けないから、数日放置していた日記帳を引っ張り出してきてみた。

とは、言っても特に書くことも思いつかない。

じゃあ、怪談をすることにしよう、というわけだ。


むかしむかし、あるところに老エルフがいたそうな。

老エルフは川へ魚を釣りに行った。

エルフは動物を食べないが、釣りを好む者は少なくはない。

その日はよく晴れた日で雲ひとつないような青空が広がっていたそうな。


老エルフはいつも釣りをしている場所でのんびりと釣りをしていた。

その日はやけに魚が釣れた。

これは大漁じゃ、大漁じゃと老エルフは喜んでいた。

まあ、大漁とは言っても、釣るだけ釣って、そのあとは川に逃がしていたそうなんだけれども。


やがて日が空のてっぺんに上った頃のことだった。

老エルフはあまりの暖かさにうつらうつら眠気を催したそうな。

春の昼下がりともなれば、絶好の昼寝日和なのだから仕方のないことだったのかもしれない。


さて、老エルフが目を覚ましたのはだいぶ日の傾いた頃だった。

辺りはすでに薄暗くなっており、風も少し冷たくなっていた。

老エルフはすっかり寝てしまった、と反省しつつ、もう暗くなってきたから帰ろう、と釣り竿を片付けようとしたそうな。

するとその時、老エルフは釣り糸に魚が食いついていることに気づいた。


どれ、逃がしてやるか、と思って釣り糸を引き上げた老エルフはその魚の姿に驚いた。

その魚は虹色に輝いていたそうな。

これはすごい、そう思った老エルフは村までその魚を持ち帰ることにしたそうな。

しかし、ところがどっこい。

その虹色の魚は一跳ねして、川の中に逃げ込んだそうな。


普段の老エルフなら放っておいて帰るところだったのだが、その虹色の魚のあまりの美しさに、老エルフはその魚を追いかけて行ったそうな。


さて、しばらく追いかけて行くと川が二つに分かれるところに着いた。

虹色の魚は老エルフから離れた方へと泳いで行く。

その場所は川が浅かったため、老エルフは川を渡って虹色の魚を追いかけようとしたそうな。

そうして、老エルフが川に足を踏み入れた時のことだった。


老エルフは向こう岸に誰かがいることに気がついたそうな。

よくよく目を凝らして見ると、それは老エルフのお祖父さんのエルフだった。

それはそれは厳しく恐ろしいお祖父さんだったので、老エルフは子供の頃から苦手だった。

すると、そのお祖父さんはその老エルフに向かって大声で叫んでくるではないか。

「こっちに来るんじゃない、馬鹿者!」、と。

子供のころからのくせで老エルフは虹色の魚のことを泣く泣く諦めて村への道を歩きはじめたそうな。


そこから先のことは老エルフはよく覚えていないと言う。


さて、目が覚めると老エルフは村の広場に居たそうな。

自分を心配そうに上から見つめる子や孫に囲まれて。

わしは一体どうしたんじゃ、と、老エルフが問うと、息子のエルフは、

「川に溺れて、死にかけていたところを引き上げて、看病していた」

と言うではないか。

老エルフは、そんなはずはない、わしは虹色の魚を追いかけて行って、そこで祖父さんに会ったんだ、と言い返したそうな。

すると、息子のエルフはこう言った。

「何を言ってるんだ父さん。曾祖父さんなら三年前に亡くなっただろう?」


後から思い返せばなぜ死んだ祖父さんが居たことを疑問に思わなかったのかわからないと老エルフは言う。

まるで、夢の中にいたようだ、と。

しばらくしてから、虹色の魚を追いかけて行った道を歩いてみたが、川が二つに分かれるところは一つもなかったそうな。


終わり。


この話、子供が川に近づかないように作られた話らしいが、妙に三途の川を思わせるところがあるな、と僕は思った。

やばい。

なんか怖くなってきてますます寝れなくなってきた。

吹く風の音が怖い。

寝れない。




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