つぼみの月 九日
今日はつぼみの月祭りの日だった。
つぼみの月祭り、それはいわば春祭りみたいなものだ。
つぼみが早く花開きますように、という願いを込めたお祭り。
昨日から広場には松明やら御輿やらが並べられてて、今日の夕方から広場でお祭りは始まった。
まず若い、といっても百歳くらいのエルフたちが踊りを披露した。
エルフの身体能力を生かしてジャンプしたり地面に潜ったりする踊りだったけど、それでもどことなく風雅なんだから不思議だ。
次に歌が披露された。
歌うのは百五十から二百歳の婆さんエルフたち。
精霊語とかいう神聖な言語の歌らしいけれど、ひい祖父さんが言うには、みんなメロディーを覚えてるだけで、その歌の意味を知ってるのは大婆様くらいしかいないらしい。
そして、その次は魔法演舞。
これはかっこよかった。
魔法を駆使しながら演舞するエルフ独特の踊りだ。
火柱が現れたかと思うと、次の瞬間には凍りついた氷の柱と化し、その上に登ったエルフが三回転しながら飛び降りてきたりした。
他にも様々な色の光を体にまとったエルフが高速移動して織りなす光の残影も美しかった。
そして、うちの祖父さんの愛してやまない弓比べ。
弓の腕を競い合うものだ。
うちの祖父さんは僕の視力で見えるか見えないかギリギリのところにあるかかしを百本中九十二本射抜いた。
それでも、祖父さんは三位だった。
一位と二位はひい祖父さんとひいひい祖父さんだった。
どんだけ弓好きの一家なんだよ、とツッコミたくなった。
そうそう、今年のつぼみの月祭りでは、珍しいお客さんもいらした。
妖精さんだ。
何年か一度、エルフの里のお祭りにいらっしゃるらしいけど、今回は結構ひさしぶりの訪れだったらしい。
妖精さんはきれいな桃色の透き通った体をしていて、小さな羽をパタパタ動かしながら飛んでいた。
見た感じも、行動も子供っぽくて、魔法演舞とかを大はしゃぎして見ていた。
あー、楽しかった。
お祭りはやっぱりいいなー。