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ぎくしゃくする二人

ほのぼのさせたかったのですが、その空気が苦手です。

自由聖騎士団宿舎~Side

リデェアSide


部屋に帰ってきて、ベッドにうつ伏せに倒れ込む。今日は色々あって、脱力感がひどい……

アルフレッド君が、まさか、あの、大悪人アルゼリアス・ファルケンの……ううん、何かの間違いだと思いたいけれど、確かに、アルフレッド君のお姉さんと妹さんの話の通りだとすると、ボク達はて敵同士になる。


(確か、お母さんは、あの戦いの時、アルゼリアス・ファルケンと戦って、彼を倒したんだっけ)


でも、お母さんからは、アルゼリアス・ファルケンについては余り詳しくは聞かされていなかった。

だから、精々、ボクが知っているのは、一般的な彼の大悪人というう評価だけだった。

そんな事を考えていたら、扉の向こうから、インターフォン越しにフェリオお兄ちゃんの声が聞こえてきた。


《リデェア、ちょっといいかな?》


「あ、えっ、ちょっと、待って、お兄ちゃん!」


ボクは慌てて、部屋の中を片付ける。特に【抱き枕ふぇりおくん】は絶対見られたくないので

ベッドの下に念入りに押し込んだ。あたりをよく確認してから、お兄ちゃんに入室の許可を出す。


「うん、いいよ、入って」


「リデェア、休んでいるところ、訪ねてきて悪かったね。でも、リーザーから少し様子がおかしいと聞いてね。それで、心配になって訪ねてきたんだ」


あちゃー、リーザに見られちゃっていたんだ、そうだ! お兄ちゃんに、アルゼリアス・ファルケンについて少し聞いてみよう。でも、その事で怒らないといいのだけれど……。

あんまり、くよくよしていても仕方がないよね。


「フェリオお兄ちゃん、あのね、アルゼリアス・ファルケンって、どんな人だったの?」


「……久しぶりに、その名前を聞いたね。そうだね、僕も彼には許せないことがいっぱいあるけれど

可愛い義妹いもうとの頼みでもあるしね?」


「ありがとう、お兄ちゃん」


お兄ちゃんは、ベッドの隣のソファーに「此処に座っていいかい?」と尋ねて、ボクは頷くと、ゆっくりと腰をおろして、ボクを見つめながら話し出した。


「そうだね、あれは、僕がまだ、子供だった頃、僕の一族の村が焼き討ちにあったんだ。その指揮を執っていたのがアルゼリアスだった。その時、村のみんなは散り散りになって、僕は森の主様に助けられて

生き延びていた。父さんと母さんはあの戦いで殺され、村の戦士だったものはみんな最後まで戦う……つまり、死ぬまで戦うか逃げのびるかのどちらかだった。

僕が人間で言うところの13歳くらいに、主様が亡くなって、あとは一人旅をしながら、彼を探していたよ、うん、今思えば、復讐鬼ってやつかな? そんな時だった。イリア姉さんに出会ったのは。

その時、姉さんの所属していた基地に、今は海の底だけど、天空の玉座って言う浮遊要塞の起動キーが基地内に保管されていて、そこで襲撃があって、助かったのは姉さんだけだった」


「……」


穏やかに話すフェリオお兄ちゃん、だけど、心なしか怒りの感情が交ぜ合わっているのが解った。


「僕が鍵を探していたのは、アルゼリアスを倒すのがこの方法が一番早かったから、それだけだったよ

でも、そんなとき、姉さんを助けるか? それとも彼を打倒すか? 考えたけれど、直ぐに彼はその場からいなくなって、僕は姉さんを助けた。それが姉さんとの出会いだったんだ。その後、僕と姉さんと二人で騎士団に入って、あちこちで戦っていたんだ」


ボクはお兄ちゃんの話を聞きながら、アルゼリアスと言う人に付いて聞いてみる事にした。


「それで、その、アルゼリアスって言う人は、どうなったの?」


ボクを見つめて彼の事を教えてくれた。


「彼は、損な役回りを演じていたんだ。上級種族主義を掲げて、もう、上級種族も彼らの言う下級種族もお互いに疲れ切っていたし、何より、お互いに戦う力もそんなに残っていなかった。

だから、彼らは自分たちの盟主に彼を選んだんだ。そして、彼は自分を盟主に祭り上げた人たちの都合のいい道化を演じながら、自分たちを打倒される事を望んでいたんだ」


「え、それって、自分たちがワザと負ける事?」


「ああ、そうだ。その結果は、誰もが知っている通り、ゼウラニアス帝国の敗北で終わったよ。

彼はその戦いの後、生死不明で現在も生存説がある位なんだ。でも、彼はもう表には出ないだろうね」


「どうして?」


「もう、彼は役目を終えたと考えている。もし、何か起こすなら、とっくに表舞台に出てくるはずさ」


そうなんだ、でも、アルフレッド君に聞ける話じゃないよね? ボクが落ち込んでいるのを察してか

お兄ちゃんが、ボクに近づいてきて、頭を乱暴にワッシャワッシャと撫でる。


「さて、僕の昔話はこれで終わりだよ。さ、あとは、自分で悩んだり、考えたりしてみるといいよ」


「も~~~~っ、お兄ちゃん! ボク、子供じゃないよっ」


もう、お兄ちゃんなんて知らないっ、ボクはお兄ちゃんを部屋から追い出して、ふて寝をした。

※※※※※※※※

公園~Side

アルフレッドSide


最近リデェアの様子がなんだかぎこちない。やっぱり、避けられているのかもしれない。

エルザリア姉さんは、父さんの悪名を理解したうえで【ファルケン】の名を名乗っているし、ローザリアは嘘をつくのが大嫌いだからな。

まったく、あの後、リデェアには避けられているとしか思えない。


「はぁ……ホント、自分の父に一度文句を言ってやりたい気分だ。いや、一発殴ったほうがすっきりするかもな?」


「そうか、親に文句を言うのは子の特権だが、暴力に訴えるのはお勧めしないな、少年?」


「あ、エレンさん……」


目の前にいるのは、僕よりも背が低い女の子だが、何でも、騎士団の技術顧問を務めている【カレン・ノア】の326番目の素体で、ホムンクルスの実験隊だそうだ。

もっとも、この件が明るみになったのは、先のゼウラニアス帝国戦争の戦後3年後に判明して、カレン・ノア本人が自らのコピーを作り上げていて、僕らが知っているカレン・ノアはオリジナルのコピーだったことが判明、今では、その施設は封印され、326人のうち生き残っていた124人が政府の登録で一般人として暮らしているのだった。


「ふむ、どうやら、君も自分の親の事で悩んでいるようだね? ま、これは、私の持論だが悩みは良いぞ、答えが出るまでの難しい宿題だからな? 誰かに背中を押してもらうのも、もしくは、とことん悩み苦しみ、そこから自力で答えをフト見出すのもいいし、思い切って誰かに打ち明けて、すっきり出来なくても、必ず答えが見つかるものさ。よかったら、少しくらい、わたしにグチってもいいぞ?」


「そうですね、実は、ある女の子と最近上手くいってなくて、いえ、色恋でなくて普段の付き合いです。その子は、僕が悪人のアルゼリアスの息子だと知って、僕と同じくらい悩んでいるようです」


「そうか、それで、君はどうしいたんだ? 確かに、アルゼリアス本人は糾弾されるべき事をしでかした、この事は未来永劫消えない悪名だ。だが、彼の真の行いを知るものは誰一人、彼を悪人だとは言っていない。現に、彼は上級種族主義者から、多くの人々を逃がしていたし、ゼウラニアス帝国戦争の真っ最中でも軍律を犯した将兵はたとえ有能でも厳しく処断している。ま、彼の場合、一言で済ませると【運がなかった】で終わってしまう」


運がなかった……だって……? あれだけの事をしておいて【運がなかった】で済ませられない、少し、エレンさんの言葉にムッとしながら、彼女の言葉に耳を傾ける。

すると、彼女は意外な事を口にした。


「だって、彼が心から愛した人が人間の娘で、それが原因で、その女性ひとは常に狙われていたんだ。ま、これは、ゼウラニアス帝国戦争後、捕らえた元帝国将校から、5年たって分かった事だったんだ。これを知っているのは、一部のお偉いさんしか知らないし、君達、姉弟自身も知らないことだ」


「え!?」


「ま、この件を話すのは、君たちがリデェア達と上手く付き合って、これから設立される新小隊の事を考えて話すことにした。ああ、この件は既に、エレノア司令やレスター局長の了解を得ているから問題はない」


ニヤリと笑う、エレンさん、何だろう…… いま、何をやっても、この人には勝てない気がしたんだ。

そう思っていたら、エレンさんは「後は頑張れよ、少年」とだけ言って、さっさと何処かへと言ってしまった。

※※※※※※※※

公園~Side

リデェアSide


「「あっ」」


なんとなく、公園に気分転換に来たら、アルフレッド君と鉢合わせしてしまった。

ど、ど、ど、どうしよう!?

彼は、優しくて、良い人なのだけど、ボク達の両親があまりにも因縁があり過ぎて、どう彼に接したらいいのかわからない。


「あ、あの、そ、そうだ、えーと」


「う、うん、そ、その、えーと」


「「ごめん!」」


え、ボク達、二人して何をしているんだろう? 特に喧嘩をしたわけでもないし、彼を嫌いになったわけでもない。とりあえず、落ち着いて話をしよう。


「そ、そうだ、そこのベンチに座って、ゆっくり話でもしない?」


「ああ、僕も同じ事を考えていた」


二人でベンチに静かに腰を下ろす。そして、何気なくお互いに両親の事を切り出した。

ボクの両親は、戦後、父さんは先の大戦での怪我が原因で、騎士団を引退して、喫茶店のオーナをしているのと、母さんは、よく考えた末に軍に身を置いて、本部直属の指揮官に納まっているのと、義兄おにいちゃんはボク達の隊長をしていると、彼に話した。


「僕の方は、父さんは行方不明で母さんは、安全で信頼できる方に預けている。それに、この剣は父さんが、【母さんに困ったことがあったら、金にしろ、俺たちの子が手にするなら、それもまた運命だ】と言って母さんに預けた物なんだ。姉さんや妹も手にしたけれど、僕の手にしっくり合っているんだ」


「すごいね!」


うん、まるで、アルフレッド君はファンタジーゲームの主人公みたいだ。確か、フェリオお兄ちゃんも主を選ぶ武器があると言っていた気がする。ボクにはそんな武器に出会ったことがないけれど。


「でも、出来れば、この剣は父さんから渡してほしかった。あ、湿っぽくなってごめん」


「うんん、いいよ、でも、どおして、偽名を名乗っていたの? あ、ごめんなさい、聞き辛い事を無神経に聞いちゃって……」


どうしよう、余計に気まずくなっちゃった!? と、おろおろ、してしまう。

その様子を見てか、突然、アルフレッド君がうっすらと笑うい出した。

その様子にボクはムッとなって、プイと横に顔を逸らしてしまう。


「いや、ごめん、ごめん、そうそう、名前を隠していたのって、ただ単に、何かしようとか考えているとかでなくて、ファルケンの名は色々面倒になるから、母方の名字を名乗っていただけだよ」


「そうなんだ」


とりあえずは、この件はおしまいかな? だって、あまり、詮索したくない事を根掘り葉掘り聞くのも苦手だし。


「あ、すっかり、日が落ちてきたね?」


「うん、じゃあ、また明日ね。アルフレッド君」


僕たちは、ベンチを立つとそのまま、自分たちの部屋に帰っていった。

このあと、悪魔の尻尾を生やした、エクリアちゃんやリーザにボクは色々、アルフレッド君の事を聞かれて、変な誤解を受けたのだった。

また、アルフレッド君の方もお姉さんや妹さんに、色々、根掘り葉掘り聞かれて、二人を部屋から追い出したそうだ。

うーん、昔していた恋愛ゲームとかのイベントの空気を参考にするしないですね。

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