襲撃と再会
イリアの話と何とか別々に切り離しながらストーリーを考えていたので、かなり更新が遅れました。
ギザ砂漠~Side
アルフレッドSide
ギザ砂漠の朝はひんやりしているが、風がきついので少し寒いな? そろそろ、日の出の時間か? 遥か彼方の地平線から太陽がゆっくり上ってくる。気持ちの良い朝だ、僕は携帯食をかじりながら、周囲を見渡すどこを見ても砂漠だ。
「いつ見ても、気持ちが、いいものだな……」
上ってくる太陽が明るく砂漠を照らす光景はとても、静かでそして、僕がどれ程自然の中ではちっぽけな存在かを教えてくれる、まあ、これは揶揄ではなくて、本当にそう思えてくるのだから、そんな事を考えてる僕にはまだ【人】としての余裕があるらしい、父は…… この様な景色を見てどう思っていたのだろか? 僕が生まれる前、今はもう居ない母さんと二人でどんな事を話していたんだろ?
ふと考えてしまう自分が何時もいる。父は全ての種族を纏めて崩壊した、かっての大帝国を蘇らせる戦いを引き起こした張本人とされて、また、彼の死後、血縁者は誰一人居ないと正式に発表されているため
僕等、兄弟は表向きは存在しないとされている。
つまり、残党軍には僕ら兄弟の存在を知られていないのがせめてもの救いか?
彼等の暴走を今止めないと、また、取り返しがつかなくなる。
考えを纏めようとしていたら、不意に誰かがゆっくり近付いて来る、悪意とか敵意は感じないな? でも一体、僕に何のようなんだろう?
そう、考えて咄嗟に身構えようとするが、止めておいた、此処は自由聖騎士団の最前線の拠点で、今は彼等の一員だ、それに僕の正体を知っているのは、フェリオさんにエレノア司令だけ。
更に揉め事は止めておいた方が得策だろう、万が一、僕の正体を他の皆に知られたら、かなり話がややこしくなって……。
「アルフレッド君、オハョー♪」
「うわっ! つ、冷たい!?」
パイロットスーツにフライトジャケット姿のリデェアが冷えた缶コーヒを僕の左の頬に軽く当ててくる、それに僕は驚いて、身体のバランスを崩して地面に尻餅をついた。 突然のことだったのでびっくりした
彼女が近付いていた事に気が付かないくらい考え込んでいたのか、僕は。
「冷た、リデェア、いきなり何をするんだよ?」
「だって、アルフレッド君、お日様を見ながら難しい事を考えていた様な顔をしてたんだから、少し驚かせようと思ったんだよ♪」
にこやかに悪気もない屈託な笑顔で僕にそう言うリデェア、うん、彼女を見ていると、イリア司令官もこんな一面が有るのだろか? うーん、だんだん、イリア司令官のイメージが僕の中でガラガラと音を立てて崩れ初めてきた……。
「まあ、誰も悩み事とか有るんだろうけど、一人で考えていても、長々解決しなかったりするからさ、良かったらボクが相談に乗ろうか?」
そう言いながら、先ほど僕の頬に軽く当ててきた、缶コーヒを僕に手渡してくれる。今のところ付近に敵はいない。
「はい、これあげるね」
「ありがとう、じゃあ頂くよ」
僕はそれを受け取りゆっくりと飲む、うん、少し苦味がある。 そうか、リデェアはコーヒー派なんだ、因みに僕は紅茶派なんだけどね。せっかくリデェアがくれたので美味しく頂こう。
「あと、サンドイッチもあるから、食べてみて、ボクが作ったんだ」
「ありがとう」
僕は彼女にサンドイッチを貰うと、それをゆっくりと味わう。サンドイッチは卵とハムにレタスを挟んだ簡単なものだけど美味しかった。
「うん、美味しいよこれ」
「えへへへ、実はお父さんに作り方教えて貰ったんだよ♪」
お父さんに? 確かリデェアのお母さんはイリア司令でお父さんは……。
今は騎士団を引退をして喫茶店を経営していたんだ。
その時、基地内にけたたましい、アラートが鳴り響き、基地の兵士達が慌ただしく動き回る、恐らく……。
〈所属不明のAS部隊等基地に接近中! 各AS隊は速やかに、これを排除してください、なお、これは演習に有らず、繰り返す、此は演習に有らず!〉
「行こう、リデェア」
「うん、アルフレッド君」
僕達は急いで、搭乗機のあるハンガーデッキに向かうと、直ぐに機体に乗り込んで、状況をオペレーターに聞く、どうやら、ギザの亡霊の襲撃を受けた反乱部隊が、ありったけの戦力を持って総攻撃を仕掛けてきたらしい。
いい迷惑だ。ギザの亡霊はどの勢力とも手を組むことなく動いている。それを残党軍は騎士団が雇っていると思い込んでこちらに攻撃を仕掛けてきた。
そして、最初の第一波が来る、どっから手に入れたのか不明だが、長射程のミサイル攻撃がくるが対空迎撃様に改造された百式戦車隊の弾幕によってその尽くが撃ち落とされる、そして、ジャミング当の防御装置を作動させ、旧式のケンタウルスや重砲撃戦仕様エフリートが一斉に波状攻撃を仕掛けてくる。
《くっ、コイツら…… 手強い!?》
《落ち着け、敵は旧式だ……うあっーーーっ!》
味方のパラディン・カスタムが集中砲火を浴び次々と爆散していく、味方の戦車隊も奮戦するが、やはり残党軍のASに対応仕切れていない。
此方が明らかに不利だ、僕は応戦をしながら、敵を次々とヒートナイフで倒していく。すると今度は目の前で、プラムの乗る格闘戦重視型の機体【ウェアタイガー】が左腕を吹き飛ばされ、バランスを崩して地面に倒れこむ。
《きゃあっ》
《プラムさん、うおぉぉぉーーーっ 》
アレックスの乗るエース用の高機動型の機体シルバーナイトがサブマシンガンを敵に向けて叩き込み、敵の機体は装甲やら部品を撒き散らしながら地面に倒れる。敵の機体は騎士団と旧帝国軍のデータベースに
はなかったが元になった機体のデータがあった。大戦当時開発が間に合わなかった機体【ヘラクレス】伝説の巨人を冠する重砲撃戦仕様の機体を改修して強襲戦闘用に改良したカスタム機か。よし今すぐ、このデーターを各隊に送信しておこう。接近してくる旧式機達をあしらいながら、データーの送信を終える。
「ガレスさんの部隊はギザ基地の防衛に回ってるから、こちらへの援護は望めないか…… なら、何とかするしかないよな?」
そうボヤいた時、光学迷彩使用の機体ミュラージュが背後にいた。チッ、コイツのジャミングは最新型か? 残党軍にしてはいい装備をしている。背後を取られて、まともに反撃が出来そうにない。
《あ、アルフレッド君ーーーっ!》
(しまった、此までかな……?)
そう覚悟した時、はいごで鋼鉄の装甲を切り裂く音が聞こえた。何事かと一瞬振り返ると、そこには機動性重視の女性的なフォルムをした純白のAS【ヴァルキュリア】と紅いペイントカラーの高機動型のAS【ケルベロス】だ、この二機の乗り手の二人が【ギザの亡霊】である。
「なっ…… なんで此処にいるんだ、二人とも」
《ふう、間一髪ね? アルフレッド? ぼんやりしているから、あんなザコに後ろを取られるのよ》
《そう、そう、お兄ちゃんまだまだ、だよね~♪》
そう、よりにもよって、この二人に助けられるなんて、僕もまだまだ未熟だな。困惑しているリデェアが通信回線を開いて、二機のASに話しかける。
《えーと、キミ達は誰? もしかしてアルフレッド君の関係者?》
リデェアが呆気にとられて、二人の乗るASを見て、そう訪ねると、案の定二人は……。
《決まってるじゃない、助っ人よ、す・け・っと》
《はじめまして、、わたし、アルフレッドお兄ちゃんの許嫁で~す♪》
「ぶはぁっ」
いや、いきなり何てこと言い出すんだ、リデェアの怒りとも何とも付かないどす黒いオーラが機体の外までに溢れ出しているじゃないか……。
たっく、余計に説明がややこしくなったじゃないか。
※※※※
ギザ砂漠~Side
リデェアSide
な、な、な、許嫁がいて、しかも、声からしてかなりの美少女だと……思う。
しかも許嫁発言がいきなりの不意打ちだったので、一瞬思考が固まってしまちゃったけれど左右に頭を振って気を持たせる。それはそうと、アルフレッド君後で倉庫の裏でお話しようか?
「アルフレッド君、所属不明のコイツらをさっさと片付けたら、エクリア隊長の援護に……」
《あー、リデェア…… その気持ちだけ受けとっくわ、何せ、うちの親の日々日頃のスパルタ式のお蔭で、この通りや》
エクリアちゃんの声が通信機から聴こえたので辺りをよく見ると、武装以外綺麗に潰された敵の機体がそこらじゅうに転がっていた、そして彼女の機体はほとんど無傷に等しかった。
「じゃあ、リーザは?」
ボクもまだまだ甘い、エクリアちゃんは自由聖騎士団に入るとき、両親と大喧嘩して、その天武の才を見せ付けたらしい、そして、リーザちゃんは……。
《大丈夫よ、お母さんに格闘技も覚えなさいと、きっちり仕込まれたしね♪》
う…… ボクも持っと厳しく育ててほしかったな? だって、二人とも優しいから…… と思ったが、二人とも怒る時は恐かったし、そして、ボクが進みたい道を選んだ時は、背中だけ押してくれた…… うん、本当に厳しい親だ。
その時、新たな反応があった、識別はガレスさんだ、と言うことは?
「ガレス隊長、まさか基地を襲撃してきた敵は……?」
そう、幾らなんでも、ガレス隊長のたいだけで簡単には全滅は出来ない相手が居た筈だけど? まさか?
《ああ、基地の襲撃してきた敵部隊は粗方フェリオと俺達の隊が片付けた、まあ、基地守備隊の被害は無視出来ないしな…… ま、フェリオのお蔭で奴等逃げ帰りやがったがな》
フェリオお兄ちゃん、また獣化して暴れ回ったんだ、しかし、これだけ用意周到な連中なのに、余りにもずさんな襲撃だ。まるで最初から、こちらの動きが解っていて、ワザとこちらを狙ってきたみたいな?
《えーと、それって…… フェリオ隊長は機体に乗らなかった事ですね》
うっ、また、お兄ちゃん、あの狐か狼か分からない姿で戦ったんだ、まあ、本人が【専用機で戦うより、こっちの姿で戦う方が僕向きさ。】と言って、せっかく本国から送って貰った機体は倉庫でそのまま保管されている。せっかくお兄ちゃん用の専用機があるのにテスト以外乗らないなんて、後でカレンさんに怒られそうだよね?
《じゃあ、これで、全部片付けたかな?》
アルフレッド君が、何時もとは違う明らかに同様している、声で皆に話し掛けている、まるでこの場から今すぐにでも立ち去りたい雰囲気を隠さずに。
《アルフレッドお兄ちゃん、きちんと皆に話さないとね?》
そうそう、せっかく許嫁さんが言ってくれているんだし、きちんと説明しないとね♪ ……って、お兄ちゃん? でも、そんな事は一言も言っていなかった、いや、言う余裕が無かっただけなのかもしれないよね。
《ローザリア、アルフレッドも困ってるから、皆さんにきちんと自己紹介をしなさい》
《はーい、では、改めてまして、わたしは、ローザリア・ファルケン、アルフレッド・ファルケンの妹です、さっきは悪ふざけが過ぎました、ごめんなさい》
アルフレッド…… ファルケン…… いや、ファルケンって…… まさか!?
《申し遅れました、わたくしはエルザリア・ファルケン、つまり、アルゼリアス・ファルケンの遺児ですわ》
つまり、アルフレッド君は……かって、お母さん達が倒した……敵の……。
《ローザリア、それにエルザリア姉さん今は此処で、話さなくても、基地に戻ったら、僕の口からきちんと説明をするよ……》
アルフレッド君、大丈夫だよね? だって、あの戦争はもう終わったんだよね? ボクは何とも言えない苦い気持ちを胸にしまいこんで、基地に帰投した。
次回不定期ですが、更新をがんばります。