第4章 風翠の夢に流されば
更新、限りなく遅いです><;
ごめんなさい。
それでも、今日からは頑張ります。
「それっ、ここでコンボ!で…トドメ!」
ぴこぴこーん!
「あー、やられちゃったよ…。篤希強すぎだわ」
広いゲームセンターで、秀太の抑揚のない声で呟いた。
「秀太が弱すぎるのでは?」
篤希が、見下すように言った。
「くぅ〜、おい蒼!俺とやろうぜ?」
「えぇ!?僕?」
「逃げるなよ?ほらほら、向こう行って」
秀太に促されて、僕はゲーム機の向かいに行った。
どすっ…!
いすに腰を下ろすと、周りの空気が変わる。
ゲームセンター特有の空気――、雑音が消える。
ここは聖地なんだな。
と、変に納得して僕は財布から100円を取り出した。
「お〜い、いいか?」
「うん、お金入れるよ?」
秀太の問いに僕はそう言って、お金をそっと入れた。
(勝てますように!)
と、無意味なお願いをして――。
前半は秀太優勢だった。
慣れない格闘ゲームに、僕は秀太に攻撃を当てられない。
「それ、それっ!」
「ほいっと。蒼、ちゃんと当てろよ!」
秀太の挑発に、僕は顔を引き締める。
「くそっ!」
ぼこ、ぼこぼこ!
数発だがヒットした!
「おっ、ちょっとはやるようになってきたな」
秀太は、へへっと笑った。
人間は油断したときに足元をすくわれる事が多い。
それは、いつの時代でも同じだ。
秀太は――油断している…。
今が、チャンスだ!
「ふぅ…終わったぁ!」
「秀太、ぎりぎりだっただろ?次やったら、負けるんじゃないか?」
「な、なにを〜!いいか、次やったら、俺は“お前”に勝つぞ!」
「はいはい、頑張ってね」
二人の楽しそうな会話も、僕にはあまり楽しく聞こえない。
「負けたぁ…」
惜しかったのに。自分でもそう思う。
最後には、攻撃もヒットしてきて、相手の攻撃パターンもわかるようになってきたのに…。
やはり、前半の差が厳しかった。
「まぁさ、蒼もあんまりやったことなかったんだろ?しょうがないって!」
篤希が、僕の肩に手をかける。こういうときは、篤希は優しい。
いつでも、人の気持ちを分かってくれる。
「はは、いつでも相手してやるよ」
こういうときでも、秀太は秀太だ。いつもと変わらない、お茶らけ調子で。
二人とも、僕にとっては大切な友達だ。ずっと、一緒だ。
だから、僕は思わなかった。
この二人との絆が、あんな形に変わってしまうとは――。
「次はどうする?」
僕の呼びかけにみんながうーんと、唸っていると“その人たち”は現れた。
「あら、秀太君たちじゃん!こんにちは〜」
後ろから女性の声がしたので、僕はふっと振り返った。
そして、僕の口はあんぐりと開いてしまった。
水月さんたちだ…。水月さん他3人。いつものグループだ。
「おっ、奈緒か?久しぶりだな!」
「何言ってんの?まだ、夏休み入ったばっかりだよ?」
そう言って奈緒たちはけらけら笑った。
それにしても、こんなところで会うとは…。
僕は一人、赤面した。
「ねぇ、一緒にボウリングしようよ。」
しばらく談笑していた中、奈緒が口を開いた。
え…、僕はそう思った。
正直、ボウリング等スポーティなことは得意ではない。
水月さんがいる前で…。
「ねぇ…、どうする?」
「いいんじゃね?俺らも何するか決めてないし」
僕のわずかな希望は、秀太に一蹴された。
「俺も賛成〜、おもしろそうじゃん」
篤希も、賛成。僕の付け入る隙はない。
「じゃ、決定ね。早速行こうよ」
気まずい…。いや、幸運だ。でも気まずい…。
あれから、僕らはそれぞれ1対1になって対話することになった。
秀太が奈緒と、篤希が鈴美と、…僕が水月さんと。
菜緒は明るくおもしろい。秀太と、話も合うだろう。
鈴美は少し男の前では性格が変わるが、基本的に誰にでも好かれる性格、篤希が好むのも分かる。
でも…僕らは何だ?
うーん、どうしよう…?
「あのね…、葉月くん?今まで、なんのゲームやってたのかな?」
「え?あぁ…格闘ゲームだよ」
いつもは、活発に話す水月さんの顔が紅潮する。それが何故か愛しい。
「あのね…、あ、おもしろかったかな?」
「うん、おもしろ…かったよ」
今の僕もきっと顔がりんごのように赤いに違いない。
いや、タバスコのほうが正しいか。
「あのね…蒼くんでも…いいかな?」
「うん、じゃあ僕も優菜さんで…、い、いいかな?」
途切れ途切れ、見てるほうが苦しくなる。今の僕の声はそんなものだろう。
ちらと水月さん、いや優菜さんを見た。
え…?いう顔をしている。
「も、もちろんだよ。あのね、これからは…その、よろしくね」
赤面して話す彼女、赤面して話す僕。
二人の思いは――…