表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

第3章 悠久の白きに包まれて

ふっと目を開けた。

いつの間にか眠ってしまったらしい。

僕は時計を見た。針は、10時をさしていた。

窓の外では、セミの鳴き声がやんでいた。それでも夏休み特有というべきか、子供の声が聞こえる。

「あぁ〜、なんか時間の無駄しちゃったな」

僕は自分に笑いを入れながらゆっくりと起き上がっていた。

水月さんのこと、あんなに思ってたのは夢だったのかな…?

なんか、凄い胸が苦しくなった記憶がある。

ベッドに寝転がったときからすでに眠っていたのかもしれない。

風が絶え間なく吹き込んでくるため、カーテンが容赦なく舞い上がる。

「お茶でも飲もう」

僕は、階段を下りていった。


お茶をコップに入れて、口元まで持っていこうとしたとき、夏休みの空気を冷たい機械音が破った。

トゥルトゥルトゥル…!

電話が鳴っている。

僕はコップをテーブルに置き居間へ向かった。

トゥルトゥルトゥル…!

「分かってるよ、そんなに鳴らなくても」

と、小言を言ってから受話器を取った。

「もしもし…」

「お、蒼?」

「秀太?どうしたの?」

「いやさ、夏休みの初日だし、祭りまで時間あるから遊びに行かね?」

あぁ、なるほど。それはいい考えだ。祭りまで遊んでれば、少しはこの正体不明の苦しみから晴れるだろう。

僕はそう思って返答した。

「あぁ、いいね!今からかな?」

「んー、今10時回ったところだろ?11時にお前の家に篤希と行くよ。いいだろ?」

「了解!待ってるよ!」

「おう!」

そういって、お互いに電源を切った。

うん!夏休みなんだよ!何も変なことを考える必要はないさ。思いっきり楽しもう!

もともと、僕は恋愛とは無関係だったじゃないか。今更、何を苦しむ必要がある?

昨日の二人と話してて、少し興奮して調子に乗ってただけさ。

さ、2人が来るまでに用意して、お母さんにメモ残しとかなきゃな。何の服を着ていこう?

おしゃれしていこう。今日は3人で楽しむんだ!

僕はそう自分に言い聞かせて、居間を出た。


「よし!これでお母さんも分かるだろう」

僕は自分で書いたお母さんへのメモに納得した。


“お母さんへ ちょっと、友達と遊びに行ってきます

そのまま、お祭りに行くと思うので帰りは遅くなります 蒼”


「そろそろかな…」

時計を見ると11時を5分ほど回っていた。

僕は用意もして、着替えも終わり二人を待つばかりだった。

ピンポーン!

お!うわさをすれば何とやらだ。

僕は、早走りで玄関へ向かった。


「おはよう!元気だったか?」

「おい、秀太、元気だったかって昨日会ったばっかりだろ!」

篤希の素早い突っ込みに、秀太はまた口を“あ”と開けた。

「ははっ!秀太らしいよ。それより今日はどこに行くの?」

「あぁ、俺と秀太で話してたんだけど、まだ祭りまで時間があるだろ?ほら、新しくできたショッピングモール、“紫陽花ブライト”はどうかな?」

「なるほど!あそこは僕も行ったことはなかったよ!行こうよ!」

僕達は自転車を駆けて街までの道のりを走った。

風がよりいっそう気持ちいい。まだ日差しもそれほどきつくなく地上を暖かに包んでくれている。

僕は“夏の色”をもういちど体感した。

「それにしても6月に完成したからって紫陽花はないよなぁ…」

「お、秀太にしてはまともな事言うな。でも、あそこはカップルも多いし、年中“ジューンブライト”モードらしいぜ」

「へぇ〜、それは凄いね…」

僕は、篤希の情報通に少し感心した。そんな年がら年中よく恋愛ができるものだと。

「ま、今は夏休みだ。子供だって多いはずさ!」

篤希が、もっともなことを言った。


「はぁ〜、意外に遠かったね」

「まぁ、こんな大きなショッピングモールだ。これぐらいの範囲なら、許容範囲さ!」

秀太が笑っていった。秀太も体力はあるんだと、少し勉強になった。

「ひとまず中に入ろうぜ?クーラーもきいているだろうしさ」

篤希が促したので、僕達は中へと入っていった。

「おぉ〜、涼しいな!クーラーガンガンじゃん!」

「そうかなぁ…、僕は外の涼しさもいいと思うよ」

「そんなことはいいからさ、どこに行く?」

これから、僕が受けた夏の施しをじっくり話そうと思ったのにそんなこととけなされたので、僕は少しがっかりした。

それでも初めて入る店なので、僕も中を早く見たいことに変わりはなかった。

「ひとまず、ゲーセンじゃね?」

篤希も意見がないようだし、僕も目的が特にないのでひとまず賛同しておいた。


ゲームセンターは、やっぱり子供達が多かった。

中高生はもちろん、小学生も何人かいる。やはり、夏休みのゲームセンターは子供達にとって特別な存在なのだろう。

「二人とも何やる?」

「ん〜やっぱり格ゲーだな、篤希やらねえ?」

「いいぜ、俺に勝てるかなぁ」

二人は、アーケードゲームのほうに歩いていった。

僕が提案したのに、なんで二人で盛り上がるんだよっ!

僕は心の中でそう言って、二人の後を追った――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ