第2章 光る夏と淡い恋
えー、更新遅いですね。
意外に夏休みが忙しいのです(苦笑)
チリチリチリ…!
容赦ない音が響き渡る。
「んっと、何時だ…?」
そして目覚まし時計を見てから気がついた。
「今日から夏休みだった…じゃん」
夏休みの訪れにも気づかず目覚まし時計をセットしてしまうとは…、なんとドジな事か。
しかし、安眠を妨害されたことより、夏休みの初日に早起きした自分が嬉しかった。
「今日はお祭りだし、何かいいことがおきそうな予感…」
そんなことを考えながら、僕は布団から這い上がった。
「おはようー」
「え!?蒼?今日から夏休みなのよ?早起きなんて――!」
やはり、母も驚きを隠せないみたいだった。
しかし、僕は目覚まし時計のことは黙っておこうと思った。
「うん、なんか夏休みの初日に早起きするといい生活リズムが作れそうじゃん?」
と、心にもないことを言っておいた。
母は軽く微笑し、僕の朝食の支度をすると足早に仕事へと駆けていった。
「今日はお祭りまで、どうやって過ごそうかなぁ…」
僕はトーストを口にほおばりながら、目を宙にやり考えた。
宿題か?いや、やっぱりやる気が出ないな。
もう一回寝る?どう考えても、ナンセンス。
ゲームしようか?なんかなぁ…。
と、途方もなくなるような考えを僕は脳内で張り巡らした。
そして、食後のコーヒーを口に含んだとき、答えなんか出てこないなという答えに辿り着いた。
僕の夏休みの快進撃もここまでだった――。
食事を終え、僕は2階へと上がった。
なにか蒸し暑いと思ったら、窓が閉まっていたので、僕は急いで窓を全快に放った。
一筋、二筋、三筋――数え切れない風が僕の頬を撫でた。
「気持っちいいー!」
僕は、大声で叫んだ。
夏休みの色合いが、空気にも浸透し僕を歓迎してくれるかのよう。
外ではセミの鳴き声が聞こえ、並木道の葉も心なしか昨日より鮮やかな緑をつけているように見える。
空は、雲ひとつない青空――。
僕の小さな憂鬱は、神々しい何かによってかき消された。
僕はベットに大の字になった。
すると、水月さんに初めて“感情”を抱いた日のことを思い出した。
あれは…忘れもしない入学後の委員会を決める学級会。
僕は、特に何もやりたいことがないので挙手もせずぼーっとしていた。
しかし、途中で先生が「まだなににも立候補してない奴ー?残り物になるぞー!」と言ったので、僕は慌てて前を向いた。
ん?係りの数は1、2、3、4…あれは5人だから×5で11、12……39、40人分…。いやいや、うちのクラスは40人だ。
僕の数え間違いだ…。もう一度数えて…――40人だ。
まずい!何が残っている?
あとは5席…。
じゃんけんで負けた3人と僕とやる気のなさそうな篤希の5人だ。
秀太は早くに、室長に立候補して今は寝ている。
本当なら、室長と副室長で司会をやるのだが、副室長に任せっぱなしのようらしい。
そのときの…というか今もだが…副室長が――水月さんだ。
僕はすぐさま残りの席を見た。
体育委員、保健委員、黒板係り×2、花のみずやり(珍しい仕事だ)
どれも、辛そうだったり面倒くさそうな仕事だ。
「私達、2人で黒板係りやりますー!」
僕は声のするほうを振り返った。
仲の良い二人組の女子が、まず黒板係りへと立候補。
僕は、このままスルーした。
二人組で立候補しているのに、割り込めるはずがない。
「じゃあ、後3人ですね」
水月さんがにこっと微笑んだ。
残り3つ――!
篤希がどうする?と言わんばかりに僕のほうを見つめてきた。
ここは決まっている。
地味だが、恐らくは楽そうな“花のみずやり”だ!
僕は篤希に軽くウインクしてから、勢いよく挙手して言った。
「花のみずやりやります!」
しかし、ここで事件が起こってしまった。
ここで、何故かみんなの視線があと残っていた一人の女の子のもとへと集められる。
なにか、顔を真っ赤にして手を半分上げた状態でいる。よく見ると目が潤んでいる。
そういえば、この子はクラスでもおとなしい子だった。
「ねぇ、あんた!今、この子が立候補しようとしてたのに割り込むなんてひどいんじゃない?」
クラスの女子の一人が言った。周りのみんなも僕をいっせいに見つめてきた。
ただ、秀太は眠っていて、又篤希は笑うのをこらえているような顔だった。
僕はわきの下に冷や汗をかいていた。
やばい…!どうする…?
決まっているだろう、葉夏蒼!女の子を泣かせていいはずあるまい!
「じゃあ、じゃんけんでいいですか?」
水月さんが、僕と泣いている女子を交互に見た。
「あ…間違えました!体育委員に立候補しようとしてたんですけど…!寝ぼけてたみたいです!」
と、一気にそういった。
「そう…じゃあ体育委員ね、篤希くんは保健委員でいいかな?」
水月さんは、またにっこり微笑んでいった。
「あ、ああ」
と、篤希も慌てていった。
みんなはシーンとして、それ以上何も言わなかった。
休み時間になり、篤希がからかいにきたがあまり覚えてない。
僕はあの笑顔で、あのさり気ない優しさで、“水月さん”を好きになった。
僕の意識は現実に戻り、部屋の天井を見つめていた。
今日のお祭りで、水月さんも来るだろうか?
来るだろう。なんせ大きなお祭りだ、町外からも人が来るぐらいだから。
会えるかな?会いたいな。会えるよ。
僕の願望は期待へと変わっていったが、やはりそんな良い偶然はないと頭の隅から突込みが入った。
「これじゃあ、昨日の秀太のことも笑えないよな…」
僕は、昨日秀太が駅であった子にひとめぼれした話を思い出した。
そして、力なく苦笑した。
「会いたいよ…」