最終回
そして、日曜日。
「こんにちは。先輩」
「やぁ、春香さん」
今日は春香さんが来る日だった。プラネタリウムを見せるためだ。
「おじゃまします」
彼女は前回とは違う、これまた似合う服を着ていた。しかし、表情はなんだか浮かない顔をしている。
「いいよ、上がって」
僕はこないだと同じ自室に通す。家にはこの二人しかいないためか、いつもより静かに思える。
「お茶、いれてくるね」
僕はお茶を淹れにキッチンへと向かった。
「ふぅー」
ほっとため息を付く。なんだか今日の春香さんはいつもと違ったような……。
僕はヤカンに水を入れてコンロにかける。その間に給主に茶葉を入れる。
「……」
お湯が湧いた。ズズズッと沸騰する音が響く。僕は火を止めた。
「……」
僕はなんだか分からない空虚感に包まれた。なんだろうか。なんだか心にぽっかりと穴が開いたような……そんな感じだ。
「……」
僕はお湯を給主に注ぐ。茶葉が浮かんできた。そしてしばらく待つとそれが開く。
「……」
僕は緑色に色がついたお茶を湯のみに注ぐ。そしてそれをお盆に乗せて二階へと運ぶ。
カチャ
ドアを開ける。
「先輩、遅かったです」
クッションに座っていた春香さんは少し怒ったように言った。
「え? あぁ。そうか。ごめん」
僕はそう言ってお茶を差し出す。
「いただきます……」
そう言って彼女はお茶をすすり始めた。僕もお茶をすする。
「うっ……」
僕はうめき声を上げる。苦かった。
「……」
それでも彼女は何も言わずただ、すすって湯のみを持つ手元に視線を向けていた。
なんとかしないと気まずい。そう思って声をかける。
「そろそろ、上映するか?」
「あ、はい」
「電気、消して」
僕は電気が消えたことを確認してから機械のスイッチを入れた。
暗闇に一筋の線が通り、天井に星が映し出される。
「ふぅ」
僕はベットに寄りかかるように座った。その横に彼女も腰を掛ける。
「……」
「……」
どちらも何も言わない。ただ、天井を見上げていた。
「あっ! 流れ星?!」
僕が声を上げる。
「ウソっ!?」
彼女も驚いたようにそれを探す。
「あ、そういえば何十分に一回流れ星が流れる機能が付いていたような……」
「そうなんですか。見れなかったのが残念です」
「そうだね」
「……」
「……」
そして再び無言の観賞会が始まる。
こないだとは違う、雰囲気だ。
――何分たった頃だろうか。
「先輩」
「ん?」
僕は天井を見上げたまま返事をする。
「先輩には好きな人っているんですか?」
急にそんなことを聞かれた。どう答えていいかわからず――
「よくわかんない」
そう答えた。
「気になっている人は?」
「うーん。それは……」
それは、春香さんだよ。そう言いたかった。
だけど、それを言ってはすべてが終わってしまう。そんな感じがした。
「……先輩。私、先輩のことが好きなんです」
「えっ――」
突然の告白に驚く僕の肩に手が置かれ、頬に何か柔らかいものが触れた。そして、すぐに離れる。
「出会った時から、ずっと」
耳元で声がする。暖かな吐息が頬や耳にかかる。
「……」
僕はどう答えていいかわからず黙って聞いていた。
「覚えていますか? 初めてあったとき」
僕は春香さんと最初にあった時のことを思い出した。
二年前だろうか。小学六年生の頃梅山と知り合ってやつの家に行った覚えがある。その時に一緒に遊んだ記憶があった。
それが僕と彼女の"接点"だ。そのひとつの"接点"。それがなければ今こうやって話していることは無かっただろう。
彼女は僕の返答を聞かずに話を続けた。
「あの頃から好きだったんです。……一目惚れってやつですね」
僕は横を向く。暗いから彼女の表情がよくわからなかった。
だけど、彼女の言葉だけでも、僕にはわかった。
僕はすべてわかった。
僕も、彼女のことが好きなんだと。
「春香さん」
僕はすぐ隣りにいる彼女に声をかける。
「ん?」
僕はゆっくりと彼女を抱きしめてこう言った。
「僕も好きだよ。春香さん」
その言葉がずっと言いたかった。いつからかはわからない。だけど、今こうやって言えて嬉しかった。
「せ、先輩……」
彼女も僕の背中に手を回し――
――僕ら二人は満点の星空の下、抱きしめあった。
こんにちは。まなつかです。
無事完結することができてよかったです。
今までこんな文章力がないやつの文章を読んでくださり、ありがとうございました。
前作『雨ノ日』では展開が早過ぎるとの指摘があって、なるべくゆっくりと二人の関係を発展させていった……つもりです。
この話はこれで完結します。
本当はその後の話しも書きたいのですが、他の小説も書きたいのでキリがいいところで終わらせていただきます。
今までお付き合い下さり、ありがとうございました。
感想をいただけたら、嬉しいです。
次回作でまた会えることを願います――
それでは。




