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作家と軍人  作者: 藤戸 嘉太郎
搾取村
22/26

搾取村 8

 ロートを護送する馬車を見送り、レナート達も帰り支度を始める。正直ここには一秒もいたくない。

 ロートと一緒に乗っているのは軍人だ。人をやめた彼を警戒してレナートから要請したのだ。これで逃げることはできまい。


「ユイ先生、リュドミワさんには——」

「もう逃げられているだろうな。きみの人を見る目の確かさを、こんな形で感じたくなかったが……。フランチスカさんにはあの証拠集めの件でリュドミワさんも協力者であろうことは話してあるんです。この環境ですから何かあったら控えてある犬に言うようにお願いしていたんですが……」

「ご主人様」


 P-1が音もなくユイの隣に現れる。無表情であるが、纏う空気がちょっと不穏だ。


「P-3がフランチスカ様と一緒にリュドミワの自宅に押し入りましたところ、女性の死体を発見。身元はリュドミワの母親、ヨラ・ドゥヴァーニャ。魔術で凍らされていたうえ、血液を抜かれていたので正確な死亡日時は分かりませんが、恐らく一年以上は経っているだろうとのことです」

「一年? それだけ母親が姿を見せなかったら周囲が不審に思うだろう?」

「ええ。フランチスカ様も彼女の遺体を発見したときは昨日まで会話していたので衝撃は大きかったようです。特におかしいところはなかったそうで……」

「ふーん……」


 ユイは左手の人差し指をこめかみに当てる。考えているときの癖のようで、しばらくの間そうして考え込んでいた。


「……これは、ほぼほぼ黒だろうな。P-1、そのままP-3に引き続きフランチスカさんの補佐に入るよう伝えてくれ」

「承知いたしました」


 そう言って姿をくらましたP-1。彼の擬態能力の高さには目を見張るものがある。

 ユイには何が見えているのか。分からないが、この事件は予想以上に面倒だということだけは分かった。


「リュドミワさんに対する考えが当たっていましたね、レナートさん」

「何故依頼をしようと思ったのでしょうか……」

「内外共に村を潰したかったのでしょうね。妖精信仰を知られてしまった今、この村は崩壊します。一過性の感情で行動し、統一性のないものなんか、祀ったところでろくなことがありません。約束を反故する奴を信用できないのと一緒です」

「国は記録にして残すのは許してくれるでしょうが、実際にやるのは許さない。それで一度、世界が滅びかけたから」

「二回、ですけど」


 金髪碧眼が許されないわけは、滅ぼしかけた人間の特徴というのもある。だが、そもそも妖精がその人間の婚約者を無理矢理娶ろうとしなければ起こらなかったことだ。だからこの世界は金髪碧眼の人間以上に妖精を嫌っている。


「さて、事件は解決したことですし、荷物まとめて帰りますか」


 ユイの言葉に同意して、自分達が寝泊まりする予定だった家に向かう。

 こんなにはやく解決するとは思わず、少々拍子抜けした。

 ——亡くなった方達のことを思うとそう思うべきではないが……。

 正直、この村の成り立ちを思うとあまり同情の念は湧かない。お世話になったアリーですらロートを侮辱していた。あの言い方から見て日常的に言っていたはずだ。そんな連中に同情はできない。


「事件解決したらお腹空いちゃったな~。なんか食べてから帰りますか」

「さっきミートパイ食べたでしょう」

「あんなのすぐに消化しちゃいますよぉ」


 自分達に当てられた家の扉を開けようとユイが手を伸ばす。


「私としてはもっとがっつりしたものが——」


 伸ばした手が途中で止まる。そのまま動かないユイに声をかける。


「先生、何かあったんですか?」

「——ぁ、——る」

「すみません、もう一度いいですか?」


 何か言っているようだが小声で聞き取れず、謝罪しながらもう一度聞き直す。

 今度は聞き逃さないように耳をユイに近付ける。

 集中しているからか、周りの音が急に静かになる。

 ユイの薄い唇が開く。


「髪の毛が落ちてる」


第三章 搾取村 完

第四章 あなたについて 全二話

幕間 シミエル家御令嬢毒殺未遂事件 全一話

第五章 買い物で買ってはいけないもの 一話

合計四話明日の11:10投降予定です。

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