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恐るべし昭和の左翼と右翼の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/03/08

 平成の、そう、2010年代ぐらいかしら。

 よく分からない風潮だったそうだわ。


 ネット右翼、と表現してもいいのか分からないけども、ネットの台頭で愛国的な風潮になったわね。



 そしてね。あるネトウヨと言っても良い方がね。予備自衛官補に志願したの。

 予備自衛官補とは、自衛隊経験のない方でも予備自になれる制度よ。


 元自衛官で自衛隊協力会のお爺ちゃんが対応したそうよ。


 そのネトウヨの方の職業はお医者様だったわ。


「まさか・・・あの有名人?」

「いえ、内科医よ」


 ネトウヨ・・ってそもそもいないわ。左翼もいないわ。

 それが私の持論なんだけど・・・いえ、話がそれたわね。



 お爺ちゃんに息巻いていたそうよ。


『私は自衛官に論文を発表したい。檄を飛ばしたい。その機会はありますか?』

『もちろん。ありますよ』


 とんでもないお爺ちゃんだわ。自衛官の政治的活動は投票以外認められていないわ。


 そのお医者さんは技能で入って、曹長か三尉でいきなり予備時小隊長よ。

 予備自衛官補の訓練は、予備自衛官と一緒にやったのですって。


 予備自は元自衛官よ。


 その方は、意気揚々と予備自衛官と訓練でついている自衛官の前で演説をしようとしたの。


「予備時小隊長に朝のあいさ~つ!敬礼!・・・・・(小隊長、直れ・・・です)」

「な、直れ・・!」



 何とか敬礼を返して、A4用紙を取り出したけど、


(小隊長、訓示ですよ)


 隣に付いていた現役自衛官の士長が耳打ちをしたそうだわ。


 だけど、その方は固まっている。

 皆は気をつけの姿勢をとっているままだわ。


 しばらく沈黙が続いたわ。


 見かねた訓練陸曹が・・・


『小隊長、事後の指示は、掲示板に書かれているとおり。別れで宜しいでしょうか?』


『・・・ああ』


 このような時、必ず指揮官の許可を受けて発言をするそうよ。


『小隊長からあった通り。事後の指示は掲示板の通り。【別れ】』

『別れます!』



 何だか、尻つぼみの結末になったわ。



 お爺ちゃんの話だと。



『本気じゃない。目を見て分かった。ワシは昭和時代、市ヶ谷の事件を目撃したのだ』

『え、あの文豪の・・・』



 そう、有名な文豪が自衛隊に決起を促した事件があったわ。

 その時、お爺ちゃんはいたそうよ。


『何て言うか、熱量が違う。・・・何て言うのか』



 ・・・それにな。ワシが高校の時の教師は左翼だった。いや、インテリは全て左派だったな。


『終戦の日、私はスイトンを食べるために並んでいた。君、全ての人が皇居に向かって土下座していたのではないよ』


『私は軍事訓練の時に、ワザと間違って手旗信号をした』


 他にもいつも政府、自民党を批判していた。まあ、あの年代は政府に不信感があるのだ。




 しかしな・・・・これは本当の話だが。


 あるとき、お隣の国の話題になった時だ。

 日本は反省しなければならないと言うと思ったが。


『〇〇人はとんでもない奴らだ。日本に支配されて当然の輩だ!』


 と怒りだした。

 皆は意味が分からなかった。


 先生は戦後、鉄道会社で働いた時期があったが、〇〇人の暴虐を目の当たりにしたそうだ。

 現代でいえば、過激なネトウヨと似たような発言になっていた。




 だからだ。

 あのお医者さんの話は無謬むびょう性に満ちていたから本物ではないと思ったのだ。

 本気で言いたいのなら、恩師のように所構わずに言うはずだな。


 恩師は、確か、ソ連のアフガン侵攻で幻滅して、天安門事件で中国に失望して、更に、東欧なら大丈夫だと肩入れしたが、それも崩壊して、今、どうなっているのだろうな。



『案外、ネトウヨになっていたりしてな』



 以上がお祖父ちゃんの話よ。




 ・・・・・・・・・・・・・




「だから、山田君、多少、おかしいのでも予備自衛官補志願者がいたら教えてね。実際は、主婦やバックパッカーの方も来ているわ。

 それに予備自衛官補は戦場に行かないわ。留守になった駐屯地の警備が任務よ」



「・・・分かった」


 俺は同級生の佐々木からそんな話を聞いた。



 思い当たる節がある。



 同級生に平和活動を謳う宗教活動家がいたのだ。


「すごいだろう。我が教団は、戦争反対をしていたのだ!この本を読んでくれ」

「・・・それ、フィックションだよ」

「何!平和活動をしているのだよ!

「だから、その本小説でしょう?だからフィクッションと言ったんだよ!」


 彼は平和活動をしている事を錦の御旗にしている。

 まるで平和活動をしている自分達は偉いと思っているようだ。


 これが無謬むびょう性か。自分らは聖なる存在で決して間違いはない。


 何故か、学校の図書室に置いてあった反戦漫画を思い出した。

 原爆を受けた主人公がたくましく生きる姿を描いている。


 彼は、正義のヒーローではない。砂糖を米軍のガソリンタンクに入れたり。暴れたり。


 作品では〇〇人の乱暴も描かれている。


「だから、この本、ツッコミを入れられながらも愛されているのだ」


 と思わずつぶやいた。



最後までお読み頂き有難うございました。

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