誠実の温度 ―ファインマンに寄せて―
科学者であるなら
素人に語るときこそ
あらゆる誠意を尽くさねばならない
それは 知識のひけらかしではなく
無知を共有すること
人は人を欺く
だが
もっとも欺きやすいのは
いつだって
鏡の向こうの自分自身
理解したと思うなら
高校生に話してみるといい
言葉がつかえるなら
それはまだ
霧の中にいる証
科学とは 知らないことを
知らないと言える勇気
そして 知っていることを
誰にでも届けようとする 静かな熱
その人がいくら賢くても
いくら数式が美しくても
それは科学とは関係ない
実証されなければならない
ここに書かれたことは気高い
私は勘違いも詩にしたろうし
科学を端折った詩も書いた
私は科学者とはいえないかもしれない
この詩は、リチャード・P・ファインマンの言葉に触発されて生まれました。
「素人に語るときこそ、あらゆる誠意を尽くすべき」
「人は人を欺くが、もっとも欺きやすいのは自分自身」
「高校生に説明できなければ、理解したとはいえない」
——これらの言葉に込められた、科学者としての倫理と謙虚さ。
その精神を、詩のかたちで綴ってみました。
*ファインマンの言葉として、以下のような表現が名言として流通しています。
「化学は知性を欠いた物理学だ。数学は情熱を欠いた物理学だ。」私はこれをファインマンの本意とはとりません。これは彼の会話の一部を切り取ったものであり、物理学に偏重した人々によって名言化されたものだと思います。実際のファインマンは、優れた数学者であり、化学のエンジニアとしてプラスチックに化学メッキを施して製品化するなど、実践的な工学にも深く関わっていました。彼の発言にはユーモアや挑発が含まれることも多く、文脈を離れて引用されると誤解を招きやすい面があります。ファインマン自身は、科学のあらゆる分野に敬意を持ち、教育にも情熱を注いでいました。




