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君の笑顔を、信じている(彼氏視点)
最後に会ったとき、彼女は笑っていた。
悲しそうで、それでもちゃんと笑っていた。
「わかった」
そう言ってくれたとき、胸が痛んだ。
あの人はきっと、わかってなんかいなかった。
それでも、僕の決断を尊重してくれた。
本当は、あの手を離したくなかった。
でも、どうしても自分を信じられなかった。
この先、彼女の隣にいる資格が、自分にはないような気がしていた。
別れてから何度も思った。
あのまま一緒にいたら、少しは幸せにできただろうか。
それとも、もっと彼女を傷つけていただろうか。
連絡はしなかった。できなかった。
心のどこかで、彼女が“前を向いている”と信じたかった。
僕のいない世界で、彼女が笑っていられることを願った。
けれど、不意に風に乗って届く香りや、ふと見上げた空の色が、
彼女を思い出させる。
それは苦しくて、それでいて、優しい。
君が今も、僕を少しでも思い出してくれているなら。
それがたとえ“もう戻らない時間”でも――
あの恋を、ありがとう。
君と過ごした季節を、僕は一生、忘れない。