第48話
26年 8/21 00:05:ルレラ連合:前進兵站基地
[ゲート突破。ビショップ、武器庫周辺の制圧は?]
[終わってる。さっさと積み込んで撤収するぞ]
彼らの作戦目標は、"ルレラ連合国境部でのエルフ族の反乱・建国の支援"だ。
あいにく、国産の自動小銃や諸外友好国の小銃は自国に行き渡らせるのが精一杯だ。
おかげでこんな大規模襲撃を実行して火器を盗み出す羽目になった。
こっそり1両拝借してきたルレラ軍のトラックで正面のゲート…………という名のただの検問を突破する。
事前確認した航空写真によれば、突破したゲートを直進した突き当たりが武器庫のはずだ。
残念なことにトラックは1両しかないが、それでも大型トラックだ。
反乱勢力の初期支援分には十分な火器弾薬は積載できるだろう。
すでにビショップが自慢のVortex RAZOR HD GEN III1-10X24 LPVOによる精密射撃で、武器庫周辺の敵は殲滅済みである。
あのビショップが大騒ぎしながら解説していただけある。
その分お値段も大騒ぎしているが。
今買えば4、5倍はするであろう。
トラックが武器庫へと到着する。
既に侵入していたビショップが同時に合流する。
「ビショップ、周辺警戒。近づいてきたら全員殺れ。行くぞ」
そのまま武器庫内に突入する。
内部は随分と暗い。
ウェポンライトを点灯させ、クリアリングをするが特に敵兵がいる気配はない。
「ポーン、運び出すぞ。小火器・弾薬優先、重火器は余裕があるなら持ってくぞ」
「了」
そのまま手近な武器箱から搬送する。
どうやら前線部隊に送る武器のようで、ある程度真新しさがある。
構造的にはレバーアクション式。
一部はボルトアクション式のようだ。
いくら元中情とはいえ、この程度の搬送どうということはない。
元普教連のポーンならなおさらだろう。
既にトラックにはウェポンボックスが相当量積み込まれている。
弾薬も同様だ。
しばらくゲリラ戦をするには十分だろう。
ビショップも仕事をしている様で、頻繁どころじゃない頻度でサプレッサーに減音された銃声が聞こえてくる。
[ビショップより、数が多いです。これ以上は抑えられませんよ]
[了解。ポーン、撤収するぞ]
そう言いながらトラックのドライバー席に乗り込む。
ビショップが続いて助手席に乗り込み、エンジンがかかり走り始めたタイミングでポーンが荷台に飛び乗る。
そのまま荷台に備え付けてあったMINIMI Mk3をぶっ放している。
追手は軽機の弾幕で付いてこれてないらしい。
[ポーンよりキング、グリーン。離脱成功と判断]
「このまま軽く足跡を伸ばしてから帰還するぞ」
「了」
[copy]
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26年 8/24 6:00 :ヴ第二共和国:封鎖海域
海上自衛隊第一航空護衛隊群。
第一護衛隊
DD-119 あさひ
DD-120 しらぬい
DD-115 あきづき
DD-116 てるづき
第一巡洋護衛隊
DDG-179 まや
DDG-180 はぐろ
CG-01 ひえい
第一航空護衛隊
CVL-01 いずも
CV-01 ほうしょう
第一護衛潜水隊
SS-515 じんげい
SS-516 らいげい
SS-517 ちょうげい
計12隻の機動艦隊が、ダルア海軍が封鎖する海域へと突入する。
既に各護衛艦からSH-60などの哨戒ヘリが周辺での索敵を行っている。
敵艦隊が出てき次第、ほうしょうからF-35Bが発艦し直ちに撃沈に向かう。
既に救援対象である、第二旅団が籠城戦を繰り広げている市街地の位置は把握済みだ。
後方には、にほんばれ型輸送艦3隻とようこう型輸送艦1隻、そして民間から供与された大型輸送艦が航行している。
何をどうしようとも、脱出した半数の戦車を覗いた概ね35両前後を救出・移送しなければならない。
他にも収容しなければ行けない兵装は多い。
最悪の最悪の場合は破壊措置の後に投棄すればいいが、いま現状の日本にそんなことができるほどの余裕はない。
だからそこ、民間供与の輸送船まで連れ出しているわけなのだが。
「あさひから入電、シーホークより赤警報です」
「主力艦隊か、1個飛行隊を出せ。小隊1個で制空、他は対艦艤装。第一護衛隊が分離する前に破壊しろ」
予定では、あと20分もすれば第一護衛隊と輸送部隊が収容・支援のために分離する。
それまでに主要な脅威は排除しなければならない。
もちろん、彼らだけでも大半の敵艦艇は無傷で撃破可能だろうが、それでも油断は禁物だ。
いくら我々が技術的優位を持っているとはいえ、万が一もあり得るのだ。
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[総員対空戦闘用意。繰り返す、対空戦闘用意]
日本軍の艦隊は特殊だ。
大抵、垂直飛行の飛竜…………確か、ヘリコプターなどと言うらしいが。
あれを必ず偵察に出してくる。
その偵察が敵艦隊を捕捉次第、艦隊か小型超高速騎が攻撃しに突っ込んでくる。
後者には人間が乗っていない。
おかげで意味不明な機動を意味不明な速度でたたき出してくる。
しかもその破壊力は並大抵の艦艇ならば一撃で吹き飛ぶか真っ二つに折れる。
おまけに精度も良好ときたもんだ。
すべて上が解析したことを鵜呑みにしているだけだが。
上が出した対抗策は一つ。
「弾幕張ってどうにかしろ…………ねぇ…………それが出来るなら苦労はしないだろうな」
だが、戦場に駆り出された以上どうにかするしかない。
それが職業軍人というものだ。
幸いな事に、この艦隊は新型艦オンリーだ。
全艦数発程度なら耐えられるシールドが貼られている。
どこかの国は専用艦を建造して大規模なシールドを貼っていたらしいが、それが出来るほど我が国に余裕はない。
あれは資源大国だけができる所業だ。
「駆逐隊より続報!敵高速騎らしきものを視認!!」
「………対空戦闘を開始せよ。弾幕を張れ」
各艦から対空砲火が発せられる。
ある程度艦隊で統制は取れているが、それでも弾幕にはムラがある。
確実の数隻は沈むだろうな。
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「ストライカー隊より入電。敵主力艦3隻中2隻撃沈、1撃沈確実。護衛艦複数撃沈」
「確実?撃沈じゃなくてか?」
「黒煙がひどく確証は持てないそうですが、土手っ腹に3発食らっているので沈むだろうと。他2隻は真っ二つに折れたか艦首が2/3は吹き飛んだそうです」
国産対艦ミサイル ASM-3の重量は約950kg。
いくら戦艦でも、3発も食らえばひとたまりもないだろう。
「よろしい。第一護衛隊と輸送隊を分離しろ。さっさと陸さんを助けてやらないとな?」
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26年 8/23 23:00:ヴ第二共和国:孤立地
「攻勢は?」
「今はなんとか。ただあまりに消耗が激しいです」
孤立地の第二旅団部隊およびヴァクマー軍は必死の防衛戦を繰り広げていた。
幸いな事に、死者は少ないが重傷者は多数。
本来ならば守らねばならない衛生隊が、この包囲に巻き込まれていたことは、最初こそ最悪だったが、今はむしろ僥倖といったところか。
彼らが居なければ、まともな医療処置もできないまま死者は3、4倍は出ていたことだろう。
陸自部隊だけで、だ。
どれだけ技術差があろうと。
どれだけ練度が高かろうと。
地獄の市街地戦では大した差にはならない。
結局、死ぬときは死ぬのだ。
それこそ、死者を忌避してサンコでの陸自のような都市をまるごと更地にする様な作戦と取らなければ、だが。
そもそもあれは、サンコ政府の憎悪と許可の元なんとか実現した施策だ。
あまりにも例外中の例外だろう。
幸いにも、ここ数日連続で攻勢を仕掛けてきている彼らは、そこまでするほどではないようだが。
「ここ数日の攻勢で、だいぶ消耗しています。今前を張ってる戦闘員もまともに休めちゃいません」
「……そうだな、そろそろ交代か。今後方で補給中の部隊を前に出せ。前線部隊は後方に下がり次第、風呂入って飯食って寝ろ。幸い水道はいくらでも使える」
衛生隊同様、需品科の補給隊も一部包囲されており、浄水車2型が2両と入浴セットが市街地最奥沿岸部の司令部近くに造成されている。
洗濯機材もあるが、こちらは処理しきれないわ、水の消費が酷いわ、おまけに汚れが酷すぎて即効壊れるわの三拍子で即座に閉鎖された。
入浴場には、地獄の湯などという笑えない暖簾がかかっているが、隊員にはどうやらツボらしい。
睡眠には、市街地の民家を拝借している。
そこそこ大きい市街地だったおかげで、寝る場所には困らない。
「前線の状況は?」
「やはり敵は正面への攻勢を諦めたようです。昨日今日でほとんど足止めレベルの攻勢しか受けていないと前線から報告が上がってきています。
その代わり、執拗にヴァクマーが守る側面への攻撃が続いています。
うちからも普通科のAPCやLAVを回してはいますが………如何せん正面の大通りにいるキュウマルを動かせない以上決定打に欠けますね」
「燃料は撤退用に残さんといけんしなぁ。これ以上稼働数を増やすわけにもいかん。現状の数で耐えるしk」
突然、北の方角で信号弾が上がる。
赤色の信号弾、それも2発。
「赤信号…………不味いな、突破されたか。正面の部隊は全速後退、南はそのまま前線維持だ。あっちを下げると港湾施設が怪しくなる」
「了解…[アルファに通達、側面突破に………………………]
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G-SHOCKには、6:20という文字が煌々と照らされていた。
昨日の23時だったか?
北側の前線が突破され、その1時間後には砲撃で建造物が軒並み吹き飛ばされた。
戦車とFVが前線を強引に押し上げて、下敷きになった戦闘員の救助程度ならできる時間を作ることはできた。
できたのだが、それでも半ゲリラ的に奇襲を仕掛けてくる敵部隊に損害は多発。
申し訳ないが陸自隊員の救助が完了した時点で交代せざるを得なかった。
その攻勢により側面を守備していた部隊の殆どがKIAもしくは重傷による戦闘不能状態。
同時に正面ともう一方の側面に対しても全面攻勢。
救助に来る海自との兼ね合いで港湾施設の近い南方面を突破されるわけにもいかず、主力はそちらへ。
その結果ズルズルと後退させられ、今や指揮所が眼前にあるレベルまで前線は下がっている。
既に本職戦闘員の半数は戦闘不能のため、戦闘可能な人員は全員駆り出されており、その戦闘員も練度は高くなく芋づる式に負傷者を増加させている。
後方の野戦病院も医療物資の不足によりまともな処理が施せていない。
これでも最大限努力はしているが、死者は数えるのが面倒な程度には増えていると聞いた。
[1-1より中隊指揮所!|緊急砲撃要請《Broken Arrow》から20分は経ってるぞ!一体いつ支援が来るんだ!]
[指揮所より1-1!こっちだって手一杯なんだ待ってくれ!]
[こっちだって死にかけなんだよ!さっさとしろ!!!]
無線機を叩きつける。
砲撃支援がないなら手元の火力でどうにかするしかない。
「小隊長!側面から敵散兵3!」
「負傷者1名!誰か引っ張るの手伝え!」
「後退中のヴ軍小隊壊滅!生存3名!」
軽機を前に出そうと、LAMを直射しようと、敵は雪崩のように進行してくる。
家屋のクリアリングなんてそっちのけで、敵が居るとわかっているところへと突撃してくる。
最悪家屋に突っ込まれても小銃の連発でなんとかできるが。
「正面より敵装甲車!誰かAT持ってk」
突然轟音が響く。
耐震構造じゃないこの世界の家では下手すれば崩れそうなほどの振動とともに。
その数秒後、空を舞う鋼鉄の鳥が見えた気がした。
まるで我々を勇気づけるかの様に、唄うように舞う鳥が。
その鳥は、ものの数秒で水平線へ高く舞う。
帰ったら、普通科へのSMGの配備でも進言しておくか…………




