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日本転移危機  作者: らいち
第二章 Start of Legendary
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第47話

26年 8/20 12:00:ヴ第二共和国:南部戦線・孤立地


上陸の報から24時間と6時間が経過した。

軍服から見てダルアであろう兵士達による強襲揚陸によって、突出部の第二旅団とヴァクマー軍はジリジリと追い詰められていた。

砲があっても砲弾がない。

戦力があっても弾がない。


もともとヴァクマーは初動からドンパチしていたせいで、前線の弾薬在庫は常に低空飛行。

陸自も戦車砲弾は既に枯渇しかかっている。


司令部が運用できる最大限の輸送機を動員して空輸が行われるようだが、司令部が即応可能な輸送機での空中投下で補給される物資などたかが知れている。

本土の輸送機も本土−大陸間の輸送任務に従事することになると仮定すると、確実にその数は足りない。


そもそも、今の空自に本格開戦して空路を持たせられるほどの余裕はない。

それは陸自の輸送隊も同じだが、車さえあればいい陸自と違って空自はパイロットもいる。

そう簡単に規模が拡大できるものでもない。


その戦域と戦争の規模が拡大しようと、陸自の戦闘員数は多く見積もってせいぜい75,000人。

海自の戦闘艦艇は約100隻。

戦闘機もせいぜい320機程度。


自衛隊はこの制約のもとで動かねばならないのだ。


「あと何時間連戦できる。既に上陸地点の橋頭堡は確保され、海上は封鎖状態で事実上包囲状態だ。

海自が封鎖を突破するにしても、まず戦域に到達するまでに時間がかかる」

「空輸の強度がどれだけ強いかによりまずが………想定では敵主力装甲部隊と正面から衝突した場合24時間。

あくまでこれは現状での連続戦闘可能時間です。状況によっては短くなることもあるでしょうが……………長くなることはないかと」

「空輸の物資量じゃ時間は伸びないだろうな。沿岸部のデカイ市街地を軒並みリストアップしろ。

このまま平野でドンパチするよりも、市街地に構えて持久戦したほうがまだ現実的だ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


26年 8/20 10:00:市ヶ谷:統合作戦司令部


陸自の運用が本格化してから、統幕監部……から任務を一部引き継いだ、現在の統合作戦司令部は多種多様な業務に忙殺されていた。

後方補給計画から追加投入の部隊の選定まで、ありとあらゆる上級指揮所としての機能を果たしている。


「前線の状況はひどいです。砲弾薬の欠乏により戦線は徐々に後退。こちら側は少ないものの、ヴァクマー側には決して少なくない損害が出ています。

敵の物量は膨大です。このままでは確実の殲滅されるでしょう」

「海自に準備でき次第、海上封鎖の強行突破を下令しろ、編成は任せる。北の防衛は?」


ルレラ連合との開戦以降、首都に近いヴルラ山脈裾野の森林でも攻勢が展開されていた。

この森林は広く、暗く、そして悪地形という、大規模な軍事作戦を展開するにはあまりにも相性の悪い場所であった。


「ヴァクマーの北方方面部隊が対応中。山岳部隊が地の利を得て防衛している以上、突破はないでしょう。戦車もあの森林じゃまともに運用できません」


防衛部隊は、首都防衛の任務を持つヴァクマーの中でも精鋭とされる山岳師団である。

陸自のクレイジーサーティーンこと第十三連隊に鍛え上げられている。


「よろしい、ならば首都陥落は無いな。最低限の即応部隊のみおいて残りは西の戦線に回せ。海自の突破と再配置が完了次第、攻勢に出れるよう準備しておけ」

「了解しました。北方に追加でこちらの佐官級を送って盤石にいたします」

「頼んだ。……………そういえば、本土に国境部の連合構成国家の首相夫人だかが居るはずだよな?」

「はい、ソフィア・エレミエフさんですね。国境部の少数民族であるエルフの自治共和国のファーストのはずです」

「政治利用するようで悪いが、利用させてもらおう。プロパガンダとしてラジオ放送を流して親ソフィア派をまとめ上げるんだ。

そこからは煮るなり焼くなり好き放題できる。蜂起でも起こせば敵の後方を撹乱できる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


26年 8/20 11:00:ペストレラ大公国:国境部


「状況は?」

「特に動きはありません。物資の搬入もないですね」

「やっぱ牽制での部隊配置か?」


ペストレラ陸軍の精鋭部隊の一つ。

それが隠密偵察・威力偵察・後方強襲・ゲリラ戦を主任務とする偵察部隊。

ヘレナジー偵察連隊。


性格としては米陸軍Force Reconが近いだろう。

陸自の空挺団や中即連、水機団といった陸自精鋭部隊と日常的に訓練をしており、その練度は新世界の陸自から教導された部隊の中でも折り紙つき。

旧世界でもへたすれば世界の精鋭部隊ランキングにでも載るレベルだろう。


そんなハイレベル部隊となったのは、立地上敵国に全方位を囲まれており、陸自の突破・到達まで領土で籠城する前提であることが原因にあるのだが………


それは置いておこう。

そんな彼らの現在の任務は、日ル開戦以降国境部に配置転換されてきたルレラ連合部隊の監視である。

南の国境ではダルアと、東ではブレイナと睨み合いが続いている。


現状、配置転換されてきた部隊は特段戦闘準備と言えるような物資搬入や作戦前の訓練、士官レベルの集合による会合は行われていないように見える。

現実の宇露戦争でもそうだが、戦争前というのは一見関係ないような物資が大量に運び込まれることが多い。

特に医療資材が良い例だろう。


一見医療資材の搬入なんて何てこと無いように見えるが、演習や訓練程度で基本負傷者など発生しないし、そもそも前線に高度な医療資材を配置する必要性がない。

特に医療班が大規模に展開されれば、それはもはや「俺達は今からお前を殺すぞ」と言っているようなものだ。


「牽制にしては部隊が多い気はしますけどね。2,3個は増強されてるんじゃないですか?」

「まあそうだよなぁ………………まあまだやる気じゃないっていうのは本当だろうが」

「まさか明日突然進軍してくるなんてないでしょうしね。陸自の偵察部隊も特に隠蔽輸送は確認してないらしいですし」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


26年 8/21 18:00:???:????


旧ヴァクマーから割譲されたソルノク市街地。

それは今や軍需都市へと変貌を遂げていた。

優先配分された防衛産業企業が新大陸へ進出するとき、三菱が放った防衛産業都市構想。

それは防衛産業企業群だけに止まらず、新大陸に大規模補給処を建設するために便乗した自衛隊、新大陸での事業を目論んでいた大手ゼネコン。

そして、ソルノクの開発計画に四苦八苦していた現地行政府、防衛力強化を目論む政府すらも巻き込んでいた。


政府は計画始動後、直ぐに特定秘密保護法を改正。

その適応範囲を省庁とこれに関わる民間人から、政府機関全てと特定重要企業に拡大。

指定されたのは、MHI・IHI・KHIといった防衛重工御三家、東芝・NEC・タムロン・富士フィルムといった電子企業

そしてコマツやトヨタ、SUBARUといった車両製造業に日本製鋼所やダイキン・豊和、ミネベアといった企業。


雑に言えば、防衛省・自衛隊と取引のある企業の大抵だ。

ついでに、インフラ企業なんかも含められている。

だからこそ、この大規模開発計画が実行に移せたと言えよう。


もともとのソルノク市街地を中核に置き、西は大港湾・南は大工業地帯・東は陸空共同の大規模補給処・北は拡張された市街地を、と。


もはや一つの大都市となったソルノク軍需都市。

その使命は、ヴァクマー・グランシェカ・エルファスター・サンコ、そして日本。

その国々の兵へと火器砲弾薬・医療生活物資を大量供給すること。


そんな使命を背負ったこの都市は、今まさにその進化が発揮される瞬間だった。


空自航空輸送隊のC-130だのC-2だのがひっきりなしに往来しては、各種物資を積載してソンバトヘイや前線の兵站支援へと赴いていく。


その中で、1機が航路を外れソルノクから見て北の方向へと舵を切る。

機体はタタバーニャ・首都ダバペストを中継地点とし、ルレラ連合の領空を侵犯する。

戦争状態である以上、侵犯ではないか。


そのまま6人の人間と1つの大型コンテナを投下していく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[ナイトよりキング、投下物資の回収終了。ベースに移動開始]

[キング了解。Over]

[ビショップよりキング、おくれ]

[おくれ]

[近隣市街地に向かう軍列を確認。指揮官視認中]

[殺れ]


引き金を引く。


13inchのバレル銃口から7.62×51mmの弾薬が射出される。

その弾丸はそのままスコープ中心の敵部隊司令官と思しき人間の頭部を貫通する。


そのまま敵部隊の上級職らしき人間を何人か射殺する。

サプレッサー付かつ距離概ね600m程度とそれなりに取られた距離は、その破壊の銃声をうまく減退させ、彼の居場所の特定を困難にする。


[3 Kill]

[Good Kill、帰還しろ。偵察は十分だ]




「ナイト・ルーク、帰還しました」

「オートは大丈夫か?」

「快調ですよ」


そう言ってナイトがオートから降りる。

バックキャリアには無線機と大量の燃料を積載している。


「燃料は?」

「20L、2台合計で1000kmくらいってとこですかね」

「次の補給までなら十分だろうな。ビショップが戻り次第Obj AlphaとBlavoにて行動を開始する。ルーク・ナイトは爆薬の準備でもしておけ」

「りょ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


69年 8/21 23:59:ルレラ連合:前進兵站基地


[こちらノースゲート、特に異常なし。引き続き警備を続ける]


深夜の定期報告1回目。

つまり24時か。

あと6時間で交代だな。


前線の部隊は最新式の小銃をぶん回しているようだが、上が重視しちゃいない後方補給路の警備部隊には、最新式どころか旧式ですらない骨董品小銃が充てがわれている。

たしか、最新式の2つは前の小銃のはずだ。


もともとはそれより前の小銃だったが、最新式と準旧式への更新の際のおさがりだ。


こんなので何ができるか、という話だが。


そんなことを考えながら、周囲を見渡していれば、前方からトラックが走ってくる。


[ノースゲートよりコマンド、補給車が到着したらしい。照合求む]

[コマンド、現時刻に到着する補給は存在しない。前後1時間も同様]


…………は?


その無線の瞬間、明らかに常軌を逸した加速を始める。


[ノースゲートよりコマンド!コードレッド!コードレッド!]


そのまま、手元の小銃を構える。


うちの国の車両の大半は防弾。

補給隊のトラックも、ランクは低いが防弾仕様だ。

最低限、現行主力の拳銃弾程度は防護できる。


旧式ライフルならギリギリ貫通できるか怪しいラインだ。

そのままフロントガラスにライフルをぶっ放す。

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