第46話
26年 8/19 6:00:日本国:新宿
[た、ただいま、衝撃的なニュースが入ってきました!
我が国が所属するレンドロ協定と敵対してきたルレラ連合が、本日3:00頃にヴァクマー第二共和国に対して大規模越境攻撃を開始したとの事です!
ルレラ連合はこれに対し4:00頃に、無差別に受けた攻撃に対する報復攻撃を開始すると各国に通達!
同時にヴァクマー第二共和国および、ルレラ連合の国民を拉致監禁しているとして日本国への宣戦を布告したとのことです!
これにより日本は約一年ぶり、転移後3度目の戦争へと突入する事となりました!繰り返します…………]
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26年 8/19 6:00:ヴ第二共和国:西方蜂起地帯南部
現状、蜂起地帯の前線は安定していた。
ヴァクマー領内には、北部中心部に存在する首都ダバペストから、現状蜂起軍対処の総指揮所となっているソンバトヘイまでを繋ぐ大河がある。
ヴァクマーはこれを有効活用して防衛戦を展開。
重火力を輸送して効率的に敵部隊を漸減していた。
これを好機と見たヴァクマー陸軍と陸自による反転攻勢が開始されていた。
ソンバトヘイを攻勢発起点とし、蜂起地帯の一部である半島の部隊を包囲・殲滅する作戦である。
結果的にこれは、第十六普連および大陸へと配置転換された第二旅団によって成功し、蜂起部隊の南部戦力の殆どを包囲下に置くことができた。
はずだった。
つい30分ほど前に耳を疑う情報が入る。
哨戒部隊が前線後方、突出した部隊への数少ない補給線上に機甲戦力を含めた戦力が上陸。
あまりにも想定外の事態であった。
現状、蜂起地帯南方に存在する海域はダルア海軍による海上封鎖下にある。
あるが、これを利用して大々的に揚陸作戦が行われるとは誰も思っていなかっただろう。
いくら海上封鎖下にあるとは言っても、揚陸地点は実質敵指令部の眼前だ。
これに大戦力をぶつけるなど事実上の決戦だ。
あまりにも性急な動きに、陸自はまだしもヴァクマー陸軍はまともに動けていなかった。
主力のヴァクマー軍は補給を回復させようと直ちに攻勢を開始したが、機甲戦力に対する火力が足りず被害を短時間で増大させていた。
これに対し陸自第二旅団のニ戦車連が攻勢支援に出ていた。
[こちらA中隊!被害拡大中!攻勢を停止し後退する!]
[敵戦車部隊が多数展開中!生存性も高く用意に撃破はできない!留意されたし!]
[こちら第一小隊、敵機甲部隊を確認。攻撃を開始する]
「ヴァクマー軍の方は随分とこっぴどくやられてるみたいですね」
「そうだな。そのお相手さんのお手並み拝見と行こうか」
小隊は少し小高い丘に陣取っていた。
眼下には、日本最後の試製戦車 5式中戦車 チリ の砲塔と、VI号戦車 TigerIIの車体の合の子のような戦車が4両編成で車列を組んで進行している。
砲が敵戦車へと指向される。
ラインメタル L44 120mm滑腔砲。
1979年に配備が開始されたレオパルト2を始めし、M1A1からM1A2 SEPV3・K1A1と、戦車大国各国がこぞって採用した世界有数の傑作砲である。
そんな砲を担ぐのが、日本の三代目。
当時の第三世代の中でも傑作と言えるMBT、90式戦車である。
「弾種徹甲、小隊各個射撃。射撃ヨーイ………撃て」
120x570mmの巨体が砲口から射出される。
約1,600m/sで鉄の矢が飛翔する。
その不可避の矢は、進路を変えずに車体中心部に吸い込まれていく………はずだった。
1秒もしないうちに着弾する、そんなタイミングで飛翔していた砲弾が軌道を変える。
いや、"跳弾した"というのが正しいか。
「射撃、効果なし。跳弾しました」
「跳弾?徹甲が?」
「はい、跳弾………跳弾というよりバリアの弾かれたのほうが近いかもしれません」
「海自の報告書にその手のシールド的なもんが運用されてるって話があったな。ついに陸まで上がってきやがったか」
そんな話をしている合間に、既に優秀なオートローダーは追加のAPFSDSを装填済みだ。
そのまま2発目のAPFSDSが射出される。
今度は弾かれることなく、こちらへと砲口を向けようとしていた砲塔に吸い込まれる。
弾薬庫に印加したのか、砲塔上部のハッチと思しき場所から爆炎が吹き出る。
「2発目命中、敵戦車1両沈黙。2両目の砲撃きます」
「後退。わざわざ喰らってやる必要もない」
履帯が音をたてて後方へと車体を引き摺りこむ。
その車体前方を砲弾がかすめていく。
その直後にもう一発が手前の地面に突っ込んでいく。
「このまま前に出るぞ。走行射でまとめて吹き飛ばすぞ」
「了解、全速力で突っ込みます」
[小隊は現在地より援護。本車が突貫する]
前進を開始し、丘から車体を乗り出す。
砲口は依然として敵戦車の方向を捉えている。
そのまま装填済みの砲弾を射撃するが、案の定弾かれる。
「初弾はおそらく弾かれるな。2発目もぶち込んでやれ」
2発目の砲弾が吸い込まれていく。
そのまま車体を貫通すると思ったが、予想に反して2発目も同様に弾かれる。
すぐに、小隊の援護射撃として3発目が撃ち込まれる。
今度は貫通。
車体を貫徹して、おそらく車内は地獄絵図となったことだろう。
そんな間にも、車列と自車の距離は縮まっていく。
後ろからの援護射撃が飛んでくる。
2発は弾かれ、自車が放った1発は貫通しそのまま車両を大破させる。
最後の1両が、こちらへと砲口を向ける。
そのまま砲撃。
砲弾が車体の側面後部へと命中する。
車体が少し揺れる。
砲弾はそのまま跳弾したようだが、突然に振動に軽く頭を車内へとぶつける。
「ヘルメットが無かったら医務室行きだったな」
「そうですね。MBTに比べたら可愛いもんですが」
本来被弾などしようものならば多少は取り乱すのだろうが、絶対に貫徹されないという自信とアドレナリンがむしろ冷静さを増幅させていた。
そのまま、1発、2発と砲撃が敵戦車へと吸い込まれていく。
最初の車両以外と同じく、3発目で沈黙する。
「とりあえず3発で撃破可能か。下手なMBTより硬いんじゃないか?」
「そうですねぇ。側面も背面も弾かれますからね」
戦車隊に続いてきたであろう、車列が見える。
殆どがワンボックスカーのような大型乗用車に見える。
これから死ぬとも思わず、ノコノコと出てきてものだ。
「弾種対榴、1台ずつ丁寧にあの世へ送って差し上げろ」
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26年 8/19 7:00:ヴ第二共和国:旅団指揮所
第二旅団指揮所は、半島南部の敵兵を殲滅すべく、比較的前線に近い位置へと移設されていた。
しかし、その移設は素晴らしい判断だったと言えよう。
もし、彼らが指揮所の移設を行わなかったとしたら、司令部は上陸部隊の奇襲を受けていただろう。
おまけに突貫して戦闘を継続しているヴァクマー・陸自両軍は指揮統制を失う。
「揚陸部隊への対応はどうなってる?」
「現在ニ戦連が対応に出ていますが、対応できていません。進行があまりに機動的であることと、敵戦車の生存性の高さから砲弾が足りていません。
どうやら何をどうしても1、2発は弾かれるようで」
そういって、手元のタブレット端末で一つの動画を見せてくる。
実際にAPFSDS・HEAT-MP、その両方を防御するフィールドのようなものがあるように見える。
奇襲時1回、戦闘時は2回は基本弾かれているようだ。
「これか。原因は?」
「破壊した残骸を施設科・後支が、ヴァクマーの魔導部隊と特防隊支援のもと解体調査を進めています。
ヴァクマー側いわく、艦載型のシールドの小型改良版ではないかという見立てのようです」
そういって艦載型シールドの設計図を映し出す。
艦載型の方はバルカンの掃射や艦砲の射撃で対処したはずだ。
弾数はかなりかかったと報告書があったはずだから、恐らく相応にダウングレードされたものだろう。
「対処法は?」
「現状砲弾をぶち込む以外の対処法は海自でも確立されてません。ヴァクマー・エルファスターと共同で対魔徹甲弾頭の開発も行っていますが…………
そもそも彼らもこういったシールドは別の手段で対処していたようで。難航していると」
「別の手段というと?」
「簡単に言うと、物理的な攻撃よりも魔導的な攻撃の方が効率的に削ることができるそうなので。
魔導攻撃でシールドを剥がしてから、砲撃というのがセオリーのようで。
それを何故か我々は火力で突破しているわけですが…………」
そういって射撃の仕草をしている。
「まあ、対処できてるならいい。戦線の状況は?」
「………はい、現状先述の理由から前線は押され気味です。
砲弾が足りていないせいでニ戦連が火力を発揮できず、そのままヴァクマーが主力と化しています。
ヴァクマーの主力は自動車化と軽歩兵中心で対戦車火力がありません」
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26年 8/19 7:00:ヴ第二共和国:対揚陸部隊戦線
二戦連が補給と出撃を繰り返している中、ヴァクマー軍の歩兵部隊は地獄の対機甲戦闘を繰り広げていた。
「敵戦車部隊接近」
「対機甲戦闘用意、残りのATの本数は?」
「……………残存3本、1両分しかありません」
現状、前線に突貫してくる戦車はATを3本使わねば破壊できない。
塹壕も掘れていない現状、森だの茂みだの穴だのに入ってATをぶっ放すか爆薬を貼り付ける以外の手段がない。
当の爆薬もATも大した数がないのだが。
幸い爆薬を貼り付ければシールドは貫通できるのが唯一の救いか。
「あいつは爆薬で殺るぞ。ATは温存せにゃまずい」
「りょ、了解」
そういって爆薬を準備し始める。
その手は少し震えているように見えた。
「貸せ、おれがやってやる…………こいつぁ遠隔起爆の爆薬だ。下手なことせにゃ死なねえ」
「………はい。すいません」
「心配すんな、援護はしてやる。安心してぶっ潰してこい」
そう言いながら爆薬を準備していく。
「履帯でもエンジンで砲塔でも何でもいい。何かしら壊せればそれで十分だ。一番いいのは履帯だな」
そう言っている間にも、戦車はジリジリと近づいてきている。
戦車までの距離は50m程度だろうか。
流石に森林からの奇襲は警戒しているだろう。
下手に姿を表せば、恐らく搭載されているだろう車載機銃で滅多打ちだろう。
「お前のタイミングで近づいて爆薬を仕掛けろ。他に奴らであのデカブツの注意を引くぞ。
キューポラのガンナーか覗き穴を狙ってライフルをぶっ放しまくれ。いいな?」
「了解。焦るなよ」
すぐに部隊が散開する。
対戦車要員はそのまま敵戦車から見て斜め後方に向かう。
そのままどんどんと近づいてくる。
そろそろだな。
射撃開始合図を送ると同時に、敵戦車の半身に銃撃が集中する。
すぐに身を乗り出していた車長かガンナーが機銃に手をかけるが、すぐに射殺される。
ガンナーが射殺されたタイミングで、爆薬を持って対戦車要員が走り出す。
数秒で戦車までたどり着き、爆薬を履帯転輪に仕掛ける。
あとは離れて起爆するだけだ。
すぐに離れるが、戦車の砲塔はそれに気づいたのか旋回を始める。
森に入る直前程度にはその砲口を指向し終え、すぐに主砲を発砲する。
それと同時に、戦車履帯の爆薬が爆炎を伴って破裂する。
履帯は確実に切れ、転輪も一部損傷したようだ。
要員の方は、寸でのところで直撃は回避したようだが、爆風で吹き飛ばされていた。
遠くから見ても確実に助からない程度には重症だとわかる。
「………ッチ、戦車の中の奴らをぶち殺せ、掃射でな。衛生兵、あいつの様子を見てきてくれ」
そう言うと、部隊が戦車に向かって走り出す。
既に爆薬の車内への加害によってある程度制圧されているようで、砲塔も車載機銃も動かない。
開きっぱなしのハッチから死体か重傷者かわからない敵に向けて銃弾が放たれる。
数秒後には制圧完了の声が聞こえた。
「おい、砲塔と砲はまだ動くか?」
「恐らく、少しいじれば砲くらいは使えるようになるかと」
「あいつはもう無理です。片足が吹っ飛んで出血多量です、どうにもなりません」
そう言いながら、衛生兵が近づいてくる。
「………楽にしてやれ。遺体は任せる」
「了k」
「敵戦車発見!数6!随伴歩兵を伴う!」
そんな、現実か夢か分からない。
いや、夢であってほしい報告が飛んでくる。
現状の戦力は1個分隊。
近くに同小隊の分隊もいるが、そっちはそっちで手一杯だ。
下手すれば、戦車6両と随伴歩兵を1個分隊で相手にしなkればならないらしい。
「………っは、ついに運も尽きたか。対機甲戦闘用意、足掻くだけ足掻いてやるぞ」




