第45話
69年 8/15 10:00:ルレラ連合:首都 モルカウ
ダルアとルレラは、長年のライバルであり、長年の盟友と言える関係であった。
ダルアは西へ、ルレラは北へと拡張。
干渉国家を持ち、東の脅威レンドロ協定には緩い協力関係のもと対抗する。
そんな彼らの方針を大きく変えたのは、日本という国家がヴァクマーと戦争をし、勝利したことだ。
これによりレンドロ協定と彼らに干渉地帯が消失、これと日本に脅威を感じ、両国は直ちに水面下で同盟国家となった。
古くからルレラ連合というのは新しい技術を積極的に取り入れ、改革を行い続けてきたのに対し、ダルアは旧来の技術や新技術の応用に長けていた。
新技術をルレラがものにし、それをダルアが応用する。
そんな彼らの技術協力は、日本という国家の誕生により開花した。
ルレラが日本から流れてくる技術をどうにか自国流に変えて物にし、ダルアがその技術をなんとか応用して、ダルアやルレラに適したものにする。
既に50Calを応用した別口径の機関銃や、半自動小銃などを開発していた。
それでも、電子部品を利用した兵器の殆どは開発できていない。
強いていえば無線機などは開発できているが。
そんな彼らの協力は、もはやあとに退けない所まで来ていた。
ダルアの開戦工作は上手くいき、既に海上封鎖の実行によるヴァクマー西部への支援遮断まで進んでいる。
あとは最終段階。
ヴァクマー北部に存在するヴルラ山脈への国境侵犯、そしてそこからの交戦。
これによる被害を口実にルレラ・ダルア両国が参戦する算段である。
こうすれば、本人たち以外は真相を知らないが、本人たちの言動は信用ならないという構図が出来上がる。
反乱支援も含めれば、開戦工作としては及第点といったところではないだろうか。
「それではステリラ書記長殿。開戦は20日ということでよろしいですかな」
「"開戦"自体19日ですよ。参戦は20日ですが」
「そうでしたな。失敬失敬」
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26年 8/19 3:00:ヴ第二共和国:ヴルラ山脈
日本で言う日ヴ戦争。
ヴァクマーでいう再出発戦争の直後と違い、北部のヴルラ山脈を主とした北部森林・国境地帯を警備するのは、既にヴァクマーの役割となっていた。
陸自が駐屯しているのは、無人機による監視部隊と、ヘリコプターを運用した即応警備部隊のみである。
ヘリは、訓練しているとはいえパイロットやヘリボーン要員が足りないし、数もない。
無人機に関しては、日本国内でも配備がようやく始まったレベルであり、ヘリと同様に大量供与できる程に数がない。
そのため、有事に陸自の独断で戦力抽出ができるよう、陸自が運用している。
人員は少ない。
UH-60JA 2機を運用してはいるが、主力はRQ-1 2機による監視であり、UH-60JAは主に重点監視及び即応にしか使われていない。
事実を言ってしまえば、現状も過去もヴァクマー北部の長大な国境をカバーするには一切事足りていないのだが。
[管制よりホーク1、リーパーがルレラ軍によるものと思しき国境侵犯を確認した。急行できるか?どうぞ]
[ホーク1了解、なお、本機残燃料少量につき長時間の滞空は不可能。どうぞ]
[了解した。すぐに後続を発進させる。おわり]
「………前もこんなことありましたね、入山班長」
「よせ、あん時は俺が大目玉食らったんだからな。お前らは1日外禁で済んだのによぉ」
「にしても珍しいっすね。最近は挑発みたいな演習が多いとはいえ………」
そんな話をしている間にも、ヘリは最高速に近い速度で飛行を行っている。
搭乗者はだいたい全員荒っぽい操縦には慣れている。
現在監視中なのは、ヴルラ山脈で面倒事を起こしたあの第四班だ。
人手不足の自衛隊のおかげで、懲戒は全員免れた代わりに、撤収者選抜の際には最速でリストから外されたメンバーである。
[こちらホーク1、現着。ヘリからの警告に移る]
[了解。相手は武装した正規軍だ、警戒せよ。おわり]
「池原・坂木、銃構えて監視。風見は機内待機」
「了解」
[こちらは日本国陸上自衛隊、国境警備支援隊である!貴殿らは我が友好国であるヴァクマー第二共和国の国境を侵犯している!
直ちに退去されない場合、然るべき処置を行う!直ちに退去せよ!
繰り返す!貴殿らはヴァクマー第二共和国の国境を侵犯している!直ちに退去せよ!]
拡声器越しで警告を発する。
ヘリローターの音すら凌駕する勢いで、静かだった暗闇を響き渡る。
その返答は、ロケットモーターのような一つの爆豪であった。
1発の炎弾が、比較的速い速度で突っ込んでくる。
咄嗟にUH-60がフレアを炊いて回避機動を取る。
キツイ機動に体が機体へと押し付けられる。
炎弾は、すぐに花開いたフレアに欺瞞されて右へと逸れる。
それとほぼ同時に2・3発目の炎弾が発射される。
[ホーク1より管制、国境侵犯中の所属不明部隊より攻撃を受けつつあり、直ちに支援求む]
更にフレアを焚きながらブレイクする。
2発目は幸い回避できたが、3発目はフレアを貫通して突っ込んでくる。
機体に衝撃が走る。
[メイデイ、メイデイ、メイデイ。テールローター損傷、緊急退避する]
[了解した。支援機を急行させる]
機体が緩やかにスピンに移行する。
それをメインローターの出力を下げて強引に制御する。
そのまま可能な限りの速度で現場を離脱する。
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[CPよりALL Station、…………地点で陸自ヘリパトロール部隊が攻撃を受けた。おそらくルレラ軍と思われる。
即応可能な部隊は直ちに急行し、現状収集に当たれ。終わり]
パトロール用LAVの車載無線から流れてきたのは、ここが戦場になることを意味していた。
それと同時に、おそらく件のヘリであろう機体が上空を飛行していく。
[小隊長より、本件の即応に当たる。安全装置解除、周辺警戒を厳となせ。以上]
車列が加速とパトロールルートからの逸脱を開始する。
安全装置の解除とプレスチェックの音が微かに聞こえる。
[7小隊よりCP、現状の対応に当たる。他の支援部隊の情報願いたい。どうぞ]
[CP、現状即応可能なのは貴隊のみである。少し遠いが6小隊及び8・9小隊も急行中。陸自のヘリもおそらく出てると思われる]
[7小、了解]
周囲を見れば、戦闘服に身を包んだ戦友がいる。
ノースランド迷彩。
低明度のグレーグリーンをメインとして、チャコールグレー・モスグリーン、くすんだブラウン色を独軍のフレックタームカモのように配置した夜間森林戦闘を主眼に置いたカモである。
国境地帯はその殆どが森林であり、部隊も森林・山岳での戦闘を主眼に置いた山岳猟兵である。
最近ではルレラもある程度の迷彩服を運用し始めているようだが、その効果はこいつには及ばない。
2本の隠蔽技術さまさまといったところか。
手元の08式のマガジンを抜く。
弾は日本製の89式弾。
最近では国内生産も始まっているようだが、それでもまだ日本製の弾薬への信頼性や在庫の関係で、国内生産分は実弾訓練に回されることが多い。
[All station、全周警戒。現場より1km手前に到着次第降車、爾後は現場まで散開しつつ進行せよ。
既に武力攻撃事態と認定、接敵時はフリーファイアとする]
無線を送りながら、片手で拳銃のプレスチェックをする。
こちらは日本のおさがりであるMinebea P9。
弾も同じく日本製だ。
よくもまあこんな大量の弾薬を供給できると最初は思ったものだが、彼らの工場を一度見たあとには納得の供給量であった。
まるで生き物かのように装置が動き、高速で弾薬が生産されていく。
工業化、工業化と上が言っていたものだが、その時初めて工業化というものを理解したように思う。
そんなことを考えていれば、既に現場手前に到着していた。
[ぜんたーい、降車、降車]
高機動車とLAVから隊員が降車する。
「車両警戒に8人残せ、緊急時は機関銃ぶっ放しながら道なりに突っ込んでこい。いいな?」
「了解」
[全隊林内に展開、轢かれたくなきゃ路上には行くな]
小隊配備の機関銃は6挺。
通常火力が継続火力に乏しい半自動小銃のため、ある程度の数の軽機が纏まって配備されている。
[ぜんしーん、前へ、前へ]
部隊が林内に散開する。
敵の装備は知らないが、テールローターにデカ目の損傷が見えた。
MANPADSか対戦車榴弾か、それともルレラの魔道士部隊なのかは知らないが、確実にそれなりの重装備。
おまけにこの山岳森林に投入してくるなら、それなりの精鋭のはずだ。
「小隊長、前方不審物」
正面を見れば、少し開けた場所に不審物が半埋没している。
パッと見は爆発物に見えるが………
「[全隊停止]、何かわかるか?」
「四角形ですね、教本通りなら爆発物でしょうか」
いや、待て。
簡単に見つかるような場所に爆発物?
俺が奇襲で爆発物を使うなら茂みの中だの、もっとみえない所に隠す。
[全隊全力後退、車両部隊突入準b]
無線を言い終わるといったその時、銃声と着弾音が響く。
[アンダーファイア!]
[7小よりCP!アンダーファイア!エンゲージ!]
銃声が自分たちが進んできた方向から聞こえてくる。
クッソ、やられたか。
[車両部隊突入!到着次第乗車して直ちに配置転換!]
「弾幕張れ!近づけるな!乱戦になったら車両部隊が近づけねえぞ!」
すぐに軽機持ちが弾幕を張り始める。
[こちら車両班!敵の集中砲火を受けている!現場への突入不可!]
ッチ。
なら手段は突破か後退か。
いや、確実に後詰の部隊は来てる。
なら活路は正面しかない。
側面に逃げれば確実に半数は包囲される。
[総員着剣!軽機の火力中心に正面突破する!合図で軽機はぶっ放しまくれ!擲弾投入後敵部隊を分断殲滅する!]
[3、2、1、GO!]
同時に軽機が集中射撃を始める。
小銃擲弾と手榴弾が数発ずつ宙を舞う。
それらの爆発音を合図に、何人かの隊員が前進を開始する。
それをカバーするように後続が側面を守り、軽機が移動を開始する。
軽機の移動の隙は、半自動小銃の精密射撃でカバーする。
自らもそれに随伴し正面へと突撃する。
何発か撃って牽制するが、意味があるのかはわからない。
まあ、さっきの集中砲火よりか弾幕は薄くなっている。
それに、訓練のときに受けた制圧射撃で、どれだけ恐ろしいかは実感済みだ。
効果はあるだろう。
そうしていると、車両部隊が交戦しているのが見えてくる。
「大丈夫か!?」
「あいにく大丈夫ではありませんでしたね!このまま撤収ですか!?」
「後続が退き次第一度退却だ!このまま戦闘を続けても無駄に損耗するだけだ!」
[All Station、直ちに車両部隊の位置へ集結。一度撤退する]
全部隊に一度無線を入れる。
その時だっただろうか。
[All Station、こちらCP!ルレラ軍による大規模越境を確認!直ちに帰投されたし!繰り返す、直ちに帰投されたし!
これは訓練ではない!開戦だ!やつら本物の戦争を始めやがった!]




