第44話
26年 8/10 9:20:ヴ第二共和国:FEBA
[こちら中隊長!全面攻勢を受けている!これ以上の持久は不可能!撤退要請!]
[許可できない。所定の前線を維持せよ]
[敵部隊は蜂起部隊じゃない!!明らかに正規兵だ!!]
[現時点では正規部隊の存在は確認されていない。そちらの見間違いだ]
[明らかにダルアの正規兵だ!信じてくれ!!!]
頭上を弾丸が通り抜ける。
敵機関銃の音がうざったいほど響く。
おそらく、民生品のピックアップトラックをコピーしたのだろう。
塹壕の先には、日本製より無駄が多いが、明らかに模倣したであろう車両が見える。
機関銃らしき火器をぶっ放し、前方を歩兵が肉薄してきている。
明らかに無謀な突撃を仕掛けてきているバカ居るが、ある程度の指揮統制は取れている。
「おい!誰かあのバカをさっさと黙らせろ!擲弾でも重機でも何でもいい!」
「重機関銃なんてありません!!!そもそもただの反乱鎮圧でしょう!!!何が起きてんですか!!!」
「だったら手榴弾で吹き飛ばせ!死にたくないなら頭回せ!」
簡易防御陣地に怒号が響く。
塹壕の奥から、仰々しい装備をした黒服の部隊が来る。
黒に近い濃紺の戦闘服に、黒のフルボディーアーマー。
頭部には厚手の強化プラスチック製バイザー付きのヘルメットにヘッドセットをつけている。
SATか。
その手には、陸自が使っているライフルが握られている。
だが、警察部隊が来たところでどうにかなるのか?
「本庁隊現着!、指揮下に入る!」
「援軍感謝する!」
「機銃射手はうちの狙撃班で対処する!他の連中を追い返すのに集中してくれ!」
敬礼省略ですぐに射撃を開始する。
動きは多少拙いが、射撃の精度は良好。
まあ、警察部隊の塹壕での動きが熟練だったらだったで怖いのだが。
後ろから狙撃銃の銃声が響く。
同時に、うるさい機銃手の頭が吹き飛ぶ。
後ろの簡易陣地の防弾監視塔に、H&K PSG1 半自動狙撃銃を握った狙撃手が居た。
横には同じくH&KのMP5A5をストック全開で吊るしている観測手がいる。
前言撤回だな。
想定の数倍は優秀だ。
[主要脅威を優先して排除しろ。機関銃射手・下士官・運転手だ。いいな?」
[了解]
「徒の歩兵は俺達に任せろ!対歩兵火力じゃこっちが勝つ!」
「了解!」
さっきも言ったが重機関銃なんてない。
軽機関銃は中隊に10挺くらいはあるが、それでも面で制圧し切れるかは怪しい。
簡易防御陣地のおかげで側面には回り込み放題撃ち放題の状況だ。
三正面なんてされればたまったもんではない。
[CPより中隊長]
[こちら中隊長!]
[展開中の地域の近隣にてダルア海軍の活動を確認したと、通報が入った。念の為展開地域より撤退せよ。繰り返す、撤退せよ]
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69年 8/10 9:40:ヴ第二共和国:蜂起地域後方
[こちら208監視所!敵蜂起部隊の猛攻を受けて…………]
[敵の包囲下にある!これ以上の持久は…………っ!やめろ!来るな!来るなァァァァ!]
「各地の監視所より攻勢報告が相次いでいます!」
「前線の部隊が続々と撤退しています!明らかに火力投射が段違いです!」
ヴァクマー陸軍にとって、これほどの損害は一切の想定外であった。
そもそもが蜂起の鎮圧、火力車両のような重火力がいるような任務ではなかった。
それが、突然機動車両や装甲車の報告が相次いでいる。
戦車のような重火力車両が湧いていないのが幸いか。
だが、それでも撤退の判断が遅れた…………正確には上が遅延行為をした為であるが、それでも強行すべきだったと後悔する。
「方面司令、予備戦力を動かして前線部隊の支援を行いましょう」
「…………方面戦車隊は動かせるのか?」
「………は?」
「方面戦車隊を動かせるのかって聞いてんだ」
「投入は可能です。可能ですが、大規模な連携を取っての訓練等はまだ未了です。
大規模な作戦を取れるかと言われると………少し………」
方面戦車隊。
陸自戦車隊を参考としたヴァクマー陸軍の戦車部隊である。
その主任務はヴァクマー戦域での機動防御、陸自部隊の後詰。
編成自体はたったの2ヶ月前であり、お世辞にも訓練が終わっている、とは言えない練度であった。
「この状況じゃ仕方ない。下手に歩兵隊だの自動車化歩兵だのを出しても損害を拡大するだけだ。
だったら重機械化部隊を全面に押し出して盾になってもらうしかない」
「…………承知しました。第二戦車連を抽出し派遣します」
「あと、上に報告して一刻も早く日本に援軍要請を出すよう言ってくれ。
おそらくこりゃ…………派手にドンパチすることになるぞ」
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69年 8/10 11:40:ヴ第二共和国:蜂起地帯南部 平原
第二戦車連隊。
彼らの主力戦車は陸自から退役しつつあるGen3 MBTである90式。
これに各種改装をほど越した、Type 90 Vとでも言うべき車両である。
編成は他連隊より遅い1.5ヶ月ほど前。
その分特急で陸自により訓練が為されていた。
だからといって、陸自が訓練に手を抜く訳がなく、陸自機甲教導連隊のスパルタ指導によって戦車隊の中でも精鋭部隊となっていた。
既に彼らは撤退すべき歩兵部隊を後方へ見送り、陣地を構えていた。
陣地と言っても、74式をハル・ダウンできる程度の洞穴と、後方から万全な状態で進出してきた自動車化歩兵部隊による軽い塹壕程度である。
また、彼らはヴァクマー陸軍では数少ないドローン運用時間部隊である。
その任務は偵察から敵部隊漸減まで幅広い。
既に上空を飛び交っており、間もなく接敵するであろう敵部隊を監視している。
撤退する歩兵部隊を追撃してきたのは、自動車主体の歩兵部隊。
一部にAPCやIFVのような火力車両も見えるが、さほど多くはない。
機械化と自動車化の間の子といった具合だろうか。
連隊指揮所は後方撤退中の歩兵達の目的地にある。
有線構成は既に完了している。
一度戦車が有線を履帯で引き千切ったのを通信兵がガチギレしていたが………すまん。
「中隊長、上から詳細が降りてきました。装甲車等のHVTを漸減しつつ敵部隊の火力解明。
事後は火力投射しつつ後退、所定の位置で防衛線を構築せよとのこと」
「わかった、敵部隊を視認次第直ちに攻撃開始だ。おそらく敵部隊は長距離で戦車をブチ抜けるような火力は持っとらんだろうが…………用心はしておけ」
「了解」
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「敵部隊視認、目標敵装甲車、弾種対榴。射撃ヨーイ」
「敵装甲車、弾種対榴!射撃ヨーイ!」
「撃て!」
120mm L44滑腔砲から対戦車榴弾が飛んでいく。
射撃でAPCと思しき装甲車が大破する。
「敵IFVが射撃を開始。優先排除しますか?」
「自由射撃でいい」
10秒以下の間隔で射撃されていく。
外ではカンカンバチバチと、装甲が何かを弾き返してる音がする。
どうやら50BMGか何かに近い弾丸を射撃しているらしい。
この調子ならIFVを優先排除する必要は無さそうだ。
「砲手、APCを優先排除。IFVに大した戦闘能力はないらしい」
「了解」
「車長、塹壕展開の歩兵部隊は敵部隊へ十分打撃を与えたとして順次撤退中。
戦車隊も包囲を避けるべく撤退を開始すると」
「わかった。戦車後進、後へ、後へ、後へ。歩兵に気をつけろよ」
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26年 8/10 11:50:ヴ第二共和国:第十六普連
[CP、砲撃座標を送信した。効果判定の後、ヴァクマー陸軍の後退を支援しつつ帰還する]
[CP了解。なお、一部装甲車両を確認したとヴァクマー側から報告が上がっている、警戒せよ。終わり]
陸自第十六普連も、朝からの攻勢に対し即応展開していた。
彼らがヴァクマーと違う点は、緊急時に備え15榴やF-2といった大火力を準備していたことだろう。
本来はヴァクマー軍が後退・防御陣地構築まで野戦にて耐える算段であったものの、敵部隊の規模を確認した後直ちに方針転換。
現有戦力では陣地構築まで、主に補給面で持たないと考え、火力集中による敵部隊削減の後撤退することとなった。
いくら日本という国が、本土から大量に弾薬を送りつけて来たとしても、兵士一人が持てる弾数には限界があるのだ。
敵部隊の車列が爆散する。
流石は特科だ。
車列が軒並み吹き飛んでいる。
先程まで散発的に飛んできていた銃撃の止んでいる。
[効力射、敵部隊に打撃を認められる。これより退却を開始する]
[CP了解]
「射撃しつつ後退!」
「2時の方向敵分隊、距離近!浸透中!」
「MINIMIで制圧しつつ後退しろ!相手にするな!」
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26年 8/10 12:20:日本国:危機管理センター
「総理、ようやっと現場から情報が上がってきました。ダルア海軍と思しき艦隊が海上封鎖を敢行したあとの情報です」
「すぐに説明してくれ」
「はい、本日未明より蜂起部隊による攻勢が始まり、その中にダルア正規兵と思しき自動車化歩兵部隊が存在したようです。
これに対しヴァクマー陸軍が重火力が無いながらも善戦しましたが、前線は崩壊。
現在はヴァクマー陸軍戦車部隊と一部北方森林地帯の歩兵および陸自第十六普連によりなんとか敵部隊の浸透は食い止められている状況です」
「もし、このまま協定もしくは我が国が支援しなかった場合どうなる?」
防衛大臣である国守に問う。
「ダルアがどれだけの支援レベルかで、徐々に押され最終的に全土を制圧される可能性から、反転攻勢により領土を回復するまで、あらゆるシナリオが想定できます。
ただ…………確実にルレラ連合は絡んできます。
彼の国はダルアとつるんでいます、最大で参戦まであり得るかと」
「ルレラが参戦、ダルアが最大限の支援レベル……………いや、もはや参戦まで見越してヴァクマーに支援をする場合どうなる」
「我が国も即時参戦する他ないでしょう。
いくら元がランドパワー国家とはいえ、今のヴァクマーは再生と改革の途上にあります。
彼らだけで、おそらく協定3カ国と対等………いえ、陸軍だけでいえば優位に立てる軍量を持つ連盟を止めることは不可能です」




