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日本転移危機  作者: らいち
第一章 権謀術策の混沌列島
22/43

第22話

2224年 10/5 10:00:日本国:帝国ホテル


帝国ホテルの周囲は、普段と違い無数の警察官と機動隊員のよって護られていた。

原因は現在帝国ホテル内部で行われているレンドロ協定加盟国による会議、協定会議である。

参加国は英連合帝国・具共和国・珊諸島国・日本国第二共和国の5ヶ国である。

議題は日本国と第二共和国の正式なレンドロ協定加盟決議である。

その後には、日本からの商談も予定されている。


「それでは始めましょうかね。一応自己紹介の方を、私は英連合帝国のスコッチランド帝国皇帝のレイリー・エドワードと申します。

国際的にはエドワード三世で通っておりますが

右の者は軍人上がりの補佐ですので、お気になさらず」

「次はうちの国ですかな。

グランシェカ共和国のオードランと申します。

違いただの共和国ですので、次の会議も来れるかは分かりませんがな」


どうやら冗談がお上手なようだ。

会場から控えめな笑い声が漏れる。


「サンコ諸島国のクリストフです。平和な海上王国の宰相でございます。

本来は国王が来るのべきなのでしょうが、商談の都合上私が参加いたしました」

「ヴァクマー第二共和国のホランです。役職は首相を仰せつかっております」

「最後ですかな、今回名誉なことに開催国を仰せつかった日本国、首相の神木と申します。

今回は国内トップクラスのホテルを貸し切っておりますので、是非とも会議だけではなく、観光の方もお楽しみください。

仰ってくれれば、こちらから護衛をつけさせていただきます」


議場から拍手が湧き上がる。

本来は個別での観光などしないのだろうが、今回は日本という国を深く知って貰いたいという意図から、警備課に無理をしてもらっている。

自衛隊からも警務隊が護衛に出ている。

防衛大臣からは詳しくは聞いていないが、Sも出ているらしい。


「それはありがたい。是非とも観光したいと思っていたところだ」

「この国は聞いた話じゃ異界の文化が満載と言うからな!是非とも首相のうちにこの目に収めたいと思っていた!」

「まあまあ、今はまだ仕事の時間だ。

今回の議題は日本国、そしてヴァクマー第二共和国の正式なレンドロ協定加盟の決議がメインだな。

まあ、殆ど儀礼的なものだ。ここに加盟を拒否する者はいないしな。

次に新規加盟に伴う協定規約の改正の提案、決議だ。これも儀礼的なものだな」


どれも儀礼的なものである。

まあ、既に日本は他4ヶ国と友好的な関係を気づいているし、第二共和国は殆ど他の3ヶ国と日本の衛星国家である。

どちらかといえばメインはその後の商談である。


「まあ、つまらんだろうが我慢してくれ。それじゃあ……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 10/5 13:00:日本国:横須賀港


会議を手短に終わらせ、会食をした首脳陣は横須賀へと足を運んでいた。


「いやー、移動が早いとは聞いていたがここまでとはな!」

「ですね、まだお昼時ですよ」


そんな歓談をしている彼らの周りを警備課の人員が囲んでいた。


「すげぇな」

「ほんとに皇帝さんだ……」

「ヨーロッパの人とあんまり変わんないんだな」


そんな警備課の周りを一般人が囲んでいた。

事前に告知されていた来訪であったせいで、異世界の人間をひと目見ようと。

そして今横須賀に居るとある艦船をその目に収めようと殺到していた。


「にしても、随分と人が多いですね」

「まあ、こちらの国民からすれば異世界の皇帝ですから。

あとは……これから見せるもののせいでもあるんですが」


そんなことを言いながら、海上自衛隊の敷地へと入る。

ここまで来れば民間人は殺到できない。

入場可能なのは受付を行った民間人だけである。


「神木首相殿、あの巨大な艦艇はなんですか……」


英連合帝国の軍人補佐が指していたのは、この国の艦艇ではない巨大艦。

ニミッツ級原子力航空母艦 CVN-73 ジョージ・ワシントンであった。


「あぁ、あれですか。あれは巻き込まれた同盟国の艦船ですよ。

元の世界では世界の警察をやっていた同盟国の」

「同盟国……ちなみに、あれと日本の軍……いえ、自衛隊でしたか。

もし戦ったらどちらが勝ちますかね……」

「戦ったらですか……あまり考えたくありませんが、あの艦が所属する艦隊。

その全力と戦うとすれば、国の海上戦力の総力を上げてようやくまともな勝ちが狙えるレベルですかね。

日本が持つ高性能艦艇、こちらが総勢8隻あるのですが、彼らは艦隊一つでこの数を超えます」


補佐官の顔面が蒼白どころの話ではなくなる。

自国の軍事力を軽く凌駕する国すらも赤子の手をひねるが如くとする艦隊を見れば無理もない。

相も変わらずアメリカという国はイカれている。


「まあ、彼らは今は海自の従者同然になっていますがね……いくら彼らでも石油がなければ何もできないので。

さて、着きましたよ。こちらが今回我が国が軍事援助第一弾として売り込む船になります」


そこには、旧軍好きが見れば涎どころでは済まないものが停泊していた。

右に水雷戦狂い、島風型駆逐艦

左に空の守護者、秋月型駆逐艦


「こちら、我が国が昔建造した駆逐艦を元に魔改z……改修を施した秋月型護衛艦と島風型護衛艦になります」


その形状は実物に比べればスマートになっているが、見れば秋月、島風と用意に判別できるものであった。


「これは……こちらの小型艦とは相当な違いですね。駆逐艦という名称とは違いますけど」

「日本の船とは砲門の数が違うな。わざわざこのために設計してくれたのか?」

「ここからは海上自衛隊の隊員が解説いたします」


横から待ち構えていた海自隊員が出てくる。

海自でも旧軍艦艇好き人間である。


「それでは、今回紹介する2艦種はあくまで補助艦艇という位置付けになります。

まずは右側から、こちら本国名称島風型護衛艦です。

速力35kt、武装は127mm連装砲4基8門に40mm単装機関砲6基6門、三連装魚雷発射管2基6門となっております」


あくまで諸外国が使用する艦艇であるため、ミサイル等特殊な兵器は搭載していない。


「また、0式統合指揮支援システムという、これらの兵器を指揮・統制する機能も持っております。

日本の護衛艦程ではありませんが、高い主砲命中精度と対空戦闘能力が期待できます」


これらも、護衛艦のそれとは大幅にデチューンされており、最悪第三国の手に渡っても問題ないレベルの技術レベルしか使われていない。

対艦ミサイル迎撃などほぼ不可能である。


「次に、左の秋月型護衛艦ですが、こちらは島風型護衛艦と同等の能力を持つ他に、戦隊旗艦としての能力が付加されております。

大きな違いはあと魚雷発射管が単装であることくらいですかね。

聞くだけではなんですから、海自隊員による実演を行いたいと思います。

実施内容は海上目標砲撃・対空戦闘です」


説明の裏では両護衛艦が機関始動を終えていた。

機関方式はCOGAG方式であるが、

パワーパックは全てブラックボックス化されている。

それはC4Iモドキも同様というか、中核技術はすべて段階的な開示のためブラックボックス化されている。


「それではまずは海上目標砲撃の実演を行います。

標的は10km先を航行する船舶が曳航しており、各艦4発の合計8発発砲いたします。それではどうぞ」

[左舷砲戦よーい。距離10km、各砲塔1発合計4発。

1番砲塔より順次射撃よーい…………撃て(って)!]


最前部の1番砲塔から4番砲塔まで、1基1発ずつ射撃されていく。


[初弾弾着まで3、2、1、今!]


FCSによって指揮された砲撃は、いくらデチューンされていても百発百中の海自隊員によって全てが命中していく。

主砲弾の装填は半自動化がなされており、護衛艦搭載のコンパック砲程ではないが連射が可能である。


[最終弾弾着。砲門収め]


ちなみにこの砲塔であるが、CICからの指揮統制の元砲塔にいる要員が動かしている。

装填手も含めて砲塔内には2名である。

おそらく現代人が動かす場面を見ればゲームと表現するだろう。


「素晴らしい……これほどの命中精度を小型艦でも出せるとは……」

「なんだ、そんなに難しいことなのか?英連合帝国の海軍技術ならできそうなものだが」

「あれにどれほどの技術が詰まってるかわからないのですか!

小型艦は大型艦と違い海の動揺をもろに受けます!それをものともしない砲身の制御技術!

あれほどの装填速度!魔導砲ではあれほどの速射は不可能です!

おまけに初弾から全弾命中して……失礼いたしました、興奮のあまり……」


その興奮具合はとんでもなく、相当豪快な性格であろうオードランが気圧されていた。


「次は対空戦闘となります、皆様から見て右手から航空機が標的を曳航して参ります」

航空機というのはUP-3D、電子戦訓練支援機である。

約600km/h、高度およそ1000m程で進入してくる。

[レーダーに感あり!左対空戦闘よーい!]

[不明航空機射程圏内に侵入!ボフォーs……40mm機関砲射撃開始!]


対空火器については、相当な譲歩がなされていると言ってもいいだろう。

なんたってファランクスCIWSのような自動迎撃が可能という破格の性能である。

もちろん、レーダーは搭載せず中央のレーダーシステムに連結など違いは多い。

ちなみに、システムをオーバーライドしての人力射撃も可能である。


[40mm機関砲三斉射全弾命中、撃ち方やめ]


こちらはあまり反応が良くない。

というよりももはや想定内といった感じだろうか。


「こっちも全弾命中ですか……これが手に入るならありがたいですが……一体おいくらで」

「お高い……と言いたいところですが、現在日本の経済というのは絶好調の極みでしてね……

主に皆様方の国土から産出される資源、これを当てにして国内では株価は大高騰、食料や石油に関しては大暴落して金の動きが良いのですよ。

その対価と言っては何ですが、秋月型護衛艦1隻と島風型護衛艦3隻。

これに関しては英連合帝国・具共和国・諸島国に第二共和国に1セットずつ無償で供与いたします。

ただし、訓練・整備関連の経費などは有償ですが」

「無償!?これを無償で良いのですか!?」


本来は無償になどしたくはない。

ただ、レンドロ協定加盟国、特にグランシェカ共和国

とヴァクマー第二共和国は日本と国民の生命線であるし、国内の経済好調は大陸の資源を当てにしている。

そのため、日本としては何がなんでも二国とのシーレーンを失うわけにはいかないのだ。

そのためにはエルファスター連合帝国の軍拡も必須である。

そのためエルファスター連合帝国はサンコ諸島国を護らねばならずと。

ズルズル引き摺り込まれた結果合計4セット無償で供与という大赤字を被ることとなった。


「ええ。それ以上の数がほしいとなれば流石に購入という形になります。

ただ、今は資源がないので鉱山の開鉱待ちですね……一体いつ開鉱することやら。

あんまりにも先伸びすると好調な経済が悪くなって無償提供が厳しくな……」

「鉱山だな?どれだけの人員が居る」

「おぉ、手伝ってくれるのですか?」


そんな大赤字を企業に飲ませる、それができたのは別に目的があったからだ。


「ッハッハッハ、下手な芝居は良いですよ。人員はいくらでも出しましょう」


石油は暴落しても他の資源は未だ高止まりしていた。

産業界はこれによって打撃を受けている。

それを解消するための早期鉱山開鉱、それが無償建造を飲む条件であった。


「そうですね、正直いって人員はいくらいても足りないくらいです。

国内からでは鉱山人員の確保は難しく……」

「そうなのか?グランシェカじゃぁ肉体労働は人が殺到する仕事だが」

「兵士や数少ない魔石鉱山員なんかは実入りの良さから受け入れ側がパンクするレベルですよ」


それは羨ましい限りである。

国内の鉱業従事者は閉山などもあり約12000人(平成15年)である。

これではとてもじゃないが開鉱に時間がかかり過ぎる。


「グランシェカからは、とりあえず直近で閉山する魔石鉱山や鉄鉱山なんかの人員を出そう」

「第二共和国も、主に現在収容されている軽犯罪者を中心に派遣いたしますが、よろしいですか?」

「ええ、大丈夫です。施設には自衛隊の警備もいますし。

グランシェカからの人員もありがたいです。これならすぐの開鉱もいけるかもしれません」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


67年 10/3 10:00:???:ソルノク空港


日本とやらの警備は非常にザルであった。

かき集めた情報によれば、ソルノク空港とやらで受付をすれば日本に行けるらしい。

このソルノク空港は軍も使っている鉄のワイバーンの飛行場らしいが、拍子抜けの警備であった。


「これが日本のワイバーンか」


ワイバーンへ乗る列に入りつぶやく。


「でかいな。これが鉄だっていうのか」


順番が来る。

女が入口に立っていた。

どうやらこの鉄のワイバーンの操縦者、その配下の者らしい。

制服が良い。

女のスタイルを最大限高められる服だ。

胸もでかい、だが今はそんなことに構ってる暇はない。

軍の施設がこれだけザルな警備なら国内もザルだろう。

都合がいい。

準備は万全に整えている、失敗はありえない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「奴さんの調子はどう?」

「すこぶる好調なようですよ。体と胸をガン見されました」

「そう、特別スタイルのいいあんたを連れてきて正解だったわね」


公安外事一課、警視庁公安部において対ロシア防諜任務に従事する組織。

そして、現在は外事ニ〜四課もろとも新世界での防諜任務に鞍替えさせられていた。


「どうします?あいつ。すぐにでも始末できると思いますけど」

「どこの国のやつか吐かせたいんだよねぇ。上の見立てじゃ英国と敵対してるダルア帝国。

それか友好的ではないけど敵でもないルレラ連合のどっちかって話だけど」

「じゃあ、本土の奴らに連絡入れときますね。うちら着替えですぐには動けませんし」

「お願い」

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― 新着の感想 ―
ガスタービンを使っているから起動も速いってのはメリットよね。 その分燃費がきついけど 戦前の巡洋艦や戦艦の設計図引っ張り出してもおもしろそうだけどね。
スパイ共、とっくにバレていることになぜ気付かないのでしょうね? 彼らの国と日本では、警戒の仕方がまるで違うためでしょうか?
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