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日本転移危機  作者: らいち
プロローグ 転移
18/43

第18話

24年 9/12 19:00:日本国:富士総合火力演習会場


エルファスター連合帝国使節団の2日目は、全権大使ブレット・ピーターと日本国首相神木康介による会談から始まった。

挨拶から始まり軽い懇談をした後、国交や各種条約について話し合った。

合意の有無や詳細に関しては最終日に決定される。


その後、使節団は東京駅へと向かった。

本来は東京観光と行きたかったのだが、それはお預け、大阪にその役目を任せる事とする。

目的地は静岡は熱海駅、そこから日本国の最大の実弾演習場である富士総合火力演習会場へと到着した。


そして今に至る。

これから行われるのは富士総合火力演習、総火演である。

この総火演は一般公開もされている。

そして、行われるのは通常一般非公開である学校・教育演習で行われる夜間演習である。

陸自の実力を効果的に証明できると同時に、演習を行う以上広報にと、一般公開が決定された。

戦時中でも国内最大の実弾演習が可能であると見せる意図もある……と国森が言っていた。


ちなみにこの異例の演習だが、夜間演習展示であるせいで通常の総火演の数十倍もの申込みが殺到していた。

そのため、中部方面隊の施設団による観覧席の大改装が行われ、各国武官が収容されていた場所にも一般観客を収容した。

それでも途轍もない倍率になったのだが。

もちろん、席には使節団一行も着席していた。


「軍の演習がこんなにも一般客を収容しているのか!?」

「ああ、それだけ自国の軍事力に自信があるのだろう」

「皆様、そろそろお堅い話が終わりますよ」

[これより特例富士総合火力演習を開始致します]


そんな口上の後、各種兵器が進入して来る。

演習場内で小さな歓声が湧き上がる。

そんな声をかき消す音が2つ存在する。


「何だあれは!?魔導兵器の類か!?」

「速いぞ!あれだけのサイズで我が国の魔導車に匹敵するではないか!」

正確には車両ではない。

[現在進入しているのは、FH70 155mm榴弾砲になります。

この榴弾砲は短距離の自走が可能であります」


そんな説明の裏では、FH70が射撃準備を開始している。


「おい!まだ何か来ているぞ!」

[現在後方より進入しているのは、99式自走榴弾砲及び19式装輪自走155mm自走砲です。

本車両はFH70 155mm榴弾砲の後継で、シュート・アンド・スクート能力が強化されています。

今回は、進入から射撃準備完了までの時間差を実感してもらうため、あえて時間差をつけて進入しています]

使節団は全員、訳がわからないといった感じである。

「特科射撃準備完了!02から04!特科中隊射撃!斉射よーい!撃て!」


大地を轟かす怒轟が鳴り響く。

155mm榴弾砲15門による射撃である。


「うお!大砲か!」

「しかもあの車からも発射されたぞ!」

「弾着10秒前!……5,4」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 9/12 19:00:陸上自衛隊:タタバーニャ要塞都市郊外


「3、2、だんちゃーーーく!今!!」


10発の155mm榴弾が着弾する。

それはまるで戦場の賛美歌のようであった。

第十六普通科連隊基幹旅団戦闘団はタタバーニャ要塞都市郊外へと到達していた。

そのタタバーニャは、まさに要塞と言うに相応しい様相であった。


ソルノクなどの都市とは比べ物にならない城壁。

そして周辺に存在する防衛陣地に城壁備え付けの火器。

おそらく普通科が行けば発見された瞬間木っ端微塵になる。


[第1トーチカ破壊!]

[続いて第2トーチカに対し射撃!]


タタバーニャ要塞都市は円型、その周囲にある程度の間隔でトーチカが存在する。

トーチカには機関銃と思しき火器が存在する。

砲兵に対する対策などほとんどされていないようであり、普通科の携行火器で破壊可能である。

が、無駄に危険を犯す必要はない。

そんな防衛設備を破壊するために特科が存在するのだ。


[こちらFO1!特科展開地域に対し航空戦力接近中!]

[CPよりスカイクリーナー(高射特科)!対空戦闘用意!]


特科は現在、タタバーニャ要塞都市より11km地点にて展開・射撃している。

同地点から、81式短距離地対空誘導弾が発射される。

81式短SAMの射程は約10kmであり、射程に合わせる形で特科も展開している。

誘導弾が高速で飛翔していく。

ものの10秒程度で都市から離陸した航空戦力ことワイバーンに命中する。


[こちらスカイクリーナー、全機撃墜。繰り返す、全機撃墜。おわり]

[こちらアーチャー(特科)!第2トーチカ破壊!続いて第3トーチカに対し射撃!]

トーチカはタタバーニャの周囲8ヶ所に存在する。

現在、我々旅団戦闘団の進出を阻んでいるのは第1から第3トーチカである。

その3つのトーチカを破壊すれば、タタバーニャに対し120°の安全地帯が発生する。


[第3トーチカ破壊!]


この攻撃は照明弾無しで行っている。

流石に砲炎で場所はバレたが、迎撃の航空戦力は全ての落としている。

相手にナイトビジョンの類があるのかは不明だが、無いならば一方的な視界での夜襲というアドバンテージが取れる。


[CPよりアサルトへ!作戦計画第2段発動!制圧開始!]


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[アサルト了解、戦闘開始!]


第十六普通科連隊の2個中隊を筆頭とした市街地突入部隊が行動を開始した。

先発は第四師団隷下第四飛行隊のUH-1 Iroquoisに移送される4個小銃小隊140名ほどである。

ファストロープによる壁上及び壁内の確保が任務である。


また、一部機体はヘリ搭乗の軽機関銃射手による近接航空支援を行う。

また、護衛に西部方面航空隊のAH-64D LongBowがAIM-92 Stingerを満載にして飛行している。


「降下地点到達!降下!降下!降下!」


軽機関銃射手の援護を受けながら、隊員が降下していく。

隊員は旧式ではあるがNVGである微光暗視眼鏡 JGVS-V3を着用している。


「あの化物から敵g」

「敵襲!敵襲!切り込んできt」


壁上で歩哨をしていた敵兵を射殺する。

もちろん、減音器などという高級品は無いため、爆音も相まって暗殺というより強襲である。


「降下地点周辺制圧(クリア)!」

「壁内制圧に移行!物資は惜しみなく使え!いくらでも後方から支給されるからな!」


隊員もハンドサインを使うなどと息巻いていたのに怒号を飛び交わせている。

壁上から城壁内部へと向かう階段を降りる。


「待て!……閃光弾投擲(フラッシュアウト)!」


壁に隠れながらドアをぶち破る。

室内からは爆音と悲鳴が聞こえた。


「GO!GO!GO!」


分隊全員がなだれ込む。

敵兵はなんとかこちらを視認しようとしていたが、こちらはその一歩先を行く。

流れるように敵兵を射殺し、更に奥から来ていた援軍を軽機関銃で滅多打ちにする。


「制圧!次だ!次!」

「了解!階段に手榴入れます!手榴弾投擲(フラグアウト)!」


手榴弾というものは、一般的に想像されるほど大きな爆発は起きない。

ただし、その小さな爆発から生じる無数の鉄片はいとも容易く人を殺傷する。


「発破確認!行け!」


その先に見えたのは死体だけであった。

手榴弾の殺傷範囲であれば、屋内の一室など誰かが身を挺して爆風を止めるか、遮蔽に隠れでもしないと死に至る。

そんな死体を撃ちながら先へ進む。


「この先は外みたいです!」

「わかった[こちら第ニ分隊、屋内クリア。これより門を開ける]よし、行くぞ!」

[こちら小隊長、了解した。FF(同士討ち)には気をつけろ]


その無線を聞きながら、閃光発音筒を投げ、外へと繋がる階段を駆け下りる。


「右制圧(クリア)

「左、歩哨2名排除。友軍確認」

「右方向警戒しながら門開けるぞ!井上!上田!来い!」


分隊員2人を連れ、門を開ける。

門はソルノク市街地に存在した城門の様な木造の扉だけではなく、金属製のポートカリスも存在する。

門が声を上げながら開く。


[こちら第二分隊、開城完了]


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[パンサーこちらCP、開けごま。開けごま。どうぞ]

[パンサー、了解]


パンサーこと、西武方面戦車隊第一中隊が前進を開始する。

その目的はもちろん、目の前に存在するタタバーニャ要塞都市の制圧である。

三菱の水冷4サイクルV型8気筒ディーゼルエンジンが唸りを上げる。

その姿は、まさに鋼鉄の獅子である。


「小隊前進!前へ!前へ!前へ!」

「小隊前進!」


10式戦車は前任の90式戦車、そして倉庫(モスボール)にて未だ国防の任についている74式戦車に比べ強力なパワーパック(動力装置)を装備している。

その機動力は前進・後退において70km/hの快速を叩き出す。


「貴様ら!我々はなんだ!」

「「「歩兵の壁!そして全てを蹴散らす破壊神!」」」

「お前らが乗る野郎共には何故砲がある!」

「「「立ち塞がる全てを破壊するため!」」」

「我々の敵はなんだ!」

「「「財務省と我らの凱旋に立ち塞がる全て!」」」

野郎(Facking)(Guys)!財務省の馬鹿共に分からせてやれ!西部方面戦車隊の力をな!」

「「「Yes Sir!!!!」」」


このままトリガーハッピーでもしそうな勢いだ。

まあ、やる気があるのはいいことである。


「なんかなぁ……こう、うちの中隊ってイカれた人しか居ないのか?」

「なんか常人のふりしてますけど、あなたも充分イカれてますからね?中隊長」

「そうかぁ?まあいい。我々も続くぞ!前へ!前へ!前へ!」


自衛隊の戦車小隊、これの戦車定数は1個小隊4両である。

そして、タタバーニャ要塞都市の制圧のために運用されている10式戦車は2個小隊8両と中隊長車両の合計9両である。

残った1個小隊は外周のトーチカの制圧や、周辺警戒に駆り出されている。

ソルノクの本部からの情報によれば、この世界には魔物の巣窟から大量の魔物が湧いて出ているらしい。


ソルノク市街地周辺も例外ではなく、しょっちゅう魔物と接敵したり住民が被害を受けたと騒いでいる。

その処理をするのは警務隊であり、予想以上の激務に悲鳴を上げている。

殆どは小火器で対応できてしまうせいで他の部隊への応援要請もできない始末である。


もちろん第十六連隊戦闘団も、行軍中の魔物との接敵や、後方の第七普通科連隊が村から魔物の掃討を頼まれるなど労力を割かれている。


そんなことはさておき、8両の10式戦車とともに第十六普通科連隊の主力も同時にタタバーニャ要塞都市へと突入している。

こちらはヘリボーンではなく、戦車の側面防御のため徒で移動している。


[こちらパンサー2!間もなくタタバーニャ要塞都市へ突入!どうぞ!]

[こちらパンサー0、了解した。突入後は伏撃に十分注意せよ。終わり]


戦車というものは歩兵の特効兵器であり、歩兵は戦車の特効戦力である。

ゲームで例えれば闇属性と光属性のようなものだ。

敵歩兵隊が対戦車火器(AT)を保有しているのかは知らないが、警戒し過ぎな事に越したことはない。

おおよそ近代レベルの敵部隊に戦車が被害を被るなど大惨事である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 9/13 6:30:陸上自衛隊:タタバーニャ要塞都市外縁


昨日19:00から始まったタタバーニャ要塞都市攻略戦は、思わぬところで躓いていた。

要塞都市攻略戦は補給が到着する前日に開始された。

そのため、部隊は全弾薬を打ち尽くすつもりで射撃をしていた。

しかし、当日の到着時間になっても補給部隊はおろか、無線すら来ないのである。


「一体どうなってやがる。遅れるなら無線ぐらい寄越しそうなもんだが」

「襲撃にでも遭ったんでしょうか。どうしますか、連隊長」

「………仕方あるまい、前線の部隊を後方に下げろ。弾薬不足で戦えませんなんて洒落にならん」

「了解」


前線は補給が来る前提で戦闘行動をしている。

下手すれば既に弾薬は尽きかけ、むしろ底をついてる可能性すらある。


[フォートよりソルノク、補給部隊が来援していない。状況を知らされたい。どうぞ]

[こちらソルノク、本当か?本部では特に何の情報もない。どうぞ]

[こちらフォート、事実だ。30分経っているが来援していない。どうぞ]

[ソルノク、了解した。こちらでも確認する]


補給部隊が無事ならば良いが。

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