第17話
24年 9/11 12:00:旧ロシア連邦:オハ空港
エルファスター連合帝国海軍の砲撃と陸軍の魔法攻撃によって焦土化した樺太。
その樺太の北部に存在するオハ空港に、エルファスター連合帝国及び日本国の使節団が集合していた。
エルファスター連合帝国の使節団は外交担当の赤坂を護送したはまぎりが護送してきた。
連合帝国の使節団はオハ空港より航空機にて札幌に飛ぶ。
ロシア軍はどうやら壊滅しているようであり、エルファスターの許可を得て陸自第七師団の一部を進駐させ実効支配している。
お陰で稚内まで護送する手間が省けた。
日本の使節団ははまぎりに移乗してエルファスターへと向かうことになる。
日本側の使節団は既に到着している赤坂を主として各方面の人間を集めたかたちになる。
「エルファスター連合帝国の方々はこちらへお願いします!」
さて、日本を案内するとなれば案内役が必要な訳だが、こちらは赤坂の補佐の木坂である。
「ここが日本なのか?随分とだだっ広いな」
「ここはなんだ…?あのー…あれだロリア連邦みたいな国の物だー、みたいな話があった場所じゃないか?
うちの王立海軍が正当防衛で砲撃したらしいが」
ロリアではなくロシアである。
「これで全員でよろしいですか?
………はい、それでは簡単に自己紹介の方を。
今回案内役を務めさせて頂く、日本国外務省の木坂と申します」
「連合帝国より派遣されたブレット・ピーターだ。
今回の派遣中の全権大使としても動くから、何かあれば私に申してくれ」
金髪碧眼。
まさに外国人の代名詞と知った感じの男である。
「他の人間は……まあその都度紹介すればいいだろう。ここでグダグダしても仕方ないしな」
「わかりました。それではこれからあちらのU-4……えーと航空機にて首都の方まで移動を行います」
「航空機……?航空機!?あれが飛べると言うのか!?」
どうやら軍人か何からしい、明らかに鍛えられた男が声を張る。
どうやら航空の概念はこの世界にも存在するらしい。
「……し、失礼、取り乱しました。ロバート・トレメインと申します。
階級は大佐、王立軍統合本部で勤務しております。
繰り返しになりますが、ホントにあの巨体が飛ぶのですか?」
「ええ、飛びますよ。すいません、結構タイトなスケジュールなので、もう移動しないと不味いんです」
「そうなのか、トレンがすまないな。よし諸君!聞いての通りタイトなスケジュールらしい!テキパキ動くぞ!」
実にありがたい。
実際はそこまでタイトなスケジュールではない。
最悪、翌日に回せば余裕を作れる様なスケジュールではある。
ただ、スケジュールなんかよりも旧ロシア領に居るのは居心地が悪いしいつ何が起こるか分からない。
さっさとこっから脱出したいのである。
そんな事を考えつつ、使節団の人々をU-4多用途支援機ことガルフ・ストリームⅣへと誘導する。
合計で最大22人が収容できるU-4の空き座席は1名となった。
[エルファスター連合帝国の皆様こんにちは。
今回当機の機長を勤めさせて頂く、鈴木と申します。
皆様は、快適に我が国の首都東京へと到着することでしょう。
それでは皆様、これより離陸致しますので、シートベルトの着用のほどお願い致します]
「シートベルト?を着けないといけないのか?」
「離着陸の時のみ着用をお願いしています。着用方法の方レクチャーしますのでこちらを」
木坂と乗員が口頭とその場での補助をし、なんとか全員がシートベルトを着用する。
それと同時に、飛行中に行う簡単なプレゼンの資料を配布する。
「皆様着用出来ましたね。[鈴木さん、Okです]それではこれより離陸致します。大きな音がするのでご容赦ください」
その直後、R&R テイ Mk611-8 ターボファンジェットエンジンが唸りをあげ始める。
最大943ktを発揮するその音は、エルファスターの人間からすれば凄まじいものである。
「トンデモナイ音だな!これなら飛ぶと言われても納得できる!」
そんな声が飛び交いつつ、使節団は飛び立った。
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12:00という時間もあり、機内では簡単な食事が振る舞われた。
どうせ都内のホテルの泊まる事になるため、和食はそちらへ任して洋食が振る舞われた。
そんなこんなで既に13:00である。
「それでは、あと1時間ほどで東京へと到着しますので、日本の簡単な説明の方をさせて頂きます。
それでは資料の方お開きください」
ちなみにこの資料であるが、全編英語である。
どうやらこの世界では英語に近しい言語が国際公用語として使われているようである。
各国固有の言語もあるそうだが、主に使われているのはこの英語モドキのようだ。
ただし、口頭の言語は何故か日本語でも通じる様だ。
おそらく不思議パワーというやつなのだろう。
「まず、日本国の簡単な概要になります。
国名は日本国、政体は議会制民主主義を採用しております。
政治権力を持たない王室が存在しており、国家統合の象徴として存続しております。
主要な産業は重化学工業などの工業になります。
また、日本は名目上軍隊の保有を禁じており、自衛隊という名称で国防組織を設置しております」
「軍隊保有を禁じているのに武力組織があるのか?」
「ええ、まあこのあたりの事情を話すと長くなるので……ご容赦ください」
都度質問に答えながらプレゼンを続けていると、実に早いことに東京近空に着いたことを告げるチャイムがなる。
「おっと、もうこんな時間でしたか。皆様、間もなく着陸致しますのでシートベルトの着用をお願いします」
その数分後、機体に小さな衝撃が走る。
空自所属の政府御用達ジェット機である、流石のソフトランディングだ。
[皆様、成田空港国際線に到着いたしました。本日はJSDALをご利用いただきまして、誠に有難う御座いました]
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成田からバス移動にてお台場は日本科学未来館、水の科学館を回った。
各科学館の案内役もついての見物であったが、実に大量の質問が押し寄せ案内役もパンクしかかっていた。
未来技術へのロマンだけ、というよりは元から知的好奇心が強いメンバーが集められて居たのだろう。
結局、最終的には19人の使節団に対して5名の職員が付くことになった。
その後、同じくバスにて浜離宮恩賜庭園に向かった。
全国屈指の大名庭園である。
現在の時期であると、ノウゼンカズラやサルスベリ、彼岸花などが見られる。
科学館の大盛況っぷりから庭園の方はあまり活況は無いかと思ったが、こちらも相当楽しんでいる様子であった。
そんなこんなで、オハ空港から始まった相互交流1日目は帝国ホテルにて宿泊という終わりを遂げることになる。
「いやー、4、5時間がここまですぐに過ぎるとはな」
「ええ、私としてはあの飲料水の技術は非常に興味深かい。是非とも我が国でも運用したいな」
「皆様、本日宿泊する事になる我が国一と言っても過言ではない、帝国ホテルとなります」
そう案内しながら、成田空港から走ってくれたバスを降りる。
ちなみに、周辺には複数人の警察官が警備している。
別に隠す気はないが、警官や従業員には一応の口止めはしてある。
科学館の案内役も同様だ。
中に入れば、使節団員が口々に感想を放っていく。
「すみません、外務省の名義で予約してると思うんですが……」
「はい、確認できております。こちら、予約分のキーとなります。事前の要請とおり、全てシリンダーキーとなっております」
軽く礼を言い、使節団の全員にシリンダーキーを渡していく。
「部屋の鍵になります。無くさないようにしてくださいね。外に出るときはフロントに預ける事もできますので。
あと、ピーターさん。この後明日の簡単な行程をお話しますので、お伺い致します」
「分かった。お前ら、聞いたな?」
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24年 9/12 10:00:エルファスター連合帝国:ランファスター
「皆様、この度案内役勤めさせていただくマークと申します。軍人上がりの為に少々不快を感じさせるかもしれませんが……」
「いえいえ、私は日本国外務省の赤坂と申します。よろしくお願い致します」
赤坂と合流した使節団は、エルファスター連合帝国の都市ランファスターに来ていた。
エルファスター連合帝国はレングランズ・ウェーランズ・クラットランズ・ケイルランズと言われる4つの島の集まりだという。
この4つの島の帝国が一つの国家としても連合帝国として一つの国家を成している。
そんな帝国の中、このランファスターはレングランズ島の第2の都市である。
とのことだ。
「それでは、これからこちらの車ry……鉄馬車と言ったほうが良いのですかね?」
「いえ、車両で大丈夫ですよ」
目の前あったのは、T型フォードをそのまま後ろに伸ばした様な車両が停車していた。
「ちなみに、こちらの車両はやはり石油…いえ、石炭などで稼働を?」
「石油……?石炭……?こちらは魔石に稼働しておりますよ」
どうやらこの世界で石油による内燃機関はお目にかかれなそうである。
石炭・石油が使用されていないだけならいいが、存在しないのであれば大問題である。
「まあ、とりあえずお乗りください。これから、首都のレンドロに向かいます。
レンドロまでは1000kmはあるので……2日程度で到着すると思います。途中に小さな都市がありますので、そこで1日宿泊致します」
その説明を聞きながら、T型フォード擬きに乗車していく。
フォード擬きは意外と座り心地は良かった。
「それでは発車致します!」
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宿泊するという小さな都市に到着した。
1000kmが2日ということは、凡そ60km/h程だと思われ500km程をに移動してきた事になる。
都市は海と山岳に挟まれた実に景色が良く、自然好きならば大喜び、そうでなくても感嘆くらいはするもの……なのだが。
全員死んだ顔をしていた。
サスペンションは低性能であり、舗装されているとはいえコンクリート程ではない。
それも相まって乗り心地は最悪、乗り心地を捨てている自衛隊車両よりも酷い有様だった。
案内役は涼しい顔をしている訳だが。
「皆様、到着いたしました。こちら、本都市内でも有数の宿になります」
「えぇ……有難う御座います……よくあれに乗ってて平気ですね……」
「そうですか?うちの国ではこれが普通……むしろ過去に運用していた馬車なんかよりはいいと思うのですが……」
これならばはまぎりの艦載機で飛んでいけば良かった。
明日もこの地獄に耐えねばならない。
そんなことを考えながら宿に入る。
中はRPG的な、古き良き宿といった内装である。
「内装は豪華ではありませんが……食事は一級品ですよ。新鮮な海産品と山の幸を使っていますので」
案内役がそう言いながら受付をする。
その後、宿の軽い注意事項などを話され、本日は解散となった。
そんなこんなで、日本国使節団の初日の仕事は終了したのである。
解散から2時間程で、食事の時間であると宿の方に呼び出された。
都市の情景や人名など、随所から大英帝国を感じていたために、トンデモナイ食事が出てくるのではないかと思っていたが、それは杞憂であった。
実に美味であった。
使節団との合流まではおおよどの食堂で食事していた訳だが、これならば派遣中の食事に心配する必要はないだろう。




