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日本転移危機  作者: らいち
プロローグ 転移
1/36

第1話

1/30改稿 航空無線の意訳追加 一部調整

2/7改稿 可読性の改善


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


皆様初めまして。

そして、作品をお開きいただきありがとうございます。

本日より、本作の連載を始めさせていただく、らいちと申します。

拙い文章では御座いますが、お楽しみいただけると幸いです。


2024年 7/9 23:34



不協和音が響く


日本に住む人間であれば、どんな者でも恐怖を覚える高音が鳴り響く。


日本国の地震への対応技術の結晶、緊急地震速報である。


 


緊急地震速報



最大震度 5弱


マグニチュード 6,3


発生時刻 23:34


震源地 不明


震源の深さ 不明


  


震度5弱


北海道道央、北海道道南、北海道道北、北海道道東、

青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、

茨城県、栃木県群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、

伊豆諸島、小笠原、神奈川県、新潟県、富山県、

石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、

愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、

奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、

広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、

福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、

鹿児島県、奄美群島、沖縄本島、大東島、宮古島、八重山、

沖縄県与那国島、沖縄県西表島



もはや狂気である。


それもそうだ、気象庁制定の予報区域全てが範囲とされているのだからそう感じても無理はない。


そして異常事態でもあるのだ。日本の最北端から最南端まで震度5弱で埋め尽くされているなんて状況ありえないのである。


それこそ地球が爆発でもしない限り。



そして、通信を司る者たちは別の異常にも気付いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 7/9 23:40:JAXA:筑波宇宙センター 追跡管制棟


「こちらの機械の故障の可能性はないのか?」


フライトディレクタの赤津はあきれていた。

当たり前である、唐突に目の前の管制員が「全ての衛星の通信が途絶した」なんていう荒唐無稽な報告をしているのだ。


「ここだけならばまだしも、他の管制でも通信が途絶しているため可能性はないに等しいですね」

「んあんだ、突然全ての衛星がぶっ壊れたとでもいうのか?」

「現在原因は究明中ではありますが、衛星が一切使用できないとなるとログからなんとか解明するしかありません」


もし報告が本当であれば、上に直ちに上げるような内容である。

しかし、内容があまりにも現実味がないせいで、それは憚られるような状態であった。


「・・・どれだけ時間がかかる」

「わかりません。1日かもしれないし、1年かかるかもしれません」

はっきり言って地獄である。

「・・・ただ、究明が難航することだけは確実だと思います」

「究明が完了次第上に報告してくれ・・・。俺は上にこの情報をあげてくる」


そう言い放ち、目の前にあったコーヒーを飲み干す。

砂糖は1本入っているはずだが、その味は苦かった。




そして、その苦みを味わっている者がもう一人いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 7/9 23:40:外務省:外務省本庁舎 大臣室



コンコン、コンコン

聞きなれたリズムの、聞きなれたノックの音がなる。


「入ってくれ」

げっそりとした顔の外務副大臣 萩野 進が顔を見せる。

「情報はまとまったか?」

「正直なことを言わせていただくと、未だに情報は錯綜しているのが現状です。今のところ判明しているのは、在外公館や他国との外交筋など、日本国内以外の国家と連絡が取れない状況になっています。

また、在日公館などから本国と連絡が取れないという問い合わせが相次いでいます」


どうしてこんなことになったのか、現場からの初報では数分前にあった地震の後から連絡が取れないとの情報が来ていた。


「地震との関連性はわかるか?」

そんなこと、たったの数分でわかるはずがないと思いつつ、問いかけた

「地震との関連性は不明ですが、少なくとも何らかの形での関与はあると思われます。」


当たり前(無意味)である。むしろこの状況で地震以外の要因を疑えなんてこと、無理がある。

こんなことを私は聞きたいのではない。

なにか明るいニュースが聞きたいのである。

そんな無理な願いを願いつつ、いつもより苦いコーヒーを飲むのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 7/10 03:34:第八航空団:日本国 領空



平和な空を、平成のゼロと愛される青い鉄竜が2匹轟音を鳴らしながら風を切る。


[SkyEye,ALPHA 1-1,Checking in,

Flight of Two F-2 at BULLSEYE 315/23/25000,

I have 2 AAM-5,Rquest BOGEY DOPE]

(SkyEyeへ、指揮下に入る。我はAAM-5を2基搭載し、

BULLSEYE 315/23/25000の位置を2機のF-2で飛行中。

敵機照会を求める)


[ALPHA 1-1,SkyEye,Good ALPHA CHECK,

BRA 312/24/6000 HOT,TYPE:Unkown]

(Alpha 1-1へ、感度良好。

敵機は 312/24/6000を貴機から見て12時方向に飛行中)


2匹の鉄竜はその無線を聞くと、急速に降下する。

ものの数分でBOGEYのもとへ辿り着く。

その光景はまるでファンタジーそのものであった。


「地球にこんなドラゴンなんていたのか?」


そこにはまるで、剣と魔法の世界に出てくる、ファイヤードラゴンとでも呼ぶにふさわしい赤のドラゴンが、悠々自適に飛行していた。

僚機がドラゴンから見て左、自機が右に取り付く。


「んなわけないでしょう。にしてもすごいですね、先輩も同じ幻覚を見ておいでですか」

無線の先から、僚機の声が聞こえる。

「幻覚だと思いたいが、残念ながら現実らしい。しかし参ったな、このままじゃ本土に直行だぞ」


[SkyEye,ALPHA 1-2,Enemy TALLY,TYPE:Dragon]

(SkyEyeへ、敵機視認。こいつぁドラゴンだ。)


僚機がAWACSに無線を飛ばす。時が止まったような返答の間に、補足していたドラゴンが突然暴れだす。

暴れるドラゴンの翼に、僚機と派手に衝突し、まるで段ボールが折れるかのごとく破損する。それほどまでに至近にまで接近していたのだ。


「1-2!ベイルアウトしろ!」

その無線は僚機のもとに届くことなく消えた。1-2の機体がスピンしながら海面へと吸い込まれる。

[SkyEye,ALPHA 1-1!WARNIG RED!,ALPHA 1-2 KIA!,ENGAGED!,ENGAGED!]

(SkyEyeへ!Alpha 1-2がKIA!交戦に入る!)


HOSTILEから離れるように右旋回すると、SkyEyeに緊急事態を報告する。

HOSTILEはこちらも脅威として認識しているようで、その右旋回に追従するよう高速で旋回する。

その旋回速度は、二次大戦時の傑作機のひとつ、零式艦上戦闘機を彷彿とさせるものであった。

そんな高速旋回を横目に、ジェット戦闘機の高速性を見せつけるがごとく距離を離す。

ファンタジーな存在でも、技術の結晶であるジェットエンジンのパワーには勝てないようである。

ある程度距離を離した時点でHOSTILEに対してアプローチを開始する。

ドラゴンと真正面から向き合い、GUNのトリガーに指をかける。

彼のM61A2の火が吹く瞬間、ドラゴンが"火"を噴いた。高速飛行するジェット機でその"火"を避けるのは、おおよそ0.2から0.25秒と言われる人間の反射では不可能であった。

その瞬間、死を覚悟しトリガーを引きながら"火"へと突っ込む。

その空戦を制したのは、蒼い鉄竜であった。

紅い竜が、その翼と肉体が離断しながら蒼い海へ飲み込まれていく。


[SkyEye,ALPHA 1-1,SPLASH one BANDIT]

(SkyEyeへ、敵機撃墜。)


[ALPHA 1-1,SkyEye,RETROGRADE,SRT Online]

(Alpha 1-1へ、作戦を中断し帰投せよ。

救助は既に発進している。)


[SkyEye, ALPHA 1-1,WILCO,RTB]

(SkyEyeへ、了解した。帰投する。)


短い交信を交わし、戦場を後にする。その声は、わずかであるが、確実に震えていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 7/10 10:23:文部科学省:文部科学省庁舎 大臣室



「国内の観測所から新天体の発見報告が相次いでいるというのはホントかね?石井副大臣」


文部科学大臣の鹿賀輝樹は、まるで子供のような目でこちらに質問を投げかけてくる。


「はい、国内の観測所から今の所52件の新天体観測の報告が上がっています。何件かは重複してはいるでしょうが、異常な数です。また、国外の天文台とは連絡がつきませんが、これに関してはどこも同じ状況のため解決を待つしかありません」


石井東吾は疲れた眼つきで報告する。疲れているのもあるが、いつもと同じ眼つきだ。


「また、JAXAから全ての人工衛星からの通信が途絶したとも報告が上がっています。

原因は不明とのことです。ただ、何が起こっているかは不明ですが宇宙空間で何らかの事象が発生しているのはこの報告たちを見れば確実でしょう」


政府からすれば大事も大事であるが、この大臣は目を輝かせながら言い放つ。


「国内の観測所にフル稼働で観測を継続しろと伝えろ。これは世紀の大発見になるぞ!」

今日何回目かもわからないため息をつく


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 7/10 18:00:夕刊



 航空自衛隊機、スクランブルで被撃墜か!?


      築城基地のF-2 一機喪失



 国外との通信途絶、未だ解消の目処立たず


      衛星通信も不可能



 漁船一隻行方不明  激写!?ドラゴン出現


  行方不明者5名    空自機撃墜か?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24年 7/11 10:00:内閣府:首相官邸 閣僚応接室


「それでは臨時閣議始めさせていただきます。えーまずは……、防衛大臣から発言があります」

実に不穏である。

「えー、既に昨日の夕刊で報道されているため、ご存知の方も居りましょうが。

7/10の3:30頃 、レーダーサイトより通報を受けスクランブルした第八航空隊のF-2一機が撃墜されました。

撃墜した不明機に関しては、撃墜されたF-2の僚機がM61A2バルカンにて撃墜いたしました。

ただ、その撃墜したものが、現場からの報告によると「まるでファンタジー世界に出てくるドラゴンのような生物だった」と報告が上がってきています」


部屋に妙な空気が漂う。もともと、防衛大臣である国森陽吾は真面目な男である。

そんな男が、殉職者すら出ている緊急発進案件の報告で、こんな現実離れした発言をするとは誰も思っていなかったのだ。


「また、帰還したF-2の撮影した写真にも、報告内容と同じようなドラゴンの遺骸が写っており、報告の真偽確認は不要と判断いたいしました」

呆れと、驚愕が混じった声が各所から上がる。

写真まで出されては現実として認めざるを得ない。

「国外でも同様の事態が発生しているのかは不明ですが、少なくともジェット機一機を撃墜できる要素を保持している以上、領空に入り次第撃墜できるような体制にする必要があります。

空自の能力的なものでは対処を誤らなければドラゴンを圧倒できると思われます。

以降も領空に入ってくるならば、有害鳥獣としての認定し駆除対象とすることを提案する次第であります」


この発言に閣僚達は承認せざる負えなくなった。国森陽吾という男は常々「自衛隊の出動は最終手段である」と主張してきていた。

そんな男が自衛隊の駆除対象とすべきと発言するならばそれ相応の理由があり、脅威であるということなのだ。


「えー、次が…外務大臣より発言があります」

「外務省より簡単に現在の状況について報告させていただきます。

まず、現在存在している在外公館及び全ての諸外国との通信が途絶している状況にあります。

また、これに関しては各国公館からも本国との通信が途絶したとの報告があるため、こちら側の問題ではないと思われます」

これまたため息が聞こえる。

つまり完全なる孤立状態である。

「また、来日する予定であった観光船等と連絡がつかない状況です。これに関しては後ほど総務省からも報告があると思います。以上」

「次に総務省から発言があります」

「現在、人工衛星との通信途絶により衛星通信が完全にダウンしており、電波圏外との通信に大きな障害が発生しています。

本案件に関してはJAXAが衛星との交信が復旧しない限り解消は困難となります。

そしてこれに起因する問題がありまして…現在我が国の救難信号の受信を人工衛星に頼っている状況であることです。

既に海難者が出ており、現在海保が捜索中とのことですが発見には至っていないとのことです。

また海洋管制も人工衛星に頼っているため、外務省の報告通り外洋航行中の船舶との連絡がつかない状況です」

「国交省より良いでしょうか」


部屋が静まり返る。その様子を見た国交大臣が口を開く。


「ありがとう御座います。現在外洋航行中の船舶との連絡が取れない状況とのことですが。

海上保安庁からの報告によると大型船舶などが予定された航路上及びその付近においても、レーダー等で補足できない状況であるとのことです。

それ以外の、例えば巡視船や哨戒ヘリ等は補足できているため、機械の故障という線は薄いそうです」

「少しいいかね」


閣議開始から今の今まで口を閉ざしていた内閣総理大臣神木康介が口を開く。

彼は、与党の悲願であった憲法9条改正、これを台湾危機に乗じ成し遂げた角井林治元内閣総理大臣の一番弟子であり、彼の意思を強く継ぐものであった。

そんな彼の声は、威厳があり、それでいて穏やかな声であった。


「輸送船が航路上にもその周辺にも居らず、おまけに通信まで途絶しているということは。

日程までに船舶が入港しない、海運が停止するという可能性が十分にあるという認識でも良いかね」

会場の時が止まったかのような状態になる。

それを破ったのは国交大臣であった。

「……はい、現状を鑑みるとその可能性は高いでしょう」


その言葉の意味を、この場にいる優秀な政治家達は全員理解していた。

島国の日本において海運が停止するということは、国家としての死、もしくは死へのカウントダウンと同意義である。

国として、最悪の事態を想定しなければならなかった。


「……豊海くん、伊丹くん、現在国内の食料及び戦略物資の備蓄はどれだけある」


その言葉に先に答えたのは農水大臣である豊海介であった。


「現在国内の食料備蓄は民間在庫や現在流通しているものも含めて、平常と変わらない供給を1ヶ月継続できる程度の備蓄はあると考えられます。

また、米及び野菜類は比較的自給率が高く、漁業規制等の緩和を行えば、それ以降も餓死者を出すようなことはない、いえ農水大臣として出さないと断言いたします」

その言葉に続くように経産大臣の伊丹雄が答える。

「戦略物資の備蓄に関してですが、現在国内の石油備蓄はおおよそ半年分となります。

ガス資源に関してはおおよそ3.5ヶ月分ほど。石油に関しては、できる限り行いたくはありませんが民間への流通制限等を行えば1年程度は持つ可能性があります。

LNGについてですか、LNGの特性上長期間は持たせられません。

LPガスに関しては、……反発は確実でしょうが原子力発電所の再稼働を行えば十分に節約することは可能でしょう。

レアメタル等に関してはおおよそ2ヶ月分の在庫があります」


安堵と、不安が混じったような声であった。

各大臣は一時の安堵といったところであろうか。

伊丹からすれば3ヶ月だの2ヶ月なんて数字、大した安心材料にならないというのが本音であった。

もし、日本近海の商船がすべて存在しないならば、再度輸入をするのに何ヶ月かかるかもわからないのだ。


「大した安心材料にはならないな、伊丹くん、国内の生産可能な油田やガス田、鉱山の再稼働を準備しておいてくれ、少しくらいは足しになるだろう。

豊海くん、国内の漁業者に規制緩和に関して周知を開始しておいてくれ。

規制緩和開始の日程に関しては、そちらに任せる」


二人が総理を見て頷く。

その目は、覚悟を決めた目であった。


「他になにか報告がある者はいるか?」

文部科学大臣、鹿賀輝樹が手を上げる。

「文科省から報告がありまして、国立天文台から異常な数の新天体発見の報告がされています。

既に国立天文台では観測所をフル稼働して、宇宙空間で何らかの事象が発生している可能性を探ってるところであります」


その他に手を上げる大臣は居なかった。神木が口を開く。


「農水省と経産省は指示通りに仕事を始めてくれ。次に防衛省、海保と共同して遭難者の捜索及び船舶の捜索を行ってくれ。

あと、諸外国へ輸送機などにて飛行して連絡が取れないか試行してみてくれ」


国森が低い声で、了解いたしましたと発する。


「次に総務省、文科省、協力して衛星通信を復旧できるように尽力してくれ。

文科省はこれに加えて新天体発見に関しての調査及び、一連の事態について有識者を招聘しての総合的な調査を行ってほしい。異論はないか」


部屋が静まり返る。彼の指示は的確であり、それは彼の政治的手腕を表していた。


「よろしい、これで閣議、閣僚懇談会の終了として良いかね、柚木官房長官」


官房長官の柚木が頷く。


「それでは各自、仕事を始めてくれ。ただ、鹿賀大臣だけ少し残ってくれ」


その声を聞き、仕事を振られた大臣が足早に応接室を退室する。

それに続いて各大臣も退室していく。

応接室には鹿賀だけが残った。


「鹿賀大臣、どんなに突拍子のない話でもいい。今のこの状況、どう思う」


神木は問う。

鹿賀のことを優秀な政治家であると同時に、優秀な研究者でもあると認識していたからこその問いであった。


「はい、先程報告した件、突然新天体しかも観測所で何十個も発見されるなど、少なくとも”地球では”ありえないでしょう」

その時考えていた、あくまで仮説を言っていた。

「つまり……、ここは地球ではない…ということを言いたいのだな?」


信じられないととでも言い出しそうな声で言い放つ。しかし、その声には確実に、鹿賀への信頼があった。


「はい、もしも日本だけが、しかも列島ごと別の世界に転移してしまったということならば。

在外公館や諸外国、衛星との通信ができないことも、新天体が大量発見されたことも、ドラゴンが突然現れたということも説明がつきます」

鹿賀がはっきりと仮説を言い放つ。

「鹿賀くん…その路線を主軸として調査を行ってくれ。ただし、絶対に外に漏らすな。

少なくとも情報がなく、確定事実でもない今そんなことが出れば大事になるからな」


鹿賀は静かに頷くと、席を立ち応接室を退室していく。その姿は政治家というよりも研究者のそれであった。


「異世界への転移……か」


小さく呟く。


神木は40手前の政治家の中でも若手も若手である。

その天才的手腕を角井に抜擢されたこともあり、その頭は政治家の中でも柔軟かつ優秀であった。

そんな神木でも、異世界への転移なんて話が出てくるとは思いもしていなかった。

だからこそ、鹿賀を呼び止めたのでもあったのだが。

席を立ち、応接室を出る。


「もし本当に異界へ来てしまったのならば、対策を考えねばな…。文化の違いや宗教の違いもあるだろうし……、そもそも技術は………」


そんな独り言を小さく呟きながら、執務室へ戻るのであった。

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