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9 聖女、呪いを解く 2

私は広場に村人や従者を集める。いつものアレをやるためだ。

そして、今回の主役となる川崎エリナちゃんの生まれ変わり、エリーナを呼び寄せる。因みにエリーナという名前の由来は生まれてすぐに「エリナ、エリナ」と呟いていたことからその名前にしたようだ。もしかしたら前世の記憶も封印されているだけで、何かのきっかけで、思い出すかもしれない。


エリーナを呼び寄せると私は聖母ガイアの幻影を出現させる。これには村人も驚きの表情を浮かべている。


「私は聖母ガイア。レーベ村の諸君は初めてだな・・・」


幻影に喋らせる。エリーナを見ると凄く嫌そうな顔をしている。


「エリーナ、どうしたの?怒らないから正直に言っていいわよ」


「申し上げにくいのですが・・・この女性を見ると凄く嫌な感じがして、無性に腹が立ってきます」


あんだけ酷いことされたら誰だってそう思うよ。私ならぶん殴っている。


この発言にゴードンが怒鳴る。


「おいお前!!不敬だぞ」


ゴードンたら、怒らないって言ったのに・・・。


「エリーナ、気にしなくていいわ。怒鳴ったりしてごめんね。ただ、これから言うことを落ち着いて、よく聞いてね。率直に言うとあなたは呪われているわ」


これは作戦だ。「あなたには無限の才能がある」と言ってエリーナを連れて帰っても、才能が開花しなかった場合、彼女は傷付くだろう。しかし、呪いを解除するということであれば、少しだけ何か役に立つようなことをすれば、彼女は称賛される。

彼女のことを考えて、呪いを解く設定で話を進める。


「そ、そんな・・・」


村人も口々に言う。


「やぱっり呪われた子だったんだ」

「5年前の凶作もアイツが原因に違いない」

「また災難が起こるぞ」


「静まりなさい!!皆さんに忠告しておきます。彼女の呪いは周囲に害悪をもたらす類のものではありません。彼女には無限の才能が秘められていますが、呪いにより、その才能が封じ込められているのです。

お父さん、お母さん。私にエリーナを預けってもらえませんか?時間が掛かるかもしれませんが、呪いを解いて見せましょう」


両親は困惑する。

急にそんなことを言われても困るだろう。

なので、一計を案じる。


「エリーナ、このジャガイモで私と同じことをしてみなさい」


そう言うと私はジャガイモ3つでお手玉のようなことを始めた。エリーナもこれに倣う。やらせてみるとすんなりできた。すぐに4つ、5つとジャガイモを増やしていく、あっという間にジャガイモ10個も難なくやってのけた。

村人たちは大盛り上がりで、当の本人のエリーナも驚いている。


「えっ、嘘・・・こんなことができるなんて・・・」


種明かしをすれば、エリーナが最初から持っていた「ジャグリング」のスキルが発動しただけだ。大して役に立たなそうなスキルは他のスキルと干渉することはない。あの馬鹿女神も流石にそこまではできなかったみたいだ。

すぐにみんなの前で披露できるのはこれぐらいだ。まさか人前で「聖棒挟み擦り」なんて、させられないしね。


ひとしきり落ち着いたところで、私は話始める。


「短期間では、いかに聖女の私であっても、彼女の呪いをすべて解くことはできません。複雑に呪いが絡みあっているのです。なので、責任を持って呪いを解いていきますので私にエリーナを預けてくれませんか?」


するとエリーナも両親に頼み始めた。


「お父さん、お母さんお願い!!私を聖女様の元へ行かせて。子供の遊びのようなことだけど、今まで生きてきて、今日みたいにみんなから褒められることなんて一度もなかたったのよ」


「分かったよ。聖女様。エリーナをよろしくお願い致します」




エリーナのジャグリングで盛り上がった流れで、宴に突入した。大いに盛り上がっている。私は聖女とい設定だけあって、多くの人から声を掛けられる。子供達は、やっぱり聖母ガイアは何の神様にするかで盛り上がっている。

私が子供達に言った。


「本当に何でもいいのよ。トイレの女神様でも井戸の魔人でも」


「魔人は駄目だよ・・・」

「じゃあ、トイレ魔人ガイアにしよう!!」

「それいいね」


私は心の中でほくそ笑む。ざまあみろ!!馬鹿女神。



周囲を見渡すとゲディラが村人達と飲み比べをしていた。ゲディラはハーフドワーフで高い鍛冶スキルを持っているが、常識がなく、口も悪い。そのせいでゲディラの周りでは、少し険悪な雰囲気になっている。


「ここの村は腰抜けばっかッスね。もう挑戦者はいないんスか?」


よく見るとゲディラの周りには何人も村人が酔いつぶれて倒れている。

これは何とかしなければいけない。私はエリーナを連れてゲディラの所に向かった。


「ゲディラ。エリーナと勝負なさい。エリーナに勝ったら開発費を倍にしてあげるわ」


「本当ッスか?そんな小娘にウチが負けると?ドワーフに飲み比べで勝てるわけないッス。もしウチが負けたら、その娘のペットにでもなってやるッス。『ご主人様、ニャーニャ―』て言ってやってもいいッス」


勝負は白熱した。麦酒、ワインでは決着がつかず、火酒で勝負することになった。火酒とは前世でいうウイスキーやウォッカなどのアルコール度数の高い酒を総じて呼ぶみたいだ。いくら飲み比べでも、危険なので、普段は火酒は飲み比べに使わないらしい。


最終的には「酒豪」のスキル持ちのエリーナが勝利した。酔いもあったのだろう。戦いに勝利したエリーナはまるで村の英雄のような扱いだった。本人もここまで称賛されたことは今までなかったみたいで、戸惑う反面、嬉しそうでもあった。


私は思う、あの馬鹿女神のことだ、完璧にスキルを相殺しているように見えて、絶対にどこか失敗しているに違いない。それを見付ければ、エリーナは才能を開花させられる。

それが私の本当の使命かもしれない。



★★★


余談だが、ゲディラがエリーナのペットになるという話は、領都エルサラに帰還するまでということになった。馬車の中ではゲディラとエリーナがじゃれ合っている。


「ご主人様、なでなでして欲しいッス、ニャー」

「よしよし、いい子いい子」

「本当に気持ちいいッス、ニャー」


多分、アレ系のスキルが発動しているのだろう。ゲディラは本当に気持ちよさそうだった。


私の「癒し」と騙しのテクニック、エリーナのアレ系のスキルを駆使すれば、一国の王子の一人や二人は簡単に篭絡できるかもしれない。


そんなことを思いながら無事領都に帰り着いた。

自室で一回り大きくなった聖母ガイア像を確認すると膝上位まで黄金色になっていた。


「トイレ魔人ガイア」として信仰されても、信仰心は集まるようだ。

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