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<最終章>結婚詐欺師、異世界で聖女に~私が聖女?女神様!!多分人違いだと思うのですが・・・  作者: 楊楊
最終章

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80 決戦へ

 私は、アバウス公国とルキシア王国の国境沿いにあるバージニアにやって来た。ここは国境の砦からも近く、ダンジョンがあるため、多くの冒険者がいることから、軍事拠点にもなっている。アバウス大公は既に現地入りしていた。アバウス大公から状況を聞く。


「幸い、砦に兵を常駐させていたことから、第一陣の攻撃は防ぎきっています。ただ、このままいつ来るかも分からない攻撃に備えるのは、非常に厳しいですね。主に予算の関係で・・・」


 それはそうだろう。戦争はお金が掛かる。兵士の食事代だけでも馬鹿にならない。他国に借金をしている国がしていい行為ではないのだ。だが、事情が事情だけに攻めることはできない。こちらも対策を打たなければ・・・


 コウジュンが言う。


「こちらができる対策は二つ。このまま凌ぎ続けるか、攻め込んで敵の本丸を討つかですね。どちらもメリットとデメリットがありますけどね」


 このまま、耐え忍ぶことを選択すれば、しばらくはやり過ごせる。しかし、アンデットは日を追うごとに増えて行く。そして、こちらが何もしない間にどんどんと被害は増える。自国ではないルキシア王国でだが。

 一方、攻め込むとすると上手くいけばすぐに解決する。敵の首謀者であるマリアを討ち取れば、それで戦闘は終わる。こちらにはマリアに対抗する手段もあるしね。だけど、下手をすると多くの犠牲を出してしまう。


「どちらかを選ぶことは、私の立場ではできません。カレン様の御心のままに・・・」


 これは如何にコウジュンといえども、判断できないだろう。これは戦術レベルではなく、思想の問題なのだ。確実に自国民だけを守るか、それとも苦しんでいる他国民にも手を差し伸べるかという話なのだ。何のリスクもなく、苦しんでいる他国民を救えるのなら、問題はないが、リスクが高すぎる。私は判断ができないでいた。

 コウジュンに尋ねる。


「もしこちらから攻め込んだ場合の被害をまとめてください・・・」


 コウジュンも私の思いが伝わったようで、悲しそうな顔をして言う。


「分かりました。3日程時間をください」



 ★★★


 3日後、コウジュンが報告に来た。

 少し明るい顔をしている。


「報告の前に少し見ていただきたいものがございます。現在、ルキシア王国との国境沿いの砦に大量のアンデットが押し寄せています。アバウス公国軍が凌いでいますが、応援部隊としてアズイーサ率いる神聖騎士団が合流しています。その戦いを見てから判断しても遅くはないと思います」


 砦に移動する。

 アバウス公国軍は上手く凌いでいた。これは神聖国ルキシア軍の指導受けている上、ゲディラ特製のバリスタや投石機が設置されているからだ。防衛側が有利なのはどの時代、どの世界でも共通の常識だ。神聖国ルキシアは侵略を考えていないので、アバウス公国の防衛力が上がろうが、問題はないからね。


 砦に着くとすぐにアズイーサがやって来た。


「これから、我が神聖騎士団の実力をお見せいたします。コウジュン殿が突撃をしばらく待てと言った意味がやっと分かりましたぞ。こういうことだったんですね」


 アズイーサは颯爽と部隊に合流した。

 しばらくして、砦の部隊に攻撃中止の命令が下った。そして、アズイーサの部隊が突撃を開始する。私は一瞬、ドルト子爵領での悪夢を思い出した。


「コウジュン、大丈夫なの?以前にこんなことがなかったかしら?」


「大丈夫ですよ。あの頃のアズイーサ殿ではありませんからね」


 神聖騎士団は凄まじかった。次々とアンデットの群を殲滅していく。遠巻きに見るとどっちがアンデットか分からないぐらい激しい。全く攻撃を避けようとしないのだ。攻撃を喰らっても、すぐに回復魔法で回復してしまう。膨大な魔力量をすべての騎士が持っているからこそ可能な作戦だ。


「驚きましたか?私も驚きました。ここまでヤバい・・・いや、心強い集団になっているとは、思いもしませんでした」


 今、ヤバいって言ったよね?

 私もそう思う。


 神聖騎士団の強さは、アンデットに相性がいい神聖魔法での攻撃ができる騎士を多く抱えていることもそうだが、死を恐れないバーサーカー集団というのが、一番の脅威だ。ただ、ただ、前に突き進んでいくからね。

 砦にいるアバウス公国の兵士たちもドン引きしている。


「絶対にアイツらとは戦いたくないな・・・」

「味方でよかったよ」

「ああ、俺はアンデットよりも、アイツらの方が怖いよ」


 コウジュンが言う。


「彼らを前面に配置して、突き進めば、被害は出さずに進軍はできます。問題は、その後ですが・・・」


 コウジュンが言うには、アンデットを蹴散らすことはできるという。問題は補給だ。ここから一気に聖女マリアがいるであろう聖都ルキレシアを攻めることはできない。拠点となる町を解放しながら進むしかないのだ。


「アンデットを砦や城に籠って撃退することは、それなりに経験のある部隊がいれば大丈夫です。問題は物資や資金を誰が出すかという話になると思われます」


 戦況を見ると、アンデットの軍団はどんどんと殲滅されていく。

 コウジュンの言っている意味は分かる。となると・・・



 ★★★


 私は、コウジュンたちに指示して、各国の代表をバージニアに集めてもらった。お父様やポールさん、オルマン帝国の関係者だけでなく、同じ大陸の小国家群各国の代表、獣人の国ラーシア王国の関係者も集まってくれた。


 私は彼らに事情を説明する。マリアのことは「邪神の化身」と言わずに「死霊術師ネクロマンサー」を前面に押し出すことにした。小国家群の代表の一人が言う。


「にわかに信じられん。その根拠は?」


「それは・・・神のお告げです。そうとしか言いようが・・・」


 ここで私はいつも通り、聖母ガイアの幻影を出現させた。例のごとく、聖母ガイアに喋らせる。


「マリアと名乗る女は邪悪な「死霊術師ネクロマンサー」です。そしてマリアを倒せるのはこのカレン・クレメンスしかいません。各国の皆さん、共に兵を上げろとは言いません。しかし、協力はしてください。そうすれば、世界は平和になり、神の加護が与えられるでしょう」


 各国の代表は静まり返っている。


 どんな反応をするか、私は祈るような気持ちで、待った。

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