表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/84

8 聖女、呪いを解く

「な、なに!!レーベ村に行きたいだって?それはちょっと、うーん・・・・」


お父様にエリナちゃんが転生したレーベ村に行きたいと話した。お父様の反応はこれまでの反応とは違っていた。今回は「聖母ガイア様のお導き」とか言っても、渋っていた。

そうしたところ、長年父の側近として、領政に携わってきたクラークが話始める。クラークのジョブは一般職の「従者」だが、「縁の下の力持ち」という裏方に特化したスキルを持っている。


「カレンお嬢様、少し今回は事情が異なるのです。地図上では、我がクレメンス領なのですが・・・・」


クラークの説明によるとレーベは獣人の村だ。獣人は、私達人間族にいいイメージを持っていない。それに聖母ガイアにも。これには獣人が迫害されてきた歴史にも原因があるようだった。

なので、今のところ、税も納めていないし、逆に襲撃される危険性もある。


「クラーク、話はよく分かりました。しかし、これは私が為さなければならないこと。そう、使命なのです」


多少危険があっても、私はエリナちゃんを救いたい。

するとお父様が言った。


「そこまで、カレンが言うのなら分かった。今回は私も同行しよう」



領主であるお父様が許可したことで、その後の話は早かった。いきなり私達が訪問したらびっくりさせるので、冒険者ギルドを通じて、獣人の冒険者にお父様の書状の配達と交渉を依頼した。運がいいことにたまたまレーベ村出身の冒険者がいたので、話は進み、私達の訪問は受け入れてくれることになった。




★★★


レーベ村への同行者は、お父様とお母様、護衛の従者、それにゴードン、コウジュン、ドロシー、ゲディラの私がスカウトした従者、それに今回、レーべ村との交渉をまとめてくれた冒険者のパーティ―

だ。

この冒険者達には護衛という名目で追加報酬を出している。


レーベ村に着くと、村長が出迎えてくれた。村長は猫獣人だった。猫獣人は獣人の高い身体能力に加えて、魔法が得意な種族だ。この村長も専門職の「魔導士」のジョブを持っている。


お父様と村長が儀礼的な挨拶を交わす。

しばらくして、話題が私や聖母ガイアのことになった。


「領主殿やそちらの聖女様には悪いが、どうも聖母ガイアを信仰する気になれんのじゃよ。儂らは代々、山の神や森の神、精霊と言った方がいいかのう?それらを信じておる」


私も聖母ガイアは好きになれない。そこは同意する。


「聖母ガイアを信仰すると今まで儂らが信仰してきたものをすべて捨てんといかんのじゃろ?」


「村長、それは違います。こう考えてはどうでしょうか?山の神、森の神、川の神と同じようにその神様の中に聖母ガイアを加えてもらえばいいのです。何ならトイレの女神とかにしてもらっても構いませんよ」


この辺は八百万の神を信仰している日本人的発想だ。前世でも、外国人にはあまり理解できないそうだ。冷静に考えてみれば、私もそう思う。神社で初詣、バレンタインで盛り上がり、ハロウィンとクリスマスでバカ騒ぎ、結婚式は教会でお葬式はお寺って・・・・。

これで神様が一人くらい増えたところで何の問題もない。


ここでお父様のツッコミが入る。


「トイレって!!カレン、それは不敬過ぎるんじゃないか?」


「トイレでいいですよ。慈悲深い聖母様だから何でもいいんです。ゴミ捨て場の女神でも墓場の女神でも・・・」


「おい、カレン。聖母様に恨みでもあるのか?」


「じゃあ、肥溜めの女神にしましょうか?」


そうしたところ、村長が笑い出した。


「ハハハハ、面白いお嬢さんだ。まあ、その辺はゆっくり考えるとして、アンタらのおかげで、村も多少は豊かになったから、その辺は感謝しとる。ささやかだが、宴を準備したので楽しんでいってくだされ」



宴までの間、いつも通りの鑑定と病人には「癒し」と「回復魔法」を使って、信仰を集めて行く。私の「トイレの女神」発言が効いたのか、村の子供達の間では、聖母ガイアを何の神様にするかで盛り上がっていた。


「私は井戸の神様が良いと思うわ」

「俺は斧の神様にするぞ」

「私は弓にする」

「弓の神様って別にいなかったか?」


「ところで聖女様は何の神様がいいんですか?」


「トイレでいいんじゃない?」



★★★


そしてついに見付けた。エリナちゃんで間違いない。

その娘は猫獣人であったが、村長や他の村人と違い、モフモフしたところはケモ耳くらいで、肌は人間の肌と同じ感じだ。多分「すべすべの肌」のスキルが影響しているんだろう。

とりあえず「鑑定」のスキルを発動させたところ、驚愕の事実を知る。



名前  エリーナ 

年齢  13歳

ジョブ 「龍騎士」「テイマー」

スキル 「すべすべの肌」「酒豪」「尻尾攻撃特大」「大器晩成」「早熟の天才」「ジャグリング」「魔物パージ」・・・・「聖棒挟み擦り」・・・・「品行方正」

健康状態 軽い鬱状態

体力※※、知力※※、気力※※・・・・



これは酷い、酷すぎる・・・・もう呪いレベルだ。

一見すると上級職の「龍騎士」と専門職の「テイマー」の二つのジョブを持っているので、かなり有望な人材だと思われるが、ドラゴンなんてここ500年は目撃情報も無いし、ワイバーンでさえ、ほとんど見かけない。それに「テイマー」として別の魔物をテイムしようにも、「魔物パージ」という常に魔物を遠ざけるスキルを発動しているので、魔物が懐くことはまずない。

ジョブの特性を完全に打ち消すスキルを付与されている。


他にも「尻尾攻撃特大」のスキルを持っているが、尻尾の短い猫獣人が尻尾攻撃をすることはないので役に立たない。尻尾攻撃ができるリザードマンとかならいいスキルだと思うが。

他にも成長補正スキルの「大器晩成」「早熟の天才」を持っているが、どちらも相反するスキルなので、スキルがないのと同じだ。いや、むしろマイナスに作用している。


「聖棒挟み擦り」?なんだこのスキルは?

スキル説明を読むと絶句する。前世でやったことはあるが・・・・。その他に結構な数のアレ系のスキルが付けられている。しかし、「品行方正」のスキルがあるので、そっち系での活躍は期待できない。


かなり計算されつくしている。まさに神レベルだ・・・・ってアイツも神か。

あの馬鹿女神!!

こんなところに時間と労力を掛けやがって!!


私が驚愕の表情を浮かべていると彼女の両親が懇願してきた。彼女の両親はともに猫獣人でモフモフしている。


「この子は生まれた時から毛が生えず、周囲からはそのために呪われた子供じゃないかって陰口を言われ続けているんのです。それに何をやっても上手く行かず、最近はすっかり塞ぎ込んでいます」


「心配で心配でたまりません。もし聖女様の力で、この子がなんとかなるのなら、私達は聖母ガイアを信仰しても構わないと思ってます」



何とかしたい。

こんな呪いみたいなスキル、どうすればいいの?


呪い、呪い・・・・そうだ!!

私はアイデアを思い付いた。この呪いを利用しよう。


それに健康状態「軽い鬱状態」も気になる。生まれて10年以上、こんなつらい目に遭えば誰だってそうなる。

見てろよ馬鹿女神!!私がこの子を救ってやる。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ