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<最終章>結婚詐欺師、異世界で聖女に~私が聖女?女神様!!多分人違いだと思うのですが・・・  作者: 楊楊
最終章

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72 講和 3

 翌日、講和会議が始まった。

 講和会議は、今のところ5日の予定だ。初日は挨拶や顔合わせ、お互いの条件の確認のみで終わることが多いそうだ。交渉術の戦略としては色々とある。最初に絶対に呑めないような条件を提示して、そこから徐々に下げていくといったものもある。私たちを例に取ると、ルキシア王国に全面降伏を求め、当然断られるだろうから、そこから少しでも多くの領地を獲得できるように交渉していくような方法だ。

 しかし、今回はそれをしない。直球で即時停戦を呼び掛けるのだ。相手も聖女がいるし、まずは停戦を合意した上で、交渉をすすめることにした。

 ブラックローズ公爵は言う。


「貴族同士の交渉なんて、欲と欲のぶつかり合いだからな。それに比べたら今回は楽観視できるな。まあ、レッドローズ家については、こちらで何とかしよう。レッドローズ公爵には、ミスリル鉱山の利権だけは、確保してやると密約をしているからな」


「お心遣い感謝します。私にとって見れば、鉱山の一つや二つで、民の命が救われるなら、安いものと考えております」


「流石は聖女殿だ」


 そんな会話を続けているうちに会場に到着した。席に案内され、ルキシア王国の関係者と対面して座る。私の目の前には件の聖女が座していた。早速聖母ガイアの加護を受けたスキルで鑑定を行った。


 名前  マリア・ホワイトローズ 

 年齢  ****

 ジョブ 「邪神の化身」「死霊術師ネクロマンサー

 スキル 「死霊召喚」「鑑定」「誘惑」「魅惑」「人心掌握」「回復魔法大」・・・・・「転生」

 健康状態 ****

 体力※※、知力※※、気力※※・・・・


 な、なんだ・・・・このステータスは・・・・「邪神の化身」!!それに「死霊術師ネクロマンサー」だって!!


 聖女とは程遠いというか、もう完全に悪い奴じゃん!!

 しかも、かなりのスペックだ。聖母ガイアの加護のお陰で、体力などのステータスも見られるようになったが、それでも意味不明の文字列が並んでいる。それに若い女性に見えるが、年齢も把握できなかった。


 あまりの衝撃に驚愕の表情を浮かべていると、ゴードンに声を掛けられる。


「カレンお嬢様、どうなさいましたか?凄く顔色が・・・」


「大丈夫よ、ゴードン。ちょっと考え事をしていただけだから」


「そ、それならいいのですが・・・・何かありましたらこのゴードンが、お側でお支えいたします」


 いつもと変わらないゴードンのお陰で、少し落着きを取り戻した。

 相手がどうであれ、私がやることは変わらない。何としても、この馬鹿げた戦争を終わらせる。最低でも即時停戦はしたいところだ。そのために準備もしてきた。

 一度深呼吸して、相手方の聖女であるマリアを観察する。マリアは驚愕の表情を浮かべ、何やらつぶやいていた。


「そ、そんな・・・あり得ない。偽物じゃないの?・・・まさか本当に聖女で、聖母を降臨させられるなんて・・・・」


 なるほど・・・相手も「鑑定」のスキルを使ったのだろう。こんなこともあろうかと、私は「ジョブ偽装」のスキルを使っていた。というか、公式の場に出るときは常時発動させている。それが功を奏したのか「ステータス偽装」のスキルまで発現したのだった。因みにこんな感じにジョブとステータスを偽装している。


 名前  カレン・クレメンス 

 年齢  20歳

 ジョブ 「聖母が認めた聖女」「聖母の使徒」

 スキル 「聖母召喚」「聖母の奇跡」

 健康状態 良好

 体力※※、知力※※、気力※※・・・・


 成人の儀では、「神に選ばれし聖女」という厨二病チックなジョブにしていたが、最近では、聖母シリーズで統一している。色々と説明するのが面倒なので、すべて聖母ガイアのお陰ということにしている。これならば、不意に鑑定されても言い訳ができるしね。

 この偽装が上手くいったようで、マリアはまんまと騙されている。



 ★★★


 簡単な紹介の後に早速、交渉がスタートする。仕切りは、場所を提供しているレッドローズ公爵家傘下のヘクター辺境伯だ。


「オルマン帝国を代表して仲立ちをさせてもらいます。我らはあくまで中立という立場ですので、ご理解をください。それでは、お互いに条件を提示してください」


 白々しいことを言うが、ヘクター辺境伯はミスリル鉱山の利権確保が第一の目的なのだ。


「それでは神聖国ルキシアを代表して、申し上げます。私たちが一番に望むのは、即時停戦です。この場ですべて終わらせられれば嬉しいのですが、それは流石に無理でしょう。なので、現在支配下に置いている地域で、即時停戦を提案します。民のため、どうか受けていただくことをご検討ください」


 これにヘクター辺境伯が反応する。


「聖女カレン殿の言うことはもっともです。我も、まずは停戦を提案いたします。そこからゆっくりとじっくりと話し合っていけばいいのではないでしょうか?」


 私の提案はヘクター辺境伯の利益と一致する。事前にコウジュンがヘクター辺境伯に条件を伝えて、根回しをしているのだ。私が言った「現在支配下に置いている地域」というのがポイントだ。当然、ヘクター辺境伯がどさくさに紛れて手に入れたミスリル鉱山も含まれる。ヘクター辺境伯にとってみれば、反対する理由がない。


 ルキシア王国の担当者が言う。


「それは認められない。そちらが勝手に独立したのだろうが!!虫が良すぎるぞ」


 予想どおりの答えだったので、私も用意してきた返答をする。


「それは十分に承知のしております。ただ、民のことを第一に考えてください。額については父と相談してのことになりますが、見舞金という形であれば、お支払いすることも検討しております」


「そ、それでよいのか?そちらが事実上の敗戦ということになるのだぞ?」


「私の願いは、民の安寧です。正直な話、お金で何とかなるのならば、安いものだと考えております」


「・・・・」


 ルキシア王国の担当者は、思案し始めた。諜報部隊の情報によると、ルキシア王国も余裕がなくなっているようだ。まあ、そんな状況でなければ、こんな場にやって来ないからね。

 ただ、条件としては破格だ。戦争は圧倒的にこちらが優位に立っている。担当者もルキシア王国の全面勝利で交渉が終わるとは思っていない。なるべく有利な条件で停戦できればと思っていただろう。そんな状況で、圧倒的に勝っている相手から、賠償金という名目ではないが、見舞金を払わせることができれば、担当者としても、十分な成果だろう。

 それに判断をするルキシア王国の首脳陣も、条件は呑みやすい。


「私個人としては、即時停戦を受け入れることは、やぶさかではない。見舞金の話だが、ここで書面にしてもらうことは可能か?」


「もちろんです」


「分かった。では聖女マリア様、どうお考えでしょうか?」


 ここで、マリアがうんと言えば、停戦は成立する。流石に聖女設定だから、停戦くらいは応じるだろう。私だって、理不尽な相手にお金なんて一銭も払いたくないが、被害を抑えることを考えると仕方がない。破格の条件なんだから、ここで停戦を決めて、本国に持ち帰ってもらいたい。


 しかし、マリアの答えは予想外のものだった。


「受け入れられません。この会議自体が意味のないことです。この聖女は悪魔の化身です。即刻処刑することを提案します。皆さん騙されています。聖女及びその親族の首を差し出せば、その他の者に手は出さないことは、聖女の私が補償しましょう」


 はい?貴方は何を言っているの?


 ゴードンなんかは今にも殴りかかろうとして、エリーナたちに止められている。

 一体、何の意図があるのだろうか?


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