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<最終章>結婚詐欺師、異世界で聖女に~私が聖女?女神様!!多分人違いだと思うのですが・・・  作者: 楊楊
最終章

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70 講和

 ジョーンズ伯爵領の危機も跳ね除けた私たちだが、新たな問題も抱えることになる。それは領土が増えてしまったことだ。正式ではないが、多くの領が神聖国ルキシアに編入されたいとの要望が届いている。


 単純に領土が増えればいい事ばかりではない。その場所にも責任を持たなくてはならないからね。はっきり言うと、どうせならそんな領土なんていらない。今の規模なら、守る場所も海の玄関口であるジョーンズ伯爵領、敵対するアバウス伯爵領を繋ぐ街道の砦、オルマン帝国との国境のレーベだけでいい。

 ジョーンズ伯爵領については、カラベール伯爵から接収した軍艦もあるし、先の戦いで増えたカラベール伯爵領も海上防衛を担ってくれているので心配ない。レーベもオルマン帝国とは良好な関係を築いているので問題はないし、今のところ、アバウス伯爵領と接する砦で小競り合いが起こる程度なのだ。


 このまま持久戦に持ち込んで、相手が諦めてくれるのを待つ作戦だったのだが、領土が増えると、これが崩れ去ってしまう。神聖国ルキシアが誇る神官騎士団は精強だ。アズイーサやウサール枢機卿が中心となり、絶対に表に出せないような厳しい訓練のお陰で、普通の部隊では太刀打ちできないくらいの戦闘力はある。しかし、無理してかき集めても1万に満たないのだ。

 守る国土が広くなればなるほど、戦線が伸び、兵数も必要になってくる。随時、神官騎士団を増員しているが、とてもじゃないが追いつかない。

 兵を使い潰すような運用をすればカバーできるかもしれないが、そんな運用はしたくない。


「できれば、この辺で一度休戦したいわね・・・・」


 不意に独り言が出てしまった。


 これにはコウジュンが反応した。


「カレン様のお気持ちはよく分かります。領主様も従者たちも同じ気持ちです。今も諜報部隊やオルマン帝国のブラックローズ公爵閣下を中心とする方々が講和に向けて準備を整えておられます」


「そうね・・・本当に早く終わってほしいわ・・・」


 だけど、こちらが不利になる条件であれば応じられない。


 そんな思いも虚しく、悪いニュースが飛び込んできた。小競り合いを続けていたアバウス伯爵領が全面降伏して、私たち神聖国ルキシアに編入を希望している。今、目の前に居るのが現アバウス伯爵で、先代の腹違いの弟だ。なんと先代のアバウス伯爵領の首を持参してやって来たのだ。


「今までの度重なる蛮行は、お詫びのしようもありません。先代の兄の首、足りなければ私の首でアバウス伯爵領の編入を受け入れて欲しいのです」


 お父様やこちらの領主や関係者は困惑している。お父様が代表して言う。


「詳しく聞こう」


「もう我が領は立ちいかなくってしまいました・・・」


 この男が言うには、アバウス伯爵領は裕福な領だった。街道を抑えていたので、アバウス伯爵領より西側の領は、アバウス伯爵の言いなりになるしかならなかった。しかし、私が聖女となってから、状況は一変する。街道を盾に不当な要求に西側の各領が応じなくなってしまった。その頃から財政は徐々に悪化して行ったそうだ。しかし、そのうち何とかなるだろうと現実に目を背け、特に改善を行わず、逆に私たちに対して恨みを持つようになったようだ。


 そして、私たちが神聖国ルキシアとして独立し、ルキシア王国から討伐命令が下った。

 そのとき、戦争で領土を奪い取れば、今までの問題はすべて解決するだけでなく、巨万の富も得られると思い、借金に借金を重ねて、戦いに臨んだようだ。


「私は兄を必死で止めました。これまでの非を認めて謝罪し、平和的な解決をすべきだと。しかし、聞く耳を持ってくれませんでした」


 そして戦いが始まり、ルキシア王国から多くの援助があったが、日を追うごとに被害は拡大するばかりであった。


「1ヶ月前からは兵たちへ、碌に給料も払えなくなり、兵の一部が隣接するオルマン帝国のヘクター辺境伯領の村で略奪するようになってしまったのです。それで激怒したヘクター辺境伯が攻め込んできて、国境の村を逆に占領され、貴重な収入源であるミスリル鉱山を接収されたのです。身から出た錆とはいえ、え、このままでは我らは飢え死にするしかありません。どうか聖女様のご慈悲を!!」


 私に言われても、「知るか!!ボケ!!」って感じだが、聖女としての体面もあるし、そのような言動はできない。一応、慈悲の言葉を掛けるのが聖女として正解なのだろうけど・・・・


 私がまごついていると、お父様が間に入ってくれた。


「慈悲深いカレンに縋れば、何とかなると思っているようだが、そうはいかんぞ。一応、要望としては検討しよう。しばらくの間、逗留することは認める。決定が下るまで、しばらく待っていろ」


 そう言って、男を下がらせた。


 次の日、ブラックローズ公爵がやって来た。


「レッドローズの奴等め・・・混乱を利用して漁夫の利を得やがって!!腹立たしい。面倒ごとは聖女殿に丸投げとは・・・・」


 強かなレッドローズ公爵家は、傘下のヘクター辺境伯を利用してミスリル鉱山を手に入れたようだ。軍を予め国境付近に待機させ、何かあれば攻め込めるように機会を窺っていたようで、略奪事件は渡りに船だったようだ。


「それで聖女殿、どのように対応する?アバウス伯爵領を編入しても負債を抱えるだけだと思うが・・・」


 ミスリル鉱山があれば、まだ債権の目途が立ったのだろうが・・・・


 私は聖女として、それっぽいことを言ってその場を収めようとした。


「私としては、アバウス伯爵領を編入する、しないではなく。早くこんな戦争を終わらせたいと思っております。ブラックローズ公爵閣下には、そちら方面で力添えをお願いいたします」


「流石は聖女殿だ。そちら方面では全力を尽くそう」


 コウジュンも意見を述べる。


「私もカレン様のご意見に賛成です。場合によっては、レッドローズ公爵にアバウス伯爵領を丸々引き取ってもらってもいいと思っています」


「それはいい案かもしれんな。いいところだけ、つまみ食いしたいようだが、領全体となると下手をすると赤字になるからな」


 そんなことを話しながら、会議は細かい調整に入った。


 そして2ヶ月後、オルマン帝国が仲立ちとなり、第一回の講和会議が開催されることとなった。

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