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<最終章>結婚詐欺師、異世界で聖女に~私が聖女?女神様!!多分人違いだと思うのですが・・・  作者: 楊楊
第三章 聖女の建国記

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64 幕間 ある義勇兵の話

 ~レアード視点~


 俺はドルト子爵領から来た義勇兵だ。

 俺の他にもドルト子爵領から10名が志願したが、神官騎士団に入団が許されたのは俺だけだった。一緒に来たシャイナさんは冒険者としての腕を買われて、斥候部隊に配属され、他の者は治安維持部隊や補給部隊に回された。


 神官騎士団は、エリート中のエリートという触れ込みで、俺は少し誇らしかった。試験官に理由を聞いたところ、戦闘力はギリギリだったが、回復魔法が使えるので、合格となったそうだ。騎士団に回復魔法なんて必要ないと思うし、俺の回復魔法なんて、擦り傷や打ち身を治す程度だからな。まあ、一度フレイムグリズリーの襲撃事件のときには死に掛けているんだが、そのときは、無我夢中で止血ができたがな。


 なぜ俺が、義勇兵に志願したかというと、それは聖女様に命を助けられたからだ。フレイムグリズリーの襲撃事件のときは、俺は仲間を庇い、瀕死の重傷を負った。領主で幼馴染のダリアの話だと、もう助からないと思い、家族も呼んでいたそうだ。

 しかし、奇跡が起きた。気が付くと傷はすべて消えていた。涙を浮かべて、俺に抱き着いてきたダリアの嬉しそうな顔は、今でも目に焼き付いている。

 そのダリアからは、せっかく助かった命なんだから、危険な戦地に赴く必要はないと言われたが、俺は志願した。


「ダリア、それは分かる。でもな、今こそ恩を返すときだと思う。それに聖女様がいるんだ。絶対に生きて帰って来るよ」


 そう言って、故郷を出発した。途中、シャイナさんがからかってくる。


「戦場で『故郷に帰ったら結婚するんだ』とか言うなよ。縁起が悪いからね」


「そ、そんな・・・ダリアとはそんなんじゃ・・・」


「私はダリアとだなんて、一言も言ってないけどね。フフフフ・・・」


 それは冗談だが、本当にこの戦いが終わればプロポーズも考えている。



 ★★★


 それぞれの配属が決まり、いよいよ訓練が始まった。

 しかし、この服装は何だ?ビキニブリーフだけって、どういうことだ?

 周りを見回しても同じ格好だし、女性の訓練員はビキニアーマーだ。


 戸惑っているのは俺だけではないようで、隣にいた女性が話し掛けてきた。


「この格好はどういうことだろうか?誇り高い騎士がする格好ではないと思うのだが・・・」


「騎士様だったんですね。俺はてっきり騎士様の訓練はこの格好でするのかと思ってましたけど、もちろん、冒険者の訓練でもこんな格好ではしませんよ。ところで、どちらから来られたのですか?私はオルマン帝国のドルト子爵領です」


「そうか!!我はドーン伯爵領からだ。現ドーン伯爵は我の伯父上に当たるのだ」


 なんと!!結構な身分の方じゃないか・・・自分なんて狩人上がりの領兵なんだが・・・


「そうなのですね。私は領兵の隊長はしていたのですが、以前のフレイムグリズリー襲撃事件で聖女様に命を助けられましたので、志願して来たのですよ」


「そうか、それではあの厳しい戦いを生き抜かれたのだな?それは尊敬に値するぞ。我は腕に自信はあるが、なかなか女の身では活躍することは叶わず、この地では聖女様を筆頭に龍騎士エリーナ殿やアズイーサ殿のように女性騎士が活躍しているので、反対を押し切って志願したのだ」


 色々事情はあるようだが、悪い人では無さそうだった。そんな雑談を続けていると訓練教官がやって来た。その教官というのが、そのアズイーサだった。アズイーサとは因縁がある。コイツの所為で俺たちは死に掛けたからな。噂では改心して、聖女様を支える重要な役職に就いているとのことだったが、本当に変わったなんて信じてはいなかった。

 自分勝手で横暴で、無鉄砲な馬鹿というのが、俺の見解だ。だから、自分が殺し掛けた奴の顔なんて覚えてないだろうしな。


 しばらくして教官のアズイーサが口を開く。


「アズイーサだ。挨拶や前置きはしない。そんなことをしている時間はないのだ。早速訓練に入る。これは諸君らが生きて来た中で最もつらい経験をするだろう。しかし、短期間で能力を高めるにはこれしかないのだ。では早速訓練を始める」


 そう言うとアズイーサは俺に近寄って来た。そして、あろうことか俺の右腕にナイフを突き刺した。


「ギヤー!!」


 思わず叫び声を上げた。

 一体何を考えているんだ!!


 抗議の声を上げようとしたところでアズイーサが言う。


「早く止血しろ!!回復魔法が使えるんだろ?」


 何を馬鹿なことを!!

 俺の回復魔法なんて、擦り傷を治す程度なのに・・・・


 しかし、切羽詰まった状況が俺の回復魔法の能力を飛躍的に向上させたみたいで、止血ができてしまった。これにはアズイーサも驚いていた。


「アズイーサ教官!!これは一体・・・」


 言いかけたところで、今度は右足をナイフで刺された。またも大急ぎで回復魔法で止血をする。

 一体これは何なんだ?


 そう思うのと今度は左腕を刺された。もうその頃には魔力切れになっていたのだが、魔力回復ポーションを飲まされた。魔力は回復したがこの地獄は続く。次第に意識が遠のいていく。そしてあろうことか、失禁をしてしまった。周りを見渡す余裕はなかったが、後で聞いた話だと、他の訓練員も同じことをさせられていたそうだ。そして、どうしてこのような卑猥な恰好をさせられているのかも理解した。失禁することを前提にした訓練のようだった。


「本当に時間がないんだ!!3年のカリキュラムを3ケ月で終わらせようとしているのだからな。諸君らは絶対に耐えられると思っている」


 これも後で聞いた話だが、俺と一緒に訓練を受けていたのは、選りすぐられた100名の義勇兵だったそうだ。普通の者ならば、精神に異常をきたすだろうが、ここに集められたメンバーは能力も高く、そして何よりも聖女様に対する忠誠心が高いと思って選ばれたそうだ。


 そんなことを知る由もなかった初日は、ただ、嵐が過ぎ去るのを祈るのみであった。結局初日が終わる頃には、半数の者が中級回復魔法を習得していた。二度とやりたくないが、有効な訓練なのかもしれない。



 ★★★


 訓練期間はあっという間に過ぎた。俺は上級回復魔法だけでなく、神聖魔法まで習得していた。最初は殺してやろうと思っていたアズイーサだが、今では少し感謝している。

 訓練最終日、俺たちは聖女様から直々に神官騎士団員としての認定書を手渡され、有難いお言葉をいただいた。


「想像を絶する厳しい訓練を耐え抜いたと伺っております。このような訓練をさせたのも訳があるのです。ここにいる皆さんには、最前線で戦ってもらうことになります。しかし、私は誰一人として死なせたくはありません。だからこそ、このような訓練をしてもらった次第です。どうか、皆さんの力をお貸しください」


 やはり聖女様は素晴らしい方だった。こんな訓練をすれば、逃げ出す奴が大勢いるだろうにと思う。正規兵ではないのだから、実戦で使い潰そうと考える指揮官もいる中で、このような手厚い訓練を受けさせてもらったことは本当に有難いと思った。

 認定式はそれで終了したが、その後、アズイーサが話し掛けて来た。


「レアード殿!!貴殿やドルト男爵領の皆には詫びても詫びきれないことは分かっているが、再度言わせてほしい。本当にすまなかった。訓練中、貴殿には特に辛く当たったと思う。それは貴殿を安全な後方での任務に就いてほしかったからだ。しかし、貴殿は過酷な訓練に耐え抜き・・・」


 アズイーサは、俺たちのことを忘れていたわけではなかった。そして、今でもあの時の行動を反省しているという。その気持ちが分かっただけでも十分だった。人は誰しも過ちを犯す。問題はそこからどう立ち直るかだ。そのようにアズイーサは聖女様に諭されたそうだ。


「アズイーサ様、もうこれ以上の謝罪は不要です。それに私たちは、聖女様を守るという共通の使命を持った同志じゃないですか!!」


「そう言ってくれると有難い。貴殿の活躍を誰よりも期待している」



 数日後、ドルト子爵領のメンバーで集まって食事会を開いたのだが、このことを話すとドン引きされた。

 まあ、仕方がないことだが・・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!


次回から最終章となります。

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