63 建国祭
今私たちは、建国祭の準備で大忙しだ。
みんなで話し合い、盛大にやろうと言うことになった。というのも、いつルキシア王国が攻めて来るか、分からないからだ。戦争となれば死者も出るだろう。最後の思い出づくりではないが、楽しめるときは楽しもうということになった。
そんなとき、ふと空を見上げると見慣れたドラゴンが飛んでいた。ドラゴンを見慣れること自体が、普通ではないと思うのだが、そこは置いておいて、そのドラゴンは私とエリーナの前に舞い降りた。
「建国祭をするようじゃのう?サラちゃんたちを入れ替えるのにちょっと寄っただけじゃ。どうしても出席してほしいというのなら、考えてやらんこともないが・・・」
エリーナがそっと耳打ちをしてくる。
「龍騎士となってから、ファイリス様と念話ができるようになったんですけど、建国祭のことを言ったら、どうしても来たいって言い出して。でも、カッコよく別れた手前、建国祭に出るのも恥ずかしいって言ってました」
そういうことか!!
なら、私に考えがある。ドラゴンの掟がどういうものか、詳しくは分からないが、抜け道なんていくらでもある。それにせっかく従者になったのに、ファイリス様が棲み処に帰ったことで、従者を辞めなくてはならなくて、落ち込んでいたリザードマンの三姉妹もファイリス様が戻って来たら喜ぶしね。
「ファイリス様、まだ正式に宣戦布告はされていませんし、戦闘も起こっていません。ということは、人間の争いに加担していないことになります。戦闘が始まるまでは、今までどおりでいいのではないでしょうか?」
「そ、それもそうじゃな・・・」
「建国祭までにはファイリス様の像も完成しますし、アンジェリカさんが特別料理を振舞ってくれるそうですし、是非とも建国祭りには出席していただければと思っております」
「そこまで言うのならば、出てやらんこともないぞ!!」
チョロいもんだ。これで、実質的な戦闘が始まるまでは、物資の輸送などで重宝するだろう。
★★★
ファイリス様の活躍もあり、建国祭は大盛況だった。目の前では、ファイリス様が美少女の姿になり、一心不乱に寿司を食べている。ファイリス様の空輸便が復活したので、新鮮な魚介類がジョーンズ伯爵領から大量に運べるようになったからだ。ドラゴン見たさに多くの来賓も集まった。隣国のオルマン帝国からはブラックローズ公爵を筆頭にドーン伯爵や最近男爵から子爵に陞爵したトルド領の領主のダリアさんの他にも多くの貴族たちが出席した。
彼らは、エリーナの大道芸やポールさんの劇団の演劇などで盛り上がり、アンジェリカさんの料理に舌鼓を打っていた。
すかさず、ポールさんがジョーンズ伯爵の売り込みをする。
ジョーンズ伯爵領は北街道の最北にあるので、この領まで旅行に来てくれるだけで、街道沿いの他領は潤うのだ。目ざといマトキン男爵なんかは早速、ワサビやリザードマンの里にはファイリス様が度々やって来ることなどをアピールしていた。
私も彼らに負けずに愛想を振りまく。ルキシア王国との関係が悪くなったときに支援を申し出ることを考えているからだ。
機会を見て、ブラックローズ公爵に挨拶に向かう。
「この度はわざわざお越しくださり、本当にありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりとなさってください」
「聖女殿、十分楽しんでおるよ。しかし、困ったことになってな・・・・」
ブラックローズ公爵が言うには、以前から付き合いのある私たちの国、神聖国ルキシアの支援を皇帝陛下に進言してくれたそうだが、逆にルキシア王国を支援したいと進言する派閥が現れたそうだ。
「我がオルマン帝国には、四大公爵家が存在する。具体的には文のレッドローズ、武のブラックローズ、魔のブルーローズ、聖のホワイトローズだが、ホワイトローズ家がルキシア王国の支持を表明したのだ」
ブラックローズ公爵の話によると、レッドローズ家は文官を多く輩出していて、内政面で大きな力を持ち、ブラックローズ家は軍や騎士団関係、ブルーローズ家は魔術師や研究者に影響力を持っているそうだ。そして、教会や治療院関係に力を持っているホワイトローズ家がルキシア王国を支持するとのことだった。
「ホワイトローズ家の連中が言うには、聖女殿のことを偽物と罵っておったよ。そして、ホワイトローズ家の二女が聖女として認められたとも言っておった。本物の聖女殿に対抗するために偽の聖女を用意し、更に聖女殿を貶めるなど、絶対に許せん。その聖女というが、数々の奇跡を起こしているようなのだ。我は何かカラクリがあると思っているのだが、それを見破ることは未だにできん」
まあ、私が偽物なのは間違いないんだけど・・・
「今のところ、レッドローズ家もブルーローズ家も慎重な態度を取っており、皇帝陛下も『積極的な介入はするな』と指示されておる。なので、大っぴらに支援することは難しくなったのだ。散々世話になって申し訳ないが・・・・」
「お気になさらずに。聖母ガイア様は侯爵閣下のお気持ちは十分理解されていますよ」
「そう言ってもらえると有難い。それで考えたのだが・・・・」
ブラックローズ公爵が言うには、表向きは支援できないが、義勇兵という形で、援軍を送ってきてくれることになった。その中にはドルト子爵領で一緒に戦ったメンバーも多く志願しているらしい。
「ありがとうございます。表向きは、アズイーサを慕って勝手にやって来たことにさせていただきます。とりあえずは、神官騎士団で訓練を受けてもらうようになりますが、何人持つかどうか・・・・」
「そんなに厳しいのか?誰が指導をするのだ?」
「アズイーサです」
「だったら、我も訓練の視察に来させてもらおうか」
支援をしてもらえることは有難いが、アズイーサの訓練を見させて大丈夫だろうかと思ってしまう。私が聖女ではなく、邪神崇拝者と思われるかもしれないからね・・・・
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