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<最終章>結婚詐欺師、異世界で聖女に~私が聖女?女神様!!多分人違いだと思うのですが・・・  作者: 楊楊
第三章 聖女の建国記

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61 聖女、決別する

 処理は朝まで続いた。騒ぎを聞きつけた野次馬や警備隊が屋敷にやって来る。私は、野次馬にも聞こえるような大きな声で、警備隊に説明をする。


「つまり、教皇派の幹部がこちらの暗殺者たちを差し向けたのです」


「そ、そんな・・・しかし・・・・」


 警備隊の責任者は驚きを隠せない。そんな中、暗殺者の少女が口を開く。


「私たちは、こちらの聖女様を偽物の聖女で極悪人だと言われ、暗殺を命じられたのです。しかし、聖女様は本物でした。そしてこんな私たちにも慈悲の心で接してくれたのです。私は改心しました。これからは、聖女様に身を捧げます」


 こちらは打ち合わせに無かったが、本当に改心してくれたのだろうと思う。

 しかし警備隊の責任者が言う。


「聖女様の自作自演というのは考えられませんか?貴方にとって都合が良すぎる」


 これにゴードンやエリーナが怒鳴り声を上げる。


「失礼にも程がある。お嬢様が嘘なんか吐くはずがない」

「カレン様は命を狙われたのですよ!!」


「しかし・・・その者たちをこちらで、取調べをして・・・」


 この警備隊の責任者は教皇派の息の掛かった者だろう。ということは、暗殺者たちを引き渡せば、始末されるし、都合がいいように事実を捻じ曲げられるだろう。


 そう思っていたところに救世主が現れた。ファイリス様だ。


「朝から騒がしいのう。何かあったのか?わらわはまだ眠いのじゃ!!」


 私は作戦を思い付いた。

 ファイリス様に近付き、耳打ちをする。


「もうエルサラに帰ろうと思うのです。裏庭でドラゴンの姿になってここに戻って来てくれませんか?戻ってカツカレーを食べましょう」


わらわも食べたいと思っておったのじゃ。すぐに戻って来るぞ」


 ファイリス様は、裏庭に移動し、すぐにドラゴンの姿になって帰って来た。当然、周囲は騒然となる。

 私は警備隊や野次馬に向かって言った。


「私は王都に正しい教えを広めに来ただけなのに・・・きっと天罰が下ることでしょう。暗殺者だった者に言います。もし、改心し、新たな人生を歩みたいのであれば、私についてきなさい」


 これには暗殺者たちもびっくりしている。

 暗殺者の少女が言う。


「もちろんです。聖女様!!」


 暗殺者はエリーナの案内で、ファイリス様の背中に設置している客席に乗り込んだ。


「警備隊に言います。私はこの事件がキチンと捜査され、納得のいく説明がなされるまでは、王都に戻っては来ません。そう伝えなさい。そして、ここにお集まりの皆様にお願いいたします。私が嘘を言っているのではないと信じてください。多分、国や教会は都合がいいように真実を捻じ曲げるでしょう。皆さんにどうこうしてほしいということではありません。真実とは何かを見定めていただきたい。

 それでは失礼します。皆様に幸多からんことを!!」


 そう言うと、私はファイリス様に乗り、王都を飛び立った。多くの歓声が上がる。

 そして、その日のうちにエルサラに到着したのだった。


 ★★★


 エルサラに着くとすぐにお父様とお母様に報告した。二人は狼狽え、そしてお父様が怒り始めた。


「カレン!!王都で狙われることを知っていたね?」


「は、はい・・・」


「私たちのことを思って、黙っていたということは分かる。だが、二度とこんなことはしないでくれ。カレンは聖女でもあるが、それよりも私たちの大切な娘なんだからな・・・もし、危険な目に遭うなら、聖女なんて辞めたっていいと思っている」


「お父様・・・」


 本当にいい両親の元に転生したと思う。これだけは、馬鹿女神に感謝してもいいくらいだ。

 そんな感動的な雰囲気をぶち壊す人物がいた。


「何をしておる!!わらわは早く、カツカレーを食べたいのじゃ!!」


 エリーナがファイリス様を宥める。そんなときお母様が言う。


「だったらみんなで食べましょうよ!!みんなで食べたほうが美味しいですよね?ファイリス様」


「そうじゃのう。わらわも、そう思うぞ。最近ワイワイ言いながら食べるのも好きになった」


 こういうところは、私はお母様を尊敬する。決して出しゃばらないけど、タイミングよくフォローしてくれるのだ。本当にいい両親の元に転生した。前世の両親も素晴らしかったけどね・・・



 次の日はファイリス様に乗り、すぐにジョーンズ伯爵領に向かった。渋るファイリス様には、寿司と海鮮丼で釣った。早速打ち合わせを始める。


 コウジュンが状況を説明し、相手の出方を予想する。


「考えられる手は二つ、一つは教会の関係者を形だけの処分をして、ソイツが勝手にやったことだと言い張るでしょうね。そして、今回のことはなかったことにする。もう一つはカレン様を異端者と認定して討伐軍を差し向ける。まあ、こちらのほうは確率が低いでしょうね」


 ポールさんも言う。


「そうですね。とりあえずは最悪の事態を想定して、北街道沿いの領主たちに事情を説明して回りましょう。トカゲの尻尾切りで来ると思いますが、2~3年位はのらりくらりと躱せるでしょう」


 二人がそうならばそうなのだろう。私たちは、ポールさん御夫婦もファイリス様に乗せて、北街道沿いの領を回る。マトキン男爵を筆頭に皆理解を示してくれたし、教会や王家に鉄槌を喰らわせてやると息巻く領主もいた程だ。



 それからしばらくして、ルキシア王国と聖母教会からの書状が届く。


「カレン・クレメンスをすぐに出頭させること。異端審査に掛ける。匿うとカレンクレメンスと同罪と見做し、軍をもって討伐する・・・・」


 お父様もお母様も従者たちも、驚きを隠せない。予想外だったからだ。それに私の襲撃事件には一切触れられていない。暗殺自体を正当化しようとも取れる。


 お父様が言う。


「もう我慢できん。カレンを奪われるくらいなら、差し違えてでも守り切る。独立だ!!」


 皆が賛同する。このとき、教会やルキシア王国から決別することになった。

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