58 聖女、火龍ビジネスを始める
ファイリス様の予算をどう確保するか・・・・それが大きな課題だ。
今もお父様とお母様、従者たち、デブラス枢機卿、ウサール枢機卿、ヤサク司祭などの面々を集めて会議を行っている。
最初にエリーナが言う。
「ファイリス様に言って、芸をさせるのはどうでしょうか?煽てて、誤魔化せばやってやれないことはないと思いますけど」
これにはデブラス枢機卿が反対する。
「それではミニサラたちと同じ扱いになってしまいます。なので、私に考えがあります。具多的に言うと・・・」
なるほど、これならファイリス様で一儲けできるだろう。デブラス枢機卿は聖職者より商人に向いているのではといつも思ってしまう。
すると、コウジュンもこれに反応する。
「デブラス枢機卿の意見でヒントを得たのですが、こういうのはどうでしょうか?つまりブランド力ということですよね?」
コウジュンの説明を聞いてよく分かった。
お父様も感心している。
「よし、二人の意見を採用しよう。具体的な計画をすぐに作成してくれ。それと、くれぐれも怒らせるようなことはするなよ」
エリーナが言う。
「領主様、活動中は私が常に一緒に居ますので大丈夫です。この龍騎士エリーナに任せてください」
私が想像していた龍騎士とは違うが、頼りにしているよ。
★★★
まずやって来たのはジョーンズ伯爵領だ。
ポールさんとアンジェリカさんに今回のコンセプトを説明する。
「驚きましたよ。いきなりドラゴンに乗ってやって来るなんて・・・・まあ、カレンさんは何でもありですから、もう諦めました。ビジネスの話については全面的に協力させてください。山奥の領地で新鮮な海の幸を食べられるなんて、オルマン帝国の貴族が聞けば、大金を払ってでも買ってくれるでしょうね」
「そうよ。私たちが前に居た世界では、出前ってのがあってね。お寿司とか出前の定番だったのよ。それを考えたらこの商売は大当たりすること間違いなしね。そうだ、ドラゴンイーツっていうのはどう?」
多分、あれから取ってきたのだろう。
「ありがとうございます。こちらも変に安くするつもりはありません。裕福な貴族のパーティー料理なんかを最初は考えています。それにセットでエリーナの大道芸も合わせたトータルなサービスを売ればいいのではとも思ってますね」
「カレンちゃんも商売上手ね。こっちは刺身とお寿司を中心に考えるわね。何なら出張料理なんかしてもいいかもしれないわね。私もドラゴンに乗りたいし」
料理の供給元が確保できたことで、ドルト男爵領に向かいダリアに会う。ファイリス様とミニサラたちは、棲み処でお留守番だ。いきなりドラゴンが町に降り立ったら大騒ぎになるし、仲がいいと言っても一応他国だから、その辺は気を遣わないとね。
「聖女様は本当に規格外ですね。私たちも全面協力します。まずはドーン伯爵、そして伝手を頼ってブラックローズ公爵にも協力してもらいましょう。絶対に大喜びすると思いますよ」
すぐに話はつき、一週間後、ドーン伯爵の立ち合いの元、ブラックローズ公爵と会談することに成功した。アズイーサも預かっているし、前から私の印象はいいから、話も順調に進む。
「分かった。それでは早速我の主催する派閥のパーティーの料理と龍騎士エリーナのパフォーマンスを頼みたい。白金貨100枚以下なら好きにしてもらっていいからな。
それとアズイーサのことだが・・・・必ず連れて来てほしい」
やっぱり、孫は可愛いのだろう。でも白金貨100枚って・・・・大帝国の公爵家はスケールが違う。
★★★
2ケ月後、いよいよパーティーの日となった。
毎年、ブラックローズ公爵の誕生日に合わせて開催されるようで。派閥の関係者だけでなく、他の派閥の関係者も多く参加するようだ。
つまり、ここでブラックローズ家の威光を示す意味合いも強いのだ。だから多少出費が嵩んでも、驚くようなパーティーをすることは意味があるらしい。
私たちクレメンス子爵領では考えられないことだけど。
今回のパーティーの為にゲディラが中心となって、ファイリス様に乗りやすいように客室を取り付けることにした。最大20人まで乗れる。ファイリス様は魔力を高めるとかなり大きくなれるのだ。最大で全長30メートルまでになる。
そして今回はポールさんとアンジェリカさんも来てくれる。
二人の話だと、白金貨を何十枚と貰って食材を渡すだけでは忍びないと思ったようだ。それにドラゴンに乗りたかったというのもあるだろう。
★★★
パーティー自体は野外で行われている。私はゲストということで普通に出席しているのだが、エリーナとアズイーサ、ファイリス様は別行動だ。
アンジェリカさんの料理は大絶賛されていた。特に目の前で握ってくれる寿司は本当に美味しい。
「こんな新鮮な魚介料理を食べさせるなんて、ブラックローズ家はどれだけ凄いんだ」
「このツーンとくる独特の辛みはなんだ?それに独特の料理法も斬新だ」
「なんでも、これだけじゃないらしいぞ。聖女様だけでも凄いのに」
ある程度、お腹も落ち着いたところで、ブラックローズ公爵家の執事さんから「そろそろお願いします」との合図をされる。私はブラックローズ公爵の紹介で壇上に上がる。そして簡単なスピーチの後にこう言った。
「皆さん上空をご覧ください。ホーリーブライト!!」
私は「幻影魔法」で光の柱を出した。何も知らないパーティーの参加者は驚いている。
「聖女様が神聖魔法を放ったぞ!!」
「一体何が始まるんだ?」
当然、「神聖魔法」なんて私は使えない。
ファイリス様に合図を送っただけだ。
しばらくして、ファイリス様に乗ったエリーナとアズイーサが現れた。
「ドラゴンだ!!どういことだ」
「ドラゴンに乗っているのは、もしかしてアズイーサ様か?」
アズイーサはファイリス様の背中から飛び降り、地面に降り立った。
すぐにブラックローズ公爵の前に来て、挨拶をする。
「不肖のアズイーサ、只今戻りました」
「元気でやっておったか?」
「はい」
意味の分からない参加者は混乱している。
これは演出なのだ。
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